作家のすなる勘違いというものも私もしてみんとてするなり。   作:菊池 徳野

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そして提督視点。


デイリーミッション、建造開始します~五十嵐~

一風変わった挨拶(と彼はそう主張する)を済ませ、電と二人だけの鎮守府を見て回る。

電は五十嵐が到着する前に少し中を見て回っていたらしく、取り急ぎ覚えねばならない『執務室』『工廠』『食堂』の場所を把握しており、自ら案内を志願してくれた。

 

「提督さんの執務室はここなのです。先程の食堂からあまり遠くない所にありますから、お茶を淹れたりするのは便利でいいと思います」

 

と、執務室についての感想を述べてくれるがその明るい口調とは裏腹に彼は内心で困惑していた。今なお建造中の鎮守府故に家財など足りないものは多く、大本営からは暫くの我慢が必要だと聞かされていたのだが…

 

「…ミカン箱、しかないがな」

「…なのです」

 

通気性がよすぎる程にがらんとした室内に書類の数枚置かれたミカン箱が2つだけという、逆に清々しいほどに働ける環境ではない目の前の光景に電と二人、顔を見合わせて失笑を漏らす。

それにやはりこの何もない執務室を無理矢理褒めるのは苦しかったのか、電も同意の言葉をこぼしていた。

一先ず暫くの間は執務は食堂で行うしかないだろうと考えながら、気持ちを持ち直して一番上の書類を手にとって内容を確認する。

 

「『艦娘の建造を行い人数を増やし、鎮守府周辺海域の偵察を行うこと』」

「でしたら次は工廠へ行きましょう!恐らく資源がいくつか置いてある筈なのです!」

 

新しい仲間が増えるからか急に威勢のよくなった電の後ろに続いて執務室を後にする。

保管や送り返す事も無いからと無造作に書類を元の場所に戻し、とにかく執務室の現状を忘れることにした。

 

 

工廠は鎮守府の本棟とは別にドックと一緒になって建てられていた。

工廠は主に開発、建造、解体、出撃を行う場である。

当然油や鉄の匂いの強い場所であり、そして何より彼女達艦娘に一番馴染みのある場所である。

 

「ここが工廠なのです。細かな内容は妖精さんが教えてくれると思うのです」

『ヨロシクです』

 

電がそう言うと何処からともなく妖精がやってくる。

映像などでは見たことがあったが、その姿は想像よりも一回りほど小さい。

それに何処と無く警戒されているらしく、それで縮こまっているのも小さく見える理由の一つだろう。

 

「妖精とは君達のことか。この鎮守府に着任した五十嵐だ。これからよろしく頼む」

 

帽子を脱いで頭を下げる。

報告ではその精神構造は小学生の子供のようだと聞いているからこの顔はあまり見えない方がよいだろう。

彼女らに嫌われてはこれからの職務にも支障が出かねない。

それにこんなにかわいい生きものに嫌われて避けられるなど想像したくもなかった。

 

『礼儀正しい人』

『顔が怖いだけみたい』

『楽しい鎮守府ライフが期待できそうです』

 

それが功を奏したのか警戒心は薄れているようである。

隠れていた何人かもやって来て何やら目の前でヒソヒソ話を始めたので少し面食らってしまった。

取り合えず用件だけでも伝えてしまおう。

 

「それでいきなりなのだが、建造を行いたい。頼めないだろうか」

 

『マカサレテー』

『カシコマリ』

『誰を狙いましょうか?』

 

「む、誰がいいか…、電は誰か会いたい相手などはいないだろうか?」

「…」

「電?」

「えっ?あっ、何でしょう司令官?」

 

妖精さんからの突然のフリに言葉が詰まってしまい、咄嗟に電に決めて貰う方が良いかと話を振ったのだが何やら考え事をしていたようで、焦ったような返事が返ってくる。

あわよくば仲良くなれるよい案だと思ったのだが、タイミングが悪かったらしい。仕方ないのでもう一度伝えるとしよう。

 

