地位や名誉、血筋、そして才能。あらゆる点で恵まれていた。
親も従者も同僚も皆がその者を大切にした。
だか、彼女は知っている……光あれば影もある。
自分を恨む人もまた居るのだと。
例え恨まれる理由が、望まざる事であろうとも……。
もう一つの話ほったらかして何してんだ俺……。
忙しくて中々書けないので続けるかどうか分かりません。
会社がブラックなのが悪いんや(涙)
それとFate/Apocryphaが面白いのも悪いんや……
人生とは分からないものだ……。
欲しくも無いモノを与えられ、そして死ぬんだから。
本当に不条理かつ理解不能、そして予測不可能だ。
始まりは家督についてだった。
俺の実家は歴史ある家で、資産も中々。そして何より財界に広い顔を持つ。
昔から頭は悪く無かった為か、自然と後継者として教育され育てられた。親父も御袋も俺こそが家を継ぐべきだと。
だが、俺は嫌だった。
親と同じ仕事で親と同じ責任を背負い親と同じ様に生きていく。
そんな人生は本当に俺の人生なのか。
両親には感謝している。此処まで育ててくれたんだからな。
しかし、これとそれとは話が別だ。
俺は俺だけの人生を歩みたい。
今より貧乏でもいいし、大変な仕事と生活でも構わない。ただ、自分の人生を歩みたい。
だからこそ言ってやった。
「俺は家を継がない。家は弟に継がせるべきだ」とね。
俺の弟は優秀で、恐らく俺よりも頭がいい。それにあいつは家を継ぎたがっている。ならば丁度いいじゃないか。
だが不幸な事に弟は血が繋がっていても俺とは違う不義の子。
親父が、昔風俗嬢を孕ませて生んだ子供。
結果、俺の意見は通らなかった。
家出もしたが、結局2年で見つかったうえ働いていた会社にも迷惑をかけてしまう。
親父は考え方が古く腹違いの弟よりも俺を優先するらしい。
時代錯誤な人間め。
挙句の果てに当時付き合っていた女性と無事に結婚したければ家督を継げと抜かしやがる。
彼女の腹には俺の子供が居た。
俺は彼女を愛していたし子供を見捨てたくない。
多分親父も女と子供が出来た時を見計らって連れ戻しに来たのだろう。
俺を縛る鎖として。
選択肢は無かった……。
正式に後継者として決まって少し経った頃。
嫁とも無事に結婚して彼女と子供が居るだけでも幸せか。と考える様に思い直していた。
俺は恵まれている。
確かに継ぎたくない家督を継いだが、家族を守る為だと我慢するべきだ。
ならばこれも悪く無いのかもな。
そう自負していた時。
俺は背中に軽い衝撃と激しい痛みを感じた。
熱い! 痛い! 苦しい!
地面へと倒れて込み上げる吐き気を我慢できず、その場で吐き出すと真っ赤な血が出てきた。余りにも突然な出来事に俺は、何があったと原因を探る為に必死に顔を上げてそれを目にする。
男が立って居た。
震える手で血の付いたナイフを持ち、憎悪の瞳で俺を睨みつける男。
そう、俺の弟が……。
「あんたが……」
地獄の底から出す様な憎しみに満ちた低い声が俺を貫く。
「あんたが、居なければ! 俺は……俺が!」
次の瞬間、腹に強い衝撃を受けて激しい痛みと込み上げてくる嘔吐感を感じる。そして我慢できず吐き出すと再び周辺へ血をまき散らす。
何が、何故!?
