第1章 案外俺の卒業式は間違っていない。 作:あらがき@北宇治高校
特に意味もなくペンネームを変えました。
pixivでも『あらがき@材木座以下のss』というユーザー名で投稿しておりますが、こちらにも投稿させて頂きます<m(__)m>
ただ、pixivに投稿しているものに若干の修正を加える場合もありますので、ご了承ください。
まだ勝手が分かっておりませんので、取るに足らない部分は多々あると思いますが、よろしくお願いします。
➂案の定、比企谷八幡は踏み込まない。
「あ…、ありがとう…。比企谷くん…。」
…。
…。
……………………………。
え?
…。
なんだよ。
そうか。
分かったぞ。
勘違いするところだった。
俺の豊富な黒歴史がこの状況を説明できないはずがない。
そう…、今までだって何度も失態を繰り返してきた。
自分に、周囲に期待して、裏切られ、傷つき、諦める。
その度、比企谷八幡は自分を戒めてきた。
なのに、どうして…
差し込む一筋の希望の光を見つけるとそこに手を伸ばそうとするんだ。
その光は俺に向いているものかどうかも分からない。
自分に期待するのはもうやめると決めたのに。
また、同じことを繰り返すのか。
俺は雪ノ下から目を逸らす。
この言葉の空白はいつもの奉仕部の無言状態とはわけが違う。
今にも押しつぶされそうな圧力を感じさせるこの空間には、俺の早まる鼓動と雪ノ下の唾を飲み込む音だけが重く響き渡る。
「その…。
『不本意ながらも』あなたがいてくれて助かったことは幾つかあったし…、
私はこの奉仕部で過ごした時間を心地よいと感じていたわ。
その一つの要因であるあなたにお礼を言うのは特におかしいことではないでしょう?」
雪ノ下はそう言いながらも自分がおかしいことを言ってるかのように顔を赤らめている。
「そうか…。」
そりゃ、こう言われて不快に思うほど俺も捻くれてはいない。
だが、優しい言葉を素直に受け止めてはいけないと『俺の経験則が自発的に出す指令≒本能』のようなものが警告する。
そう、今までだってそうだったんだ…。
今だって何も変わっちゃいない。
だったら俺は…。
「比企谷くん…
だから、今なら私t」
「雪ノ下。
俺、実はあるやつから伝言を預かっててな。
葉山なんだが、お前に言いたいことがあるから体育館裏に来て欲しいそうだ。
今すぐ行ってやってくれ。」
雪ノ下はキョトンとした顔を一瞬浮かべるが、すぐに不快さを閉じ込めようとする表情に変えた。
「そう…。
葉山君ね…。
何かしら。」
その『何かしら』は答えを必要としていなかった。
「さあな」
「ちなみに、あなたは何故そんな役を引き受けたの?
あなたにとって無益だし、そもそもそういうことに興味がないでしょ?」
そうだな。それは間違っていない。
だが、雪ノ下。
俺はお前には少し興味がある。
今まで数多くの男を振ってきたお前が葉山のような八方イケメンをどんな風に蹴散らすのか。
いや、そういう意図で依頼を引き受けたわけじゃないぞ。
今、ふと気になっただけだ。
「葉山には文実の時の借りもあるしな。
どうせ、この教室に来る予定だったから、引き受けただけだ。」
まあ、さっきそんなことは考えてなかったが、今思えば確かにそうだしな。
「そう…。」
雪ノ下は少し俯き、言葉を継ぐ。
「その…。
比企谷くんはいいのかしら?
私が葉山君に告白されて、彼と恋人関係になっても。」
なぜ俺がいいとか悪いとか思わなくちゃならないんだ?
「は?
何か俺にとって困ることがあるか?」
こいつまさか…。
「だって、あなた、私のことが好きなんでしょ?」
やっぱりそうか。
だが、以前同じことを言った時とは雪ノ下の様子が少し違った。
以前は『どうして私を好きじゃないことがあり得るの?』と言わんばかりの顔をしていたが、今回は俺を伺うような様子だった気がする。
「お前…
前にも違うと言っただろ。」
「そうだったの…」
当たり前だ。
俺は戸塚以外に恋人にしたいやつなんていないからな。
だが、俺はてっきりこいつは葉山に対して特別、嫌悪感を抱いていると思ってたぜ。
「でも…その…なんだ…
お前、葉山と付き合うのか?」
「さあ、どうかしらね。
あなたは別に興味ないんでしょ?」
雪ノ下は嘲笑する。
「…。
まあな」
そうだ、さして興味はない。
「まぁ、分かっているとは思うけど…ね」
そう言って雪ノ下は席に戻り、本をかばんにしまって、歩き出す。
「それじゃあ、行ってくるわ。」
そう言って、雪ノ下は教室を後にした。
「ああ」
雪ノ下が出ていった後、俺は小さく返事をした。
まあ、本でも読むか。
俺は、いつもの席に座り、読みかけの本を開く。
―雪ノ下雪乃―
今、私はあの男のせいで、体育館裏に向かうはめになっている。
葉山君はきっと私に告白すると思うのだけれど。
私は葉山隼人という人が嫌いだ。
自分は何でも出来ると過信し、理想論や当たり障りのない美辞麗句を並べて、いざという時には何もできない。
私の時もそうだった…。
それなら、まだあの目の腐った男の方が少しはマシかしら。フッ
でも、ちょうどいいわ。彼に言いたいこともあったし。
葉山君は私を見つけると小さく手を振り、小走りで駆け寄って来る。
「雪ノ下さん、ごめんね。
急に呼び出したりして。」
「そう思うのなら呼び出さないで欲しいのだけれど。」
「確かにそうだね。
でも、今回はそういう訳にはいかないんだよ。」
葉山君は真剣な表情を浮かべる。
私の目にはそんな彼の一挙手一投足が欺瞞で塗りつぶされたものに映るのだけど。
「雪ノ下さん、僕は…」
葉山君がそう言いかけた時、背後からザッザッザッと走る音が聞こえた。
誰なの…?。
振り向くとそこには見知った顔の彼。
少し息を荒げて膝に手を置いて俯いている。
何故、あなたがここにいるのかしら。
「どうして君がここに…?」
葉山君にとっても予想外だったようね。
「葉山…。」ハァハァ
彼はガバッと顔を上げた。
「俺と雪ノ下は…」
「付き合ってんだよ」