「誰を呼ぶのが良いかと思ってな。もし電が会いたい相手が居るのならそうしようかと、な」

「そうでしたか…誰が来ても嬉しいですけど、やっぱり姉妹艦の皆に会いたいとは思うのです」

 

どうやら本当に考え事をしていただけのようで普通に反応が返ってくる。しかし笑顔が固いのは嫌でも気づいてしまう。少し自己嫌悪…。

 

しかし姉妹艦か、言われるまでまったく思い付かなかったな。

ここは電の意見を優先させるとしよう。所詮は今日着任したばかりの俺にはいろはのいの字も分からないのだし、それなら要望を聞いた方がよいだろう。

 

「では、駆逐艦を。できれば電の姉妹艦を呼んでほしい」

『行くぞ皆の衆』

『祭りだ祭りだー』

『流石に気分が高揚します』

 

やけにテンションが高い気がするが、これが彼女たちの本質なのだろう。

見た目に反して物凄い速さと力で工廠の隅に詰まれた材料を運んで作業を開始する。

 

「今は少しでも人手が欲しい。高速建造材を使ってくれ」

 

そう告げると今度は巨大なガスバーナーを持った妖精が現れた。

 

『汚物は消毒だぁー』

 

・・・本当に大丈夫なのだろうか。というか汚物って。

等と考えている間にも建造は進んでいき、ドックとおぼしき場所には人影らしきものが見える様になってきた。

 

『なーにかな、なーにかな?』

『今週はこれ♪』

 

と、高速建造材が火を吹いている横でくるくると飛び回ってる妖精を眺めているとどうやら建造が終了したらしい。

気づくと目の前にはどことなく電に似た少女が立っていた。どうやら成功したらしい。

 

「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」

 

特III型駆逐艦1番艦、だったか。

1番艦とはいえ、水進や竣工の関係でどちらが姉かは分からないが何にせよ電の姉妹ということには違いない。

どうやら妖精さん達は上手く目標通りやってくれたらしい。どことなくしたり顔をしているのもそれが理由だろう。

後でお礼をしなくてはな。

 

「五十嵐三尉相当官だ。君たちの指揮を取ることになる。まだ人員が少ない今、君の様な歴戦艦を迎え入れられる幸運に感謝を」

 

少し気障だったろうかと思いながらもそう言葉を返して握手を求める。

海軍の言い回しにはこういったものが少なからず存在するため、レディーを自称する彼女にはよいかと判断してのことだったのだが些か恥ずかしい。

 

「任せなさい!私が来たからにはどんな任務でも朝飯前なんだから!よろしくね、司令官!」

 

が、効果覿面である。

上機嫌で此方の手を握り返してくる暁の姿に内心ガッツポーズを取りながら、羞恥心を洗い流す。

そして向けられる笑顔に心が洗われるような錯覚に陥りかける。

 

もう少し話をしようかとも思ったが、今後の建造や開発任務等について話し合うからと告げ妖精達が集まっている場所に歩を進める。

暁も電と話したいこともあるだろうしちょうどいいだろう。

 

あ、妖精さん。建造ありがとね。環境が落ち着いたら今度お礼を持ってくるよ。なら金平糖でいい?よしきた、任せてくれ。

 

なんてことを話しながらふと気がついた。

暁は俺の顔にビビらなかったなぁ、なんて。

その後工廠を出るまでの間、足取りが軽く感じたのはきっと気のせいではないのだろう。

 

あと電さん?なして顔が赤かと?

キマシなの?姉妹でキマシしてたの?




全然勘違い要素入れられなかった…。
いや、空回りしてた電の思考はある意味勘違いだったのでは?とか思ったけどそれはないな。うん。

あと、電視点の最後の方を地の文に三人称と一人称を混ぜてみたのですがどうだったでしょう?
読みにくさや違和感を感じた方がいたら教えていただけると幸いです。

次は天竜ちゃんでも出して勘違いもりもりにしたいなー(願望)。
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