リッカさんと清隆と一緒に俺は学園長室に入った。
いつ尋問タイムが始まるのか、その問いにどうやって答えるのか、俺は脳をフル回転させて、歩いている途中に考えていた。
案の定、そこには学園長の姿はなかった。
「で、俺は何を手伝えばいいんですか?やっぱ、男子が必要だったってことは、力仕事ですか?俺、そんなに得意じゃないですよ?」
これから、尋問が始まることを知らない清隆は手伝う気満々だ。
「清隆…これから、尋…」
「ごめんね、呼び出したりして。実は手伝って欲しいことがあるっていうのは、嘘なの」
俺が言い終える前に、リッカさんが言った。それは、尋問が始まる合図でもあった。
「嘘?」
何も知らない清隆は、頭に?マークを浮かべている。
「あなたたち、二人に聞きたいことがあったからね、ちょっと来てもらったってわけ」
「リッカさんほどの人が、俺みたいな見習い魔法学生に何のようですか?」
ここは俺も清隆に合わせておくか…
「俺も清隆と同じ意見です」
「リッカさんほどの人…ねぇ……」
リッカさんは目を細めている。リッカさんは、俺たちの表現がどうにも気に入らなかったようだ。
「だって、リッカ・グリーンウッドなんていったら、すごく有名じゃないですか?そんな有名な魔法使いに声をかけてもらえるなんて、光栄の極みではありますけどね」
清隆は最後までリッカさんが何を俺たちに聞きたいかわからないようだ。リッカさんは多分、俺たちのカテゴリーのことは知っているだろう。
「清隆……もう、リッカさんに嘘を突き通すことはできないよ」
「え?本当に俺は光栄の極みではありますよ」
清隆は最後まで嘘を突き通すつもりだ。
「嘘。演技なんてしなくてもいいのよ?タツオくんは嘘を言うことを素直に諦めているようだけど」
「嘘なんてついてませんよ。リッカさん、カテゴリー5の魔法使いですよね?なんでそんな人が魔法学校の生徒をやってるのかはわかりませんけど、光栄なことは変わりません」
まだまだ清隆は粘るようだ。
こう、清隆の必死に粘る所を見ていると、笑けてくるんだが。
「……なんでそんな人が魔法学校の生徒をやっているのか、わからない、か。君の口からそんな言葉が聞けるとは思わなかったなぁ」
リッカさんはすっと目を細めた。
「まさか……」
清隆はやっと気がついたようだ。
「キヨタカって名前……聞き覚えがあると思ったんだ。君ってさ、カテゴリー4の魔法使い、だよね?」
「っ!?」
「あ~、身構える必要はないわよ。確認したかっただけだから。これでも、魔法使いの社会の中じゃ、それなりに顔効くし、こう見えて意外と情報通なんだよね」
「誰に……聞いたんですか?」
清隆はリッカさんがそのことを誰から聞いたのか?そのことを疑問に思っているようだ。
「別に特定の誰かに聞いたわけじゃないって。日本人で数少ないカテゴリー4の若い魔法使いがいるって話と、極東の名門葛木家に養子に入っていた子の話を知っていれば、なんとなく判断できるでしょ?」
「…………」
清隆は固まっている。固まっている清隆を見て、俺は少し笑ってしまった。
「あの……」
「ああ、安心して。別に言いふらそうと思ってるわけじゃないから」
「口外しないで下さいよ」
「わかったわ。誰にも言わない」
清隆は俺を見て、固まってしまった。
多分、清隆の思っていることを想像すると……
しまった。タツオさんにバレてしまった。どうしよう……
的なことを考えているに違いない。そんな清隆の様子を見ていた、リッカさんが
「あぁ、多分だけど、タツオくんもそのことを知っていたよね?」
「まぁ……はい……」
「リッカさんはともかく、タツオさんが何故知っているのですか?妹も知らないことなのに……」
「待って。タツオくんのことは後で聞くから、まずは清隆くんのことを聞かせて。妹さんも知らないの?」
リッカさんはまず、清隆のことについて聞くらしい。
「じゃあ……俺、帰っていいですか?」
俺はリッカさんに通用するはずがないことを聞いた。
「へぇー、私が帰っていいと言うでも思った?」
「あはは……待っときますね」
俺は清隆との話が終わるまで待つことにした。
リッカさんと清隆は話している。横から俺が口出しすると話が進まなくなるので、俺は口出しすることをやめた。
「個人的興味として聞かせてもらうけど、どうして、君はこの王立ロンドン魔法学園に入学したの?君の目的は……何?」
リッカさんの瞳がすっと細くなる。にこやかな感じではあるが、どことなく冷たい威圧感が漂っている。
「簡単ですよ。海外留学する妹のお目付け役です。うちの父は、妹に対してかな~り過保護ですから」
「表向きの理由なんて、どうだっていいんだってば」
そう言って、リッカさんはずいっと清隆に近づいた。
「それだけです。あとは個人的にこの風見鶏の図書館の蔵書に興味があったっていうのもありますけどね」
「とぼけても無駄よ」
「とぼけてなんてないですって……」
そんな清隆が必死に誤魔化そうとしている、やり取りをして、次第に葛木家のお役目の話になった。葛木家のお役目の話を聞いて、俺は昔に葛木父に呼ばれたことを思い出していた。
そう言えば、あの時に葵ちゃんに初めて会ったんだった。
「まあ、何でもいいわ。つまり、あなたの目的は別にあるわけね?」
「ないですって。ホント、妹の世話役として父に同行を命じられただけなんですよ」
こうして、清隆の粘り強さを見ると、この粘り強さには俺も見習わない所だ。
「ホントに?」
「ホントですってば」
「……怪しいなぁ」
リッカさんはジト目で清隆を見つめていたが、しばらくして
「まあ、いいわ。そういうことにしておいてあげる。清隆くんの話も聞きたかったけど、一番聞きたかったのは、あなた。タツオくんの話なの」
「あはは……」
清隆への尋問は終わり、俺への尋問が始まると思うと、俺は笑うことしかなかった。
どうせ、話……長くなるんだろうな。