魔法教師はやト!   作:沖彦也

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第二十三話です。

一応、クラスメイト編というくくりです。

宜しくお願いします。


クラスメイト編その1
第二十三話「迷宮図書館の冒険再び! 二匹の火竜と夕映の決意」


 修学旅行から帰ってきた翌日。振りかえで休日だった。

 

 隼人は協力してくれた明日菜たちと打ち上げをすることにした。

 

 参加したのは真名を除く、本山の戦いに参加したメンバー全員だ。

 

「というわけで、今日はエヴァの別荘に行くぞ」

 

 世界樹の広場に集まり、エヴァの家に向かう。

 

「エヴァちゃんの別荘って学園の敷地内にあるの?」

 

 明日菜が聞いてきた。

 

「敷地内っていや敷地内だな。ま、行きゃ分るよ」

 

 期待半分、不安半分で隼人に引き連れられて、エヴァの家まで来た。

 

 玄関先で茶々丸が出迎える。

 

「お待ちしていました。すでに食事の用意は整っています。こちらへ」

 

 ぺこりと礼をして、招き入れる。

 

 家の中に入り、地下へ続く階段を下りる。

 

 階段を下りて地下室に入ると、そこは大量の人形が安置されていた。

 

「うわぁ、人形ばっかり」

 

 ハルナが興味津々に見回す。

 

「マスターは人形遣いですからね。私もその人形の一つです」

 

 茶々丸が説明する。

 

「私は、動力を魔力と電力が、思考回路をAIと魔法が補って動いている、次世代の傀儡なんです」

 

 茶々丸のカメラアイが光る。

 

「たしか、超さんが作ったんですよね?」

 

 のどかの質問に茶々丸が頷く。

 

「ええ、超とハカセが作りました。科学と魔法の融合体。その実験機として作られています。話では、すでに私のデータを元にして戦闘用のアンドロイドが完成したとか」

 

「そういえば、量産型エヴァちゃんも戦闘用やったなぁ」

 

 思い出すように木乃香が言う。

 

「ああ、あの等身大自分フィギュアという趣味悪いやつな」

 

 隼人は思い出して嫌な顔をする。

 

 そんな会話をしながら、地下のある部屋に着く。

 

 扉を開けるとそこには、幾つもの透明な球体が置かれていた。その球体はそれぞれパイプで繋がっていた。

 

 球体を覗くと箱庭のように、小さな世界が広がっている。

 

「なにこれ?」

 

 和美がデジカメで撮りながら聞く。

 

「別荘です」

 

「別荘?」

 

 全員が怪訝そうな顔をする。

 

「お~い、こっちこっち」

 

 隼人が手招きした。

 

「ここの魔方陣の中に入ってくれ」

 

 足元を指差すと淡い光で輝く魔方陣があった。

 

 ぞろぞろと、全員が魔法陣に乗る。

 

 すると、魔方陣が起動して、輝きを増す。

 

「なになになに?」

 

 光が辺りを包む。

 

 光が晴れると、目の前には広大な世界が広がっていた。

 

「な、なんじゃこりゃああああああああああああああああああ」

 

 明日菜たちの目が点になる。

 

 そこは、城だった。巨大な城の一角に今、彼女たちは立っている。

 

 ちょうどテラスになっているようで、そこから見える景色は、森林や大きな滝が広がり、空は晴れ渡っていた。

 

「…………」

 

 あんぐりと口を開けて驚く明日菜たち。

 

「わはははは。驚いただろ? これがエヴァンジェリンの居城『レーベンスシュルト城』だ」

 

 隼人はどや顔で満足そうに笑う。

 

 さらに茶々丸に案内されて城の奥へ向かう。

 

 城の中庭に広場があり、そこに食事が用意されていた。

 

「お、ようやく来たか」

 

 ワイングラスを片手にもってエヴァが手を振った。

 

 しかし、全員この居城のスケールに驚いて言葉が出ない。

 

「ん? その様子だと私の居城に驚いたな。まぁ、当然の反応だ。私が完成させた二大魔法の一つ、空間圧縮魔法だからな」

 

 満面の笑みでグラスを傾ける。

 

「いやぁ、ほとんどのことには慣れっこだったけど、さすがコレにはビビったわ」

 

 冷や汗をかきながら、明日菜が感想をもらす。

 

「驚くのはまだ早いぞ」

 

 隼人が笑う。

 

「まだなにかあるの?」

 

 ハルナが聞いてくる。

 

「ここは居城だけれど、この中庭の転送陣にのれば、別の世界へ飛べるぞ」

 

