魔法教師はやト!   作:沖彦也

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修学旅行編。
ここから2日目です。
宜しくお願いします。


第十一話「修学旅行は告白チャンス!」

 修学旅行二日目。

 

 のどかは気合が入っていた。

 

「今日は、先生と一緒に奈良を観光、もといみんなの警備だ」

 

 図らずもデートともいえない状況ができた。

 

「今日こそ自分の気持ちを伝えよう」

 

 鏡の前でチェック。笑顔を確認して準備万端。

 

「朝食です。早くするです」

 

「何してるの~? 先行くよ」

 

 夕映とハルナが呼んでいる。

 

 気合を入れて部屋を出た。

 

 

 

★

 

 

 

「やべ、体中が痛てぇ」

 

 隼人は体が悲鳴を上げていた。

 

 昨晩の戦闘でムリヤリ奥の手を使ったため体が警告を発していた。

 

「う~ん。俺も体が鈍ったなぁ」

 

 年寄りくさいことを言いならが、一階の大広間に向かった。

 

 大広間に向かう途中、クラスメイトが次々に挨拶してくる。

 

「先生。おはよ~」

 

「おはようございます。隼人先生」

 

「センセ、おはよ」

 

「おはよう」

 

 隼人も手を振りながらそれに答えた。

 

 すると、楓が近づいてきた。

 

「ん? どうした楓」

 

 楓はそっと耳打ちする。

 

「昨日から不届きな輩が襲撃してきて、忙しかったようでござるな。拙者でよければいつでも力になるでござるよ」

 

「ああ、ありがとう。そのときは頼りにさせてもらうよ」

 

 二人は頷きあって離れる。

 

「隼人、おはよ。長瀬さんと何はなしてたの?」

 

 明日菜が来た。

 

「いや、なに。今日の観光の話」

 

「ふ~ん」

 

 大広間に入る。

 

 職員の席に座った。

 

「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」

 

 しずなが挨拶した。

 

「ええ。今日もまたあいつ等を引率するために、じっくりぐっすり眠りましたよ」

 

 席に着いてもはしゃいでいる自分のクラスメイトを見て苦笑い。

 

 マイクを貸してもらって呼びかけた。

 

「え~。おはよう。昨日はぐっすり眠れたか? 今日は奈良の観光だ。朝飯食わないと体が持たないと思え。それでは、いただきます」

 

「いただきま~す」

 

 全員が言って、朝食を食べ始めた。

 

 

★

 

 

 朝食を食べ終えてから今日の荷物を持ってロビーに集合。

 

 まき絵たちが次々と隼人を誘ってくる。

 

「先生。先生。一緒に回ろうよ」

 

「まき絵さん。抜け駆けは許しませんよ。先生。わたくしたちと回りませんか」

 

「せんせー。一緒に回ろうぜー」

 

 わいわい群がる。

 

「あーはいはい。今日は先約がいるんでな。悪いがパスだ」

 

「え~。先約って誰?」

 

「そんなぁ」

 

「むー。残念ですぅ」

 

 口々に不満を漏らす。

 

「でも、ほんと先約って誰?」

 

 アキラが聞いてくる。

 

「のどかだ」

 

 さらっと答えた。

 

「ええええええええ。本屋ちゃん!?」

 

「うそおおおおお」

 

 爆発したように驚く。

 

「嘘も何も、本当だ。なぁ、のどか」

 

 近くにいたのどかに話題を振る。

 

「は、はい。そうです」

 

 急に話を振られて慌てた。

 

「そっか、本屋ちゃんなら仕方ないかなぁ」

 

 内気なのどかが隼人を誘ったという勇気に免じて全員引き下がった。

 

 実際のところは、隼人が誘ったのだがそれを知っている人間は黙っていた。

 

 そして、バスに乗り込み奈良へ向かう。

 

 かつて平城京があった古都へ。

 

 

★

 

 

 奈良公園。

 

「わ~。本当に道に鹿がいる」

 

 明日菜が驚いたように言う。

 

「まぁ、奈良って言ったら鹿だからな」

 

「せんと君も鹿をモチーフにしてるしなぁ」

 

 隼人と木乃香はしみじみという。

 

「う~ん。さすが奈良」

 

 明日菜は妙な感想をもらした。

 

 そんなわいわいと会話しているのを見つめるのどか。

 

