魔法教師はやト!   作:沖彦也

15 / 55
修学旅行編三日目です。

宜しくお願いします。


第十五話「修学旅行の激闘! ~隼人vs小太郎~」

「ここで、あんたらの修学旅行は終わりやで」

 

 邪悪な笑みで天ヶ崎が言う。

 

 天ヶ崎の横には、白髪の少年フェイト。学ランを着た少年小太郎。そしてゴスロリを着た少女月詠がいる。

 

 最悪のタイミングで敵が現われた。

 

 無限方処の呪法で作られた空間。それは逃げられないことを意味する。

 

 隼人は和美達を庇うように前に出て構える。

 

「しつこいな。お前ら本当に何者だ」

 

 天ヶ崎がニタリと笑う。

 

「そういえば、まだ自己紹介してなかったな。私の名前は天ヶ崎千草や」

 

 千草に倣って、残りのメンバーがそれぞれ名乗った。

 

「俺は犬神小太郎や」

 

「うふふふ。月詠っていいます~」

 

「フェイト」

 

「ま、以後よろしゅうたのむわ」

 

 千草の目の奥が怪しく光る。

 

 隼人は刀を抜く。

 

「全員、構えろ」

 

 その一言で明日菜達はそれぞれの武器を構える。

 

 警戒する隼人たちを見て笑う千草。

 

「ヤル気満々みたいやけど、まともに戦えるのはそこにいる、神鳴流のお嬢ちゃんだけちゃうか?」

 

「ふん。俺を甘く見るなよ。雑魚が何人集まっていても問題ない」

 

 隼人は特大の闘気を発して威嚇する。

 

 しかし千草はその闘気を受け流して、にこやかに手を上げて押さえるように言う。

 

「まぁ落ち着きって。せんと君を殺った相手と戦いたないわ。ここは穏便に話し合いで済まさへんか?」

 

「話し合い?」

 

 いつでも行動を起こせるように相手を窺いつつ話に乗る。

 

「そうや。木乃香お嬢様の力を借りたいねん。協力して欲しい」

 

「断る」

 

「まぁ、そう言わずに。私は別にあんたらを殺そうなんて思うてへん。だたちぃっと力を貸してほしいねん」

 

「ウチの力を使ってなにするつもりなん」

 

 木乃香が尋ねる。

 

「お嬢様の力を使って伝説の鬼神『スクナ』を復活させたいんですわ」

 

「スクナ?」

 

 聞きなれない単語に木乃香たちは首をかしげる。

 

 唯一、隼人だけが理解できた。

 

「まさかお前、正気か!?」

 

「モチのロン。正気やで」

 

「お前には不可能だ。アレを使役するだけの力があるとは思えない」

 

「残念やけど、せんと君を召喚したのは私やで。鬼神かて楽勝や」

 

 自信に満ちた顔で言い切る。

 

「そうか。アレを使って何をするつもりかは知らんが、ここで阻止しておくのが世のため人のためだな」

 

 隼人は臨戦態勢に入る。

 

 千草は残念そうにため息をついて言った。

 

「ほな、死ね」

 

 冷酷な一言が放たれ、隣にいた学ランの少年とゴスロリの少女が動く。

 

「お前の相手はこの俺や」

 

 隼人に飛びかかる少年。

 

「嗚呼。せんぱぁ~い。私と殺し合いしましょお~」

 

 ゴスロリの少女は上気した顔で刹那に向かっていく。

 

「全員、気をつけろ!!」

 

 隼人は指示を飛ばし、少年と相対する。

 

「お嬢様。離れて!」

 

 刹那は向かってくる少女に危険を感じて、迎え撃つ。

 

「さぁ、頼むで。小太郎はん、月詠はん」

 

 千草は印を結ぶ。

 

「発動。【無限方処・隔離の陣】」

 

 千草の呼びかけに応じて、罠が発動。空間が切り取られていく。

 