 エヴァが説明を引き継ぐ。

 

「この居城のほかに世界は、灼熱の砂漠、極寒の大地、生い茂る密林、岩山の荒野、大地の無い天空の五つある」

 

 隼人は嬉しそうに言う。

 

「この五つの世界は修行するのにもってこいのフィールドになっているんだ」

 

「じゃあ、ここで修行していいアルか?」

 

 修行と聞いて目が爛々と輝く。

 

 席についていたエヴァは頷く。

 

「まぁ、好きに使うがいいさ。どうせ私は使わないしな」

 

「やったー」

 

「ここだとかなりいい修行ができそうでござるな」

 

 くーふぇと楓は喜ぶ。

 

「ただし、この別荘に入ったら二十四時間は出られないぞ」

 

「えええ!?」

 

 本日何度目かの驚きの声を上げる。

 

「ちょっと待ってよ。どういうこと?」

 

 エヴァはめんどくさそうに説明した。

 

「この世界は現実世界と時間の流れが違う。現実の時間で一時間が、こちらでの一日になる」

 

 あまりにも現実離れした設定に理解が遅れる。

 

「え~と、つまり、こっちで二十四時間過ごしたら、向こうでは一時間経ってるってことよね」

 

 明日菜が説明を反復する。

 

「そうだ。だから長いこと、この世界に居ると、歳を早く取ることになる。つまり、それだけ死に近づくということだ」

 

 少し脅すように言う。

 

 しかし、当の本人たちはどこ吹く風だ。

 

「まぁ、そういっても結局一日だけでしょ。別に問題ないんじゃない?」

 

「たしかに、たった一日だしねぇ」

 

「一日ごとに歳を実感する年齢でもないし、大丈夫だよ」

 

 口々に言う。

 

「う~ん。これが若さか」

 

「お気楽な奴等だ」

 

 隼人とエヴァは呆れた。

 

「ま、理解してるならそれでいい。修行に使っても構わんよ」

 

 エヴァは一息ついてそういった。

 

「じゃ、私たちも席に着きましょ」

 

 明日菜の提案で皆、席に着いた。

 

「グラス持ったか?」

 

 隼人が見回す。

 

「それじゃ、修学旅行は世話になったな。ささやかながら料理を用意した。食べて飲んで楽しんでくれ。乾杯!」

 

「かんぱーい」

 

 全員でグラスを合わせた。

 

 楽しい宴会が始まった。

 

 

★

 

 

 あちこちで、笑い声や、食器の音が響く。

 

 隼人も飲んで食ってしていると、夕映が近づいてきた。

 

「先生、『咒式』って知ってるですか?」

 

 突然、彼女が聞いてきた。

 

「なんだ? 咒式? 知ってるぞ。咒式っていや超古代技術じゃないか。なんでお前が知ってんだ?」

 

「ええ、実はこの本で調べたんです」

 

 見せてきた本は夕映のアーティファクト『世界図絵』だった。

 

「ああ、百科事典で調べたのか」

 

「そうです。で、その咒式が気になって、先生は使えるですか?」

 

 隼人は首を横に振った。

 

「いや、無理だ。呪いって字が使われているけど、呪術とは別物だ。コイツは特殊な道具やら勉強をしなきゃ扱えない。その道具は結構、高価でな。扱う人間も数えるくらいしかいないよ」

 

「そうですか……」

 

 残念そうに言う。

 

「なんだ、やってみたかったのか?」

 

「はい。咒式は今で言う、科学と魔法が合わさった特殊なものだと、書かれていて気になったです」

 

「う~ん、教えようにも俺は知らないしなぁ」

 

 すると、そこにエヴァが割って入った。

 

「なんだ、咒式を使いたいのか?」

 

 夕映は頷く。

 

「だったら、教本と道具が一式あるぞ」

 

 しれっとエヴァが言う。

 

 隼人は噴出しそうになった。

 

「まじでか!? どこで手に入れたんだよ」

 

「伊達に長生きしてないないということだ。学びたいんなら、くれてやるぞ」

 

「本当ですか!? 是非お願いするです」

 

 嬉々とした表情で夕映は言った。

 

 ところが、隼人が難色を示した。

 

「しかしなぁ。わざわざ咒式なんぞ学んでどうするんだ?」

 

「別にいいだろ。ヤル気になっている生徒がいればそれを助けるのが教師だ」

 

 エヴァがフォローした。

 

