魔法教師はやト!   作:沖彦也

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修学旅行編二日目です。
今回で二日目は終了です。
次回から三日目です。

宜しくお願いします。


第十三話「修学旅行で大スクープ!?」

 修学旅行二日目夕方。

 

 隼人たちは奈良観光を終えて旅館に戻ってきていた。

 

「…………」

 

 隼人は旅館のロビーで一人考え事をしていた。

 

 昼間の告白のこと。せんと君との戦いで負傷した自分の体のこと。そして、今後の展開のこと。

 

 のどかの告白の返事は待ってもらうことにした。今はそれどころではないからだ。

 

 のどかも快く了承してくれた。

 

 次に自分の体のことだ。

 

 せんと君との戦闘で負った傷はある程度、木乃香に治してもらった。治せないところは持ってきた治癒の札を使って応急処置した。

 

 しかし目に見える怪我は治っても、気の回復が元に戻っていなかった。

 

 究極技法【爆熱真紅】は気と魔力などを燃料にして燃やす。つまり使えばそれだけ減る。

 

 

 本来なら使用後ある程度時間がたてば元に戻るはずだ。

 

 だが、今の隼人は満身創痍だった。せんと君の攻撃で体が弱っている。

 

「下手したら、今日中どころか明日も回復していないかもな」

 

 自分の手を見つめてつぶやいた。

 

 この状態で関西呪術協会の総本山まで行くのは危険すぎる。

 

 親書を渡せばある程度展開が変わってくるが、渡すまでに妨害があるのは明白だった。

 

 明日菜たちを頼ろうと思っても、彼女たちには修学旅行を楽しんでもらいたい。

 

 裏の世界の事情で彼女たちを振り回すことが出来ない。

 

 エヴァに頼もうにも彼女は絶対に引き受けてくれないだろう。

 

 親書を渡せなかったら関東と関西は仲が悪いままになってしまう。

 

 なんとしても渡さねばならない。

 

「やっぱり、あいつ等に協力してもらうしかないか」

 

 そう結論づけたが、気が重い。

 

 はぁ~っとため息がでた。

 

 そんな隼人の姿を遠くから見つめている生徒達がいた。

 

 あやかと、まき絵と裕奈である。

 

「どーしたのかな? 隼人先生」

 

 落ち込んでいる姿を見て、まき絵が首をかしげた。

 

「う~ん。あのいつも明るい隼人先生が。これはただ事ではありませんわ」

 

 あやかが心配する。

 

「奈良観光のとき何かあったのかな?」

 

 裕奈も少し心配する。

 

「奈良ではたしか、のどかさんと一緒に回っていましたわね」

 

「じゃあ、本屋ちゃんと何かあったのかな?」

 

「う~ん。まさか告白されたとか?」

 

 裕奈の衝撃発言。

 

「告白!?」

 

 あやかが驚く。

 

「いけませんわ。生徒と教師がそんな。第一、隼人先生はわたくしと!」

 

「いいんちょ。落ち着いて、落ち着いて」

 

 まき絵がなだめる。

 

「とにかく、ここで悩んでても仕方ないよ。先生に聞いてみよう」

 

 言うが早いか、まき絵は隼人の方へ駆けて行った。

 

 二言三言話すと戻ってきた。

 

「どうでした?」

 

 あやかが聞く。

 

 まき絵は首を振った。

 

「えっとね。気にすることじゃない。ちょっと疲れているだけだよ。だって」

 

 隼人の方を見る。

 

 がっくりと肩を落として、考え事をしていた。

 

「ちょっと疲れているだけって訳じゃなさそうだね」

 

「明らかに、何かあった感じですわ」

 

 う~むと三人で悩んで結論が出た。

 

「これは、我がクラスが誇る彼女の出番ですわね」

 

「だね」

 

「うん。さっそく行ってみよう」

 

 三人は急いで、ある人物に会いに向かった。

 

 

★

 

 

「なに~! 教師と生徒が淫行疑惑!?」

 

 和美は驚いた。

 

 出席番号三番。朝倉和美。3-Aが誇る情報通。その情報収集能力を生かして麻帆良学園報道部に所属している。

 

「そうなのよ。朝倉」

 

「ふーん。それが本当なら大スクープだね。この麻帆良学園報道部突撃班にして3-A公式カメラマンの出番ね」

 

 カメラを取り出してビシッとポーズを決めた。

 

「それで、貴方の力で調べて欲しいんですの」

 

