第1章 案外俺の卒業式は間違っていない。   作:あらがき@北宇治高校

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初めまして、あらがきと申します。
特に意味もなくペンネームを変えました。
pixivでも『あらがき@材木座以下のss』というユーザー名で投稿しておりますが、こちらにも投稿させて頂きます<m(__)m>
ただ、pixivに投稿しているものに若干の修正を加える場合もありますので、ご了承ください。
まだ勝手が分かっておりませんので、取るに足らない部分は多々あると思いますが、よろしくお願いします。


①たまには雪ノ下雪乃も稚拙な言葉を並べる。

受験が終わり、春と言うには肌寒い気候の3月中旬。

俺は雪ノ下と千葉郊外の大型ショッピングモールに来ている。

雪ノ下は結局、難関国公立大に合格し、俺もなんとかAprilとかMarchとか言われる類の私立大学の文学部に合格した。

それで…。

どうして俺が雪ノ下と家族連れとリア充の温床にいるかというとだな、、、

そうだな…卒業式あたりまで話はさかのぼるが…。

 

第1章 案外俺の卒業式は間違っていない。

 

①たまには雪ノ下雪乃も稚拙な言葉を並べる。

 

----卒業式当日----

卒業式ってのはどうしてこうも安っぽい昼ドラのワンシーンに見えるのだろうか。

友達との別れをよりドラマチックで印象的なものにするために、合唱をし、先生方への感謝の言葉を述べ、能動的に感動しようとする。

そんな人工的につくりあげた感動めいたものを共感するために受験でくたびれた高校生を学校に呼び出さないで欲しい。

さらに、リア充どもは友達とこれでもかと写真を撮り、またある者は卒業式にかこつけて異性にロマンチックな愛の告白をする。

どれも無縁な俺にとっては最後で最強の敵であると言ってもいい卒業式というイベント。

俺はこれまで2度の卒業式を経験しているが、ろくな思い出がない。

小学校の卒業式では合唱の最中に俺の周りを飛び回っていたハエを思いっきり叩いたせいで全員の歌が止まり、台無しになったため最後の最後でぼっち比企谷は皆の敵になった。

中学校の卒業式では一刻も早く帰宅しようと体育館裏の裏口からこっそり帰ろうとしたら、告白のために手紙で体育館裏に呼び出されていた女子に

「え?あの手紙、比企谷くんだったの?あの…、ごめんなさい。そういうのは無理です!」

って、告白せず振られるという奇跡的な惨事に見舞われた。

最後の敵よ、早く楽にしてくれ。

と心でつぶやきながら、名前を呼ばれるのをただただ待つ。

 

高校になると式の正式名称をやたらに強調してくる卒業証書授与式。

リア充どもは卒業証書を受け取る前に名前を呼ばれる時、ネタを披露したり、意味不明の奇声を挙げたりして会場に失笑をもたらす。

そんな中、俺の名前を呼ばれた時は会場が一旦静まり、そしてざわつきだす。

奉仕部に入るまでは、誰にも認識されないぼっちだったが、今となっては何かとやらかした陰湿で非道な誰からも近づかれないぼっちへと進化を遂げた。

見た目はそう変わらない進化だ。

○カチュウが○イチュウになったところでどっちが強いか見た目じゃ判断できないだろ?

それと同じだ。

このざわつきは、「比企谷だぜ…」「あいつ、卒業させていいのかよ」「留年したらしたで迷惑だからな」とでも言っているのだろう。

もう慣れたさ。

卒業証書を受け取る。

終わったぜ。

高校生活。

 

卒業証書授与が終わり、卒業生の言葉に移る。

慣れた面持ちで、つかつかと一定のリズムを刻み舞台に上がる黒髪ロングの美少女。

生徒会長にして、首席で卒業。

総武高校でも唯一の難関国公立T大学に合格した雪ノ下雪乃だ。

雪ノ下は奉仕部の部長を俺に任せて3年前期の間、生徒会長を務めた。

1年が経ち、背も少し伸びただろうか。

より美しく、魅惑的な女性に成長した。

顔も一段と大人の女性といった感じだ。

胸は…。ま、まぁ、あれだ。ほぼ毎日、顔を合わせていたからな。

気づかないのも無理はない。

いや、毎日あいつの慎ましすぎる胸を見てたわけではないぞ。

確かに偉大なる乳トン先生の万乳引力の法則はいかなる物体にもはたらくが、あの大きさではそもそも乳じゃ…って!あいつ遠目に俺を睨んでねえか!