「よくやった! のどか!!」

 

 ハルナにバシッと背中を叩かれる。

 

「ハ、ハルナ」

 

「いや~。見直したよ。いつの間に一緒に回る約束してたのよ」

 

「本当にオドロキです」

 

 夕映もやって来た。

 

「えへへ。ありがとう。隼人先生と奈良を回れるなんて幸せー……。もう、今年は思い残すことないかも……」

 

「なに言ってんの、バカァ」

 

 思い切り叩かれた。

 

「おぷし」

 

「この程度で満足してどうるすの!! ココからが勝負でしょ」

 

「しょ、勝負って?」

 

「告るのよ。のどか。今日、隼人先生に思いを伝えるの!」

 

「えええええ!?」

 

 慌てるのどか。

 

「そ、そんな。告白なんて。たしかにちょっと考えたけど、やっぱりダメだよ。先生と生徒だし……」

 

「甘い! 甘すぎるよ、のどか!! チョコレートパフェにハチミツかけるが如く甘さ!!!」

 

「なんですか、その例え」

 

 夕映がつっこんだ。

 

「とにかく、修学旅行では男女ともに浮き足立つもの。このまま勢いで告白しちゃいなさい」

 

「告白かぁ」

 

「いい、のどか。今日告白してOKもらえば、明日の自由行動で二人きりでデートできるんだよ。コレを逃す手はないでしょ」

 

「う~ん。そうかなぁ……」

 

「そうです。のどか。ここは勇気を持っていくです」

 

 夕映が励ます。

 

「うん。じゃぁ頑張ってみる」

 

 のどかは気合を入れるように拳を作った。

 

「それじゃ、さっそく二人きりにしてあげよう」

 

「です」

 

 ハルナと夕映は隼人たちのほうへ駆けていく。

 

「アスナ! 一緒に大仏見よーよ!」

 

「木乃香さんと刹那さんも一緒にどうですか?」

 

「え!? ちょ、私は用事が」

 

「あや~。ちょっとまってぇな」

 

「私たちには仕事が」

 

 口々、拒否するも問答無用で連れて行かれた。

 

 ちなみに、明日菜の肩に乗っていたカモも一緒に連れて行かれた。

 

 取り残された隼人は唖然と立ち尽くした。

 

「台風みたいなやつらだな」

 

 苦笑いしながらのどかに言った。

 

「あはは。すみません」

 

 のどかも苦笑い。

 

「まぁ、あっちはあっちで上手くやるだろうし、とりあえ行くぞ」

 

 さっさと歩いていく隼人。

 

「は、はい」

 

 のどかは慌てて追いかけていった。

 

 

★

 

 

 東大寺まで向かう道。

 

「なんかのんびりした感じがしますね」

 

 のどかがしみじみという。

 

「そうだな。昔から何も変わってない」

 

「あれ、先生って奈良に来たことあるんですか?」

 

「ああそうだ。というか元々俺は奈良出身だ。小学六年生ぐらいまでこの辺に住んでたんだ」

 

「ええ!? そうだったんですか」

 

 隼人は懐かしむように、しかしどこか寂しそうな顔をした。

 

「もう随分前だよ。奈良に来たのも十何年ぶりだ」

 

「は~、そうですか」

 

 のどかは隼人の過去を少し知れて嬉しくなった。

 

 だが、そんなことしてる場合ではないと思い直した。

 

 告白するタイミングを窺うために気を配った。

 

 その態度をどうとったのか、フッと隼人は笑った。

 

「おいおい。別にそこまで気を張らなくてもいい。敵に関しては俺が全方位に探知魔法展開してるから、異変があったらすぐに分るよ」

 

「あ、いや、その。はい」

 

 ちょっと慌てた。

 

 そんな姿を遠くからじっと眺めている影が二つ。

 

 ハルナと夕映だ。

 

「く~。ガンバレ、のどか」

 

「明日菜さんたちはとっくに追い出したです」

 

 親友の恋の成就を願った。

 

 大仏殿に入る。

 

「おお、大仏はいつ見ても大仏だなぁ」

 

 みょうちきりんな感想をいう隼人。

 

 勇気を振り絞って告白するタイミングは今とばかりにのどかは口を開いた。

 

「あの、先生!」

 

「ん、どうした」

 

「先生、わっわわ わたし 大……す、すき……」

 

