第1章 案外俺の卒業式は間違っていない。   作:あらがき@北宇治高校

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初めまして、あらがきと申します。
特に意味もなくペンネームを変えました。
pixivでも『あらがき@材木座以下のss』というユーザー名で投稿しておりますが、こちらにも投稿させて頂きます<m(__)m>
ただ、pixivに投稿しているものに若干の修正を加える場合もありますので、ご了承ください。
まだ勝手が分かっておりませんので、取るに足らない部分は多々あると思いますが、よろしくお願いします。


⑦ご覧の通り、彼と彼女はどこかぎこちない。

⑦ご覧の通り、彼と彼女はどこかぎこちない。

 

「「え…」」

 

 

「ひ、比企谷くん…」

「いや、なんだ、その…これはだな…」

なんだ!?この展開は!

たまにはラブコメの神様はいいことをする…ってやつか?

やべぇ、これ、どうしたらいいの?

ヒキペディアに載ってないぞ!

ユキペディアに載ってるんだろ?

教えてくれ!

「変態…」

雪ノ下は胸の辺りを両手で隠すようにして身をよじらせ、俺への最大限の拒絶を示す。

おいおい、ここは『全く、この変態さんはダメダメですね…』って超かわうぃーボイスで囁いてくれるんじゃないの?

だいたい、お前の慎ましすぎる胸になんて一切興味ないっつーの。

「比企谷くん、何故まだここにいるのかしら?

食材を冷蔵庫に詰めるのなんて、すぐに終わるでしょう?

てっきり、由比ヶ浜さんのところに戻っていると思っていたのだけれど。」

「いや、この家の勝手が分からなくてさ…

思ったより時間がかかっちまったんだよ。」

ほんとだって!

やましい心は全くなかった!

「あなたのその下心に満ちた下卑た目を見て、尚そんな言い訳を信じるなんて出来ないわ。」

なんだか、懐かしいセリフだな。

初めて会った時だったか…。

と、雪ノ下は何かを思い出したような素振りを見せた後、その顔色がどんどん青ざめていく。

「冷蔵庫…ってことは…」

と言葉を漏らした後、焦って駆け出した。…瞬間に足を滑らせ、体制を崩す。

「ひゃっ!」ドタッ

 

 

もうね…何言われても仕方ないわ。

 

今、俺は倒れかけた雪ノ下を抱き留めている。

風呂上り独特のいい匂いは俺の理性を喰い散らかす。

改めて見ると、こいつ…本当にいい女だな。

 

それにヤバいのは…

その…俺の腕に当たってる、雪ノ下の慎ましい胸が見た目より…

 

雪ノ下は放心状態なのか、俺に体重を預けたまま動こうとしない。

 

「ゆ、雪ノ下…」

「はっ…

ご、ごめんなさい…」

雪ノ下は意識を取り戻したのか、俺から離れる。

 

俺たちはお互いに背中を相手に向けたまま口を開こうとはしない。

 

先に口を切ったのは雪ノ下だった。

「あなた…

冷蔵庫の中に…その…見つけた…?」

何を言ってるんだこいつは?

「何をだ…?」

「だから…私が食べそうにないものとか…」

ん…?

あ、そういうことね。

こいつ、猫缶を見られたかどうかを心配してるわけか。

それで、あんなに焦ってたのな。

「猫缶のことか?」

『猫缶』というワードが俺から発せられたと同時に雪ノ下はビクッと体を硬直させる。

「ゆ、由比ヶ浜さんには内緒ね…」

そんなに恥ずかしいのかよ…。

まぁ、お前の猫への溺愛様と言ったらもう…な。

「あ、あぁ」

雪ノ下は冷蔵庫に向かい、ガチャガチャしている。

「お、俺、由比ヶ浜呼んでくるわ。」

「そう…

お願いね。」

 

 

 

「はぁ…」

なんだか、ドッと疲れた…。

俺はエレベーターに乗り込み、一階のボタンを押す。

高級感漂うエレベーターは俺に一人であることを強く知らせる。

雪ノ下のボディーラインくっきりand6割裸状態の映像が網膜に焼き付いて離れない。

何が意外だったかって、雪ノ下って意外とむn…

もうやめよう。

忘れよう。

この後が辛すぎる。

 

由比ヶ浜は俺を見つけると頬をプクーッと膨らませてみせる。

「ヒッキー遅いよー」

「すまん。

雪ノ下のキッチン周りの勝手が分からなくてちょっと手間取った。」

手間取ったのは、それだけじゃないんだがな…

「行くか。」

「うん!楽しみだね!」

俺は怖くもあるがな…

 

雪ノ下の部屋に着いた時には、雪ノ下はラフな私服に着替えていた。

って、当たり前か。

 

「おじゃましまーす!」

「由比ヶ浜さん、ごめんなさいね」

そう言って雪ノ下は冷たい視線を俺に向ける。

俺は流石に決まりが悪いから、目を逸らす。

由比ヶ浜は俺と雪ノ下を交互に見て、その場の空気を読み、焦り気味の口調でなだめようとする。

「い、いいって、いいって!

気にしないで!

それより、たこパの準備しよ!」

 

早速、3人で準備に取り掛かる。

由比ヶ浜は準備というよりは、構想を練り始めた。

「何がいいかなぁー?

やっぱり、最初は〇イチュウかな?」

いや、あの〇イチュウって生地の中に入れる用だったの?

