作家のすなる勘違いというものも私もしてみんとてするなり。   作:菊池 徳野

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続いたよ。
そして二話連続投稿だよ。

一話覚えてる人いるのかなー?


新しい艦娘が鎮守府に着任したのです!~電~

あの衝撃的な出会いを経てなんとか正式な挨拶を交わした後、電は予定通り司令官に鎮守府の案内を行うことにした。

予定通りと言ってもできたのは食堂、私室、執務室を巡ることだけで、その後は司令官の発言から次の目的地を工廠に予定を変更することになったが、そこは些細な問題である。前の出会いゆえにか互いに緊張などすることがなく、想像よりも一足飛びに司令官との関係が深まったことはプラスに考えて余りある。

 

しかし、初めはどうなることかと思った司令官との関係だが、思いの外会話に困るような事もなく、むしろ一定以上の信頼を電に置いているのか時たま冗談を投げ掛けてる事もあるほどであり、電としてもこの関係は概ね満足しておりこれ以上は時間が進めてくれるだろうと考えていた。

 

ただ、司令官の表情の変化が乏しく笑顔を見られるのはまだ時間がかかりそうであることが気がかりであり、唯一の不満であった。強面、という言葉では足りない司令官のその顔貌は、幼い姿の電にとって直ぐに慣れるものではなく、そのために歩み寄るのを躊躇ってしまうという電自身にも責任はあるので、それも仕方の無い事である。

 

笑顔の裏で司令官に対する罪悪感と情けない自分への叱責を行いながらも電の歩みが止まることはなく、次第に次の目的地である工廠との距離は目視できる程度になっていた。

 

司令官の少し後ろから続くように工廠の門をくぐったところで、電は少しばかり姿勢をただす。

といっても軽く背を伸ばす程度で傍目には分からないような変化だが。

 

さて、時に艦娘にとって、妖精とはどのような存在であるかご存知だろうか?

一緒に戦う仲間?補給や艤装の製作をしてくれるお手伝いさん?あるいはただ可愛らしい生きもの?

 

否。そのような生易しい存在ではない。

確かに艦娘寄りの考えを持つ協力者であり、有りがたくも可愛らしくもある存在である事は正しい。

しかし、その本質はもっと単純で『怒らせてはいけない相手』これに尽きる。

 

人類に力を貸すと決めた艦娘、その艦娘をサポートする妖精、本来の力関係を考えれば当然である。

しかし、電が姿勢を正した理由はその力関係故ではない。余程の事がない限り艦娘と妖精が敵対するという事はあり得ない。艦娘は物としての意識や付喪神としての考えが強く残っている為か、基本的に他者との明確な確執を自らが原因で引き起こそうとはしない。それが自分より立場が上の者相手であれば尚更である。

 

では、艦娘と妖精が敵対する状況とは何か。

 

それは提督が妖精を蔑ろにした場合である。

元々思考が幼い傾向にある妖精の好意を頭ごなしな態度で無下にするということは、そのまま嫌悪、そしてボイコットに繋がる事は容易に想像できるだろう。

実際、元大本営所属である電は微々たる件数とはいえそのような事があり機能を停止した鎮守府があると耳にして来ている。

 

努めて笑顔を浮かべてはいるが電が内心不安になっている理由は正にそれである。

工廠へとやって来て早々に司令官と妖精とを引き合わせる事に成功したが、その後の妖精への対応は電が関与してはならない。そう大本営から厳命されているのである。

 

司令官を見る妖精の様子が明らかに司令官を見て怯えているのを見て冷や汗が頬を伝う。

玄関での自分の事を思い出すとその気持ちは充分に理解できるが故にその怯えが拒絶に変化しないだろうかと思ってしまう。

いや、提督は好い人だから大丈夫なのです…たぶん、きっと…なのです。

 

「妖精とは君達のことか。この鎮守府に着任した五十嵐だ。これからよろしく頼む」

 

そう言って深々と頭を下げる司令官に電はほっと胸を撫で下ろした。これなら妖精達も怯えたりはしないだろうし、協力してくれることだろう。

妖精達も気を許したのか司令官に近寄って思い思いに話しかけているみたいで一安心である。

 

