とある右方の英雄学園   作:弥宵

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またもや新作……他の執筆も進めてるからセーフセーフ(アウト)


右方、再誕す

 世界の救済。

 男が願ったのはそれだけだった。

 蔓延る悲劇を祓い、歪みを正し、世界をあるべき姿に――救いに満ちた世界に戻す。ただそれだけを求め行動し、遂に計画は成った。

 

 

 ―――世界の救済(破滅)

 

 

 一旦世界を滅ぼし(・・・・・・・・)改めて正しい世界を構築する(・・・・・・・・・・・・・)

 男には力があった。なまじ本当に世界を救えるだけの力が。故にこそ男は行動し、故にこそそれ以外の道を見失った。

 

 

 だが、男は敗北した。

 成就を目前にした男の計画(幻想)は、上条当麻(ヒーロー)の手によって跡形もなく打ち砕かれた。

 

 あらゆる『倒すべき敵』に勝利するはずの『聖なる右』は、『世界の悪意』という巨悪を打ち倒すための力は、ただ幻想を殺す程度の右手に下された。

 それは、男が世界を見誤ったが故の敗北。悪意ばかりをその目に映し、人の善意に目を向けなかったが故の、ある種必然の敗北だったのかもしれない。

 

 

 そして、男は救われた。

 計画の終焉と共に崩れゆく『ベツレヘムの星』から、男は逃がされた。つい先刻まで対峙していた上条当麻の手によって。

 

 

『俺様は、「世界中」なんていうのが、どれだけ広い場所なのかも分からん人間だぞ』

 

『なら、これからたくさん確かめてみろよ』

 

 

 その言葉に、何を感じたのか。

 男自身にもよく分からなかったが、それでも先に進もうと思った。

 

 

 その前に、立ち塞がる者がいた。

『人間』アレイスター=クロウリー。魔術を極めておきながら、あっさりとそれを捨て科学に乗り換えた魔術師。その圧倒的な実力の前に、既に満身創痍だった男は成す術もなく倒れ伏した。

 

 

 そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

(………?)

 

 意識を取り戻した時、まず感じたのは違和感だった。

 自身の身体、周囲の景観、そして世界。そのいずれもがどこか違う(・・)

 

「俺様は……つい先程まで、ロシアの雪原にいたはずだ」

 

 だが視界に映るのは明らかに雪原ではない。並よりは大きいとはいえ、至って普通の民家であるように見受けられる。

 

「何者かが俺様を回収した……いや、違う」

 

 己に対する違和感――妙に声が高いことと、手足が短く感じること。そして何より、記憶が(・・・)もう一つ(・・・・)存在すること(・・・・・・)

 

「どうなっている……?」

 

 もう一つの記憶によれば、この『自分』は日本で暮らすごく一般的な家庭の子供であるらしい。年齢は四歳。妙に大人びた雰囲気を纏った不思議な子供だったようだが―――

 

「俺様の他に混在する意識はなさそうだが……この身体に乗り移ったというより、今まで失われていた記憶が蘇った、といった具合か」

 

 どうやらこの身体の持ち主は間違いなく自分であるようだ。他人の人格を食い潰して割り込んだという訳でもないらしい。

 

「転生、来世といった概念は、十字教には存在しないのだがな」

 

 実際にこの身に起きた現象が何なのか正確なところは不明だが、それと似たような事態になっているということは認めざるを得ないだろう。

 

 

 

 そしてもう一つ、気になる情報があった。

 

「『個性』……?」

 

 どうやらこの世界では、『原石』に似た超能力の類が大多数の人間に発現しているらしい。元の世界では希少な存在だったが、こちらではむしろ『無個性』の方が少ないとのことだ。

 

「一般に四歳前後で発現……ちょうど今の俺様ほどの時期という訳か。ならば」

 

 己の『個性』として発現するであろう力はわかっていた。

『第三の腕』。対峙する相手の強大さに応じて出力を変える『聖なる右』。予想に違わず、右肩からその腕が現れる。想定外だったのは、本来課せられているはずの制限がほぼ外れていたことか。

 

「これほどの性能があっても、果たしてそれを向ける相手がいるのやら。まあそれはともかく、やはり『個性』の発現をきっかけに記憶が戻ったようだな」

 

『自分』の中に『個性』を使ったという記憶はない。ならば今この時発現したのだろうと、彼は結論づけた。

 

「かつて魔術として振るった力を、今度は超能力として持つことになるとはな」

 

 思わず苦笑が溢れた。超能力開発の総本山たる学園都市と戦争を引き起こし、その頂点に敗れた身としては皮肉が過ぎる。

 

「さて、次に考えるべきは……む?」

 

 次なる考察を始めようとしたところで、この部屋に足音が近づいてくるのがわかった。一旦考察を打ち切り、そちらに意識を向ける。

 

「誰が……いや、決まっているか」

 

 ここは戦場でもローマ正教の最暗部でもなく、ただの一般家庭なのだ。

 

「神威くーん?お昼ごはんできたわよ……って、まあ!『個性』が出たのね!」

 

 自分の右肩に目を向け、驚愕と歓喜の表情を浮かべる『母親』に対して、彼は穏やかな笑みを返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『自分』の名前は、『右方(うほう)神威(かむい)』というらしい。

 何とも因果を感じさせる名前だが、この世界の人間は『名は体を表す』を地で行っている。そうなるとこの名前も必然なのかもしれない、と彼は思った。

 彼がこの世界に来て(記憶を取り戻して)から数日が経った。まずは『世界』を知ることを目標とした彼は、初めに家族という『世界』を知った。

 剛毅な『父』、優しい『母』。ありふれた、それでいて唯一無二の世界。自分はこんな些細な世界すら知らなかったのだと痛感した。

 

「神威くんは、将来どんな人になりたいの?」

 

 ふと、『母』がそう問いかけてきた。その答えは決まっている。

 

「人を、救えるようになりたい」

 

「まあ、それじゃあヒーローを目指すのかしら?」

 

(ヒーロー、か)

 

 この世界には、職業としての『ヒーロー』が存在する。『個性』を悪用する犯罪者(ヴィラン)に対抗する、正義の象徴。アイドルのような側面も持っており、この世界の子供達の多くが憧れ、夢見る存在だ。

 

 だが、彼はそこまでヒーローという職業に興味はなかった。上条当麻(本物)を知っている身としては、金銭や名誉を得るためにヒーローを名乗るのは何か違うような気がしたのだ。

 

「いや……」

 

 その時、ふとテレビの音声が耳に入った。

 

 

『もう大丈夫!私が来た‼︎』

 

 

 その姿に、上条当麻(ヒーロー)の面影を見た。

 

 

「あれは…」

 

「あら、オールマイトね。相変わらず画風が違うわねぇ」

 

 オールマイト。この日本において、NO.1とされるヒーロー。

 圧倒的な力で他者を救うオールマイトの方法は、上条当麻とはある意味対極とも言える。だが、その根底にある精神性は似通っている。

 自分を顧みず、他者を救うためだけに行動する、究極の自己犠牲。

 

(こんな(ヒーロー)も、いるのか)

 

「…そうだな」

 

「どうしたの?」

 

 あのようなヒーローならば、あるいは。

 

「目指してみるのも、悪くないかもしれんな」

 

「ほんとに四歳児らしくないわねぇ、神威くんは」

 

 

 

 

 これは、かつて世界を救済(破壊)しようとした男――『右方のフィアンマ』が本物の救済者(ヒーロー)を目指す物語。




フィアンマさんが出てくる小説ほとんど見たことないけど、この人割とテンプレチートに向いてると思うんだよなあ……
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