そして、次の試合、また次の試合も勝っていく。だんだん試合の流れ、やり方、コツなどがわかっていき、俺はふと思った。
カテゴリー5の魔力ってチートじゃね?
俺自身の慣れもあるかもしれないけど、カテゴリー5の魔力があるから、今までの試合を勝ってきたもんだ。思うようにブリットが飛んでいく。カテゴリー5の魔力なんてなかったら、俺は間違いなく、1回戦で負けていただろう。そう思うと、ゲームの中のサラはスゴいと思う。いや、スゴすぎる。
魔力があまりなくても、知識、術式などを使って、カテゴリー5のリッカさんと互角のように戦っていたのだから。
気がつくと、俺は準決勝まで勝ち進んでいた。
この試合を勝てば、リッカさんと対戦…
そう思うとなんだか、わくわくしてきた。
だが、今から行われる試合に集中しないといけない。
準決勝まで勝ち上がってきたのだ。ここまで勝ち上がってくる人はミスも少なくなかなか強かった。しかし、慣れてきた俺にとっては難なく勝つことができた。
いよいよ、次は決勝戦…
決勝戦の前にお昼の休憩が1時間ある。
俺は競技場の中を歩いていると…
「タツオさーん」
うん?この声は…
俺は後ろを振り返ると
「ジルさんにリッ…かさん?」
声をかけたのはジルさんでその隣にリッカさんがいたが、リッカさんの様子が変だった。
もしかして…泣いてる?
「リッカはね、さっきの試合で負けたのが、悔しくてさっきまで泣いていたの…」
ジルさんが簡単に説明する。
リッカさんは準決勝で負けたのか…
何故、リッカさんが準決勝で負けたことを知らなかったのかというと、俺はこれからどうやってこの物語を進めていこうか、計画を練っていたからである。
でも、リッカさんは泣くほどグニルックに愛情があったことがわかった。
「リッカさん…そんなにもグニルックに愛情を…」
「……ひっく……ぅぅ…ごめんね、タツオ。約束守れなくて、私…約束をやぶちゃった…」
「えっ、そのことで泣いていたの?」
「だって…仲間の約束を守れないなんて…仲間失格だわ」
リッカさんは涙声で言う。あれってリッカさんにしてみれば、仲間の約束だったようだ。
決勝戦で戦う約束
しかも、リッカさんは俺のことを仲間だと思っていたようだ。
こんな1日しか旅をしていない俺を…
俺は決心した。
「俺は大丈夫。もう泣かないで」
俺はリッカさんを慰めるように言って
「よしっ。俺が決勝戦の相手を叩きのめしてやる」
俺はそう言って、3人でお昼を食べ、午後の決勝戦に望んだ。
「只今より、グニルック競技会決勝戦を始めたいと思います」
アナウンスがかかり、俺はスタンバイをする。
幼少期リッカさんといえ、なかなかの実力はあった。
そのリッカさんに勝つほどの相手…いったいどんなやつなんだ。
「それでは、決勝戦、選手の入場です」
俺はグラウンドに足を進めていく。グラウンドに入ると場内が今までの試合より、一番の歓声と拍手に包まれる。グラウンドに立つとそこには見知った人がいた。
「え…エリザベスさん?」
そこにはゲームの中では学園長を勤めていたエリザベスさんがいた。
いや…格好と少し何かが違う。
「エリザベス?私はシャルロットです。あなたが世界にまだ一人しかいない、カテゴリー5のタツオさんですね。会えて光栄です」
そう言って、俺の手を握ってきた。
シャルロット?シャルロットなんて聞いたことがない。どこかのソーシャルゲーのなんちゃらプロジェクトにキャラクターしか聞いたことがなかった。
俺は考える。
多分、エリザベスさんの母か祖母なんだろう。あの髪の色とあの顔立ち、まさしくエリザベスさんの面影がある。年代的にに祖母だろう。多分…
そして、俺とシャルロットさんの対戦が始まった。
第1フェーズ、第2、3、4とも、両者パーフェクトのプレイをする。
第5フェーズ、俺は直線を防ぐためにターゲットパネルの中心部分にガードストーンを置いた。
だが、シャルロットさんは軽々とリラックスしたようにスイングし、俺が設置したガードストーンを難なく避けて、パネル中央を打ちぬいた。
乾いた音が響くと同時に、4枚のパネルが抜け落ちる。
この人なかなかやるな…
流石、リッカさんを倒し、エリザベスさんの祖母…
「では、私も同じく、S3のFとGにビショップを配置します」
その配置には俺は慣れていたため、俺も軽々しくスイングしてパーフェクトで打ちぬいた。
ーおおおぉぉぉ!!!
