魔法教師はやト!   作:沖彦也

19 / 55
修学旅行編三日目です。

いよいよ、最終決戦です。

宜しくお願いします。


第十九話「修学旅行の決戦! 逆転の一手、集う仲間たち」

 夕映は自分の足元の影を見つめる。

 

「!?」

 

 影が揺らめき、そこから手が出てきた。

 

「よいしょ」

 

 プールから上がるように体を持ち上げて、影からエヴァが出てきた。

 

「う~ん。凄いでござるな」

 

 続いて楓が出てくる。

 

「うは! 楽しいアル」

 

 嬉々として笑いながらくーふぇが出てくる。

 

「はしゃぎ過ぎだ」

 

 たしなめる様に言って真名が出てきた。

 

「これで全員転送完了です」

 

 最後に茶々丸が転送されてきた。

 

「待たせたな、綾瀬。ってなに驚いてる?」

 

「いや、自分の影から人が次々と出てきたら、驚くです」

 

 冷や汗を拭う。

 

 エヴァはそれを笑うと、隼人たちが向かった先を見つめる。

 

「奴等はあっちに向かったな。どうせ苦戦してるだろうから、急いで行ってやるか」

 

「く~。燃えてきたアル」

 

 拳を打ち鳴らしてくーふぇは飛び上がる。

 

「はしゃぎ過ぎて、怪我してもしらんぞ」

 

 真名は持ってきたアタッシュケースに入っている銃を確かめる。

 

「急がねば。なにやら不穏な空気でござる」

 

 楓は敵の方角を見つめて険しい表情になる。

 

 向かおうとする彼女たちに夕映は言う。

 

「あの私はどうしたらいいです?」

 

「お前は、ここに残って待機。その携帯でジジイ、学園長に連絡しろ」

 

「分ったです」

 

「では、行くぞ」

 

 隼人たちの向かった先に駆け出した。

 

 

★

 

 

 隼人たちは敵を追いかけてひた走る。

 

「こっちでいいの?」

 

 並走しながら明日菜が聞く。

 

「敵の気配が向こうから感じる。間違いなくこの先だ」

 

 敵がいるのは森を抜けた先。

 

 夜の森林を月明かりだけを頼りに走っていく。

 

「先生、見えました」

 

 大きな岩が転がる、浅瀬の沢に敵はいた。

 

「見つけたぞ! 天ヶ崎千草!!」

 

 叫んだ向こう側には千草が木乃香を抱えていた。

 

 木乃香はさるぐつわを嵌められて、体を縛られていた。

 

「けっ。もう追いついてきたんか。しつこい男は嫌われるで」

 

「アホが。貴様のようなババァに興味はない」

 

 隼人は凶暴な笑みを浮かべて言い放つ。

 

「な、ウチはまだ二十六や! ババァやあらへん!!」

 

 顔を朱に染めて怒る。

 

 興味がないように鼻で笑った。

 

「ふん。二十六は立派なババァだ」

 

 すると隣にいた明日菜と刹那が嫌そうな顔をした。

 

「やっぱり、ロリコンだ」

 

「先生、今それ言う時じゃありません」

 

 隼人はそれを無視すると、刀を引き抜く。

 

「友人の大切な娘を、俺の大切な生徒を、返してもらうぞ!」

 

「あんた等の相手してるヒマあらへんねんけどなぁ。けどまぁ、お嬢様の力で足止めさせてもらおか」

 

 千草は木乃香に札を貼り付けると、呪を唱える。

 

「来たれ、来たれ、鬼さんこちら。手のなる方へ!」

 

 パンと手を打ち鳴らすと、周囲に魔力が満ち、転送陣が現われる。

 

「来るぞ! 気をつけろ!」

 

 隼人は警戒を促す。

 

 辺りが光り輝くと、一瞬で百数十体の鬼や妖怪が現われた。

 

「ちょ、これはさすがにヤバくない?」

 

 明日菜は囲まれた状況に顔を青ざめる。

 

「アニキ! 風を起こしてくれ。作戦を立てる」

 

 刹那の胸元からひょっこり顔をだしたカモ。

 

「分った。風の章【竜巻昇天】」

 

 風を纏った刀を天に突きたてると、隼人たちの周囲を竜巻が囲んだ。

 

「どうやら、閉じこもったようやな」

 