「な!?」

 

 時、既に遅し。気がついたときには、隼人達はそれぞれ別の空間に飛ばされていた。

 

 

★

 

 

「くそ、二重に罠が張ってあったのか」

 

 隼人は舌打ちをした。

 

 しかし、すぐさま切り替えて、状況を確認する。

 

 飛ばされた場所は、さっきまでいた道の外れにある河原の近くだった。

 

 傍にカモと和美と夕映とハルナがいる。

 

 どうやら近くにいたため、一緒に飛ばされてきたらしい。

 

「先生。一体どうなってるです?」

 

 夕映が不安そうに聞いてくる。

 

 質問に答えようとしたとき、殺気を感知した。

 

 感知した先には小太郎がいた。

 

「へへ。ここなら存分に戦える」

 

 川にある大きな岩に立って、闘気を発している。

 

 ハルナは小太郎の姿を見て驚いた。

 

「あれ? あの子、頭の上に耳がある」

 

「尻尾も生えてるよ」

 

 持っていたカメラで写真を撮りながら、和美が指摘する。

 

「この狗(いぬ)のような気配。狗族(くぞく)か」

 

 隼人は敵の闘気から読み取った。

 

 小太郎は隼人の後ろにいる、和美達を一瞥すると言った。

 

「早ぉその女共をどっかにやれ。居たら邪魔や」

 

 隼人は警戒しつつ、その提案を受け入れた。

 

「カモ、彼女達と下がってろ」

 

「がってんだ。アニキ」

 

 肩に乗ったカモは和美達を連れて離れる。

 

 離れたのを確認すると、隼人は指にはめている魔力発動体の指輪を付け直した。

 

「どうやら準備万端のようやな。ほな、勝負や!」

 

 小太郎が岩を蹴って、突っ込んできた。

 

 ギリギリのところで回避して間合いをとる。

 

 はずだった。

 

「ぐぅっ」

 

 紙一重で避けたつもりが、肩を相手の鋭い爪に切り裂かれて鮮血が飛び散る。

 

 さらに小太郎は追撃で蹴りを入れる。

 

 障壁を展開して防ごうとするが、一点集中の蹴りが貫通してヒット。

 

 幾分かは相殺されたが、それでもかなりのダメージを受けて吹き飛んだ。

 

 隼人は空中に放り出された体を制御して、着地。

 

 しかし、膝が地面に付いた。

 

「自分どないしたん? 動き鈍いで」

 

 呆れるように小太郎が言う。

 

 確かに隼人の動きは鈍かった。いつもなら最初の一撃をかわして、二、三撃入れている。

 

「お前らのせいで、こっちはボロボロなんだよ」

 

 なんとか立ち上がって構えた。

 

「なんや、せんと君にやられて弱ってるってホントやったんか」

 

「ボロボロでも、お前程度なら戦える」

 

 隼人は挑発するようなことを言う。

 

 その一言にカチンと来たのか、小太郎はその場でステップを刻む。

 

「ええよ。ほなら見せてみぃ。『紅蓮鬼』の力をなぁ!」

 

 足の裏に溜めた気を爆発させて、一気に加速する【瞬動】で間合いをつめて急襲する。

 

 隼人は向かってくる小太郎を避けることも防ぐこともせず、迎え撃つ。

 

「うらぁあっ」

 

 小太郎は右手の鋭い爪で一撃。

 

「花の章【梅花(ばいか)】!」

 

 全ての攻撃を受け、捌き、避ける防御の技を使い、隼人はその一撃を左手で受け流す。

 

「むっん」

 

 受け流されたのを気にせず、左手の爪で一突き。

 

「せいっ」

 

 今度は右手で受け流す。

 

「でええい」

 

 二撃とも受け流されたのが腹立ったのか、そこから小太郎は素早い動きで次々と連撃を入れていく。

 