そこで思い出したかのように電の胸中を罪悪感が襲う。

そう、本来ならこれが当たり前なのだ。余程の人間でもない限り下手な状況にはならない。

悪い人間ではないと理解していた筈だったのだ。それをこのように疑うような事をしてしまうとは、提督を疑っていて何が艦娘か、何が軍人か。

 

「…のだろうか?…電?どうかしたか?」

「えっ?」

 

不意に聞こえてきた声に思わず声が漏れる。咄嗟に言葉を返したが、司令官から話しかけられていることに気付かず物思いにふけるなど…。

 

「誰を呼ぶのが良いかと思ってな。もし電が会いたい相手が居るのならそうしようかと、な」

 

そう言う五十嵐の顔は、余計な事を言ったとでも考えたのか、ばつの悪そうな様子が見てとれる。

これ以上失態を演じる訳にはいかない。

それに折角ならここは提督の好意に甘えさせてもらうとしよう。

 

「そうでしたか…誰が来ても嬉しいですけど、やっぱり姉妹艦の皆に会いたいとは思うのです」

 

そう口にして思い出すのは大本営で見かけた姉妹の姿。提督や軽巡と連れだって歩く姿はどこか楽しそうで、どこか羨ましく感じたものだ。特にその中に違う自分の姿を見かけた時など…。

いけない、これ以上余計なことは考えては。

そうだ、飽くまで運が絡むとはいえ本当に姉妹艦の誰かが来るかもしれない。そうなったらこの薄暗い感情を吐露してしまおう、きっとそれが一番いい筈だ。

もし関わりの薄い艦娘が来たらその時は一人枕を濡らせばいい…。

 

「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」

 

バッと聞き覚えのある声に俯いていた顔を向ける。

そこには慣れ親しんだ姿の暁がいた。腰に手を当てて少し得意気な表情の彼女は正に電の通りで、先程までの考えなど吹き飛んでしまう。

 

「五十嵐三尉相当官だ。君たちの指揮を取ることになる。まだ人員が少ない今、君の様な歴戦艦を迎え入れられる幸運に感謝を」

 

そう言って差し出される提督の手を、暁は怯えることなく握り返した。

 

「任せなさい!私が来たからにはどんな任務でも朝飯前なんだから!よろしくね、司令官!」

 

そう機嫌よさげに口にし、司令官に対して笑顔で応える。握手のあとに手を降る姿は少し幼かったが、その姿は立派なレディーである。

 

しかし電は知っている。手を差しのべられた暁が想像よりもフォーマルな提督の対応に目を白黒させていたのを。そして勢いだけで握手に応じていたことを。

 

だが敢えて口にして波風を立てる事もあるまい。いくら海を舞い踊る艦娘であっても、事を荒立てるのは本意ではない。立つのは湯気くらいでいいのだ。

 

挨拶を済ませると暁に断りを入れて妖精達の方へと提督が移動すると、ようやく気がついたのか暁がこちらに駆け寄ってくる。

走ると危ないのです。

 

「電!久しぶりね。それとも初めましての方がいいのかしら?」

「姉妹なんだから初めましては変なのです。暁ちゃん」

「やっぱりそうよね。じゃあ改めて久しぶり、電」

 

そう言って抱きついてくる姉を受け止める。

 

「はい、久しぶりです暁ちゃん…!」

 

ぎゅっと抱きしめ返すと、少し痛いと冗談目かして言ってくる姉の言葉に聞こえなかった振りをして少しだけ肩口に埋めた顔を押し付けた。

そうすればしょうがないとばかりに甘えさせてくれるのだから、やはり電にとって暁は十分にレディで大好きなお姉ちゃんなのだ。

 

そしてふと先ほど見た物を思い出す。

駆け寄る暁の後ろ、奥へと向かおうとする提督の横顔、その口角が上がっていたのを電は確かに見たのだ。

 

それは怯えなかった暁に気を良くしたからなのか初の建造成功に達成感を覚えたからなのか。それを聞くには一瞬過ぎたし、なにより電としてはその真意を聞くつもりは無い。

 

ただ、その優しい眼差しが喜ぶ自分を見たからだったというのなら…。

そこまで考えて電は暁の体に顔を埋める作業に更に力を入れることになった。

 

「ちょっと電!?本当に少し痛いんだけど!」

 

兎に角提督が戻ってくるまでにこの赤くなった顔をどうにかしなければならないのだ。

 

なのです!




一人思い悩む美少女はより一層可愛い。
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