会場が一気に盛り上がる。
これで、第5フェーズまでお互いにパーフェクト。
今までの相手よりシャルロットさんはリラックスしていた。そして、魔力も高いはずだ。カテゴリー5にはいっていなくても、そこに届くほどの魔力を持っているはずだ。
残り3フェーズ…
この後の第6フェーズはロングレンジ、ターゲット4、ガードストーン2
第5フェーズとは距離が違うだけだが、距離が伸びるってことはブリットを変化させる軌道も変わるってことだ。ショートレンジの場合は、短い距離で大きな変化をさせる必要がある。
一方ロングレンジはターゲットまでの距離があるので、ブリットを変化させること自体はショートレンジよりも簡単だ。そのかわり、変化させながら、遠くまでコントロールする技術が必要となる。距離が離れれば離れるほど、そのコントロールは難しいものになるから、ショートレンジとはまた違った技術が必要となってくるのだ。
そして、その先の2フェーズ。第7フェーズ、第8フェーズ。
ショートレンジ、ロングレンジで、それぞれターゲット9さらにガードストーン4と言う、普通に考えれば絶対にパーフェクトが不可能な条件が最後の2フェーズには設定されている。
だが、俺は普通の魔法使いではない。
「よいしょっ!」
バシン
「はっ!」
バシン
「もういっちょ!」
バシン
「こんな感じかしらっ!」
バシン
俺も、シャルロットさんも、お互いに完璧なショットを繰り返し、それぞれが設置したガードストーンを見事にかわし、ターゲットパネルを華麗に落としていく。
そして、第6フェーズ、第7フェーズと一歩も譲らずにパーフェクトを成し遂げたのだった。
今までの戦いだと、第7フェーズで1回ミスをする選手ばかりだった。しかし、今回の相手は違う。間違いなく、一筋縄ではいかしてくれないようだ。
俺はシャルロットさんを見ると、リラックスしていた時よりも少しだけ呼吸が荒かった。だが、俺はまだまだ余裕がある。
チートカテゴリー5の魔力のおかげで
第8フェーズで勝負がつかなかった場合、サドンデス方式の延長戦へ突入する。その場合、ガードストーン6という、とんでもない数のガードストーンが設置されることになるので、今日が初めての俺では難しい戦いになるだろう。
体力と精神力はまだまだあるが、まだ技術がない。
なんとか、この最終第8フェーズで勝負をかけたい。
「ガードストーン、L3のD、F、Hにナイト、L2のKにビショップを配置します」
シャルロットさんの宣言で3体の騎士の石柱がターゲットパネルを隠すようにその前方に、僧侶の石柱がターゲットパネル右端近くに設置された。
これで俺がパネルを落とすには、ガードストーンを上方から超えて、鋭く落下させるか、左から右に向けてスライドさせる方法でしかガードストーンを避けることはできないようだ。
最悪でも9分割パネルの一番右下の一枚は守ろうというストーン配置だ。
だが、俺は全力を尽くす。今までのプレイで学んだこと、今までのプレイで失敗してしまったこと。それら、全てを合わせて俺はスイングする。
そこからの俺のショットは圧倒的なものだった。自分で言うのもなんだけど…
今まで1回はここでミスをしていたが、ロングレンジのターゲット9、さらに4つのガードストーンが置かれた状態で、ブリットを自在に操り、見事に4回のショットで9枚のパネルを打ちぬいてみせたのだ。
計8フェーズ、52ポイント。つまり、オールパーフェクト。
「ふぅ……これはつらっ……」
流石の俺の魔力でもなかなかの魔力の消費だった。だが、結構上手くいってよかった。
会場内は静まりかえる。
「なんですって……第9フェーズをパーフェクト?」
シャルロットさんは驚きの顔が隠せないでいた。
そんなシャルロットさんに俺は
「S4のE、F、G、Hにビショップを設置で」
そう宣言した瞬間、会場が大きなどよめきに包まれた。
シャルロットさんの真ん前、ガードストーン設置可能場所でもっともシューティングゾーンに近いエリアに4体の僧侶の石柱が現れた。
そう、この設置はサラ編で勉強した設置だった。
ターゲットパネル前はがら空きだが、ブリットをもっとも効率よく遠くまで飛ばすには45度の角度で打ち出す必要がある。
けど、すぐ目の前に、背の高いビショップを配置したことで、必然的に45度の角度では打ち出せなくなった。80度近い角度で打ち出さないとビショップのストーンを飛び越すことはできないだろう。そして、高い角度で打ち出した場合、遠くまで届かすには大きなパワーが必要となる。大きなパワーを使えば、繊細なコントロールは難しくなるし、それに今は第8フェーズ。
すぐ目の前にガードストーンがあるという圧迫感もあり、多分、シューティングゾーンからでは、ガードストーンに阻まれて、パネル自体も見づらくなっているはずだ。
だから精神的にプレッシャーをかけるという意味でもこの配置は効果がある。この、もっともプレッシャーのかかるこのタイミングで、こんな思い切った作戦をするのは、えげつないと、ゲームで清隆は解説していた。
シャルロットさんは呼吸を整えて、シューティングゾーンで構える。視線をしっかりとブリットに固定して、意識を集中する。
しん、と静まり返る競技場。そして、シャルロットさんの身体がゆっくりと動き出した。ロッドを大きく振りかぶって、そして鋭くスイングする。
パッ
振り下ろされたロッドはひゅっ、と風を切り裂いて、ブリットを力強く叩く。
「お願い!行って~」
振り抜かれたロッドから打ち放たれたブリットは高角度で空へと舞い上がり、ぎりぎりのところで、4つ並んだビショップのガードストーンを飛び越えた。そのままブリットは勢い良くターゲットパネルめがけて飛翔していく。最高点まで到達したブリットは徐々に高度を落としてながら、ターゲットパネルへと突き進む。パネルを守るガードストーンは無し。
会場中の視線が宙を泳ぐブリットに釘付けられる。
ーガンッ!
会場内に金属製の重たい音が響いた。
しん、と静まり返る場内。その中で、ぽん、ぽん、とブリットが静かにフィールドの上を跳ねていた。
ブリットはターゲットパネルの四方を固定している、鉄製のポストに当たって跳ね返ったのだった。
この瞬間、俺の勝利が決定した。