プロローグ
ある日、彼は自分の部屋の自分のベッドで自分の体を起こす。
彼の名は
彼曰く、何処にでもいる健全な高校生である。
客観的に見ても、確かにクラスで目立ちもせず隠れもせず、気が付けば友達になっているような奴、といったところだ。
当然、そんな一般庶民が小説の主人公と共に死地を潜り抜ける姿など想像の候補にすら挙がらない。
実際彼自身もそんな事は知っていた…
とは一概に言い切れないのかも知れない。
彼は世間一般で言う「オタク」だ。
更に言うとその中でもかなり一般社会から離れた…良く言えば「熱狂的」なオタクであった。
それならば筋肉はどうかというと、世間の偏見を覆すとまでは行かないものの街を歩いている同年代には楽に勝てる程の体は持っていた。
学校には不登校…ということはなく、友達もいないわけではない。
成績も優秀だ。
それなら嘸かし生活も充実しているだろうと思われる彼だが、人との深い関わり合いを苦手とする彼は帰宅する頃にはその日のうちに言葉を交えた人間の事は記憶にすら無く、ただ一つの小説を読むだけであった。
そんな彼が…そんな彼だからこそ選ばれたのかも知れない。
永遠に繰り返し続ける運命に…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ただいまー」
「ただいまじゃなくておかえりでしょ。」
「ああ、そうか……ん?ちょっと待てよお母さんや。ただいまで合ってるだろ。」
「ああ、ごめんなさい!星夢の言うことだからどうせ間違ってるだろうと思って。」
「いや俺冗談は言うけどそんな日常レベルで使う言葉間違えたことなんてないよ!?」
「あれ冗談だったの?」
家に帰った途端から軽口を言い合う男女ーー親子はこれが平常運転だと見せびらかすように家の中へ入って行く。
「おっ!今日も『リゼロ』が更新されてる!」
嬉しそうに跳ねるのはこの家の一人息子、東雲 星夢である。
彼の言う『リゼロ』とは2016年にアニメ化と共に大ヒットを果たした小説「Re:ゼロから始める異世界生活」のことである。
先程のように出会い頭に肉親と軽口を言い合う性格も普段から鍛えている身体も、全てこの小説の影響による物と言っても過言ではない。
「うおお!この終わり方…続きがめちゃくちゃ気になる!
やっぱりリゼロは最高だ!もしこの小説に出会えてなかったら俺は…ん?」
彼が一人で熱弁を始めようとしたところで見慣れないものが視界に入る。
ーーーー小さい鏡だ。
お母さんか?と思いつつその鏡を手に取り、気付く。
しかし、その幸運とも不運とも言える事態に気付いたのは自分の部屋でも、その次に訪れたなにも感じない暗闇でもなく、更にその次に彼が召喚されたとある王宮…彼の住んでいた「国」では見たことがないような作り。
いや、所々に配置されている光る鉱石を見れば彼の住んでいた「世界」では存在しないような美しく優雅な城の中であった。
初投稿です!
投稿ペースは遅いと思いますが期待して待ってくれると嬉しいです。