真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~   作:Celtmyth

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六話投稿です。今回の話で燕が登場します。


前回のあらすじ
『九鬼の極東本部。そこで健美は紋白としばしの会話を行った後、ヒュームから忠告を受ける。それに何も答えずにいたがそれを与一が庇い、そして安心させたのだった』


第六話「ツバメとツグミ」

 

 

 

 

 今日、3-Fは朝のホームルームから騒がしかった。その理由を簡潔に伝えよう。

 

 今日、『こんな時期』と思えるこの日に転校生がやってきた。クローンではない一般人。

 

 その転校生は『美少女』と呼んでいいほどの少女だった。そんな彼女は、敬子程度であっても『武神』と呼ばれる川神百代と相対する事となった。

 

 その少女の名前は、松永燕。

 

 

 

 

 

 ホームルームの最中、隠す事のない喧騒の音が聞こえた事から皆揃ってそちらに目を向けていた。健美もその1人だった。

 

「ほぉ、さっそくか」

 

 ふとヒュームの呟きを拾った。昨日のこともあって健美は少し距離を取っている反面、関わりたくないとつい意識している状態なので必然と聞こえたのだ。

 なにやら意味深な呟きだったが今は距離を取っているので詮索せず、校庭の様子を眺めて窓に張り付いているクラスメイトと同じように健美も同じようにした。

 

「グッ!? 誰よプレミアムなアタシに乗ってるのは!?」

「ピ?」

「ってアンタか。乗るならあまり体重をかけるんじゃないわよ」

「ピ」

 

 ちょうど武蔵小杉の上だったが、特に強く怒られる事なかった。理由は同年代でもマスコットな扱いを受けているからである。

 小杉に気を遣ってあまり体重をかけない様にした健美は改めて校庭の、そこで行われていた戦いに目を向けた。一人は百代、もう一人は知らない人――燕――だった。

 

「ピィ……」

 

 そして健美は目の前の戦いに『スゴい』と呟いた。拳のみで戦う武神の百代に対し、燕はありとあらゆる武器と技を披露する。それはまさに力と技のぶつかり合いだった。

 戦いは見事。しかし健美はある事でこの光景を素直に賞賛する事はしなかった。

 

「健美、あの二人を見てどう思う?」

 

 そんな時、紋白が感想を求めてきた。しかし彼女は他の皆のように窓から外を覗くではなく、少し離れて窺うと言った感じだ。

 しかしそんな事で何かを探る気はなく、健美は自分の思うままの感想を答えた。

 

「たのしそう」

 

 そう言って指差したのは百代。

 

「うかがってる」

 

 そう言って指差したのは燕。

 

「……そうか。相変わらずお前は本質を感じ取るな」

 

 紋白は険しい表情で、しかし誇らしげに笑っていた。

 

 

 

 

 

 大和は今日のお昼をプールサイドで食べていた。理由は場所が空いている上に水気で涼しげだから。風が吹いていればもう少し涼しいのだが、残念なことに今日は無風だった。

 

「ピィィ……」

「ん、暑いのか。だったら風間の名を持つ俺が風を呼んでやる!! うぉおおおおおおお!! 俺の眷属の風よ! いざ吹けぇ!!」

「なんか与一の台詞っぽいぞ。それと吹いてこねぇし」

「ああ、時間差で吹くんだ。少し待とうな」

「ピッ!」

 

 大和が呆れるに対し、健美は納得してしばし吹くのを待つ事にした。しかし大和と翔一ならわかるが健美がいる光景は珍しかった。

 

「で、えっと、夜響ちゃん?」

「つぐみで、いい」

「じゃあ健美ちゃんで。会場の設置は今日の放課後から始める。とりあえずはその手伝いをお願い」

「ピ」

 

 これが健美のいる理由で、彼女は大和に歓迎会の手伝いを改めて申し出ていた。

 

「ありがとう。じゃあこれをあげるよ」

 

 大和があげたのは川神ラゾーナのロールケーキ。おやつにと持って来ていたものだ。

 

「ピィ♪」

 

 受け取った健美は髪をピコピコ動かしながら頬張る。微笑ましい光景だ。微笑ましい光景だが。

 

「……なぁ大和。こいつの髪ってホントどうやって動いてるんだろうな?」

「気にしちゃダメだと思うぞ」

「そうかなー。しかしこのロールケーキ美味いなー。よし買ってくるか!」

「今からか? さすがに昼休み中には戻って来れないぞ」

「俺はいま食いたいんだ!! じゃあな!!」

 