「へ?」

 

「大仏が大好きで!!!!」

 

 誤爆した。

 

「へぇ。こりゃまた渋い趣味で。夕映と友達だけはあるな」

 

「ええ、はい」

 

 内心、のどかは自分の失敗に泣いていた。

 

「こんどこそ頑張る」

 

 小声で気合を入れる。

 

 隼人は気に留めず、視線をずらすと、おみくじが引けるところがあった。

 

「おみくじか、今後の展開を占う意味でいっちょやってみるかな」

 

 スタスタといく。

 

 再び、のどかは声をかける。

 

「あの先生!」

 

「ん、今度はなんだ?」

 

「わたし、その、隼人先生が大、大吉がで!!!」

 

 また、誤爆した。

 

「いや、今引いたら大凶だった」

 

「あう、そうですか」

 

 内心、大泣きした。

 

「ダメだ、やっぱり言えない」

 

 しょぼんとするのどかを励ますように、隼人が指さした。

 

「なに落ち込んでんのかしらんが、元気出せ。ほれ、この穴は大仏の鼻と同じ大きさらしいぞ。くぐり抜けたら願いが叶うってさ」

 

「え、願いが」

 

 ぱぁっと明るくなる。

 

 コレをくぐり抜けられたら言えるかもしれない、そんなことを思いながら挑戦してみることにした。

 

「よいしょ」

 

 途中で動けなくなった。

 

「あれ? んしょ。よいしょ」

 

 どうにも動かない。

 

「つつつつ、詰っちゃいましたぁ~~~」

 

「えええええええええ!?」

 

 穴に詰ってしまった。

 

「おいおい。大丈夫か」

 

「うえ~ん」

 

 何とか助けようと隼人は引っ張る。

 

「ふぐんうぬぬぬぬぬ、どろっしゃぁあああああ」

 

 気合一発、詰っていたのどかを引っこ抜いた。

 

「あいたた。ありがとうございます」

 

 のどかはお礼を言う。しかし隼人がいなかった。

 

「あれ?」

 

 下が妙に柔らかい。

 

 視線を下にやる。

 

 引っ張った勢いで体勢が崩れて、隼人が下敷きになっていた。

 

 しかも、隼人の顔がスカートの中に入っていた。パンツ丸見えな状況。

 

「おお! ナイス、パンツ!!」

 

 思わず隼人は叫んでいた。

 

「きゃぁあああああ」

 

 反射的に思い切り殴った。

 

 慌てて立ち上がるのどか。

 

「アイタタタ。とりあえず、大丈夫か」

 

 顔面を殴られたおかげで鼻を押さえながら立ち上がる隼人。

 

 のどかは、告白が失敗したことや、はしたない姿を見られたこと。さらに反射的とはいえ殴ってしまったことなど感情がぐるぐる渦巻いて混乱した。

 

「あの、その、えっと、すいませんんんんんんん」

 

 思い切り泣きながら走り去ってしまった。

 

「あ、おい。のどか」

 

 一人取り残された隼人は立ち尽くすしかなかった。

 

 

 

★

 

 

 

 奈良公園上空。

 

 そこに、せんと君がいた。

 

 空中に浮かびながら瞑想していた。

 

 せんと君の後ろに白髪の少年が現われた。

 

「あのメガネの女の人から伝言。煉城隼人を始末しろだってさ」

 

 せんと君は黙ったままだ。

 

 白髪の少年が一方的に言う。

 

「奈良は君の専用フィールドだ。期待してるよ。だってさ。気をつけてね」

 

 きびすを返して去っていく。

 

「本来ならお主がやりたいのであろう」

 

 初めて口を開いた。

 

 少年は振り返ってうなずく。

 

「ああそうさ。彼が今どんな感じなのか、報告しなければいけない相手がいるんだよ」

 

「ならば、我の戦いを見ていくといい。あの者の本気を引き出して戦うつもりだ」

 

「本気?」

 

 少年は首をかしげる。

 

「昨夜、一瞬だけあの者の修羅を見た。我が恐怖するほどのな。久しぶりに心躍る相手也よ」

 

 せんと君は口元が緩む。

 

 さして興味が無いように無表情で少年は言った。

 

「まぁ、どっちでも良いけどね。とりあえず見学はさせてもらうよ」

 

 せんと君は瞑想を解き、立ち上がる。

 