 右ストレート。左蹴り上げ。左爪斬り裂き。右掌底。右回転蹴り。左アッパー。

 

 その連撃をすべて捌いていく隼人。

 

 さらに捌いている間、無詠唱魔法【魔法の射手】を溜めていく。

 

 だが、「花鳥風月 花の章【梅花】」は受け流すだけでは不完全な技。

 

 加えて、隼人は既にボロボロの状態。

 

 徐々に押されはじめ、遂に腹部に一撃を喰らい体勢が崩れる。

 

「もらったああ!」

 

 その隙を逃さず、小太郎は強烈な一撃で隼人を蹴り飛ばす。

 

 飛ばされた隼人は傍にあった岩にめり込み吐血。

 

「へっ。決まった」

 

 小太郎はガッツポーズした。

 

 

★

 

 

 隼人と小太郎の戦いを少し離れたところで見ていた、和美達は驚愕した。

 

「ちょ、先生負けちゃったよ」

 

「うは~。強いなあの少年」

 

 和美とハルナは岩にめり込んだ隼人を見て焦った。

 

 夕映は目の前に映る光景が凄まじすぎて言葉を失っている。

 

「大丈夫だ。嬢ちゃんたち」

 

 カモは力強く言う。

 

「アニキは負けねぇ。絶対に負けねぇ」

 

「でも、盛大に吐血して、ボロボロだよ」

 

「それでも大丈夫だ。和美嬢ちゃん」

 

 カモは思い出していた。エヴァンジェリン戦の時のことを。

 

 あのとき、隼人は究極技法【爆熱真紅】を使わなかった。

 

 刀すら使わず、倒そうとしていた。

 

 そう、彼は作戦を立てて相手を追い詰めた。

 

 今、自分が持っている力を把握して、それを使って相手を倒す作戦を編み出す。

 

 それが隼人のバトルスタイル。

 

 どれだけボロボロになろうとも、必ず勝つ。

 

 カモはそれを信じていた。

 

「アニキ。俺っちは信じてるぜ」

 

 岩にめり込む隼人に向かってそうつぶやいた。

 

 

★

 

 

 一方、隼人はカモの期待に答えるかのように、既に作戦を立ててそれを実行に移していた。

 

 今の隼人が持っている力は魔法だけだった。

 

 せんと君との死闘で使い果たした気はほとんど回復していない。

 

 よって気を燃料にして肉体強化する【爆熱真紅】は使えない。

 

 使えたとしても、それは十秒程度。まともに使えない。

 

 しかし、隼人はその十秒に賭けることにした。

 

「ガ、ガッツポ、ーズにはま、だ早いぞ」

 

 めり込んだ岩から体を引き剥がして、立ち上がる。

 

 息が荒い。服は血がにじんで黒ずんでいる。せんと君との戦闘で負った傷も開いていた。

 

 口から鮮血が零れる。それを拭って構える。

 

「明らかに瀕死やん。勝負あったとちゃう?」

 

 その姿をみて小太郎は肩をすくめた。

 

「どうかな? 我流の体術では俺を仕留め切れないと見た。現にまだ俺は生きている」

 

「何が言いたいねん」

 

 小太郎は額に青筋を浮かべながら聞く。

 

 隼人は不敵に笑うと言った。

 

「お前に俺は殺せない」

 

 その言葉を聞いて腹が立ったのか、小太郎の頬が痙攣している。

 

「言うやないか。瀕死のくせに。お前なんか、今すぐにでも殺れるで」

 

「だったら、犬みたいに吼えてないでかかって来い。犬っころ」

 

 ブチィッと切れる音がした。

 

「ほな、死ね! クソがああああ」

 

 【瞬動】で一気に間合いをつめて襲い掛かる。

 

「我流 犬神流【獄爪心穿掌(ごくそうしんせんしょう)】!!」

 

 右手に集中した凄まじい気は、あっという間に心臓を抉り出すことの出来る力を秘めている。

 