てっきり、別で食べるものだと思ってたわ。

「由比ヶ浜さん、まずは普通のたこ焼きがちゃんと出来てからにしましょう。」

正論だな。

正論すぎて、たこ焼きパーティーというには、少々堅苦しい気もするが…。

雪ノ下は心地よい音を奏でながらキャベツの千切りを作り、手際よく生地と調味料を混ぜ合わせ、たこ焼きに必要な刷毛やキリをテーブル上に揃える。

正直に言うと、俺はその姿に見とれていた。

雪ノ下はふと俺の目線に気付き、さっきのタオルだけの時と同じように身をよじらせる。

「比企谷くん…まさか…」

由比ヶ浜は俺らの不自然な様子に気がついたのか、また、俺たちを交互に見る。

「違う!

断じて違う!」

「それじゃあ…なに?」

んなこと言えるかよ。

「それは…」

俺はいい言い訳を必死にひねり出そうととするが、全く思い付かない。

「やっぱり…」

「違うって!

なんだ、その…

お前があんまりにも手際がいいから、もしかしたら俺の専業主夫スキルをも上回っているかもしれんと思っただけだ。」

雪ノ下は理解してくれたのか、体制を戻し、得意げな顔をする。

「なるほど。

要約すると、可愛くて家事もこなせる私の姿を実際目にして見とれていたということね。」フフ

お前、どんだけ都合のいい要約だそれ。

「そういうことでいいよ」

「あら、否定しないのね。」

「客観的に間違ってるわけじゃないからな。」

「…」(// //)

雪ノ下は意表を突かれたように目を丸くし、頬を染め、少し照れているような仕草をする。

少し…、いや本当にすこーしだけ可愛い。

俺たちのやり取りを見かねたのか、由比ヶ浜は間に割り込み、口を切る。

「いやぁー、ゆきのん本当に何でもできるよねーー

羨ましいなー

あたしも料理できたらなー

ヒッキーはどう思う?」

「何が?」

「料理が出来る女の子のこと」

「そりゃぁ、出来るに越したことはないが、俺はあくまで専業主夫になる予定だからな。

別に出来なくても俺がやるから大丈夫だ。」

「そうだったね…」

由比ヶ浜は俺を憐れんだ目で見て、雪ノ下に向き直る。

「ゆきのん、また今度料理教えてね!」

「え…」

「ゆきのーん(;Д;)」

「冗談よ。

私でよければ、いつでも教えてあげるわ」

「ゆきのーん(;∀;)」

相変わらずだが、この2人の偽りのない友情を見てると流石の俺でも心が穏やかな気持ちになる。

 

 

だから、たまに考えることもある…。

 

 

俺もこいつらの友達になれたらな。

 

などという、思い上がった幻想を。

 

まぁ、そんなことはないだろうから、自分でも安心してるんだがな。

 

 

そんなこんなで、古めかしく舶来のものといった感じの時計は6時半を指す。

そろそろお腹も空いてきた頃合いに準備も終わって(全部雪ノ下がやったのだが)、後は生地を流し込み好きな具材を中に入れて焼くだけだ。

「それじゃあ、焼いていこぉーーー(^O^)/」

「ちょっと待って」

雪ノ下はキッチンに戻り、カランカランとガラス製のようなものがあたる高い音を鳴らして、一級品を匂わせる大きなビンを持ってきた。

「ゆきのん、それなに?」

「何って、シャンパンだけど。」

「そうかぁ…シャンパンか…

って!なんで?

あたしたち未成年だよ!」

「パーティーと聞いたから、乾杯用に調達したのよ。」

「まじで!?」

こいつ…こんな高校生3人でやる庶民のパーティーでシャンパンが必要とか本気で思ってんのかよ。

今まで、どんなパーティー経験してきてんだ?

「ま、まぁ、せっかくゆきのんが用意してくれたんだし、今日くらいはいいよね。

ねぇ、ヒッキー?」

「お、おう」

急に振られたらびっくりするつーの。

中学の卒業式のやつほどじゃないけどな。

「それじゃあ、そこのグラスをひk…いや、由比ヶ浜さん取ってくれないかしら。」

いや、そういうの一番傷付くからやめてくんない?

クラスの女子に一年間で何度「ひk…いや、」っていうのやられると思ってんだよ。

「いや…ヒッキーの方が近いし…

今日、2人ともおかしいよ!

なんかあったの?」

「「何もない(わよ)」」

「ハモるくらい必死とか余計あやしい…

まぁ、いいや!」

いいのか、よかった…

雪ノ下を愛して已まない由比ヶ浜にさっきのことがばれたらマジで殺される。

「今日はせっかくのパーティーなんだし、もっと楽しくいこーね?」

「ええ、そうね」

俺は黙って雪ノ下にシャンパングラスを3つ渡す。

雪ノ下はそれらをテーブルに並べ、いかにもといった丁寧な持ち方でシャンパンを注ぐ。

「それじゃあ、部長からのひと言!

その後、カンパイね!」

雪ノ下は少し困った顔をしたが、コホンと小さく咳払いをして口を開く。

「えーと、1年半の奉仕部の活動、お疲れ様。

それでは、乾杯。」

「かんぱーい!」

「うぃーす」

雪ノ下はグラスの足の下の方を持ち、美しい振る舞いでシャンパンを流し込む。

「うぇー

にがーい」

由比ヶ浜、正直すぎるぞ。

それに、〇ツ矢サイダーじゃあるまいし、そんな喉を鳴らしてごくごく飲むもんじゃねえよ。

 

「よーし

それじゃあ、焼き始めるぞぉーー!」

 

 

こうして、奉仕部の卒業パーティーは始まった。

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