「いいよ。詳しく聞こうじゃない」

 

 あやかたちは詳細を話した。

 

「ふむふむ。奈良公園で隼人先生が本屋ちゃんと何事かあった。何があったか調べて欲しいってわけね」

 

「そう、そう。頼んだよ朝倉」

 

 まき絵に期待されたが、和美は急にヤル気を失ったかのようにだれた。

 

「え~。淫行疑惑でもスクープでもなんでもないじゃん。ただのデートでしょ」

 

「そんなことありませんわ。あの隼人先生の疲れ方は尋常じゃなかった。なにかあったことは明白ですわ!」

 

「分った。分った。いいんちょ落ち着いて」

 

 あやかをなだめてから、ため息を一つ。

 

「う~ん、まぁひょんなことから大事件に繋がることもあるし、一般市民の期待に答えるのも報道記者としての使命かな」

 

 気合を入れると、カメラを確認。

 

「よし。分った。その依頼引き受けた!」

 

 そういうと、和美は部屋を出てのどかを探しに行った。

 

 

★

 

 

 

「部屋にいるかな? お~い入るよ」

 

 和美はのどか達の部屋を覗いた。

 

 のどか一人だった。

 

「お、ちょうどよかった」

 

「どうしたんですか?」

 

 のどかが首をかしげた。

 

「あのさ、ちょっと聞きたいことあるんだけど」

 

 和美はボイスレコーダーを取り出した。

 

「なんですか?」

 

「あんた、隼人先生とヤッたって本当?」

 

 のどかは思い切り吹いた。

 

「ななな、なんですか! その話は!」

 

「いやはは。冗談、冗談。今日、隼人先生に告白でもした?」

 

 のどかは顔が真っ赤になる。

 

「ええ。まぁ、その、はい」

 

「おお、やっぱそうか。で、返事はどうだったの」

 

 縮こまってか細い声で答えた。

 

「えっと、その。返事とかはいいんです。私の気持ちを伝えたかっただけだし。それに隼人先生には色々忙しいですし」

 

「え? じゃあ、先生の気持ちは知らなくてもいいの?」

 

 さらに縮こまった。

 

「いや、それは気になりますけど……。返事待ってほしいって言われましたし、なんていうか、聞くのが怖いと言うか……」

 

 その態度に和美は爆笑した。

 

「だははははは。小学生じゃないんだし、強引にでも聞きだせばいいのに。いや、まぁ本屋ちゃんらしいっちゃ、らしいかな」

 

「そんなに笑わなくても」

 

 しゅんとなる。

 

「ごめん。ごめん。アンタのペースで頑張れば良いさ。私は応援してるよ」

 

 そういうと立ち上がって、部屋を出て行こうとする。

 

 去ろうとした和美に、のどかは言った。

 

「あの、このことは先生には内緒にしておいてください。今は、ダメでもいつか自分で聞きますから」

 

「OK。がんばりなよ」

 

 和美はサムズアップして部屋を出て行った。

 

「取材終了っと。やれやれ、こんなんじゃ記事にも出来ないよ」

 

 録音したデータを消去する。

 

「いいんちょには悪いけど、ゆっくり進む恋もあるさね」

 

 自分の胸の内だけにしまいこんで、取材を終了させた。

 

 部屋にもどろうかと考えていると、人の気配がした。

 

 隼人だった。

 

「おりょ、隼人先生とオコジョじゃん」

 

 フラフラしながら、外に出て行く。

 

「一応、話を聞いておこうかな」

 

 和美は隼人を追いかけていった。

 

 

★

 

 

「アニキ、大丈夫か?」

 

 カモが心配する。

 

「お~。大丈夫、大丈夫。外の風でも当たって気分をリフレッシュさせるさ」

 

 フラフラになりながら、外に出る。

 

 足元に猫がいた。

 

「お、猫」

 

 猫はタタタっと走って行き、道路に飛び出した。

 

「あ、おい!」

 

 車が迫ってきていた。

 

「アニキ!」

 

「ラス・テル マ・スキル マギステル! 守れ、風の盾! 【風香障壁】」

 

 猫の周りに障壁が展開。

 

 迫っていた車は風にあおられて吹っ飛ぶ。

 

「ラス・テル マ・スキル マギステル! 渦巻け! 【春の風】」

 

 続いて風を起こす魔法で車を無事に着地させる。

 

 運転手は何が起こったか分らなかったように固まっている。

 

 猫も無事のようだった。

 