どんだけ鋭いんだよ。

俺から目を離して(多分)雪ノ下は手元のカンペを開き、一呼吸おいた後、つらつらと奏でるような朗読を始めた。

あくまでもありきたりな文章だ。丁寧に流れるように読んでいる内容は、文実のこと、生徒会のこと、勉強のこと…。

どこの卒業式もだいたい同じであろう内容を雪ノ下は落ち着いた様子で読んでいる。

と思った矢先、雪ノ下はカンペを閉じた。

歯切れの悪い終わり方だ。

普通は先生方、ご来賓の方々どうこう等と述べて締めくくるものではないだろうか。

雪ノ下にしては珍しく緊張した様子だ。

なんだ?

まさか、どっかの学園ドラマみたいに優等生が「何で勉強しなきゃいけないの!?」って叫び出すパターンか?

って、あいつはもう進学決まってるしな。

それにしても何だこの間は。

すると雪ノ下はマイクがハウリングしかける程の深呼吸をして、続けた。

遠目に顔を赤らめているように見えた。

 

「…私はこの高校に来て大切なものができました。

初めて大切にしていきたいと思える友達に出会いました。

感謝…、感謝しています。

その人達との思い出は大切なものです。

そう。

大切な…。

在校生の皆さんも是非、そんな友達を…見つけてください。」

 

…、驚いたよ。

ここまで雪ノ下雪乃という人間に驚かされたことは数えるほどしかない。

理想の女性から温かい心だけを取り去ったような彼女からこんな言葉を聞くことになるとは。

意外なのはこんなことを大衆の前で言い放ったことだろう。

今この場で言うことに何の意味があっただろうか。

彼女の中でどのように整合性を図ってこの行動をとるに至ったのか不思議で仕方ない。

それに、雪ノ下にしては文章力が低いというか、選んだ言葉は外国人が辞書を引きながら話しているようだった。

まあ、友達っていうのは、由比ヶ浜のことだろう。

「俺は?」なんて言ってみろ。

「あなたと友達になるくらいなら、死んだ魚の方がましよ。」

なんて憎まれ口を叩かれるだけだ。

その後はカンペを再び開き、特に何もなく「卒業生の言葉」を終えた。

 

「ゆきn…グスッ ズズッ」

鼻をすする音がうるさいと思って斜め前に目を向けると、由比ヶ浜が嗚咽を漏らしながら泣いていた。

必死に堪えようとしているが抑えきれないのだろう、吐きだしそうな様子だった。

三浦が優しい笑みを浮かべながら、由比ヶ浜の背中をさすっていた。

あの雪ノ下が必死に紡ぎだした言葉。

由比ヶ浜には分かったはずだ。

その気持ちの大きさがどれほどのものか。

俺にも分かったくらいだ。

雪ノ下を一番理解しようとしてきた由比ヶ浜ならなおさらのことだろう。

口調や声色が同じでも分かる。

あの僅か30秒くらいのメッセージは、雪ノ下の心からの感謝の気持ちだった。

 

続いて合唱に入り、雪ノ下の伴奏で曲が始まる。

こいつはピアノも出来るんだったな…。

「「「白い光のなーかにー」」」……

合唱を何もなく終えたことに安堵していると、生徒の大半に覚えられていない教頭先生が閉会を宣言し、卒業生は退場。卒業式は幕を閉じた。

 

今年の卒業式は俺の黒歴史リストに残りそうな失態も無かったし、めでたしめでたしだな。

とか考えていたら、体育館から教室に戻る途中、意外な人物に話しかけられた。

「比企谷、ちょっといいか…。」

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