「何でお前なんだ! 何でお前が、家を継ぐ! 何でお前が幸せに成れる! 何でお前なんかが親父に認められるんだ!」
何度も何度も俺を蹴り、怒りをまき散らす弟に最早理性は感じられない。
そして意識が朦朧としだした俺に理解する為の思考は余り無く、恐らく家督を継ぐ俺が憎いとだけしか分からなかった。
譲れるなら……譲りてぇよ……。
家督を継ぐ以外の選択肢が多くあるお前の方が、俺は羨ましいよ……。
そう言いたかった。
だが、痛みと朦朧とした意識のせいで言葉に出来ない。
くそ、だが死ねない。俺には妻と子供が……。
「貴様は……貴様なんか死んじまえ!」
一際大きな声で叫んだあいつを見るべく目だけを動かすとナイフを大きく振りかぶり俺へと振り下ろす姿が見えた。
ふざけんなよ。
こんな人生が俺の……
一瞬、胸に強い衝撃と突き刺されたナイフを目にした。
ああ、糞。
俺は……こんな……。
手足の感覚が、意識が、痛みと共に消えていく。
目の前が真っ暗で音も聞こえない。
こんな死に方認められねぇよ……。
そして俺は全てを感じなくなった。
何かを感じた。
暖かい。
そして安心する。
長く寝ていた様な変な感じだ。
俺は……助かったのか?
此処は何処だ?
水の中か?
体が動かない。
何も見えない。
息も出来ない。
ふと次の瞬間軽い衝撃を感じる。
そして自分が引き出される様な不思議な感覚。
「……!――!?」
声が聞こえる。しかし良く聞こえない。でも凄く近くで聞こえる気がした。
一体誰だ?
外へと出ていく力が増していく。
何だこれは。引きずり出される!?
凄い力で俺の体は外へと出されてしまう。
そして強い光が俺へと襲い、余りの眩しさに目を閉じた。それと同時に体が勝手に反応し俺は鳴き声を上げてしまう。感情が滅茶苦茶だ。
だがそんな事はどうでも良い。
なんせ俺は誰かに優しく抱かれているのだから。
「――!…――。……」
誰かが俺に優しく声を掛ける。
俺は泣きながらも何とか目を開けて抱き上げる誰かをこの目に一目見ようとした。
ぼんやりと人の輪郭が見える。恐らく女性だ。
段々とハッキリしてきた視界で目を凝らし、更に女性を見る。
漸く見えたと思ったその顔は美しく、絶世の美女とは正に彼女を指す言葉か。
嬉しそうに笑顔を見せる彼女。
言葉は分からないが、雰囲気からして生まれた事への感謝だろう。
ああ、そうか。
彼女が……俺の母なんだ。
青空広がる陽気な晴れた日であった。
小鳥が囀り、草木が微風で葉を揺らし、暖かな日差しが大地を包む。
正に時間がゆっくり流れるような落ち着いた空気。
平和とは正にこの事だろうか。
城が立つとある場所、現在ここでは城下町から人々の明るい声と楽しげな雰囲気が広がり、良い雰囲気に包まれていた。
それはこの地を治める王のお蔭。
かの王が国を豊かにそして安全にしてくれる。だからこそ民は笑い、騎士たちもそれらを守らんと誇りを持って職務に打ち込む。
確かに不安な事や問題は数多くある。しかし、それも王が何とかしてくれる筈、誰もが信じで疑わない。そんな平和な空間。
城内部にある中庭、外と同じく暖かな日差しが照らすこの場所に似つかわしくない風を切る音が辺りに響く。
何度も何度も似た音が響き、やがて止まる。かと思うと次は大きな風切り音を発して周りの草葉を靡かせる。
小さな中庭……そこには一人の騎士が剣を振っていた。
身長はそれ程高くなく、しかし身に纏う立派な鎧や剣を苦も無く振い踊る姿は決して弱者とは思わせない。
緑のラインが入った白い鎧は、周りの草木と合わせて調和された雰囲気を醸し出す。
踊るような足取りで回転し、剣を薙ぐ。
風切り音と共に光が反射して草が舞う。
剛と言うよりも柔な筋を持つ幻想乱舞。
騎士の動きは正に洗礼されていた。
そんな風景がずっと続くと思われていた時、騎士は動きをピタリと止めて剣を下す。
大きな溜息を吐き、中庭の入口へと目線を向けると疲れた様な声で声を発した。
「ランスロット卿、黙って見るのは止めて頂けないでしょうか?」
呆れたような、何処か苛立った様な声で声を掛ける。