「やれやれ、ビックリした。気力スッカラカンでも魔力が残っていて良かった」

 

「へへ、疲れていても流石はアニキだな。ナイス、魔法」

 

 隼人は猫を抱えると、空中に浮く。

 

「ととと。魔力じゃ上手く飛べんな。でもまぁ猫を安全なところに置いてこなきゃな」

 

 空高く上がると、そのまま飛んでいった。

 

 

★

 

 

 

 隼人とカモのやりとりを一部始終みている人間がいた。

 

 隼人を追いかけてきた、和美だ。

 

「オコジョが喋って、先生が魔法使って、空へ飛んでいった」

 

 あまりの出来事に、頬をつねる。

 

 痛かった。

 

「夢じゃない。てことは現実!?」

 

 心の底から嬉しさがこみ上げてきた。

 

「キタァアアアアアアア!!! 遂に、遂に特大スクープを手にしたぞおおおお」

 

 飛び跳ねたくなる気持ちを抑えて、急いで部屋に帰る。

 

 誰にも邪魔されないように部屋のトイレに駆け込んで、早速、先ほどの出来事を整理した。

 

「宇宙人!? 未来人!? 超能力者!? いやいや、それとも魔女っ娘、男版か?」

 

 考えても考えても、疑問は湧いてくる。

 

「う~ん、どうする」

 

 とっさに撮ったデジカメ写真には、はっきりと空を飛んでいる姿が映っている。

 

「まさか、こんな身近にスクープがあったなんて、灯台下暗し。でも、本人の証言が必要ね。よーしこうなったら……」

 

 あれこれと画策する。

 

「くくく。わははははははははははははは」

 

 笑いがこみ上げてきて、思わず高笑い。

 

「トイレで高笑いって、いったい何やってんだ」

 

 ドアの前では、同じ班の千雨がドン引きしていた。

 

 

★

 

 

 一方、隼人は猫を安全なところに置いてきた後、風呂に入っていた。

 

「ふぃー。生き返る~」

 

 カモも仰向けに浮かびながら風呂に入っている。

 

「ホントだな、アニキ」

 

 弱った体に暖かい湯がとても気持ちが良い。

 

 露天風呂のため、空を眺めながら入れるから気分も良い。

 

「カモ、悪いが俺は晩飯を食べたら速攻で寝る。だから今日のミーティングは、明日の朝の集合前にやると明日菜たちに伝えてくれ」

 

「了解。今日はゆっくり休んで明日も頑張ろうぜ」

 

「ああ、そうだな」

 

 そんな会話をしていると、女湯のほうから気配がした。

 

「ん? また刹那嬢ちゃんか?」

 

 カモは入り口を見る。

 

 しずな、だった。

 

「あれ、アニキ。しずな先生だぜ」

 

「なに、しずな先生だと?」

 

 隼人も確認する。

 

 しかし、妙な違和感があった。

 

「え? あれ、本当にしずな先生か?」

 

「アニキ、どう見ても本人だぜ」

 

「そうか、俺が疲れているだけかもしれん」

 

 目頭を押さえて、マッサージをした。

 

 しずなが隼人たちに気がついた。

 

「あら。煉城先生。お疲れ様です」

 

「あ、どうもお疲れ様です」

 

 湯船に入ってきたので隼人は少し距離を空けた。

 

「そんな気にしないで良いですよ。私は気にしませんし」

 

「はぁ、そうですか」

 

 隼人は頭を掻きながら苦笑い。

 

 しずなは笑って言った。

 

「照れちゃって、可愛いですね」

 

 隼人に近づいてくる。

 

「なんで、近づいてくるんですか!?」

 

 慌てて下がるが、しずなは更に近づいてきて、胸を押し当ててきた。

 

「まぁそんな恥ずかしがらずに。生徒もまだ入ってきませんし、良いじゃないですか」

 

 ぐいぐいと押し付けてくる。

 

 普通なら狂喜乱舞するところだが、隼人は無反応だった。

 

「あれ? どうかされましたか」

 

 不思議そうに聞いてくる。

 

「……朝倉和美、何のマネだ?」

 

 隼人はポツリと言った。

 

「な、何でばれたの!?」

 

 しずな(?)は引き下がる。

 

「変装は完璧だったのに」

 

 マスクを剥ぎ取って現われたのは和美だった。

 

「やっぱりそうだったか」

 

 そう。和美がしずな先生に化けていたのだ。

 

 和美は何故ばれたのか分らないといった風な顔をする。

 

 隼人は答えた。

 

