真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~ 作:Celtmyth
あらすじ
『クローンたちが転入した次の日。大和と巨人が非公認部活『だらけ部』の活動をしていると弁慶と健美が現れる。流れるままに2人は入部した』
「………」
カツカツカツ………。
「………」
トコトコトコ………。
「……俺なんかとじゃなくて義経と姉御と一緒に歩いてもいいんだぜ」
「ピッ」
「聞く気はなさそうだな。しょうがねぇ、勝手にしろ」
「ピュイ」
軽くやり取りをして二人はまた黙ってします。しかし会話こそないがこの二人が並ぶとどこか兄妹と言う感がある。その一番の理由は、与一の距離感が他の誰より近いと感じられる事だった。
「……何度も聞くようで悪いがいいか?」
「ピユ?」
「本当に大丈夫か?」
与一の問いは曖昧なものだった。普通なら何を言いたいのかわからないが、これは二人にしてみれば何度も繰り返した問答。これも最初の頃に聞かれた質問を省略した物。
だから健美は与一の言いたいことは理解していた。
「わから、ない」
返事は言葉にして答えた。
「転入前はすぐに『大丈夫』って答えてたな。不安になったか」
「………」
健美は答えない。しかしこれは与一の言ったように不安を抱えている現れなのかもしれなかった。
「不安ならそれでいい。暗い道を歩くもまたお前次第だ。例え光のない闇だけの結末になろうともな」
これは与一になりに励ましているのだろうか。しかし健美は純粋な子なので意味を理解できず首を傾げていた。しかし与一なりに心配してくれていることだけは伝わった。
「ん? 昨日の奴らだな」
と、ここで与一が真正面を見ながら話を変えた。健美も正面を見ると義経たちと大和たちが一緒になっていた。
「ピ」
「楽しそう、か。確かに義経のような『光』の周りはそうだろうな。俺のような『闇』には程遠いことだ?」
与一の言葉に健美はまた首を傾げた。そんな時、橋の道路を猛スピードで走るバイクを目撃し、そしてそのまま。
義経の荷物がバイクの運転手に奪われる瞬間を目撃した。
「……ったく、あの馬鹿が」
同じく盗まれる瞬間を目撃した与一はすぐさま駆け出し、健美も彼について行く形で駆けた。
「なーにあっさり盗られてんだよ」
「与一。すまない、義経は深く反省する」
「ピ」
「健美……。ありがとう、落ち込まないでと励ましてくれて」
「いや待て。『ピ』でそれだけの意味があるのか? と言うかいつもの『ピ』にしか聞こえんぞ」
後ろから与一たちが合流する。その間にも大和は盗人のバイクが遠くへ、すでに豆粒ほどの小ささになっていることを確認した。
(ワン子が追いかけてるけど明らかに追い付いてない。やっぱりここは最終手段か?)
大和は策を練り、チラリと百代に目を向ける。すると百代は頷き、指を鳴らした。あとは実行に移す、そうしようとした時だった。
「しょうがねぇ。――クラウディオ!」
「こちらに。そしてどうぞ」
与一の声にクラウディオが現れ、そして長弓を丁寧に渡す。
「この距離から狙撃する気? いくらなんでも」
京がそう呟くが与一は気にせず弓矢を構える。
「――さぁ行くぜ。これがソドムの弓と、この俺の初陣だ」
「そ、それは某ロボットアニメ第12作、狙撃型機体パイロットの初台詞!」
与一の宣言に卓也がマニアックな知識で解説した。その間に与一は弦を引き、周囲に引き締まる音が響く。その瞳はスコープで覗いているが如く標的を捉えていた。
「――健美」
「ピュ?」
しかし矢を放つ前、与一はそばにいる健美に声を掛けた。
「お前が義経の荷物を取りに行ってくれ。
「……ピュイ!」
与一は健美に荷物の回収をお願いした。それを聞いて大和たちは手間が掛かると思うと同時、与一の最後の言葉はどういう意味だと考えていた。
そして与一は改めて標的を、ロックオンした。
「目標を狙い撃つ! 奥義――
微妙なネーミングセンスと共に強烈な一閃が放たれた。
その直後、健美の姿が消えた。
この時、盗人は突然の悪寒に震えた。義経からバックをひったくり、これからの事を嬉々としていた気持ちが一転。恐怖があった。
悪寒は背後から感じ取っており、その正体を確かめようと一瞬だけ振り返ろうとしていた。しかしそれは出来なかった。何故か? それよりも注目すべきものが、目の前にあったからだ。
「……ぬすみ、だめ」
目の前にいた少女がそう言うと盗人がひったくったバックをいとも簡単に手に取った。
「なんだぁああああああ!!」
盗人は事態を理解できず叫ぶがその直後、背後から迫っていた矢がバイクに命中し、転倒してしまった。
一連の光景を見ていた大和たちは関心と驚きを同時に抱いていた。関心は与一に対して、驚きは健美に対してだ。
「あの距離を当てたのはすげぇけど、あの後輩はビックリだ……」
「おっほ~、マジかよこれ」
岳人が驚きで呟く中、翔一はテンション上々で道路に目を落としていた。そこはハンマーで叩き付けたような破壊跡があった。しかしこれはハンマーが叩いたのではなく、踏み抜いた結果破壊された跡だった。
「矢の速度を超えて、そのままバイクより前に出るなんて……」
黛由紀恵は驚きつつも先ほど一連を口にしていた。
「どうだい? あれが健美の実力。その一端だよ」
そこに口を挟んだのは弁慶だった。盗人が成敗されて先ほどより気が緩んでいた。
「えっと、何が起こったんだ? あいつが消えたと思ったら与一の矢とは別の閃光がバイクに向かっていったり」
「んー。そこまでの説明はめんどいなー」
「じゃあ義経が説明しよう。――健美は気を雷の属性に変える事が出来る。ヒュームさん曰く雷は一撃必殺だけじゃなく爆発的な加速力を持っていて、さっき健美がやったのはその力を使った『
川神ではよくある、常識を覆したものだった。男性陣は開いた口が塞がらず(翔一は除く)、女性陣は唾を飲むほど彼女の存在を意識した。百代だけが笑って健美がいる正面を見ていた。
「……本当に、楽しみになってきたなぁ」
その目は闘氣が燃え、鋭いほどに輝いていた。
そうこうしている内に向こうから一子と荷物を回収した健美がこちらに戻ってくる。しかし辿り着く前に、健美が一定の距離で足を止めた。
「ん? どうしたんだ」
大和が呟き、健美と一緒にいる一子は『どうしたの?』と聞かんばかりな様子だった。
「あー、アレは警戒してるね。武神に」
『あ~』
弁慶が川神水を飲みながら呟き、皆が口を揃えて納得した。その際、百代は岳人を吹き飛ばした。
おまけ
「ピピ?」
「え、与一? あれ、いないぞ?」
「ああ、与一さんでしたら『組織に盗撮されちまった』と言って1人走っていきましたよ」
そんなオチだった。
以上、第四話でした。
今回は原作のシーンに準じて、そこに健美の実力を見せる結果となる形を目指して書きました。ぶっちゃけ与一が矢を放つと同時にコインを弾いて打つネタも考えたんですが、なんか違うなと思ってやめました。
さて、そろそろクローンたち歓迎会の話に入ります。そこで健美がどう立ち振る舞うか、楽しみにしてください。