すると鎧を着ている事による金属質な足音と金具の擦れる音を響かせながら一人の騎士が姿を現す。
「すまない。少し見惚れていたのでね」
白い鎧を身に纏いウェーブがかった髪を持つ騎士。
整った顔立ちに礼儀正しい姿勢、そして何より醸し出す空気がこの騎士をより完璧な存在へと昇華させていた。
「それで……何の用で?」
盗み見していた彼へと苛立った気配を隠す事も無くぶつける騎士は、一刻も早く眼前の人物から離れる為に用件を聞く。
対する嫌われし騎士は肩を竦め、子供の我儘を仕方なく聞くが如く話し出す。
曰く、王が呼んでいるから早く行きなさい。
王の一日は長く忙しいものだ。
なんせ国のあらゆる分野へと指示を出し、時には赴かねばならないのだから。
一応それ専門の担当者は居るが、現在国を取り巻く状況は決して良いとは言えない。だからこそ王は多忙を極めてしまう。
コンコンコン
木の扉を拳で叩く軽い音が室内に響く。
来客を知らせるノックで、此処が王の執務室である点からその人物は限られる。
そして現在王は、その人物について心当たりがあった。
なんせ呼んだ張本人なのだから。
「入室を許可します」
透き通るような美しい声で入室を許可する王。
続けて、似た声で「失礼します」と一言添えてから執務室へと入る騎士。
室内へと入った騎士は先程中庭で鍛練していた人物だった。
その姿は変わらず鎧を身に纏い、兜も同じく付けている。そんな鎧姿を見た王は少女を思わせる美しい顔を多少歪ませて溜息を吐いてしまう。
「貴殿は……またその様な格好で。折角の非番なのですから鎧を脱ぎなさい」
まるで子供を嗜めるが如く話す王は、碧い瞳で目の前の人物を見つめる。
対して騎士は直立不動の姿勢で居るだけ。
飽く迄もこの姿が良いらしい。
「非番だからこそ私の勝手では? それにモードレッド卿も変わらず鎧姿のままです」
明るく高い少女の様な声で答える騎士。
本来なら不敬極まりない態度だが、王と親密な間柄だからこそ出来る態度であった。
これには王も再び溜息を吐いてしまい。額に手を当ててしまう。
ぼそりと口から漏れた「全く、誰に似たのだか……」という言葉は何処か疲れたものを感じさせる。
「ならばせめて兜を脱ぎなさい。話し難いでしょう」
呆れを含んだ再三の注意に流石の騎士も折れたのか、渋々といった様子で兜を脱ぐ。
金属が擦れる音を響かせて両手で兜を脱ぐと長く、美しい金髪が姿を現す。
顔に掛かる髪を解く為か、頭を2、3回振って整えると兜を脇に抱え眼前に座る王を見据える。
騎士の姿は美しかった。
長い金髪に碧い眼、そして少し仏頂面に成りつつも儚くも美しい精悍な顔立ち。
鎧を身に纏う姿は少年にも見えるが、少女の方が分かり易い。
小柄ながらにも身に纏う空気は洗礼され、顔と同じく美しい気品に満ち溢れたもの。
正に美しく、強く、完璧だった。
目の前の王と同じ様に。
そう、二人は大変似ていた。
これで同じ服を着ていれば姉妹に見えただろう。
確かに二人は近しい関係だが姉妹では無い。
それは、『彼女ら』が……。
「矢張り、貴方はその方が良いですよ……ロホルト」
他の騎士には見せない優しい笑みを浮かべつつ柔らかな声を掛ける王。
それに対して騎士は疲れた様子で何度目かも分からない溜息を吐き、同じように口を開く。
「そうですか……父上」
人生とは分からないものだ。
不条理かつ理解不能、そして予測不可能である。
私の名はロホルト。
ブリテンの王、アーサー・ペンドラゴンに仕える円卓の騎士が1人であり……。
父曰く、将来ブリテンの王となる存在。
我が王アーサーの実の息子、ロホルトである。
ご覧いただきありがとうございます。
もう一つ書いているものが思い浮かばないor忙しくて書けなくてこの度骨休み感覚で書きました。
アーサー王の実の息子ロホルト卿についての話無いな~と考えたのが切っ掛けです。
モーさん涙目。
軽いプロットは出来てるんですが、続き書くかは未定。
感想や誤字指摘あればうれしいです。
それではみなさん。また会う時まで!
※ロホルト・ペンドラゴン→ロホルトと修正しました。確かにペンドラゴンは称号だね。