 この隙に、千草は木乃香を抱えて目的の場所、スクナの眠る祭壇に向かった。

 

 

★

 

 

「この障壁は長くは持たんぞ」

 

「よしっ。手短に作戦を立てるぜ」

 

 カモが必死に思案する。

 

「二手に分かれましょう」

 

 刹那が提案した。

 

「私が一人、ここに残って魔物を相手にします。その間に先生と明日菜さんはお嬢様を奪還してください」

 

「無茶言わないでよ。あれだけの数相手に一人でなんて!」

 

 明日菜が否定した。

 

「ですが、もうこの手しかありません。私は大丈夫です。元々魔物退治が私の専門なんで」

 

 もちろん、彼女一人で相手に出来る数ではない。だが大切な木乃香を助けるための悲壮な決意だった。

 

「隼人! 何とか言って」

 

 明日菜は隼人に話を振る。

 

 無言で考え込んでいた隼人は口を開く。

 

「刹那の言うとおり、二手に分かれよう。ただし、刹那と明日菜がここに残れ」

 

「私も?」

 

「そうだ。もう気づいてるかもしれんが、お前のアーティファクトは魔法を無効化し、なおかつ召喚された魔物を一発で送り返すことができる。この状況なら無敵アイテムだ」

 

「このハリセンが……」

 

 彼女は自分の手にあるハリセンを見つめた。

 

「それに安心しろ。今さっき感知した。エヴァたちが援軍としてくる。しかも楓たちも来てるみたいだ」

 

「本当ですか!?」

 

 刹那が驚く。

 

「逆転の一手はすでに打たれている。あとは、どれだけ持ちこたえられるかだ。出来るな?」

 

 隼人は明日菜と刹那の顔を見る。

 

「もちろんよ」

 

「この命に代えても」

 

 二人は頷いた。

 

「よし、ならば後は俺が木乃香を奪還して、ケリをつける」

 

「それなら、手札を増やすために仮契約、一発いっとくか」

 

 カモがニヤッと笑った。

 

「いや、それは流石にちょっと」

 

 隼人は急に渋る。

 

 刹那は顔を真っ赤にした。

 

「なぁに照れてるんだよ! 一発ぶちゅ~っとするだけだろ。ほれやっちまえ」

 

 いつの間にか仮契約の魔方陣が出来ている。

 

 カモの勢いに負けて互いに向き直る。

 

「えと、それじゃ」

 

 耳まで赤く染めて刹那がおずおずと言う。

 

 珍しく隼人は冷や汗をかきながら見つめる。

 

「いくぞ」

 

「はい」

 

 互いに唇が近づき、合わさる。

 

「パクティオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 カモが思い切り叫ぶ。魔方陣が光り輝き、カードが出てくる。

 

 カードには純白の翼を生やした刹那が匕首を持っている絵だった。

 

「【匕首・十六串呂(あいくち・ししくしろ)】。多人数戦では有利なアーティファクトだ。使い方は簡単。その匕首はお前の意志で自在に動く武器だ。上手く使えよ」

 

 隼人はコピーカードを刹那に渡す。

 

 刹那は受け取ると頷く。

 

「竜巻が解けるよ」

 

 明日菜はハリセンを構える。

 

 隼人は手のひらをかざして、呪文を唱える。

 

「ラス・テル マ・スキル マギステル。来たれ火の精、熱の精。劫火を纏いて猛れ! 灼熱の風」

 

 竜巻が解けた瞬間、放った。

 

「【焦熱の嵐】!!」

 

 猛る熱風の嵐が敵陣を貫く。

 

 道が出来ると、隼人は弾丸のように駆け出した。

 

「さて、やりましょう。明日菜さん」

 

「オーケー。刹那さん」

 

 不敵な笑みを浮かべて、群がる鬼どもに立ち向かっていった。

 

 

★

 

 

 隼人は夜の森を風のように走る。

 

 木々を縫うように走り抜ける。

 

 川原を飛び越え、岩を飛ぶ。

 

「アニキ、奴等の居場所は分るのか」

 

 肩にしがみついたカモが聞いてきた。

 

「ああ、連中の狙いがスクナの復活なら、森の奥の『両面湖』にいるはずだ。そこの祭壇で儀式を行わなければ復活しない」

 