「まず第一に、腰から尻にかけてのラインがしずな先生とは違ったこと」

 

「え!?」

 

 指摘されて、思わずお尻を押さえた。

 

「次に、胸がいつもと比べて小さかったこと」

 

「なっ!」

 

 顔を赤くして胸を押さえる。

 

「そして決定的なのが、気配だ!」

 

「気配?」

 

 首をかしげる。

 

「本物のしずな先生なら大人の色気ムンムンで狂喜乱舞していたところだが、お前から発せられた気配は、ガキ臭い中学生のオーラだった」

 

「し、失礼な!」

 

 抗議する和美を鼻で笑うと、さらに付け加えた。

 

「それで、スリーサイズを目算して上から88、60、86だからそれに当てはまるのは、出席番号三番、朝倉和美だと確信した!!」

 

 バーンと探偵が犯人に指を差すようなポーズをとった。

 

 和美は勢いに負けて後ずさる。

 

「ス、スリーサイズ、ピッタリ合ってるし。恐るべし。ていうか、生徒を体で判断しないでよ」

 

 さすがに怒った。

 

「ふん。俺のスカウターを甘く見るなよ」

 

 キラリと隼人の目が光った。

 

「で、何のようだ」

 

 隼人は和美に聞いた。

 

 和美は不敵に笑う。

 

「ふっふっふ。バレちゃ、しょうがない。先生。私見ちゃったのよ! 先生が魔法使うところをね!!」

 

「ふ~ん」

 

 リアクションが薄かった。

 

「あ、信じてないでしょ。いいわよ。証拠写真もあるんだから!」

 

 デジカメを取り出して隼人に見せる。

 

「お~良く撮れてるな」

 

 隼人は感想を言った。

 

「で、これがどうかしたか?」

 

 聞かれて、答えを窮した。

 

「いや、どうって。詳しく話を聞きたいんだけど……?」

 

 相手の反応が予想外だったため、調子を崩された。

 

 隼人は思案するように顎に手を当てる。

 

「う~ん。どうせ、俺の話を記事にするつもりだろ?」

 

「当然よ。こんなスクープ滅多にないんだから」

 

 隼人はどうしたものかと頭を掻く。

 

「あ~。話してやっても良いけど、記事には出来ないぞ」

 

「なんで?」

 

 和美は首をかしげた。

 

 隼人は説明し始めた。

 

「いいか。この世の中に魔法使いは大勢いる。しかし、魔法が世間にバレることはない。何故か」

 

 そこで一拍置く。

 

「理由は簡単。こうやってバレてもすぐに誤魔化せるように何十何百と対策があるからだ」

 

「じゃあ。話を聞いて記事にしても?」

 

「当然、笑い話の与太話ってことで片付けられるだろうな」

 

「それでも、書き続ければいつか、知らしめることはできるんじゃ」

 

「残念だが、それは無い。魔法界には魔法開示派と魔法秘匿派の二つの思想が常にぶつかり合っている。んで、今は魔法秘匿派が主流だ。協会の方針もそちらに動いている。書き続けたら最悪、本人の記憶を消去されて無かった事にされるな」

 

「そ、そんなああああ」

 

 和美はガックリとうなだれる。

 

 隼人は和美の肩をたたく。

 

「まぁ、結局お前は俺に裸見せただけで、骨折り損だったけど、ドンマイ」

 

 微妙な優しさが胸に突き刺さった。

 

「うわぁぁぁぁぁん」

 

 思いっきり泣いた。

 

「まぁ、落ち着け。記事にしないで、心の内にとどめておくなら、話してやるから」

 

 隼人は慰める。

 

「ほんと?」

 

 涙を拭いて、聞いてくる。

 

「俺は一応、魔法開示派だ。まだ時間はあるし、ゆっくり湯船に浸かって、話そうか」

 

 そして、隼人は手ぬぐいを頭に載せて話し始めた。

 

 

★

 

 

 

 暫く話して、年齢の話になった。

 

「ええ! 実年齢三十四!?」

 

 和美は驚く。

 

「まぁ、ちょっとした理由で成長を止めている」

 

「へっへっへ。嬢ちゃんそんなことで驚いてたらこの先持たないぜ」

 

 カモが笑う。

 

「いやもうオコジョが話している時点でお腹一杯なんだけど」

 

 和美は次々と明らかになる事実に驚きを隠せないでいた。

 

 魔法使いのこと。気道使いのこと。魔法教師のこと。そして今、修学旅行で起こっていること。

 

