スバルはまた会議の場へと舞い戻った。
先程まで荒れていた談話室が嘘のように綺麗だ。
「もう5回目だぞ…」
進める気がしない。
どんなルートを進んでも絶望しか待っていない。
挙げ句の果てには死んだ人間まで出て来る始末だ。
死に戻りがあってもここまで難解とは…
そこまで考え、スバルは気付いた。
違和感が無い。むしろ違和感がないという状態が違和感であった。
やけにさっぱりしている。
パズルのピースが完全に嵌ったような気持ちだ。
そしてその気持ちの由来はすぐに教えられた。
「スバルさん!」
相変わらずいつもと変わらずワンパターンな登場の仕方だ。
セイムと目が合う。
その瞬間、スバルの頭に様々な情報が流れ込んで来た。
セイムもそれは同じようで焦点が合っていない。
そして周りの4人は呆気に取られていた。
理解。スバルは理解した。
見たこともない『その存在』を。
そしてそれと親しい関係にある者を。
「お前…まさか…」
「俺が…大罪司教…?」
その言葉を聞いたヴィルヘルムが即座に剣を構える。
「ま、待ってくれ!ヴィルヘルムさん!そいつはーーー」
言い終わる前にヴィルヘルムの剣がセイムを裂いた。
しかし、その直後セイムは何事も無かったかの様に立っていた。
決してレグルスのように効いていない訳ではない。
セイムは確かに一度斬られたのだ。
しかし、今此処に立っている。
そして代わりに身体が二つに分かれたのはヴィルヘルムの方だった。
「な、何が…!?」
「これが…おれの…能力…?」
セイム自身もまだ能力を把握していなかった。
それを目の前で見せつけられたスバル達は更に不可解だ。
「「…それより、ヴィルヘルムさん!」」
駆け寄ったのはスバルだけではない。
彼の命を奪ったセイム自身も取り返しのつかない事をしたとヴィルヘルムに近付く。
そして
「…せめて…最後の…」
ヴィルヘルムの一突きがセイムの喉を貫通する。
「ぐふっ!?」
またもやヴィルヘルムの喉から血が吹き出した。
セイムの喉に刺さっていた筈の剣はいつの間にかヴィルヘルムの喉へと移動している。
そして、老人は完全に命を絶った。
「う、嘘だろ…?」
嘆いたのはセイムだ。
しかし、そんな彼の腹を撃ち抜いたのはエミリアだった。
その時、セイムには能力を使えるという感覚があった。
しかし、使わなかったのはエミリアへの慈悲だけではない。
恐らく次に螺旋の中で、何かが起きる。
そんな気がしたからだ。
そして、その予感は的中した。
「…ここは?」
最初に口を開いたのはスバルだった。
そして、その横にいたのはセイム。
見慣れた筈のその空間はいつもと明らかに違っていた。
相変わらず周りは黒い靄で見えないが、確かに壁がある。
そして、道もあった。
「スバルさん!?何故二人で…?しかも歩ける…」
「分からない。だが、どうやら進むしかねえようだな。
あ、あと…その…敬語は無しで頼む。」
「?分かった。じゃあ喋り方でどっちがどっちか判断出来なくなるかもしれないからこの空間の中では鉤括弧の前に名前の頭文字つけよう。」
ス「あれ!?セイム君!?登場人物がそんなこと言っちゃ…ってもう付いてるし!」
その空間には似合わない軽快なやり取りが交わされる。
そのやり取りはいつまでも消えない。
そして気付いた。最初のやり取りの後からは、道の奥の方から声が聞こえるのだ。
二人の女の声。
スバル達はスバルを先頭にゆっくりと歩き出した。
「声が近くなって来た…もうすぐだ。」
そして、笑い声はピタリと止んだ。
スバル達が警戒して足を止めた。
しかし、足音は止まらない。
近付いてくる。そしてーーー
「待ってたよ。」
「私の方は始めましてですかね?」
そこに立っていたのは、声が無ければ男か女かも分からないような黒い霧に包まれた人物と、白金の髪を持つ美少女だった。