宜しくお願いします。
7/28追記。大筋は変わってませんが時系列をちょっと整理しました。いい加減で申し訳ありません。
第一話「やってきた男」
この世界には魔法がある。それは、大好きな人に告白する勇気を出す魔法や、血肉が飛び散り、爆音渦巻く破壊の魔法など様々だ。
これは、かつて全てを失った男が、三十一人の美少女と再び前へ進む物語。
……のはず。
★
港からフェリーで十五分。太平洋上に浮かぶ島「
学生たちが集う学園島。幼小中高大とあらゆる教育機関がその麻帆良島にはある。
そんな麻帆良島のフェリー乗り場に一人の男が立っていた。
男の名は「
「ここが麻帆良か。でかいな、オイ」
そう感想を漏らすと地図を確認して、駅に向かう。
電車に乗る。途中で学生たちが乗ってきた。
しばらく乗っていると案内のアナウンスが鳴る。
『次は、麻帆良学園前~ 麻帆良学園前でございます』
ゆっくりと電車が止まった。
プシュ~と扉が開いた。
すると蜂の巣を突いたようにワッと学生たちが飛び出す。
どこから沸いてきたのか、電車に乗ってる学生以外にもあちこちから駆けてくる。
「ちょま、の――――――――――っ」
隼人はその波に飲まれてしまった。
突っ込んでくる学生たちにぶつかりながら何とか波から抜け出す。
「あ、あぶね。あんなに電車の中入ってたのか」
冷や汗をぬぐいながら、あたりをキョロキョロ。
「たしか、迎えが来るはずなんだが……」
「久しぶりだね。隼人」
後ろから声がした。
声のするほうを振り向く。
そこには白髪混じりの背の高い中年男性がいた。
「おお! 久しぶりだな。タカミチ」
隼人が待ち合わせをしていた人物だった。
「学園長が待っている。来てくれ」
「ああ、分った」
タカミチの後について歩き出した。
「高畑センセおはよ~」
「せんせーオハヨ」
「先生今日も渋いね」
道行く学生に声をかけられて、挨拶していくタカミチ。
「人気あるな。タカミチ」
隼人は昔からのなじみを見上げる。
「ふふ。まあね。それより、君はまるで変わってないね」
タカミチは親友の変わらぬ姿に苦笑いする。
「まだ、見つからないのかい?」
その質問に、隼人は少し遠い目をしながら答えた。
「ああ、そうだ。ま、見つけて目的果たすまでこのままだろうよ」
「そうか……」
そんな会話をしているうちに目的地に着いた。校門をくぐり、麻帆良学園女子中等部の校舎に入る。
廊下を歩き、着いた先は「学園長室」
タカミチはノックする。
「近衛学園長。煉城隼人君を連れてきました」
「開いとるぞい」
「失礼します」
中に入る。
「久しぶりじゃな、隼人」
中に入るとにこやかに手を上げて、老人が声をかけた。
「ああ。終戦からこっち会ってなかったから十五年ぶりだな」
近衛は隼人の答えに、胸まで垂れた長い髭をしごきながら頷いた。
「ほうか。もうそんなになるか。十五年も経っとるのに全然姿が変わらんなお前は」
「おいおい。十五年どころか百年前から姿が変わらない、爺さんに言われたくないな」
隼人はうんざりしたようにため息をついた。
「ほほほ。そじゃな。ワシも随分長生きしとるからのぅ」
そう笑い顔を作ったが、急にまじめな顔になる。
「それで、ここに来てくれたということは引き受けてくれるんじゃな?」
隼人は頷く。
「ああ。以前、中学校の教師やってくれって頼まれたときは、ついにボケたかと思ったけど、面白そうだ。引き受けるよ」
その答えに満足して、満面の笑みをこぼす。
「そうかそうか。引き受けてくれるか。それじゃ早速、担当の教室に行っとくれ。案内は、しずな先生にしてもらうかの」
近衛の傍らにいた、女性が一歩前に出る。
「私が案内します。どうぞこちらへ」
隼人と、しずなは学園長室を出た。
★
【2―A】と看板がぶら下がった教室の前に来た。
「ここが教室です。あとこれが名簿になります」
名簿を受け取った隼人はさっそく開いてみる。
写真付の名簿だった。
「おお。さすが女子校。ものの見事に女子ばっかりだな」
開いた名簿には、隼人の感想どおり女子しかいない。