「てことは、その儀式を阻止できればスクナは復活しないんだな」

 

「そうだ。復活したら京都の町は阿鼻叫喚の地獄になる。ここからは時間との勝負だ」

 

 復活を阻止するために、儀式を妨害する。それが隼人たちの唯一の勝利だった。

 

 木乃香を奪還するためにも、隼人は一層スピードを上げて向かう。

 

 が、ふいに横から数匹の黒い犬が飛び出してきた。

 

「なっ!?」

 

 黒犬は隼人にぶち当たって、足止めする。

 

「なんだ、いったい?」

 

 体勢を崩されるも、なんとか踏みとどまった。

 

 見つめた先には、学生服に身を包んだ、少年が一人。

 

「よぉ。ここから先は通さんで。昼間のリベンジといこか」

 

 犬神小太郎だった。

 

「悪いがお前の相手をしている暇はないっ」

 

 ムリヤリ押し通るために、刀を振るって、けん制する。

 

「はっ。暇ないんなら、作れや」

 

 黒犬を召喚して刀の攻撃をいなす。

 

「くそっ。時間がないってのに」

 

 負ける気はしないが、簡単に通してくれそうになかった。

 

「ほな。いくで!」

 

 鋭い爪で襲い掛かる小太郎。

 

 迎撃体勢をとる隼人。

 

 しかし、その間を割って巨大な手裏剣が飛来した。

 

「むっ」

 

「おっ」

 

 互いに後退。

 

 巨大な手裏剣は地面に突き刺さり煙を上げる。

 

 飛んできた方向を見ると、一本の木の上に、二つの影。

 

「全く、そんな雑魚に手間取っているようじゃ、助けるものも助けられんぞ」

 

「大丈夫でござるか?」

 

 エヴァと楓だった。

 

「エヴァ、楓!」

 

 隼人は強力な援軍に喜んだ。

 

 彼女たちは隼人の傍まで跳んでくる。

 

「来るのが遅れたが、祭りには間に合ったかな?」

 

 エヴァは牙を見せて笑う。

 

「ああ、大丈夫。パーティはこれからだ」

 

「ふむ。なんと面妖な。犬耳の生えた少年でござるか」

 

 楓は小太郎を見て、嘆息する。

 

 隼人は楓を見て頼んだ。

 

「楓、アイツの相手をしてくれ」

 

「承知」

 

 短い言葉で承諾。

 

 隼人はエヴァと共に急いで湖に向かった。

 

「あ、まてぇ」

 

 小太郎は追いかけようとするが、殺気を感知して動きが止まる。

 

「甲賀忍者、長瀬 楓。参る」

 

 分身の術で十七人に増えた楓が、一斉に飛びかかった。

 

「上等!!」

 

 小太郎は追いかけるのを諦めて、迎え撃つことにした。

 

 

★

 

 

「たああああああっ」

 

「でやああああああああああっ」

 

 刹那と明日菜はそれぞれの武器を振るう。

 

 切り下ろす度に水しぶきが上がり煌く。

 

 気合を発する度に風が渦巻き、髪がなびく。

 

 月夜に照らされて戦う彼女たちは、美しかった。

 

「ふつくしい……」

 

 総大将の立場の大鬼は思わずつぶやいた。

 

「ここまで強い娘は初めてだ。素晴らしいぞ。大いに素晴らしいぞ」

 

 次々と、津波のように襲い掛かる魑魅魍魎。

 

「うりゃああ」

 

 明日菜がハリセンを振り回して、強制送還。

 

 送り損ねた妖怪は、刹那の【匕首・十六串呂】が突き刺さる。

 

「いけっ」

 

 鋭い命令と共に、十六本の匕首が縦横無尽に飛びまわる。

 

 すでに百数十体いた鬼共も十数体に減っていた。

 

 二人は肩で息をしながら、背中合わせになる。

 

「大丈夫? 刹那さん」

 

 刹那は擦り傷、打ち身などボロボロの体だ。

 

「問題ありません。そういう明日菜さんこそ大丈夫ですか?」

 

 明日菜も同じようにボロボロだ。

 

「だいじょーぶ。なんか知らないけど、体が勝手に動くのよ」

 

 たしかに、本人の言うとおり、歴戦の戦士並みに動いていた。

 