 それが隼人の左胸に突き立てられる瞬間だった。

 

「【爆熱真紅】!」

 

 隼人は究極技法で一瞬だけ肉体を強化。

 

 さらに、相手の腕を取って回転。

 

「風の章【旋風(つむじかぜ)】」

 

 相手の技の勢いと、自身の回転の力を合わせた合気技を使って、空中へ投げ飛ばした。

 

「なんやて!?」

 

 小太郎が気づいたときには、空中に放り出されていた。

 

 体勢を整えようとしたが、体が動かない。

 

 それもそのはず。爆熱真紅の効果【戦意焼却】動きを封じられていた。

 

「喰らえ!」

 

 隼人は遅延呪文で発動を抑えていた、【魔法の射手】を開放。

 

 無詠唱魔法【魔法の射手】火炎の八十五矢を小太郎に発射する。

 

 着弾して小太郎が爆発。勢いで地面に落下した。

 

「ぐ、このぉ!」

 

 小太郎はすぐさま立ち上がって反撃に出ようとした。

 

 だが、目の前に真っ赤な光。

 

「え?」

 

 激烈な猛火が小太郎を襲う。

 

「ぐあああああああ」

 

 隼人が【魔法の射手】火炎の五矢を飛ばしたのだ。

 

 そのまま連続でチャージ、発射を繰り返す。

 

 本数を抑えて、溜め時間を少なくし連続で発射する。単純な方法だが、向かってくる矢は途切れることなく小太郎に襲い掛かる。

 

「ぐが、ごのあおあ」

 

 小太郎は防ごうともがくが、その隙すらない。火炎の奔流が体を焼いていく。

 

 やがて力尽き、小太郎はがっくりと膝をついて倒れた。

 

 

★

 

 

「ど、どうなったの?」

 

 和美達は固唾を呑んで見守る。

 

 煙が立ち込めている。

 

 それが晴れたとき、彼女達の目に飛び込んだのは、肩で息をしながら立っている隼人だった。

 

 そして彼の足元には、煙を放ちながら倒れている小太郎がいる。

 

「先生!」

 

「うは、勝ったああああ」

 

「やったです!」

 

 彼女達の歓声が上がる。

 

「がは、っ」

 

 隼人は吐血してその場に膝を付く。

 

 慌てて皆が駆け寄った。

 

「大丈夫!?」

 

 和美に肩を貸してもらい、その場から少し離れて腰を下した。

 

「それにしても、連続で魔法を放つなんてすごい! まるでマシンガンのようだった」

 

 ハルナが嬉々として言う。

 

「あいつの性格が、直情型で挑発に乗りやすい性格をしていたからな。挑発して誘い込み、放り投げて連続で魔法を打ち込んでやった」

 

 小太郎のほうを見ると、ピクリともせずうつ伏せで倒れている。

 

「あの少年は死んだですか?」

 

 恐る恐る夕映が質問する。

 

 隼人は口に溜まった血を吐き出して言う。

 

「死んじゃいないよ。持っていた護符でほとんど弾かれた。けど、一発で岩を砕く威力がある魔法の矢を三十発以上は打ち込んでやったんだ。しばらく動かないだろうよ」

 

「そうですか」

 

 深く息を吐くと隼人は立ち上がった。

 

「それより移動するぞ。この結界を破壊しなきゃならん」

 

 先ほど同じように肩を貸してもらい、隼人の案内で鳥居の道に戻ってきた。

 

 そこは飛ばされる前に居た位置から少し進んだ場所だった。

 

「おそらく、ここが結界の中心だ」

 

 隼人は道の真ん中に座り込む。

 

「アニキ、どうするんだ」

 

 カモが指示を仰ぐ。

 

「【無限方処の呪法】は入り口と出口を決めて、その場所を特殊な札で切り取る。その後、空間をつなげるわけだ」

 

