「どうなってやがる!?」
螺旋の中から帰還したスバル達が眉をしかめる。
何故なら目の前に立っていたのはペテルギウスだったからだ。
「久しぶりデスネ!
元気そうで何よりなのデス!」
先程と全くやり取りを繰り返す男にスバルは驚きを隠しきれなかった。
これを絶望と呼ばずして何と呼ぶのだろうか。
ペテルギウスが何故か『死に戻り』を使うことが出来る。
まさかサテラ本人から貰ったのだろうか。
それなら彼の発言にも納得がいく。
「エミリアたん!今はストップ!」
「え?わ、分かったわ。」
前回、ペテルギウスに話しかけもせず殺したという事はそれだけ恐怖を感じたのだろう。
一度牽制をしておかないと殺しかねない。
「おお!そこのアナタは『器』じゃありませんか!
わざわざ私の元に現れてくれるとは…実に勤勉なのデス!」
「何を…言ってるの?」
エミリアが戸惑う。
警戒したスバルがエミリアを庇おうと前に出た時だった。
激しい轟音と共に白い塊が天井を突き破って落ちてくる。
「スバル。僕は契約に従って今から世界を滅ぼす。」
「パック?何を言って…」
今度は突如吹いて来た豪風にスバルが吹き飛ばされる。
そしてペテルギウスが開けた風穴から眠っている青髪の少女を背負うラムが現れる。
「ーーーレムって、誰?」
かつての悲劇がフラッシュバックする。
するとラムの体が突如半分に分かれる。
彼女を上下に分けたのは黒髪の女、エルザだ。
「いつか迎えに行くわ。それまで腸を可愛がっておいてねーーー」
スバルの記憶が回収されていく。
そんな中エルザに立ち向かったのはスバルと同じ黒髪の男、セイムだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
怖い。とにかく怖い。
それがエルザ=グランヒルテに対してセイムが抱いた感情だった。
間近で見ると迫力が違う。
それでも戦いを挑んだのは理由があった。
それは、死なない確信があったからだ。
今までの光景は全てスバルが体験した光景だ。
『リゼロ』を知る彼だからこそ気付いた。
これはきっと夢か何かなのだろう。
だから死ぬことはない。
「ぐふっ!?」
そんな推測が音を立てて崩れ落ちた。
痛い。腹を裂かれる痛み。
これを異世界に来た途端に喰らったんじゃそりゃ挫折もしたくなるだろう。
そんな冷静な思考は数秒で消える。
痛い。死にたくない。痛い。死にたくない。
交互を繰り返す感情の中、セイムはまた螺旋の中に吸い込まれた。
しかし、それはいつもと違う感覚のものだ。
そして、気が付けばセイムは無傷でエルザの前に立っていた。
「戻ってきた…?」
いや、違う。エルザも目の前で「何故生きているの?」と首を傾げている。
これはどういう事なのか。
そんな疑問はエルザの一振りで打ち消された。
ただ、セイムは落ちる前、何故かスバルに微笑みかけていた。
そして螺旋に吸い込まれ、また扉の前へと戻った。
やけにすっきりとした気持ちで。
第八話の文字数が少なかったので連続投稿させたもらいました。