「2―Aは三十一名の学級です」
しずなは説明する。
「了解。それじゃあ、教室に入るか」
勢いよく扉を開いて、教室に入った。
と同時に、頭の上からタライが落ちてきた。
「へびょー!?!?!?!?」
カーンという涼しい音と、素っ頓狂な声が同時に教室内に鳴り響く。
「イヤッタァ――――! 大成功ぉおおおおおおおお」
教室に歓声が聞こえてきた。
「いや~あんなに上手くいくとは思わなかったです~」
「ふふふ。イタズラ大成功!」
隼人は頭をさすって、立ち上がる。
「痛たたた。誰だ! こんなドリフみないな罠仕掛けたの」
ピタっと歓声が止まった。
「あれ? 先生じゃない?」
「え? 誰?」
しずなが駆け寄ってきた。
「煉城先生。大丈夫ですか?」
「ええ。なんとか」
教卓に行くと、名簿を置き黒板に名前を書く。
そして、自己紹介した。
「え~タカミ……じゃなかった、高畑先生がしばらくの間出張なので、今日からこのクラスの担任として、臨時に来た煉城隼人だ。よろしくな」
隼人の説明を聞いて教室が一気に騒がしくなる。
「え、ちょ、何かの冗談?」
「どういうことネ?」
あちこちから疑問が飛び交う。
パンパンと手をたたいて、しずなが説明した。
「はいはい。静かに。煉城先生はあなた達より二つ年上の十六歳。すでにイギリスのアルドフォード大学を卒業して、教員免許も持っている立派な先生です」
隼人がそれを受けて付け足した。
「ちなみに教えるのは高畑先生と同じ英語だ。それとなるべく早く打ち解けたいから、お前達の名前を呼ぶときは下の名前で呼ぶことにする。俺のことも隼人先生って呼んでくれてかまわないぞ。ま、あとはお前達が質問してくれ」
一人の生徒が、はいっと勢いよく手を上げる。
隼人は名簿を見て、名前を読み上げた。
「えっと、出席番号七番の柿崎 美砂か。どうぞ」
美砂はニパッと笑いながら質問した。
「先生は二つ年上だけど、なんで先生なんてしてるんですか?」
「いきなり、答えにくい質問だな。えっと爺さん、じゃない、学園長と知り合いでな、その伝手で頼まれたんだ。詳しいことは割愛するよ」
もう一人手を上げた。
「んっと、出席番号三番の朝倉 和美か。どうぞ」
好奇心を隠し切れない表情で和美は聞いた。
「隼人先生は彼女いるんですか?」
「またベタな質問だな。まぁ結論から言うといない。というか彼女いない暦=生まれた歳だ」
「へ~いないんだって」
などとささやく声が聞こえてくる。
さらにもう一人出を上げた。
「今度は出席番号十七番。椎名 桜子だな。どうぞ」
桜子は隼人の刀に指を指した。
「先生が腰に差してるのってやっぱ日本刀ですよね?」
隼人は刀の鞘を手に取り答える。
「ああそうだ。銘を『
ここで、チャイムが鳴った。
「おっと。んじゃ、また英語の時間にな」
そんなわけで、朝のHRは終わった。
★
六時間目。英語の授業中。
「だから、この会話文だったら……」
隼人が黒板に書いた英文を解説している。
「……というわけだ。それじゃ今日はここまで」
見計らったように授業終了のチャイムが鳴る。
そのまま帰りのHRに突入。
「連絡事項は無い。ということで終わり。また明日」
あっさりと終わって、クラスメイトは各々帰り支度を始めた。
授業の片づけをして、教室から出る。
「先生。ちょっといいですか」
隼人は立ち止まった。
声をかけてきたのはツインテールの元気そうな少女と、とても綺麗な黒髪の少女。
「出席番号八番の神楽坂 明日菜と出席番号十三番の近衛 木乃香か。なんだ?」
「えっと、高畑先生はいつ戻ってくるんですか?」
明日菜が心配そうに聞いた。
少し困ったように隼人は答える。
「スマンな。実は三学期中は戻ってこない。戻ってくるのは新学期、学年が上がってからだ」
明日菜は衝撃を受けたかのようにふらふらと後ずさった。
「そうですか……」
この世の終わりが来たような顔をして教室を出て行った。
怪訝そうに首をかしげる隼人。
「なんだアイツ?」
代わりに木乃香が謝った。
「ごめんな。隼人兄ぃ。明日菜、高畑先生のこと好きやねん」