「本当に凄いです。その才能をこのままにしておくのは勿体ない。良かったら鍛えてみませんか?」

 

「ええ、やってみようかな。この戦いが終わって、学園に帰ったらね」

 

「わかりました。なら今は、奴等を片付けましょう」

 

「おっけー」

 

 再び立ち向かう。

 

「とりゃあああああ」

 

 明日菜は飛び上がって、ハリセンを打ち下ろした。

 

 だが、急に現われた鉄の金棒に阻まれる。

 

「え?」

 

 弾かれて後退。

 

 ズンっと重たい音を響かせて、身の丈三メートルほどある大鬼が現われた。

 

「ふつくしい娘よ。気に入った。手合わせ願おうか」

 

 殺気と闘気が入り混じる。

 

「ラスボス登場ってところかな?」

 

 明日菜の頬に冷たい汗が流れる。

 

「明日菜さん!」

 

 刹那は助けに行こうとした。

 

 しかし、全身に怖気が走る。

 

 弾かれたように振り向くとそこにはゴスロリの少女が一人。

 

「うふふふふふふふふふう。せんぱぁい。私とオドッテクダサアアアアアアアアイ」

 

 狂った人形のように笑いながら、月詠が現われた。

 

「っく。ヤバイ」

 

 最悪の敵の登場に表情が硬くなる。

 

 明日菜VS大鬼。刹那VS月詠。

 

「くそっ。かくなる上は。あの力を」

 

 刹那が切り札を使おうとした、そのとき。一筋の銃弾が大鬼の頭を打ち抜いた。

 

「が!?」

 

 よろめく大鬼。

 

 その隙を逃さず、銃弾の雨が降り注ぐ。

 

「ぬおおおおお」

 

 こらえきれず、後ろへ引き下がる。

 

「なにが起こったの?」

 

 明日菜は疑問を口にする。

 

「今の銃撃はまさか」

 

 飛んできた銃弾の方向を見つめる刹那。

 

「後ろを向くなんて、危ないですよ~」

 

 隙を見せた刹那に、月詠の刃が襲い掛かる。

 

 とっさに防御しようとしたとき、黄色い影が月詠を殴ってぶっ飛ばした。

 

「油断大敵アル」

 

 その影は黄色いチャイナ服に身を包んだくーふぇだった。

 

「くーふぇ!」

 

 明日菜と刹那は驚く。

 

「この貸しは高くつくぞ。刹那」

 

 物陰から現われたのはスナイパーライフルを抱えた真名だ。

 

「二人ともなんで?」

 

 明日菜の疑問に真名が答えた。

 

「私は元々、こっちの世界の住人だ。あの吸血鬼(エヴァンジェリン)に頼まれてね。助っ人として来たまでさ」

 

「ワタシは強い奴と戦えると聞いて来たアル」

 

 くーふぇは半身になって構えた。

 

「先生の方にはエヴァと楓が行ってる。とりあえずこの化け物共を仕留めるぞ」

 

 真名は冷たく言い放ち、懐からデザートイーグルを二丁取り出す。

 

 そして腕を十字に交差させて言い放つ。

 

「暗闇から出てきた化け物共(フリークス)よ。我は神の代理人。神罰の地上代行者。我が使命は、我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること――! Amen(エイメン)」

 

 嵐のような怒涛の勢いで銃を乱射する。

 

「く~~~。燃えてきたアル」

 

 くーふぇは敵陣に突っ込んで次々と鬼をブチ飛ばす。

 

 二人の凄まじさに唖然とする二人。

 

「龍宮さんて神社の娘じゃなかったっけ? 今、アーメンって言わなかった?」

 

 明日菜はツッコミどころがありすぎて、とりあえず思いついたところにツッコミを入れた。

 

「いや、それより、くーふぇさんってあんなに強かったんですか?」

 

 刹那は、猛獣のように暴れまわるくーふぇに顔を引きつらせる。

 

 次々と撃たれ、殴られ、あっという間に大鬼と月詠だけになった。

 

 マガジンを入れ替えて真名は言う。

 

「ふん。ノリだ、ノリ。最近読んだマンガで格好良かったからな」

 

 くーふぇは手を払って一息。

 

「口ほどにもないアル」

 

「「あはははは……」」

 

 明日菜と刹那は笑うしかなかった。

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。