「よかろう。では出陣也」

 

 魔人が動き出した。

 

 

★

 

 

 一方、ハルナたちに連行された明日菜たちは。

 

「まったく、一体何なのよ。連れてこられたと思ったらどこか行っちゃうし」

 

 明日菜が呆れる。

 

「まぁまぁ。のどかと隼人を二人きりにさせてあげたかったんやろ」

 

「もともと二人きりになる予定だったんですけどね」

 

「今頃、のどか嬢ちゃんテンパってんじゃないか」

 

 カモはフホホと笑う。

 

「ありえるなぁ」

 

 木乃香が笑う。

 

「う~ん。修学旅行でデートかぁ」

 

 明日菜はしみじみと言う。

 

「なんだ、姐さん。どこかのダンディ髭とデートでもしたかったか」

 

「捻り潰すわよ」

 

 思いっきり睨んだ。

 

「ダンディ髭とは?」

 

 刹那が首をかしげる。

 

「ああ、せっちゃんは知らんかったな。実は明日菜は高畑先生のことが好きやねん」

 

「ちょっと、木乃香」

 

 照れ隠しに怒った。

 

「そうでしたか。明日菜さんは高畑先生のことが」

 

「まぁね。でも気持ちも伝えられないからなぁ。このままフェードアウトしていきそう」

 

 がっくりと肩を落とす。

 

「タカミチもロリコンじゃあないと受け入れられな……g枚御g;ンrjあ」

 

 カモはセリフの途中で思い切り、捻り潰された。

 

「一言多いでカモ君」

 

「俺っちの性だぜ……ガク」

 

 明日菜の手の中でがっくりと気絶した。

 

 やれやれといった風に皆、笑った。

 

 と、人の気配。

 

 刹那が警戒する。

 

「誰だ! ってのどかさん」

 

 現われたのはのどかだった。

 

「ううう。刹那さ~ん」

 

 泣きながら抱きついてきた。

 

「ちょっと、何があったよの」

 

 明日菜たちは慌てた。

 

「とにかく、移動しようぜ」

 

 復活したカモが提案した。

 

 そして、近くのベンチにのどかを座らせる。

 

「はい、これ飲んで落ち着いて」

 

 明日菜が近くの自販機で買ってきたジュースを渡す。

 

「ありがとうございます」

 

「で、なにがあったん?」

 

 木乃香が聞いた。

 

「じつは……」

 

 のどかは先ほどのことを話した。

 

「えええ! 告白しようとしてパンツ見られた!?」

 

「あ、いえ違うんです。告白しようとしてモタモタしてたら偶然、接触してパンツ見られたんです」

 

 のどかはすぐ否定した。

 

「どっちにしろ、パンツ見られたのよね」

 

「はい。で思わず殴ってしまって」

 

「なんだ、鉄拳制裁は済ませてあるのか。なら良いや」

 

 明日菜はしれっと言った。

 

「私、トロくて失敗してしまって、それで挙句の果てに殴ってしまって、もうどうしたら良いか分らなくなって」

 

「それで、泣いてたんや」

 

「はい」

 

 思い切り落ち込む。

 

「せっかく二人きりだったのに。本当に私ってダメだなぁ……」

 

「気にすることないんなんじゃない?」

 

 明日菜たちが励ます。

 

「ええ。私もそう思います。殴ったことに関しても、先生は割りと適当な人ですし、気にしてませんよ」

 

「パンツ見れてラッキー。とか思とるぐらいやろな」

 

 簡単に想像ができるだけに頭が痛かった。

 

「それにしてもあんなダメ人間のどこがいいのよ」

 

 明日菜は首をかしげた。

 

 のどかは隼人のことを質問されて、顔を緩めながら言った。

 

「たしかに、普段はみんなの言うとおり、ダメ人間だけど、いざって時は頼れるし、戦ってる姿はカッコイイし、何度も助けてもらってるし、だから好きなんです」

 

「へ、へ~そう」

 

 聞いてるとこっちが恥ずかしくなるような話だった。

 

 しかし、刹那だけはしきりに頷いていた。

 

「ああ、分る気がする」

 

 同意をしてもらって、にっこり笑う。

 

「それに、私達が経験したことの無い出来事をいっぱい経験して、大人だからかなぁ」

 

 のどかは空を見上げた。澄み切った青空が広がっている。

 

