とりあえず思い付いたから書いたんですが、
小説って難しいですね。
深夜0時
警察に見つかったら確実に補導されてしまうこの時間に、僕は例の廃屋の前に立っていた。
何やら噂を気にしていたジョジョのために、噂の真偽を確かめて教えて上げようと思い、怖いのを必死に我慢してここまで来たのだ。本心では既に疲れたので帰りたいのだが、ジョジョの喜ぶ顔を見るために、勇気を振り絞って中へ入っていく・・・・。
タッタッタッタッ・・・・・・・
怖いので少し小走りな僕の足音が響くほどに中は静かだった。真っ暗だが、ここに来るまでに目が慣れていたので中の様子が少し見える。鉄筋コンクリートの廃屋は、所々がひび割れていてすぐにでも壊れそうなほどにボロい。なんか妙な匂いがするし、壁が崩れている所もある。
一体いつから在るのだろう。そんな事を考えて恐怖を紛らわしながら、無駄に広い廊下を小走りで進んでいく。
ガタンッ
時間にしては1分ちょっとだったと思う。僕には恐怖で数十分に感じるほど進んだところで、何やら物音がした。
「ピギャッ!!」
と、情けない声を上げて立ち止まる。そこはちょうど何かの部屋の扉の前だった。音はどうやらこの部屋からしたようだ。
正直に言うとすごく怖い。今すぐ帰りたいのだが、僕は変な使命感からその扉を開けてしまった。
ガラガラ
と立て付けの悪い扉を開ける。暗闇の中、何かが動いた気がした。恐る恐る足を動かし、ゆっくりと、慎重に進んでいく。所々に、瓦礫の山があり、歩きづらいし、部屋全体が見えない。それでも何とか気配がする方へと進んでいると、ついに気配と音の正体を発見した。
それは、若い女性だった。それも下着姿の。彼女は身体を隠そうともせず、地面に座った状態でこちらを見ていた。
「ヒッ!」
悲鳴を上げなかった僕を誉めてもらいたい。よく見れば彼女は今にも泣き出しそうな顔をしていた。いや、既に泣いているようだ。とりあえず事情を聞こう。もし、噂が本当で彼女が被害者ならば、今すぐに助けなければならない。
「あの、こ、ここで、な、何をし、しているのですか?」
声が震えていることに関しては許してほしい。
彼女は答えず、じっと、こちらを見たままだ。お互いに見つめ合うこと数十秒。彼女はやっと口を開いた。
「た、助けに来たのでは、な、ないのですか?」
やっぱり、被害者のようだ。早く助けないと。しかし、助けるといっても具体的にどうしよう。近くにまだ犯人がいるかもしれないし、むやみに動くのは危険だろう。ならば、警察を呼んだほうがいい。とりあえず、寒そうにしている彼女に、上着を貸して上げようと(本当は目のやり場に困ったていたから)、彼女の方へ近づこうとすると、
「来ちゃダメッ!!!」
突然、彼女がそう叫んだ。来ちゃダメとはどういうことだろう。
「来ちゃダメ。あなたまで操られてしまうわ。と、とりあえず、誰かを、よ、呼んできて!」
操れらる?・・・・・・・・・彼女はかなり混乱しているようだ。落ち着かせて上げようと更に近づく。しかし、なぜ彼女は下着姿なのにも関わらず隠そうとしないのだろう。座った状態で、手は後ろに組んでいる。目のやり場に困るのだが、露出癖でもあるのだろうか。
と、そんなことを考えながらふと、彼女の足の甲を見ると、なにやら模様がある。Uターンの標識みたいな模様だ。何の模様だろうと、そんな呑気なことを考えている時だった。僕が、手が届く距離まで近づき、座り込んでいる彼女に上着をかけるためにしゃがんだ瞬間、
ガバッ!!!
今まで動かなかった彼女が、後ろで組んでいた手を振り上げた。
何かを持っている!ヤバイ!
そう直感的に思った僕は、咄嗟に両手で顔を守った。
ザシュッ!
手が降り下ろされる。彼女が持っていたのはカミソリの刃だったようだ。顔を守っていた両手のうち、右手を切りつけられてしまった。その反動で背中から倒れ込んでしまう。
「痛っ!な、何をするんですかっっ!!」
痛みと恐怖から、大声で叫ぶ。この人、ヤバイ人だった。逃げなきゃ。そう思い立ち上がろうとして、異変に気づく。
右手の感覚がない!!!!
