そしていよいよ、俺の出番がやってきた。場内が割れんばかりの歓声と拍手に包まれる。
どうやら、俺は期待されているようだ。
俺……初心者なんですけど……
まだ世界に1人のカテゴリー5の登場だ。会場が沸くのもわかるっていったら、わかる。
そして、俺の試合が始まった。俺の人生で初めての試合相手は幼い女の子だった。年齢的に小学生ぐらいだろうか?
こんな子も出るんだな…
まずは第一フェーズ。ショートレンジ、ターゲット4、そしてガードストーン無しだ。
短いレンジでの4分割パネル、さらに邪魔するブロックも無いという、もっとも簡単なフェーズと言える。パネルがターゲット4の時はショットできる回数は2回。つまり2球で4枚のパネルを落とす必要がある。
とは言え、4分割パネルだから中央に当てれば4枚同時に落とすことが可能だ。
先攻は女の子からだった。
俺は後攻…イメージトレーニングするには、良いと言えるだろう。
女の子はシューティングゾーンの中央に立って構える。
一度パネルを見て、鋭くロッドをスイングさせて、ブリットを打つ。ブリットはまるで定規で線を引いたように、まっすぐ進んでいき、見事4分割されたパネルの中央を打ちぬいて、4枚同時に落としをしてみせた。
うぅ……年齢関係なく、油断は禁物だな。
次は俺の番だ。
一度深呼吸した後、シューティングゾーンに立って、慎重に構える。
直線をイメージをしながらスイングでブリットを打ち放った。
放たれたブリットはまっすぐにターゲットパネルへと向かい、見事四分割されたパネルの中央へとヒットした。
乾いた音を立てて同時に落ちる4枚のパネル。
ふぅ……何とかイメージ通りにできた。
わぁぁぁぁ!!!!
大歓声が会場を包み込んだ。やっぱり俺は期待されているようだ。
さぁ、次も集中……
続いての第2フェーズ。ロングレンジ、ターゲット4、そしてガードストーン無し。第1フェーズからの変化はターゲットパネルまでの距離が倍の20ヤードになったこと。
とは言え、さっきの直線スイングをできた2人は安定の4枚落としでクリアしてみせた。
続いての第3フェーズからはパネル9分割のターゲット9が登場してくる。正方形を均等に9分割したもので、ショット可能回数はターゲット4の時の倍、4ショット打てる。
とは言え9分割なので、すべてのパネルを落とすには、同時落としを含みつつも、一度のショットもミスすることができない。
ここから、難易度は一気に上がる。
今までのは、練習……いや、ウォーミングアップみたいなもんだと、前にリッカさんが言っていた。
だが、直線感覚をマスターした俺には関係なかった。
直線狙いでパネルを当てていく。思った通りにブリットが飛んでいってくれて助かった。
カテゴリー5の魔力がなければ、思い通りにいかないこともあるだろう。
ショットレンジ、ターゲット9の第3フェーズ、ロングレンジ、ターゲット9の第4フェーズとも、俺と女の子は揃って見事に4ショットで9枚のパネル全てを打ちぬいてみせた。
ふぅ……何とか……
だが、問題はここからだった。
第5フェーズからはガードストーン、すなわち相手のショットを妨害するためのブロックを設置できるのだから。
第5フェーズ。ショートレンジ、ターゲット4、そして、ガードストーン2。
状況的には第1フェーズと同じだが、お互いに相手フィールドに2体のガードストーンを設置することができる。ここからは設置されたガードストーンを避けないといけないので、ブリットを変化させる必要がある。
ゲームでの解説は『野球で言うならば、今まではストレートでパネルを落とすことができたけど、これからはカーブやシュート、フォークなどの変化球を使って上手にガードストーンを避けなければいけない
そしてその変化はブリットにどれだけ魔力を込められるかにかかってくる。ここから先は基礎魔力の強さがダイレクトに影響されるらしい』
先攻は女の子なので、俺が先に設置することになる。
直線が上手だってことはわかった。なので
「ガードストーン、S3のFとGにビショップを設置」
俺がそう宣言すると、女の子のレーン上に、ターゲットパネルの中心部分に僧侶をイメージした石柱が2つ設置された。
これで、ブリットをまっすぐ放ったのでは、途中でガードストーンにぶつかってしまうため、女の子はそれを避けるようにブリットを大きくカーブさせる必要がある。
女の子はスイングすると、ブリットは小さな弧を描きつつ、ターゲットパネルへと向かっていく。しかし…
「あっ!」
描く弧が小さい分、ガードストーンを越えることができずに、ブリットは跳ね返された。転々とフィールドの上を転がるブリット。これが、このゲームではじめてのミスショットだった。
会場の張り詰めていた空気が一瞬緩む。
女の子は次のショットで大きくカーブさせて、何とか2パネル落とした。ここでパーフェクトを阻止することができた。
「同じく、ガードストーンS3のFとGにビショップを」
女の子の宣言によって、今度は俺のレーン上にビショップの石像が設置された。これで、俺も同じようにブリットを変化させる必要が出てきたわけだ。
これが今日はじめてブリットを変化させるショットになる。
小さな弧を描くとさっきの女の子みたいになる。なら…
「よいしょっ!」
俺はこのぐらいかなと思う力で打つ。俺の放ったブリットは大きく弧を描きながら、女の子の設置したガードストーンを難なく避けて、パネルの中央を打ちぬいた。乾いた音が響くと同時に、4枚のパネルが抜け落ちる。
うお…これがカーブ。
まるっきり、想像通りのショットをすることができた。
この感覚を忘れないようにしないと…
そのまま順調に試合は進んでいき、結果的に俺は勝利をすることができた。女の子はどうやら、カーブ技術は苦手だったようだ。
俺は控え室に戻ろうと歩いていたら
「流石カテゴリー5ね。見事だったわよ」
リッカさんが駆け寄ってきて、誉めてくれた。
「でも、なかなか緊張しましたよ」
「そう?こっちからじゃ、緊張している様子ではなかった風に見えたけど。むしろ、だんだん楽しんでいるように見えたわ」
「楽しんでいるように…ですか」
リッカさんに言われて、俺は気がついた。
そう…グニルックは楽しいスポーツだってことに
「決勝戦が楽しみだわ」
「ははは…まだ俺は決勝戦にいけるか…わかりませんよ」
そんな話をしながら、俺は控え室に戻った。