「では、その魔法は入り口か出口を壊せば解けるですか」

 

 夕映が聞いてくる。

 

 隼人は満足したように頷いた。

 

「そうだ。さすが頭の回転が速いな。この連続する鳥居のどこかに、無限方処の札がある。それを破壊すればなんとかなる」

 

「でもそんな場所見つけられるの?」

 

 ハルナが不安そうに言った。

 

「大丈夫だ。あの少年と戦っている時に、この空間に探査魔法を走らせた。そしたら、この空間の全貌がわかったよ」

 

「あんな戦いの中で、そんなことしてたんだ」

 

 呆れるやら感心するやら和美は驚いた。

 

「さすが、アニキ。俺たちに出来ないことを平気でやってのける。そこ痺れる、憧れるぅ」

 

 カモはどこかで聞いたようなセリフで讃えた。

 

 それに照れつつ、隼人は説明する。

 

「この空間はここを中心に幅半径約百メートル、高さ約五十メートルの円形状に切り取られている」

 

 彼は目を閉じながら、続ける。

 

「さらに、刹那と明日菜、木乃香とのどかの二組は今いる場所から左側と右側、約七十五メートルほど離れた場所で戦っている」

 

 遠くのほうで爆音が聞こえてきた。

 

「みんな戦っているんだ」

 

 和美がつぶやく。

 

「この呪法は空間の大きさが分れば解呪できる。ここから真直ぐ百メートル行ってそこにある札を破壊すれば、空間を壊すことが出来る」

 

「じゃあさっそく行こう」

 

 ハルナが向かおうとする。

 

「ちょっと待った」

 

 隼人は引き止める。

 

「どうしたの?」

 

「実は、俺はもう動けない」

 

 急き込んで血を吐く。着ていた服もボロボロで、血に染まっていた。

 

「……っ」

 

 その痛々しい姿に和美達は絶句した。

 

「まぁ、固定砲台にはなっても動くことは出来ない。残りの敵を倒すためにも色々と策がいる」

 

 隼人はカモを見る。

 

「そこで、カモ。仮契約の準備だ」

 

 絶望的な状況なのは変わらない。しかし血に染まった顔は勝利を確信する笑みが浮かんでいた。

 

「仮契約?」

 

 突然出てきた言葉に戸惑う和美達。

 

「仮契約は簡単に言うと魔法が使えるようになる」

 

 隼人が説明した。

 

「けど、アニキ。今ここで役に立つアーティファクトがでるか分らないぜ」

 

「それは、問題ない。この三人は好奇心が旺盛だ。人の後をこっそりとつけるぐらいだからな」

 

 ばつが悪そうな顔をする三人組。

 

「とにかく今、必要なのは探査型のアーティファクトだ。それがあれば、札が貼られている場所を特定できて、次の一手が打てる」

 

 カモは納得した。

 

「そうか。アーティファクトはその人物に適した物がでる。好奇心の強い嬢ちゃん達だったら欲しいのが出るかもだぜ」

 

「あの、さっきからワケがわかんないんだけど?」

 

 置いてけぼりにされた三人が文句を言う。

 

「とにかく、便利な魔法の道具が手に入るかもしれないから、協力してくれ」

 

 隼人は頭を下げて頼んだ。

 

「まぁ、いいけど」

 

「現状を打破するのに必要なら協力するです」

 

「まぁ、魔法が使えるならラッキーだね」

 

 三者三様の意見を言う。

 

 その反応をみてカモは急いで魔法陣を描く。

 

「誰か、あそこにある石を持ってきてくれ」

 

 隼人は指示を出す。

 

 ハルナが持ってきた。

 

 石を受け取ると、それをくり抜いて器を作った。

 

「済まないがこれで川から水を汲んできてくれ」

 

 和美が水を汲んできた。

 

 隼人は水を含むと口をゆすいで吐き出す。そして血に染まった口の周りをぬぐう。

 