 そう言い残して翔一はプールサイドから走り去ってしまった。すると彼を追うかのように風が吹いた。

 

「本当に吹いたよ。末恐ろしい」

「ピィィ……」

 

 言が実現した事に大和は驚き、ようやく吹いた風に健美は気持ちよさそうにしていた

 

「少し昼寝でもするかな?」

「ピュイ?」

「あー、うん。言ってることはわからないけど好きにしていいよ」

「……ピピッ」

 

 理解したようで健美は敬礼をする。そして彼女は、横になった大和の頭の下に自分の膝を入れた。

 誰がどう見ても健美が大和に膝枕をしている光景だった。

 

「……えっと」

「ピィ?」

「いや、そんな『どうしたの?』って顔をされても」

 

 大和は困ったが『好きにしていいよ』といった手間、断るのは少し躊躇った。と言うより、膝の感触が心地よかった。

 

「まぁいっか。お願いしていいか?」

「ピ♪」

 

 陽気な返事だったので大和は了解の意志と受け取った。そしてそのまま陽気に呑まれ、眠りの中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 ペシッ。

 

 そんな感触と痛みで大和は目を覚ました。

 

「ん、なに……?」

「おはよー。また会ったね」

 

 目が覚めた大和は明らかに健美ではない、そしてよく知っている声を頭上から受け取った。

 

「納豆小町の松永燕先輩?」

「ごめいとー♪ 知ってるなんて嬉しさひとおし」

「今朝にあれだけ目立った宣伝をしていましたからね」

「んふふ、キミたちの名前は?」

「2-Fの直江大和です。こっちは1-Sの夜響健美です。よろしくお願いします」

「礼儀正しい子だね」

 

 そう言って燕は悪戯心を潜めた笑みを浮かべた。

 

「………」

「っと」

 

 すると膝枕をしていた健美が大和を起こし、彼の後ろに隠れた。

 

「おやおや。そっちの子には警戒されちゃったかな?」

「なんかすみません」

「気にしてないよ。ところで大和クン、年上に好かれたりしない?」

「大和クン……」

 

 『大和クン』と言うしみ入る響きに大和はつい動揺した。しかしそれは出来るだけ隠し、燕の質問に答えた。

 

「確かに年上ウケはいいかもしれません」

「でしょー。その上で聞きたいんだけど、年上に買われたい願望とかある?」

「!?」

 

 大胆な質問に大和はまた動揺した。しかし質問されたならどんな内容でも答えなくてはならない。そして大和はそれを口にしようとして。

 

 

 

 ビリッと、電気が発生する音が聞こえた。

 

 

 

「およ?」

 

 その声は燕の物であり、大和は何かと辺りを見渡して声は出さなかった。そして音の正体に気付く。

 先ほどから黙っていた健美から、科学実験のように体から電気を発生させていた。

 

「健美ちゃん、どうした?」

「…………」

 

 大和が声をかけるも健美は返事をしない。ただ燕を見ているだけだった。

 

「ん~。どうやらその子には少し嫌われちゃったかな?しょうがない、今回は出直すよ」

 

 対する燕は健美の視線から何かを感じ取り、踵を返して二人に背を向けた。

 

「松永先輩」

「燕でいいよ。燕先輩で」

 

 それを最後に燕はプールサイドから去ってしまった。その姿を見送った後、大和は頬を痛くない程度に引っ張られた。

 

「ふぁ?」

 

 引っ張られた状態で、大和は後ろに視線を向けて犯人を見る。言うまでもなく犯人は健美で、彼女は黙って大和の頬を引っ張っていた。

 

「ふぇ、ほ(えっ、と)……?」

「……あれ、きをつける」

「はえっへ、ふあえへいはいほほお(あれって、燕先輩の事)?」

「きを、つける」

 

 それから健美は午後の授業に間に合う時間まで大和の頬を引っ張って離さなかった。

 

 

 

 

 

「ふむ……」

 

 大和たちと別れた燕は校舎に入ろうとした所で、入ってはもう見えなくなるプールサイドに目を向けた。

 

「夜響健美、雷使い、鳥の声……。なるほど、こりゃあすごい事だわ」

 

 燕は初見で最も有力であろう健美の正体を予想して、そんな感想を抱いていた。

 




サブタイトル通り、二人の出会いの話でした。燕は所見で健美の正体に感づいています。その上で驚きました。健美の正体はそう思える存在です。

さて、次回は義経たちの歓迎会の話。そしてその後から健美√が本格的に始まります。どうか楽しみにしてください。

あと健美のヤキモチがちょっとかわいかった。
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