馬鹿な!そんなにひどい怪我じゃないはず!!倒れたまま軽くパニックになっている僕に向かって、切りつけた犯人である彼女が震えながら口を開いた。
「あぁ!・・・・・・ごめんなさい・・ごめんなさい。だから来ちゃダメだと言ったのに!」
泣きながらそう言う。まさか・・・本当に操られている!?いや、そんなことがあるわけが・・・・
「あなたを攻撃したのは私の意志じゃないんですっ!信じて下さい。もう、どうしようもないんです!早く逃げてください!」
震えながら僕にそう言ってくる彼女は嘘をついているように見えなかった。ふと、彼女の手の甲を見ると、足の甲にあったのと同じ模様がある。もしかして・・・・・
自分の右手を見ると、さっきまではなかった彼女にあるのと同じ模様があった。
「これは!!!」
「あなたの右手はもう、操られてしまった!!でもまだ間に合う!4ヶ所よ!両手両足の4ヶ所に傷をつけられない限り大丈夫!ここには怪我をさせるための針や刃物がたくさん仕掛けられているの!ここにいたら危ないわ!」
何がなんだかわからない!どうすればいいんだよ!パニックになっている僕はそこから動けない。
「何やってるんですか!早く逃げて!」
彼女は、また刃物を持った手を振り上げている。とりあえず逃げないと!何とか動こうとするのだか、
「っ!!身体が動かない!」
今度は、金縛りにあったように全身が動かない。
「そんな・・・・見つかってしまったのね・・・・もう逃げられないわ!もう手遅れよ!」
ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!何とか動け!必死に動こうとするが、
「もう、抑えられない!」
またしても、手が降り下ろされる。
ザシュッ!
必死に動こうとしていたためか、なんとか右に跳ぶことができた。危なかった。しかし、左足から痛みを感じる。まさか!そう思い左足を見ると、大量の針が刺さっていた。
「ギャァァァァァ!!」
みっともなく、叫んでしまった。そんな激痛の後、左足の感覚がなくなった。
「ここは危ないって言ったでょ!左足だけで済んだのはラッキーなのよ!でも、あなたはもう助からないわ。すいません・・・・本当にすいませんっ!」
泣きながらそう謝ってくる彼女を見ていると、このまま終わるわけにはいかない!と、思えてきた。
だが、この状況で一体何をすれば!身体が動かないからどうしようもないし・・・・・・・クソッ!何かないのか!!
「有村くん、そこにいるの?」
と、この場には相応しくない呑気な声が聞こえてきた。この声は、ジョジョか!?彼女も噂を確かめに来たのか!?だが、ヤバイ!恐らく、僕の叫び声が聞こえてきたのだろう。彼女はまだ間に合う!逃げるように言わないと!
「有村くん?」
彼女は意外と近くにいたようだ。扉から顔を覗かせている。
「どうしたの?さっき、すごい叫び声が聞こえたけど・・・・・幽霊でもいたの?」
普段なら彼女に会うことは大歓迎だが、今はマズイ。
「ジョジョ!!早く逃げて!早く!」
待てよ、やけに静かだな・・・・・・。そういえば、僕を切りつけた人がいない!マズイぞ!もう1つ扉があったのか!部屋の端に廊下に出るための扉がもうひとつあったのか!
「えっ!?逃げてって、どういうこと?」
しまった。もう手遅れだ。
僕を切りつけた人はいつのまにかジョジョの後ろに立っていた。そして、
ドンッ
ジョジョは彼女に押されて部屋の中に入ってしまった。押した張本人は扉のところで立ったままだ。
「っ!これは一体・・・」
倒れはしなかったものの、ジョジョも混乱しているようだ。無理もない。僕もパニックなのだから。それでもさすがはジョジョだろう。僕と、ジョジョを押した人物を交互に見て、僕の怪我が見えたのか、僕の方へと走って来てくれた。自分を押した彼女よりも僕の方が気になるようだ。
「有村くん!大丈夫!?」
自分のことよりも僕のことを心配されて僕は舞い上がってしまった。
ドンッ
そのせいで、僕の右手が操られていることを忘れてしまっていた。
「うわっ!」
ジョジョを壁際まで突飛ばしてしまった。幸い怪我はないようだが・・・。
ガラガラ
僕を切りつけた人が扉を閉めながらまた、部屋に入ってしまった。もう、僕はどうすることもできない。ジョジョは壁際で追い込まれてしまった!だが、ジョジョだけは守らないと!必死に自分の身体を抑える。
「ジョジョ!意味がわからないと思うけど、とにかく今は逃げて!手遅れになる前にっ!」
かつてないほどの大声で叫ぶ僕に向かって彼女は・・・・・・・
全く焦った様子もなく、唇に指を当てて [静かに] というジェスチャーをしていた。その姿が、とても色っぽくて、つい、見惚れてしまった僕は悪くないはずだ。そして、
「ソフト&ウェット」
彼女がそう呟いた瞬間、空気が変わった気がした。
次回から、やっと主人公の視点に変わります。