リッカさんにジルさん。ゲームで見たことはあるものの、実物に見るのは初めてだ。いや、前の世界で実物に見ることなんて不可能だ。2人の格好は黒い
「今日はもう、この辺りにしようよ」
ジルさんがはぁはぁと息を切らしながら言った。
「ほら、木陰もあるしちょうどいいよ」
「今日はこの先の森を越えた村まで行こうと思ったんだけどって、あんた…いつからいたの!?」
リッカさんがようやく、俺の存在に気がついたようだ。さっき俺は『いつ、気がつくかな』と思っていた。
「えーと、さっきからいたよ」
「って、あなた誰?どこかで見たことがある顔だけど」
本物のリッカさんと話すことがてきるなんて、俺は驚きの表情を隠せないでいた。
この世界に来て良かったぁー。神様、マジ感謝!
確か、1950年のゲームの時点では150歳生きていたと言っていた。ってあれ?何かが可笑しい。たしか、神様は1790年に飛ばすと言っていたはずだ。もし、ここが1790年ならリッカさんは生まれてないはず…
「ちょっと聞きたいんだけど、今って西暦で言うと何年?」
「突然何よ?あなた、レディーに歳を聞くなんてどうかしてるわ」
いやいや、俺は歳を聞いてるんじゃなく、年代を聞いているんだが。何故かリッカさんは不機嫌そうだった。
「リッカ、その人は昨日の新聞に載っていたカテゴリー5になった人だよ。あと、リッカの歳を聞いてるんじゃなくて、年代を聞いているんだよ」
さっきまで、息を切らしていたジルさんが落ち着いた様子でリッカさんに言う。
良かった。しっかり者のジルさんがいてくれて。ジルさんがいてくれなかったら、誤解されたままだっただろう。それに、新聞に載ってたと言うことは、俺は新聞に載るほど有名になっていたということになる。まぁ、神様は「第1人目のカテゴリー5」と言っていたから、新聞に載るほど有名になったことにも納得はいく。
「あーそうなの。あなたがカテゴリー5の……そう。思い出したわ。タツオね。それで、今の年代は1790年よ」
「1790年……うん。教えてくれてありがとう」
やっぱり、俺は1790年に飛ばされたようだ。ということは、1950年にリッカさんが清隆に教えたことはちょっとした間違いになる。リッカさんの性格からして、恋人の清隆に隠し事はしないから、多分、細かい10年ほどは覚えてなかったのだろう。
「どうして、有名なタツオさんがこんな場所にいるんですか?」
ジルさんが聞いてくる。ジルさんはやっぱりしっかりしている。さて、どうして、こんな場所にいるんですか?と聞かれても……どうしたものか
「うーんと……旅。そう、旅の途中なんだ」
「旅……ですか。私たちも旅をしているんですよ。ねぇ、リッカ」
「そうね。旅っていっても、1週間前から始めた旅だけど。今日はこの先の森を越えた村まで行こうと思ってたんだけど」
リッカさんが言うと、ジルさんが驚きの表情で
「本気で言ってるの?村に着く前に日が暮れちゃうよ。あの辺りは狼が出るんだから、野宿は大変だよ?」
「うーん……やっぱり?」
2人のやりとりを見ているだけで、俺は幸せだった。これがリッカさんとジルさんの仲。だが、俺はジルさんの未来を知っている。
「私もちょっと無理かな~なんて思ってたんだ」
「もう、リッカってば。相変わらず無計画なんだから……」
そう、リッカさんは何事にも突っ走るタイプ。で、ジルさんは安定の何事にも計算するタイプ。
「あはは、ごめんごめん。でも、もうちょっとだけ歩かない?」
「何で?この先にもっといい場所あるの?」
「そうじゃなくてーー」
「そうじゃなくて?」
リッカさんが間をおく。俺はリッカさんが次に言う言葉を何となく覚えていた。
「風が気持ちいいから」
俺はリッカさんが言う前に無意識で言ってしまった。すると
「そ…そう。今、私も風が気持ちいいからって思っていたの。同じことを考えているなんて奇遇ね」
リッカさんは少し驚いていた。驚いている姿も可愛い。
「…………」
ジルさんは無言のままだった。この先のやりとりは俺は忘れていた。何だったけな?
「……っぷ、あははははは」
「何?笑うようなこと?」
「ごめんごめん、なんかリッカらしいなって思っただけ。タツオさんも思っていたなんて…なんか不思議」
「なにそれ。行くの?行かないの?」
「わかったわかった、行こう。でも、ちょっとだけだよ?」
「わかってるわよ。あと、笑わないでよね」
「ごめんって言ってるでしょ?さ、行こ行こ。もしよかったら、タツオさんも一緒に行きませんか?」
突然、ジルさんに話を振られたので、一瞬ビクッとなって、驚いてしまった。とりあえず、今はこの世界について知ることと基礎知識を手に入れることだった。
「そう、言ってもらえるなら、一緒に行こうかな」
「旅は大勢の方が楽しいって言うしね」
リッカさんは嬉しそうに言った。
こうして、リッカさんとジルさんとの初めての旅が始まった。