08:00
『ただ今より、グニルック競技会を開催します』
「うおおおおー」
アナウンスによる開会宣言の直後、グニルック競技場は熱気に包まれた。俺たち出場選手は一足早く、自分の控え室に行っている。
これから開会式とトーナメント組み合わせ抽選会が行われ、その後に試合開始だ。
控え室にいても、外から声が聞こえる。まだ開会式前だっていうのに、本当にすごい盛り上がりだ。
これがグニルック競技会……
やはり魔法使い社会において伝統的な競技ということだけあって、注目度は段違いに高いんだろう。
『それでは只今より、グニルック競技会の開会式及び組み合わせ抽選会を始めます。出場選手の方はグラウンドに集合してください』
いよいよだ。アナウンスの声がかかり、俺は試合前だというのに緊張していた。俺は控え室から出て、グラウンドに向かう。
軽快なBGMにあわせて、入場ゲートから選手たちが入場した。
選手は軽く100人以上はいるだろう。エリート貴族、学園の制服的な物を着ている人、どこかの教師。
俺は今からこんな奴らを相手にするんだな……
入場者が整列すると
「それではこれより、トーナメント1回戦の組み合わせ抽選を行います。抽選はクジによって決定され、公平を期すため、私が代理としてすべてのクジを引かせていただきます」
俺はてっきり、順番に選手たちが引いていくと思っていたが、不正を防止するために開会者が引いてくれるようだ。
「それでは、さっそく抽選を開始します。まずAブロックから。Aブロックの1番はー」
開会者が抽選箱に手を入れると同時に、場内が静まりかえった。箱の中から紙を取り出して、
「リッカ・グリーンウッド!Aブロック1番はリッカ・グリーンウッドです!」
一番最初にリッカさんの名前が呼ばれた。リッカさんの名前が呼ばれたということは凄い歓声が……
と思っていたが、歓声は思っていたよりもなかった。いや、あんまり聞こえなかった。
何故だろうと思っていたが、理由はすぐにわかった。
そうか……まだこの頃のリッカさんはカテゴリー5ではなく、有名でもなかったんだった。
そんな感じで、組み合わせ抽選は続いていった。名前が発表されるたびに、観客席から歓声が上がったり、落胆の溜息が聞こえたりする。この抽選会も含めて、すでにお祭りが始まっているんだなってことが実感できた。
そして、まだ俺の名前は挙がっていない。
まだかな、まだかなと思っていると
「Zブロック、タツオ。Zブロック、タツオ」
最後の最後で俺は呼ばれた。すると
「ウオオオオオ!」
観客席から歓声が上がった。
あれ?この世界に俺の知り合いっていたっけ?
この世界に来てまだ1日。知り合いなんて到底いるはずがない。なら……
「あっ……」
俺はすっかり忘れていた。
そうだ。俺はカテゴリー5だったー
「……以上。それでは選手退場!」
開会者の声で周りにいた選手が歩き出した。その選手たちについていき、俺は控え室に戻った。
ちょっと、リッカさんのプレイでも見てくるかな。
そう思って、戻ったばかりだったが再び控え室を出たのだった。
グラウンドにつくと、今から試合が始まるようだった。
「只今より、グニルック競技会Aブロック1回戦を始めたいと思います」
司会者のアナウンスが響き渡ると、大歓声が湧き起こった。
リッカさんの相手は眼鏡をかけた若い男性だった。
選手同士で挨拶をして、握手を交わし、選手2人はシューティングエリアへと陣取った。
グニルックを昨日の勉強した結論から言うと、シューティングゾーンから
シューティングゾーンからターゲットパネルまでの距離がフェーズのよって、10ヤードのショートレンジと20ヤードロングレンジの2種類で切り替わったり、ターゲットパネル自体もパネル4枚の『ダービー4』、パネル9枚の『ターゲット9』の2種類があったりと、フェーズ毎に状況が変化していく。
もちろん、ただショットをしてターゲットを打ち抜くだけではなく、フェーズ毎に決められた数のガードストーン
つまり相手のショットを邪魔するためのブロックを相手レーンに設置することができるため、ガードストーンをどのように設置するかなどの戦略性、設置されたガードストーンを回避するために、ブリットの軌道を大きく変化させる魔法技術の競い合いだった。
ゴルフのボウリング版のトラップあり、的な感じだ。
ピッ。ホイッスルの合図により試合が始まる。
リッカさんは落ち着いた状態で試合を進めていく。
そして、リッカさんが大差の得点で勝った。
流石、リッカさんだった。少しのミスもあったが、冷静に対処していく。そんなリッカさんが輝いていた。
試合が終わり、俺の元へリッカさんが駆け寄ってきた。
「どうだった、私の試合は?」
「いやー、試合になると何事にも冷静ですね」
「そりゃ、優勝を目指しているだから、当然でしょ」
流石リッカさん。この頃から強気だったようだ。
「あはは……」
「あはは……じゃないわよ。タツオは私にとっての決勝戦相手なんだから」
「えっ……俺がですか?俺、今回がグニルック初めてですよ」
「初めてでも、カテゴリー5でしょ。やり方とコツをマスターすれば、どんどん勝ち上がると思うわ」
「そ……そうですかね……」
「えぇ。絶対そうよ。1回戦頑張ってね」
リッカさんはそう言って、その場を立ち去った。
やり方とコツ……
俺は少し緊張しながら、控え室に戻った。