5月中旬
ゴールデンウィーク明け(といっても3連休だけだったが)の今日、ほとんどの生徒が憂鬱そうな表情で登校する中、僕だけはとても楽しそうに登校していた。なぜならば・・・
「おはよう。有村くん。」
と、背後から声が聞こえてくる。
そう、もう1人ではないからだ!!
わざわざ挨拶をしてくれた人の方を見る。艶のあるセミロングの黒い髪。少しだけ鋭い目付き。堀の深い顔立ち。細めだがメリハリのあるしっかりとした身体。それらは非常にマッチしていて、まるで芸術品のような美しさを造り上げている。
そんな彼女の名前は、"空条徐奈"
僕が入学式の日にぶつかった人であり、僕の高校初めて(唯一)の友達だ。あの日ぶつかって以来、なんとなく話すようになって、気が付いたら仲良くなっていた。怪我の功名というやつだ。
「うん。おはよう、ジョジョ。」
そう僕も挨拶を返す。
彼女の名前に条徐《じょうじょう》と"じょう" が2回続く部分があることから、僕は彼女のことを "ジョジョ" と呼んでいる。
ジョジョは高校に入学してわずか1ヶ月で学校の人気者になってしまった。だって入試は一位だし、運動神経抜群だし、優しいし、美人だし、人気がでないほうがおかしい。しかし、ジョジョは誰にでも優しい一方で、あまり人と仲良くなろうとはしない。誰にでも敬語だし、広く浅くの人間関係を築いてる。そんなジョジョと友達で、タメ口で話せるのは、僕のささやかな自慢だ。朝から友達と挨拶を交わせるなんて、今日もいい1日になりそうだ。
--------------1日の全て授業が終わり、部活に入っていない(怖くて入れなかった)ので、家に帰ろうかとしていると、
「有村くん。もし暇だったら、お茶しない?」
と学校の人気者から、誘われてしまった。
「もちろん暇だよ!!」
元気な声ですぐさまOKした。
30分後、学校から少し離れた喫茶店に僕たちは来ていた。古風な感じの外観ではあるが、どこにでもありそうな喫茶店である。
中に入って席についてすぐに彼女はこう切り出した。
「例の噂知ってる?」
意外だった。例の噂とは現在、学校で流行っている廃屋の噂のことだろう。優等生である彼女がそんなものに興味があるとは。だが、彼女も優等生とはいえ高校一年生、変わった噂に興味があっても不思議ではないな。
「うん。少しだけなら。」
この町の外れにとてもボロい廃屋がある。廃屋といっても4階建てなので、ちょっとしたビルのようだ。いつから在るのかは不明だか、ここいらでは有名で、よく子供たちが肝試しに行っている(僕は、怖くて行けなかった)。
そんなお化け屋敷、もとい廃屋に噂が立った。何でも最近、その廃屋に入って行った女性が行方不明になっていると言うのだ。被害人数は3人。年齢はバラバラらしい。また、廃屋に調査に向かった警察も何人か居なくなったらしく、大がかりな調査が行われたが廃屋からは何も見つからなかった、という噂だ。今も被害人数は増え続けているらしい。
しかし、そんなニュースはテレビでやってないし、本当かどうかはわからない。そんな事件があったならもっと大事になっているはずだし。そう、ジョジョに伝えると、
「そう。ありがとう。」
と、素っ気ない返事をして、なにやら考え込んでしまった。
この時の、僕は学校一の人気者である彼女と放課後に遊んでいるという状況に浮かれていたのかもしれない。
彼女が噂の事が気になるのなら、僕が直接廃屋に行って調べてこよう。いつもの僕らしくなく、ほんの少し勇気を出して決意したのだった。
ジョジョの容姿は想像にお任せします。