「本当は遠くで眺めているだけで満足なんです。それだけで勇気がもらえるから」

 

「のどか……」

 

 皆、押し黙る。

 

 フッと息を吐く。

 

「でも、今日は自分の気持ちを伝えてみようと思って」

 

 う~んと伸びをすると立ち上がる。

 

 のどかは皆のほうを向くとにっこりと笑った。

 

「なんだか、話したらスッキリしました。私、いってきます」

 

 そういうと駆け出した。

 

「あ、ちょっと行くって?」

 

 急いで、のどかを追いかけた。

 

 

★

 

 

「お~い。のどか~」

 

 隼人は走り去ったのどかを探していた。

 

「まいったな。どこで敵が現われるか分らない状況で単独行動はまずいぞ」

 

 かといって、仮契約カードの【念話】は傍受されるとこちらの位置を知らせてしまうため使えない。

 

「う~ん困った」 

 

 どうしたものかと考える。

 

「それにしてもあのパンツはラッキーだったなぁ」

 

 ふと、思い出した。殴られたとはいえ、ナイスハプニングだった。

 

 そんなことを思っていると

 

「隼人先生!」

 

 声をかけられた。

 

 のどかだった。

 

「探したぞ。のどか。どこ行ってたんだよ」

 

 勇気を振り絞って、今度こそ成功させると気合を入れて、のどかは口を開く。

 

「あの、先生。実は私」

 

 息が詰る。心臓がバクバクする。

 

「大、大」

 

 ノドが乾く。逃げ出したい。

 

「大根おろしが好きで!!」

 

 また失敗した。

 

 追いついた明日菜たちがこけた。

 

「えっと、そうじゃなくて、大福、あんころもち」

 

 段々テンパって来る。

 

「まてまて。とりあえず落ち着け」

 

 さすがに制止した。

 

「え。あ、はい」

 

「まず、深呼吸」

 

 言われたとおりに深呼吸。

 

「で、何が言いたいんだ?」

 

 隼人が聞いてくる。

 

 茂みで覗いている明日菜たちは心の中で応援する。

 

 のどかは意を決して言った。

 

「私、隼人先生のこと出会った日からずっと好きでした!! 私……私、隼人先生のこと大好きです!!!!!」

 

 遂に言った。言い切った。

 

 ボー然とする隼人。

 

「えっと、その、へ」

 

 混乱している。

 

「あ、いえ。わかっています。突然こんなこと言っても迷惑なのは。先生と生徒ですし。ごめんなさい」

 

 ぎゅっと自分の拳を握り締めて、隼人を見据える。

 

「でも私の気持ちを知ってもらいたかったので……」

 

 まだボー然と立っている。

 

「あの、失礼します!」

 

 走って去っていった。

 

「あ、ちょっとまってよ」

 

 明日菜たちはのどかを再び追いかけていった。

 

 あとに取り残されたのは隼人だけ。

 

 のどかの告白を頭の中で分解していく。

 

 理解していくにつれて、脳裏に浮かぶ友の笑顔と死体。

 

 心の奥で煮えたぎる感情。

 

 そして自嘲気味に笑う。

 

「分ってるさ。俺だけが幸せになれるはずがない。いや、幸せなど訪れない。やっぱり、のどかには悪いが……」

 

 そこまで考えた時、上空から殺気。

 

「敵襲か!」

 

 強烈な気合弾が襲ってくる。

 

 着弾。

 

 爆音が鳴り響き、地面がえぐれる。

 

 隼人は殺気を感知した時に回避していた。

 

「ほう。避けたか。ぼーっとしているから当たるかと思った也」

 

 聞いたことのある声。

 

「ちっ。奈良だからやっぱり出てくるだろうと思ったよ」

 

 隼人は不敵な笑みを浮かべる。

 

 そこには、昨晩襲撃してきたせんと君が浮いていた。

 

 恐ろしい殺気を放ちながら降りてくる。

 

「お主を殺せと、主の命だ。覚悟する也」

 

「そう簡単に殺されてたまるか」

 

 隼人は腰に差していた刀を抜き放つ。

 

 抜き放った刀から炎が噴出す。

 

 準備万端。

 

 その姿にせんと君は笑みを浮かべる。

 

「いざ、尋常に勝負!」

 

 魔人との死闘が始まった。

 

 

 

つづく

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