リッカさんの最後の質問は「どこかで、私に会ったことがない?」だった。
俺はリッカさんの首を見る。リッカさんの首には俺がエリザベスさんを通じてプレゼントした、桜の首飾りをしている。
魔法の効果は効いているはずだが、相手がカテゴリー5の魔法使いにもなると、効果が薄れるのかもしれない。
だが、この対応を見る限り、ぼやけ程度にしか思っていない様子だったので、俺の魔法の方が勝っているということになる。
「いえ、初対面だと思いますけど…」
「そ、そうよね。私ったら、何を言ってるのかしらね」
「あはは…」
「でも、何か。何か、あなたと話していると懐かしい感じがするの」
リッカさんは頭を抱えていた。
これは接触することによって、記憶を思い出させてしまう的な展開になるのだろうか?
「とりあえず、もういいですか?」
「え……ええ。またあとでね」
リッカさんは深く何かを考えている様子だった。
教室に戻ると、教室にはシェルで通信をしている清隆だけだった。
あれ?他の皆は?
「わかった、すぐ行く」
清隆は通話を終了して、教室に入ってきた俺を見る。
「あっ、タツオさん。リッカさんとの話は終わりました?」
「何とかね……で、他の皆は?」
「姫乃からの情報だと、親睦会の場所はカフェらしいです」
「カフェねぇ……」
カフェで親睦会か。カフェと言ったら、多分……フラワーズかな?
「この前、そのカフェに行ったことがあるので、案内しますよ」
「おっ、それは助かる」
そして、俺と清隆は教室を後にした。
清隆と一緒に校舎を飛び出し、目的のカフェへと向かった。
「む……?」
と、校舎の外を歩いていた人物が俺に気づいて脚を止める。
「おお、葛木とタツオ殿ではないか」
「え?」
その人物は俺と清隆の名前を呼んだ。その人物と会うのは、これが初めてだった。
「久しぶりだな」
「あの…失礼ですが、どちら様ですか?」
「なんと…」
「ひょっとして日本で会ったことがある、とか?タツオさんの知り合いですか?」
「この人は杉…」
「いや、失敬…俺の勘違いだったようだ」
俺が言い終える前に杉並が言った。
「……は?でも、今、俺のこと葛木って…」
「なぁに、ちょっとフライングしてしまっただけだ。タツオ殿との出会いはここだったが、貴様との出会いはもうちょっと先だ」
「何を言ってるんですか?」
「また会おう。では、さらばだ!」
そう言うと、杉並は猛スピードで校舎の中に消えていってしまった。
「……なんだったんだ。タツオさんの知り合いか何かですか?」
清隆は唖然として去りゆく人物を眺めながら、俺に聞いてきた。
「さぁー、誰だろう?」
ここで清隆に杉並のことを教えると、物語通りに進まなくなるかもしれないと思い、俺はとぼけることにした。
「まあ、いいや。今はそれどころじゃない。行きましょう」
「ええっと、確か……ああ、ここだここだ」
「ここかぁ……」
しばらくして、俺と清隆は目的のカフェ『ケーキ・ビフォア・フラワーズ』にたどり着いた。
「あ、清隆さん。タツオさん。いらっしゃいませ~」
「ああ、葵ちゃん」
店の敷地に入ると、バイトの葵ちゃんが俺たちを出迎えてくれた。
「皆さん、もういらしてますよ。あっちです」
「ああ、ありがと」
「ありがとう」
俺たちは葵ちゃんに礼を言うと、クラスメイトたちが集まっている場所に向かった。
「清隆さんとタツオさんがいらっしゃったようですよ」
「お、来たな。二人とも」
「兄さん……」
フラワーズで待っててくれた、耕助と四季さんと姫乃ちゃんが声をかけてくれた。
「ひどいな、先に行っちゃうなんて」
「ははは、悪い悪い。すぐに来ると思ったんだ」
「で、結局、お手伝いって何だったの?」
姫乃ちゃんが清隆を見ている。リッカさんのお手伝いが気になるらしい。
「……まあ、大した仕事じゃなかったな。清隆」
俺が悩んでいる清隆の代わりに言った。
「んなこと言って~、実はリッカさんに早速、大人の個人授業を受けてきたんじゃないのか?」
「そんなわけないだろ」
「そうなんですか?兄さん……」
耕助のせいで話が一気に変な方向に転がった。まあ、そこが耕助の面白い所なんだけど。
「そんなわけないだろ」
「またまた。清隆…俺にはわかるぞ。俺にはわかる!」
そんな話をしていると、リッカさんが遅れてやってきた。
「やっほー、皆そろってる?」
「そろってますよ」
「……」
リッカさんが清隆の方を無言で見ている。しかし、それは一瞬のことで、すぐに何食わぬ顔に戻っていた。
「ふむふむ、よろしい。じゃあ、今日は私の奢りってことで、皆、存分に騒いで頂戴」
「は~~い」
耕助が元気よく返事をする。まあ、さっきまで、リッカさんの追及で精神的に疲れたから、ここは楽しむか。
そんなことで
俺たちは席をシャッフルしつつ自己紹介などをし合いながら、新たな仲間たちと談笑したのだった。