歩くこと十数分後……
俺たち3人は、大きな時計塔の前にいた。
「地図によれば、ここを指しているんだけど……」
最後に風見鶏に来たのは、数年前になるので、俺の記憶は当てにならない。そのため、地図を見ながら、やってきたのだが……
「こんなところに、本当に学校があるのか?」
「でも、ここが指定の場所だし……」
姫乃ちゃんが上を見上げる。
確かここは……
ウエストミンスター宮殿
そう呼ばれる建物で、英国議会が国会議事堂として使用しているものだ。
「確かここだったはず……」
俺はポリポリ頭をかきながら言う。
「ここだったはず……って覚えてないんですか?」
「…………」
だって……最後に来たのいつか覚えていないぐらいの時だもん。
「兄さん。タツオさんが困っているよ。まぁ、とりあえず考えてても仕方ないよ。中に入ろう」
「わかった」
「あははは……面目ない」
俺たち3人はとりあえず中に入ることにした。
「何か用かな?」
中に入った途端、当然のことながら、職員らしき人物に呼び止められた。力士のような体格の、国会議事堂には似つかわしくない人物だった。
この体格の男性……どこかで昔に会ったような
「ああ、こんにちは。はじめまして。私は日本から来た葛木という者です」
「……日本から?」
職員らしき人物が、あからさまに眉をひそめる。
「ビッグ・ベンじゃないか?」
俺は何とか思いだして、男性の名前を呼ぶ。
「もしかして……タツオさん?お久しぶりです。何年ぶりでしょうか…ああ、懐かしい」
ベンは何度も「あぁ…懐かしい」と言っている。
だが、本当にベンと会うのは懐かしい限りだ。最後にロンドンを旅立ったあの日。ベンは急用で持ち場にはいなかった。
「ですが、タツオさんがどうしてここに?あと、この日本人の方たちは?」
「あ、わたしたち、学校に用があってきたんです。えっと、ほら、これ。案内状…」
姫乃ちゃんが荷物の中から、封をしてある紙を取り出した。
「ああ、そうか!」
途端に満面の笑みのベン。
「君たちは風見鶏の新入生だね。でも、タツオさんは…」
「いや、俺も風見鶏の新入生だよ」
「またまた、あの有名なタツオさんが風見鶏の新入生??」
ベンは信じてないようだ。というか、ロンドンを旅立って数年となるのに、まだ俺は有名なのか。どのくらい、有名なのかはわからないが…
「ほらっこれ。案内状」
俺は荷物の中から、封をしてある紙を取り出した。
「えっ…マジですか?タツオさんって、確か、カテ…」
俺は慌ててベンの口を塞ぐ。清隆と姫乃ちゃんはじーと俺たちのやり取りを見ていたようだ。清隆と姫乃ちゃんになるべく、カテゴリー5ということは知られたくはない。
「おっと…失礼。自己紹介が遅れたね。私の名前はベン。皆は親しみをこめてビッグ・ベンと呼んでいる。以後、よろしくな」
「よろしく」
「よ、よろしくです」
「うむ、言い返事だ」
おじさんは上機嫌そうに頷くと、背後を振り返り、通路の先を指差した。
「ほれ、あっちに廊下があるだろう?風見鶏に用がある者はあの廊下を進みなさい」
「あの『関係者以外立ち入り禁止』って書いてあるとこですか?」
姫乃ちゃんが先の書いてある看板を見ながら言う。
「そーゆーこと。風見鶏の関係者だけが入ることが許されてるってわけ」
「じゃあ、行くわ。ベン」
「わかりました。失礼します」
「ありがとうございました、ベンさん」
「頑張りなよ~、おじさん応援してるからね~」
俺たちは、ベンに軽く会釈をすると、示された通路へ向かった。
「うわぁ…♪」
通路を抜けた俺たちは感嘆の声をあげた。気がつくと俺たちは、なかなかお目にかかることができないほどの高さのエスカレーターに乗って、地下に降りていたのだ。
エスカレーターから見る風見鶏の景色は何度見てもいい。
「話には聞いていたけど、すごいな…」
「あ、兄さん。あれ、見て見て」
姫乃ちゃんが下を指さす。その先には地底湖にぽっかりと浮かぶ島々があり、俺たちが目指している目的地と思しき建物が目視できた。
「あれは桜か?」
俺は葛木妹、兄の会話を聞きながらも、風見鶏の景色を見ていた。
俺がこの地でやるべきことを思い出しながら…
エスカレーターを降りた場所から、学校の入口までは、ほぼ一本道だった。
「…………」
校舎に近づくにつれ、先ほどまでハシャいでいた姫乃ちゃんの表情が強張っていく。
多分、緊張しているのだろう。
「緊張することないんだぞ」
清隆も俺と同じことを思っていたようだ。
「き、緊張なんて……してません」
そう言いながら姫乃ちゃんは清隆の手を掴んでいる。
「……くす」
清隆に笑みがこぼれる。
「ちょ、兄さんってば、タツオさんもいるのに、何笑ってるの?」
「ああ、いや、何でもない。何でもないよ」
「そういう笑い声の時の兄さんは、絶対、私のことバカにしてるんだよなぁ」
あぁ…これが兄と妹。姫乃ちゃんと清隆の関係。
見ているこっちも笑ってしまいそうだった。
そんなことを話している間に、校舎の前までたどり着くことができた。
「へ~、立派な建物だね……」
姫乃ちゃんはマジマジと校舎を見つめている。
「さて、と……まずはどこに行けばいいのかな?」
「とりあえず、エリザ……学園長に挨拶しにいった方がいいかな」
そんな話をしていると
「くぴ、くぴぃ~~!!」
小さくて、角が生えている妙な生き物が近づいてきた。
あっ…これが噂の鹿のような動物。名前はエトだったはず。
「わぁ、かわいい」
「くぴ!」
「エト?エトー?どこにいったの?」
うん?この声は……
ここら辺の場面は長々と説明の文を入れていますが、後から楽になると思います。