 いっぺんに情報を教えられて整理がつかなかった。

 

「整理できないのも無理はないさ」

 

 女湯から笑い声が聞こえてきた。

 

「っと。もう生徒が入ってきたな。俺は退散するよ。もう少し詳しく聞きたかったら学校に帰ってからでも教えてやるよ」

 

 そういうと、隼人は立ち上がり男湯のほうへ去っていた。

 

 隼人は去った方を見つめながら和美はため息をつく。

 

「いや~。世の中にはまだ隠された巨大な謎があるもんだなぁ」

 

「普通に暮らしてたら知る必要のないことだからな」

 

 カモがそうしみじみと言った。

 

「う~ん。そうだね」

 

 その意見に同意した。

 

 すると、カモは妙に邪悪な笑みを浮かべて言った。

 

「知る必要のないことだけれど、知りたいなら俺っちも教えてやるぜ。特にアニキの英雄譚なんてどうだ?」

 

「へぇ先生に英雄譚なんてあるんだ」

 

 和美は興味を惹かれた。

 

「アニキは魔法使いの間じゃ伝説の英雄だからな。知らない奴はモグリか赤ん坊だぜ」

 

「おしえてよ。カモ君」

 

「いいけど、ただし条件がある」

 

「条件?」

 

「なぁに。嬢ちゃんの力なら簡単なことさ」

 

 カモはエロオヤジのような顔になる。

 

「3-Aクラスメイトの『刹那嬢ちゃん』と『楓嬢ちゃん』と『真名嬢ちゃん』と『くーふぇ嬢ちゃん』の着替え写真を撮ってきてもらいたい」

 

「へ? それってうちのクラスの武闘派連中じゃない」

 

「そうなんだよ。他の嬢ちゃんたちの着替え写真は既に持ってるんだけど、どうしても隙がないあの四人の写真が撮れないんだ」

 

「もしかして、アルバムでも作るつもりなの」

 

「イエス! 名付けて『3-A着替えアルバム~至高の下着~』だ!! あと四人で三十一枚フルコンプできるんだ。頼むよ」

 

 カモは手を合わせて拝む。

 

「私でも流石にあの四人の着替え写真なんて難しいよ」

 

 和美は難色を示した。

 

「よーし。だったら特別出血大サービスで『仮契約』の話もしてやろう。ってどうした?」

 

 和美がカモの後ろに目線を向けていた。

 

 カモは背後に不吉な気配を感じる。

 

 恐る恐る、後ろを向くとそこには明日菜がいた。

 

「げっ、姐さん……」

 

「カモ。アンタ着替え写真なんてもの撮っていたんだ」

 

 にっこり笑って話しかける。

 

 しかし、目が笑っていなかった。

 

「とりあえず、鉄拳制裁!」

 

 拳を振り下ろす。

 

「オ、オコジョフラーッシュ!」

 

 カモはどこから出したのかマグネシウムの紐とライター取り出して、閃光を作り出す。

 

 魔力で増幅されて威力が倍に上がっている。

 

「あ、ちょっと待ちなさい!!」

 

「へっへっへ。そう何度も鉄拳を喰らってたまるか! 逃げるが勝ち。あばよ」

 

 閃光にまぎれて逃げ出した。

 

 男湯へ駆けていくが一歩手前のところで雷の鉄拳が落ちた。

 

「ぐぎょほおおおおおおおおおおおお」

 

 悲鳴を上げて地面に転がる。

 

 そこには刹那が立っていた。

 

「全く。貴方も懲りませんね」

 

 呆れたように言った。

 

「刹那の嬢ちゃんがいたのか」

 

 カモは電撃で煙を上げている体を起こすと、明日菜たちに言った。

 

「だが、これで勝ったと思うなよ。いずれ第二、第三の俺っちが必ず夢のアルバムを完成させ、ぶべっ」

 

 最後まで言えなかった。

 

「いい加減にしとき。カモ君」

 

 木乃香が魔法で取り出した巨大なハンマーでカモを潰したのだ。ちなみにハンマーには「100t」と書いてある。

 

「お見事です。お嬢様」

 

 刹那が賞賛する。

 

「ナイス木乃香。で、なんで朝倉とカモが喋ってたの?」

 

 明日菜は不思議そうな顔をして和美に尋ねた。

 

「いやぁ。あははは。色々と事情があってね」

 

 苦笑いしながら、和美はカモの冥福を祈った。 

 

つづく

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