目の前の男は何も言わず、静かに笑みを浮かべこちらを見つめてくる。
この状況、外に吹っ飛ばされたあの槍男が襲い掛かってくるのではないかという考えさえ抱くことを忘れるほど目の前の相手に目を奪われた。
自分だけ時間が止まったよう。
先ほどまで体を占めていた恐怖は消え、今はただ、目の前の男だけが視界にある。
「Hey!Hey! 大丈夫かい?少年!」
ぺシペシペシと頬を軽く叩く音で体の時間が動いた。
そこから勢いよく体を後ろに後ずさるのには一秒もかからなかった。
「うわぁっっ!!」
「ん?あぁ良かった急に動かなくなるからちょっと不安になっちゃったよ!」
男が自分の起こした風で散らかってしまった周りの状況を見て少し申し訳なさそうに口を開く。
「いやぁ悪かった、散らかしてしまったみたいだね、いつもはこんなミスはしないのだが、見知らぬ土地に少し浮かれちゃったのかなぁHAHAHAHA!]
「へ・・・?」
俺はそんな間抜けな声を出している間に男は背を向けた。
向いた先は外への扉。その奥に、槍を持った男の姿がある。
「---------]
まさか、と思った瞬間。
ヒーローコスチュームを着た男は、躊躇うことなく土蔵の外へと身を躍らせる。
「なっ!!!」
体の痛みも忘れ、立ち上がって男の後を追った。
声が出なかった、言葉を失うというのはこういうことを言うのかとわからされた。
そして、何も考えられなくなるほど頭の中が真っ白になる。
「なんだ、これ・・・」
響く
月は雲に隠れ、庭には闇が広がっている。
その中で火花を散らす鋼と拳。
土蔵から飛び出した男に、槍の男は無言で槍を振るった。
男は槍の一撃を手で逸らし、さらに繰り出される槍を拳で弾き返し、徐々に槍の男は
後退を余儀なくされる。
信じられない。先ほど視認できなかった槍男の動きは、さらに勢いを増して男へと繰り出される。
それを、何も手にしていない、素手で確実に逸らし、間髪入れず拳を繰り出す。
「くっ------!」
小さく声をこぼし、槍男は勢いよく後退する。
その瞬間ヒーローコスチュームの男の足元が爆音とともに爆ぜた。
一瞬で槍男の懐に入ると鳩尾めがけ拳を振るう。
男は槍を横に構え、防ぎに入る。
「がッ-------!!!]
一瞬、槍に一層大きな光が灯る。
爆発するような音とともに槍の男の体は後ろへ吹き飛ぶ。
足を地ににつけていたのだろう、地面がえぐれ二本の線が浮かび上がる。
「はっ!こんな無茶苦茶なサーヴァントが呼び出されるとはな、名乗りな、テメェ一体どこの英雄だ!、そんな服見たことも聞いたこともねぇ、さらに拳で戦うときた。」
「自分の真明を明かすのはご法度なんじゃないのかい!」
言葉を交わしつつ徐々に激しくなる攻防。
絶え間ない、豪雨じみた拳の舞。
飛び散る火花は小さな花火を思わせる。
それを笑みを深めながら防ぎきる槍の男。
正直、殺された相手故良い感情は持たないが、感嘆せずにはいられない。
「はああああああっ!!!!」
ほんの微かな瞬間槍の男の体のバランスが崩れる、男は好機と言わんばかりにそれを見逃さずより深く踏み込み叩き下ろすように拳を振り下ろす。
「調子に乗るな、たわけっ------!!!」
ガコッ!と音がなり姿が消える。
否、消えるように真上に跳んだ、槍を思い切り地面にたたきつけることで体制が崩れたという不利的状況を無視して跳んだのだ。
「オラァッ!!!」
跳んだまま槍を振り下ろす。対して、男は、拳を振り下ろしたまま。
「-------------!」
隙をさらしたままの体に赤い槍が男の体を叩き潰そうと迫りくる。
一瞬ヒーローコスチュームの男の目が光るッと同時に赤い槍がぶつかり砂埃が舞い上がり。
「なにっ------------!?」
槍男の顔が驚愕の色に染まる。
砂埃の中から片腕で槍を受け止め拳を突き出す姿が現れた。
「ぐっ-----------」
弾き飛ばされた男と、弾き飛ばした男は互いに笑みを浮かべている。
何秒たったかわからない、もしかしたら何分間かもしれない間にらみ合いが続いた。
最初に口を開いたのは槍男だった。
「唐突で悪いが、お互い所見だしよ、ここらでわけって気はないか?」
槍を微かに下げながら言葉を紡ぐ。
「悪い話じゃないだろう? そら、あそこで惚けているあんたのマスターは使い物にならんし、俺のマスターとて姿をさらせねぇ大腑抜けときた。
ここはお互い、万全の状態になるまで勝負を持ち越したほうが好ましいんだが-------」
「ふむ………悪いが断る。ここで倒させてもらうぞ、ランサー君」
「そうかよ。ったく、こっちはもともと様子見が目的だったんだがな、サーヴァントが出たとなっちゃ長居する気はなかったんだが-------」
ぐらり、と。
槍男-----ランサーの姿勢が低くなる。
同時に巻き起こる魔力。
「むっ--------宝具か!」
男は拳を構え目の前の敵を見据える。
俺が口を出すまでもない。
敵がどれほど危険なのかなど、対峙している男がより感じ取っている。
「……じゃあな。その心臓、貰い受ける-----------!」
ランサーが地を蹴る。
よりも前に男が飛び出す。
「なっ---------?!!」
まるでコマ飛び、瞬間移動のようにランサーの前に現れ、拳を握りしめた。
「よくわからんが!君の宝具は何かがヤバい!ならば、打たせる前に!君をうつ!!」
ランサーが驚愕するほどの速さで移動した男の周りが魔力で歪む。
「くっ!!!-----
二度目の暴風、だが明らかに一度目よりも段違いに強い風を吹き飛ばされないように土蔵にしがみつくことで何とか耐える。
数十秒たってやっと収まり目を男のほうに向ける。
「ふぅ…彼は強いな……何発かくらってしまった………そして、時間切れだ…」
そんな言葉が聞こえ、同時に男の口から血が流れたように見えた。
オールマイトのクラスをどうしようかと考える今日この頃、感想をバンバンくれるとうれしいです。