納得したように手をたたく。
「ああ。なるほど。好きな相手が三学期中会えないとなるとああなるか」
そして木乃香に注意した。
「あと、学校では俺のことはせめて隼人と呼べ。昔の呼び方は色々マズイ」
「あはは。ごめん。ごめん。ほんまに久しぶりやからつい。それにしても、あれから四年、隼人は変わってへんなぁ」
それを聞くとうんざりしたようにうなだれた。
「なんで、知りあいに会うたびに、同じことを言われるのか」
「そりゃ、変わってへんからやろ?」
「む、まぁそうなんだが」
ふと、隼人は思い出す。
「あ、そうだ。お前、魔法を習ってるんだって?」
ニコッと笑って頷いた。
「そうやよ。週一でしか習われへんけど、半年前にお父様から、ようやくお許しがでてん」
その答えを聞いて懐かしい気分になる。
「あの堅物がよく許可したもんだ。いや、それだけ木乃香が大きくなったってことかな」
親友の愛娘を見た。
「俺も歳を取るわけだ」
木乃香は、急に老け込んだようにため息をついた隼人に苦笑する。
「もう、姿が十四年前から変わってへんから説得力あらへんで」
「むぅ。それもそうか」
はははと互いに笑いあう。
「まぁ、なにか魔法で分らないことがあったら質問しろ。特に呪術に関しては近右衛門爺さんよりも詳しいからな」
木乃香は大きく頷いた。
「はいな。それじゃまた」
「ああ、また明日」
隼人は木乃香と別れる。
そしてやらねばならない仕事もあったが、そんなもの後回しにして、麻帆良学園中等部を散策しようと思い立ち、意気揚々と外に出た。
しばらく行くと、広場に着いた。
近くのベンチに座る。
「ふふぃ。結構広いな」
そして少し離れたところにある、堂々とした風格の大樹を見た。
「あれが世界樹。別名、神木【
などとのんびりしていると、遠くのほうにある大階段に人がいた。
「あれは出席番号二十七番の宮崎のどかじゃないか。あんなに本持って危ないな」
隼人の指摘どおり、のどかは分厚い本を十冊ほど積んで階段を降りている。
よろよろと危なかっしい足取りで歩いていく。
と、急に階段から足を踏み外し、バランスを崩してしまい、手すりを乗り越えて、真っ逆さまに落ちていった。
「いかん!」
隼人は地面を蹴り疾走。
あっという間に駆け寄り、落ちるのどかを受け止めた。
「っとナイスキャッチ。怪我はないか。のどか」
結果的にお姫様抱っこ状態。
のどかは父親以外の男に抱っこされたのは初めてであり、突然のことにビックリして固まってしまった。
「おい、大丈夫か?」
心配そうに顔を見る。
はっと我に返った。
「あ、え、あ、ありがとうございます。あの大丈夫です」
「そうか。よかった」
そういって降ろす。
「まったく。こんなに本持ってたら危ないだろう。気をつけろ」
「す、すみません」
ぺこぺこ謝る。
隼人はしゃがんで、落ちた本を拾い上げる。
「ほら。本も無事みたいだ」
のどかはぼーっとしながら受け取る。
「本が好きなのか?」
質問されて慌てた。
「え、あ、はい。本は大好きです」
ニカッと隼人は笑う。
「そうか。俺も好きだ。こんど面白い本あったら教えてくれ」
勢いよく頷く。
「はい是非」
「よし、それじゃ、この本の目的地を教えてくれ。運ぶのを手伝ってやるよ」
「あ、ありがとうございます」
連れ立って歩いていく。
本を無事運び終わった後。
「さてと、それじゃ俺は行くよ」
「あの、手伝ってくれてありがとうございました」
ぺこっと頭を下げる。
隼人は手をヒラヒラさせる。
「いいよ。俺の生徒が困ってたら助けるのは当たり前だ」
そして真面目な顔になり言った。
「あと、前髪だが、もう少し上げると可愛いと思うぞ。それじゃ、ちと長い」
「えっと、その私は……」
「ああスマン失言だった。それじゃあ、また明日」
「はい。また明日」
きびすを返して、隼人は去っていった。
後に残されたのどかは、隼人を見送ると前髪を弄る。
「前髪、少しだけ切ろうかな」
こうして、隼人の麻帆良学園での生活が始まった。
しかし穏やかな日々が続くはずもなく、一週間後事件が起こる。
【つづく】