清隆と姫乃ちゃんに別れを告げて、学園長室に残った俺。
「改めてお久しぶりです。エリザベスさん。元気にしていましたか?」
「はい。タツオさんが突然日本に行ってしまって、私心配してたんですよ。何らかの事情があるとはいえ、挨拶だけでもして頂けないと」
「あはは……すいません」
俺は苦笑いしながら、謝る。
ロンドンを旅立つあの日、俺はエリザベスさんに挨拶をするのを忘れていた。忘れていたため、手紙を送ったのだが、やっぱり手紙だけで別れを告げたのは、ダメだったらしい。
「それで私の娘の……葵ちゃんは元気にしていますか?」
俺はエリザベスさんに一番聞きたかったことを聞いた。あの日、突然俺が家を出て行った、その後を知りたかった。
「葵さんですね。元気にしていますよ。毎日どこかで働いていて、勤労少女になってしまいましたが……くす」
エリザベスさんはそう言って、微笑んでいる。
元気そうならなりよりだ。
「それなら、良かった。すいません。葵ちゃんの面倒を見てもらって……」
俺はエリザベスさんに手紙を送った際に、葵ちゃんの面倒も見てほしいと無茶な頼みをしていた。
「タツオさんはあの時にはもう、ロンドンにはいなかったのですから、私に拒否権すらなくて、とても困りました。その分今日からずっと働いていてもらいますからね」
「かか勘弁してください……」
「冗談ですよ。時々私の頼み事を聞いてくださいね。それよりもタツオさんは何故風見鶏へいらっしゃったんですか?カテゴリー5の実力があれば、風見鶏へ入学する意味なんて……」
「そんなことを言ったら、孤高のカトレアも同じですよ」
「あら、そうですね」
エリートさんが入れた紅茶を飲みながら、エリザベスさんといろんな話をしたのだった。
エリザベスさんとの話を終わり、俺は学園長室を出る。
ついつい長話をしてしまった……
俺は辺りをキョロキョロ見る。
さて、これからどうしよっか……
考えても何もやることがないので、とりあえず寮の部屋に行くことにした。俺は外に出て、男子寮を目指す。すると
男子寮の入口で清隆と………
葵ちゃんがいた。あの最後に見た小さな姿はなく、立派に成長した葵ちゃんだった。
とりあえず、声をかけてみるか
「よっ清隆」
「あぁ……タツオさん」
「あ、ありがとうございました」
葵ちゃんは、すごく申し訳なさそうにお辞儀をした。
確かこのシーンはガス灯の手伝いをしたシーンだったけ?
「いやいや、俺は大したことしてないし」
「でも、お仕事、手伝ってくれたし……いい人なんですね。」
「ところで君、名前は?」
「わたしですか?わたしの名前は陽ノ本葵と申します。ってわわわ一人増えてる?」
葵ちゃんは俺を見て、驚いている。
そんなに驚かさなくても……
「陽ノ本さん、ね。こちらの方はタツオさん」
清隆に紹介されて、とりあえず俺は頭を下げる。娘に頭を下げるのはあれだと思うが、葵ちゃんの首にぶら下げている向日葵の首飾りを見る限り、記憶消去の魔法はかかっているくれてるみたいだ。もし、首飾りをしてなかったら、俺のことはかすかに覚えていたかもしれない。
「あの……お二人共、日本の方、ですよね?」
「ああ、自己紹介がまだだったね。俺は葛木清隆。明日からこの王立ロンドン魔法学園の新入生ってことにな……」
「やっぱり日本人だったんですね!うわ~、嬉しい」
葵ちゃんは清隆の言葉を終えるのを待たずに清隆の手を握った。葵ちゃんの笑顔はまるで太陽のように眩しかった。
それから、葵ちゃんが清隆にいきなり「お兄ちゃんになってほしい」という言葉から始まり、俺はその清隆と葵ちゃんのやり取りを見ていた。
エリザベスさんの言う通り、元気いっぱいそうで、なりよりだ。
清隆と葵ちゃんが「お兄ちゃん」のことを話していると
「へ~~~、兄さんはそういう妹が欲しかったんですねぇ………」
こ…この棒読み感がある声は
「ひ、姫乃……」
清隆と一緒に振り返ると、鬼の形相の姫乃ちゃんが立っていた。
「着いて早々、早速、ナンパですか?」
な、ナンパ……
「そういうわけじゃないって」
清隆は必死に言っていっている。
「どーだか……」
「???」
葵ちゃんは不思議そうな瞳で清隆を見つめていた。
「あ、えーと、葵ちゃん、こいつは葛木姫乃。日本から一緒にやって来た、俺の妹だ」
「あ、妹さんだったんですね」
「どうも、葛木清隆のいもーとの姫乃です、以後、よろしく」
姫乃ちゃんは妹の部分を強調して言った。姫乃ちゃんは機嫌が悪いみたいだ。
それよりも、俺はここで道草している場合ではなかった。いや道草してもいいんだけど……
「あっ、ごめん。俺、部屋を確認しに来たんだった」
「そうだったんですか、タツオさん」
「そうなんですね。タツオさん?タツオさん……タツオさん?うん?」
葵ちゃんは何か考えている。
もしかして、何か思い出そうとしている?
「どどうしたのかな?」
葵ちゃんは深く考えた後……
「どこかでお会いしたような気がしたんですけど、私の気のせいです」
ふぅ……何とか魔法の力が勝ったようだ。
俺は3人とお別れをして、寮の中に入った。