「さすがに血染めの口じゃ失礼だしな」

 

「へ?」

 

 三人は不思議そうな顔をした。

 

「アニキが立てないから、とりあえず、この魔方陣にしゃがんでくれ」

 

 魔法陣を描き終えたカモの指示で、三人は座り込んだ。

 

「で、どうするの?」

 

 和美が首をかしげる。

 

「こうするんだよ」

 

 隼人は意地の悪い笑みを浮かべて和美の唇を強引に奪った。

 

「パクティオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 カモが叫ぶ。

 

「え? え? なに?」

 

 ハルナはその光景を見てよく分らないといった風に慌てる。

 

「余所見すんな」

 

 続けて、ハルナの唇も奪う。

 

「がはははは。パクティオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 テンション高めにカモは叫ぶ。

 

「え、ちょっと、待つです。まだ心の準備が」

 

 おろおろする夕映。

 

「安心しろ。優しくしてやる」

 

 そういって隼人は夕映に口づけする。

 

「うしゃあああ。パクティオォオオオオオオオ!」

 

 さらにテンション高めにカモが叫んだ。

 

 魔方陣が光り輝き、空中に三枚のカードが現われる。

 

 それを手に取り、確認。

 

「ビンゴ! 出たぞ、探査型アーティファクト」

 

 隼人はガッツポーズした。

 

 突然キスされた和美たちはボー然としている。

 

 その様子に隼人は笑いながら言う。

 

「気にすんな。三人ともなかなか柔らかかっ、ばぴうmがlくじゃ」

 

 言い終わらないうちに、三人から鉄拳が飛んできた。しかも顔面に直撃。

 

「とりあえず、乙女の唇を奪った罪はこれでチャラにしてあげる」

 

「です」

 

「うん」

 

 三人は怒りながら立ち上がる。

 

 隼人は鼻を押さえながら文句を言った。

 

「いてて、俺がボロボロだってのに。ていうか、和美は俺に裸見せてくれただろ。キスぐらいで文句言うな」

 

 和美は拳を握ると額に青筋を浮かべる。

 

「また、殴られたい?」

 

「いえ。すいませんでした」

 

 素直に謝った。

 

「で、これからどうするの?」

 

 すぐさま話を切り替える。

 

 隼人も真面目な顔になる。

 

「和美のアーティファクトが【渡鴉の人見(わたりがらすのひとみ)】っていうスパイアイテムだ。これを使って破壊ポイントを探す」

 

 そういって正式版をコピーしたカードを渡す。

 

 そのカードには制服を着た和美の周りに、写真が取り巻いている絵が描かれていた。その和美の隣には小型の衛星ロボットがいる。

 

「これが私のカードかぁ」

 

 仮契約カードを眺めながら感慨深げに言った。

 

「じゃあ、私のカードはなんですか?」

 

 夕映が興味津々に聞いてくる。

 

 隼人はコピーカードを渡して言った。

 

「夕映のは【世界図絵(せかいずえ)】っていうアイテムだ。このアーティファクトは魔法の事に対しての答えを導いてくれる魔法百科事典だ」

 

「へぇ、そうですか」

 

 まじまじと見てみる。

 

 そのカードはトンガリ帽子にローブを着た夕映が描かれている。手には大きな事典と箒を持っていた。

 

「私のはなに!?」

 

 ハルナも聞いてくる。

 

「お前のは【落書帝国(らくがきていこく)】っていうゴーレムを召喚できるアイテムだ。スケッチブックに書いた絵がゴーレムとして召喚できる」

 

「うわあ。マジで。凄い!」

 

 嬉しそうに渡されたカードを眺める。

 

 そのカードに描かれていた絵は、スケッチブックと羽ペンを持ったエプロン姿のハルナだった。

 

「よし、それじゃ始めるぞ」

 

 隼人の呼びかけで全員が頷いた。

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。