ス「…お前らは…?」
人一人がギリギリ通れる狭さの黒い空間の中でスバルが問う。
「その前に場所を変えましょうか。」
後ろで何が起きたのかと騒ぐセイムを見兼ねた白金の髪の女が提案する。
そして彼女が指を鳴らし、次に立っていたのは広い丘の上にある白いテーブルと椅子の前だった。
セ「ここは、まさか!」
ス「知ってるのか?」
知っているも何も、と言いかけてセイムはやめた。
この世界のスバルはまだ『聖域』にも行っていないし『試練』も受けていない。
故にこの場所を知らないのだ。
「さあ、座って座って。
お茶も出してありますからご自由に。」
白金の少女が促す。
二人は言われるがままに椅子へと座った。
そして、スバルが遠慮なく、と茶を飲もうとするのをセイムが止める。
セ「えっと…スバル…それは飲まない方がいいと思うんだが…」
ス「え?なんで?ていうかもう飲んじゃったんだけど…」
セ「その、毒とか入ってる…かも?」
正確には毒ではなく体液なのだが。
それを聞いたスバルが吐き出す。
ス「ちょ!そういうことは先に言えよ!やばい!吐けねえ!死ぬ!あぁ…」
「心配しなくてもただのお茶ですよ?」
間抜けな声を出すスバルに少女がフォローを入れ、スバルがセイムを肘で小突く。
「さて、落ち着いた所ですし、話を始めてもいいですか?」
もちろん、と言いたげに二人は首を縦に振る。
「自分から話すと言っておいてなんですが…話す事が多すぎてどこから話せばいいか分かりませんね…何か質問してくれると有難いのですが。」
「はい!はい!」
スバルが小学生のように手を挙げる。」
「なんでいきなりあんな所に魔女教の奴らが襲いに来たんだ?匂いがしたとか言ってたけど別に変な事は…いや、待て。セイムが来た途端に?てかそもそもなんで1回目の時、死んだんだ?」
「質問が多いですね…匂い、確かにそれはこの子からの物でしょうね。只、奴らの言う『魔女』の匂いではありませんよ。恐らく、魔女教でも遠くからじゃどの魔女の匂いかまでは分からないのかもしれません。それと1回目のやつはただ単に『嫉妬の魔女』のペナルティです。
あとあの時二人とも異常にないたり友情深めたりしてましたけどあれ全部あの包帯女の能力ですよ?」
他の魔女…一体どの魔女だろうか。どちらにしろどの魔女も会ったことも無いから確かめようが無いのだが。
それよりも気になったのは後半だ。
ペナルティ?確か、セイムが自分に死に戻りの事を喋り、安全だと判断した上で自分がセイムに死に戻りを打ち明けた筈だが。
そして、彼女の口調。
口調と言っても時々出る彼女の荒い言葉遣いの事を言っている訳ではない。
まるでその場にいたような喋り方。
何処かで見ていたのか?
そもそも彼女は何者なのだろうか。
二つの疑問を解決すれば四つの疑問が出て来た。
「そもそも…お前誰だ?」
発言したのはセイムだ。
そしてそれに少女が答える。
「それを話すと少し長くなりますが。」
「構わない。スバルも大丈夫だよな?」
「え?あ、ああ。」
考え事をしていたスバルの意識が呼び戻される。
こうして白金の髪を持つ少女のそこまで長くない話は始まった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「まず、この人が誰かは知っていますよね?」
「…えっと、あれですか?人を殺しすぎて怨霊に憑かれたアサシンみたいな…」
「………そこからですか。
この人は正真正銘、『サテラ』です。」
「何!?じゃあこいつが俺を長年苦しめて来たっていう嫉妬の…」
「いいえ。この人は嫉妬の魔女ではありません。サテラです。」
スバルはイマイチ理解出来ない。
嫉妬の魔女はサテラではないのか?
セイムは理解出来るが詳細は知らない。
「そこは説明しにくいですし出来ませんのでやめておきます。
私はこの人と友達なのです。
友達の願いは叶えてあげるのが普通でしょ?
まあサテラちゃんはそんな事望んで無かったみたいで怒られちゃったけど。
とにかく、それで色々頑張ったんですよ。
でも失敗しちゃって…」
「えっと…つまりどういうことだ?
お前がサテラの願いを勝手に叶えようとして失敗?
…うん、なんかオットー以外が相手だと嘲笑する気にならないわ。ドンマイ。」
オットーの泣く姿が見えた気がしたが今は関係ない。
「それで?」
「…え?」
「…え?」
「話は終わりですよ?」
スバルとセイムがキョトンとする。
「いや、終わったも何も、俺はお前の失敗談聞かされただけなんだけど。」
「ええ、その失敗の結果がこれです。
じゃあ私が勝手に解釈して叶えようとした願いを教えてあげましょうか?
『スバル君の側にいたい』です。
しかし、サテラちゃんがその『器』に入れないとは。
よく考えたら波長が合わないと入れないんですね。
どうやら、あなた達には私の能力は反映されないみたいですし…」
「……いや、ごめん。
マジで分からん物は分からないから一から説明してくれ。」
「…仕方ないですね。」
こうして、少女のそこまで長くない話が再び始まった。