「む~、でもなぁ。咒式は、『竜』しかも『長命竜(アルター)』と戦うために編み出された超絶破壊技術。一介の中学生がそんな技術を学ばなくてもいい。不幸になるだけだ」

 

 何を思い出したのか、隼人は少し悲しそうな顔をして夕映を諭す。

 

「そうですか。分ったです。先生がそういうなら辞めとくです」

 

 夕映は残念そうに顔を曇らせたが、素直に従った。

 

 話題を変えるように隼人がエヴァに話題を振る。

 

「それにしても、お前随分と機嫌がいいな」

 

「ふん。当然だ。学校行事とはいえ、京都を観光できたんだ。しかもナギの手がかりも手に入れた。これで機嫌が悪いわけないだろう」

 

 グラスに入ったワインを飲む。

 

「あ、そうだ。そのことで、話があったんだ」

 

 手元においてあった大きな筒状の紙を取りだす。

 

「それは、たしか詠春にもらった紙か」

 

「ああ。実はこれすげー面白いもんだぞ」

 

 隼人はニヤリと意味ありげに笑うと、その紙を広げた。

 

「なになに?」

 

 興味深そうに全員が集まってくる。

 

「みろ、迷宮図書館の暗黒階層の地図だ」

 

 それは広大な地下迷宮の情報だった。

 

「うわ! これ凄いよ」

 

「図書館探検隊がいまだ調査不可の特殊階層です」

 

 興奮気味にハルナとのどかが言う。

 

「この地図を見る限り、迷宮図書館第十九階層にある巨大な門、通称『不動門』から以降が書き込まれてるです」

 

 夕映が自分の持っている知識と照らし合わせて確認する。

 

 迷宮図書館に詳しくない明日菜たちはどれだけ凄いのか全く分らなかった。

 

「簡単に言うと、未だだれも見たことも、踏み入れたこともない未開の世界の地図です」

 

 のどかが説明する。

 

「そうだ。しかもこの部分をよく見てみろ」

 

 隼人が指で示した場所には「俺の手がかり」と日本語で書かれた文章と、デフォルメされたナギ・スプリングフィールドの絵が描かれてあった。

 

「な、なんだってぇえええ」

 

 エヴァが思い切り吹く。

 

 慌てて、茶々丸がエヴァの口元を拭いた。

 

「む、スマン。というか、アイツの手がかりがこの学園にあったのか」

 

 ずっと住んでいた学園に手がかりがあったことにエヴァは複雑な気持ちになった。

 

「灯台下暗しだよな。で、明日早速行ってみようと思う」

 

「よし行こう。今行こう。すぐ行こう」

 

 エヴァは遠足前の小学生のようにはしゃぐ。

 

 しかし、茶々丸が制した。

 

「マスター。明日は大学のほうで私のメンテナンスがあります。機械側はともかく、魔法側のメンテナンスはマスターが居ないと困ります」

 

「む、むむむ。しかしなぁ」

 

「心配するな。情報は後で教えてやるよ」

 

「分った。必ず教えてくれ」

 

 隼人の提案で渋々エヴァは納得した。

 

「で、お前らはどうする」

 

 明日菜たちに振ってみる。

 

「私は用事があるから無理ねぇ」

 

 他の生徒たちも都合があって無理だった。

 

 しかし、そのなかで行ける生徒がいた。

 

「あの私は大丈夫です。行きます」

 

 のどかが手を上げた。

 

「私も行くです」

 

 夕映も手を上げる。

 

「え~と、じゃあまとめると、行けるのはのどかと夕映だけで、あとは全員パスってことだな」

 

 全員が頷く。

 

「よし、じゃあ二人は明日の朝八時に迷宮図書館入り口に集合だ」

 

「分りましたー」

 

「了解です」

 

 そんなこんなで、迷宮図書館を探検することになった。

 

 

★

 

 

 翌日。迷宮図書館入り口。

 

「じゃ、さっそく行ってみるか」

 

 隼人はのどかと夕映を引き連れて入り口をくぐった。

 

 目的の場所である迷宮図書館第十九階層までは、サクサク進んだ。というのも、以前、頭がよくなる本を求めて潜ったときとは違い、隼人が最初から全力で魔法と呪術が使えるため、あっという間に攻略してしまった。

 

「魔法というのはやはり、便利です。血のにじむ思いでここまで攻略してきた、探検隊に申し訳がないです」

 

 夕映はポツリと言った。

 

「もともとこの迷宮は魔法使いが使っていた所だから、魔法を扱えることが前提の構造をしている。この辺りの階層までこられるのは魔法使いだけだよ。気にするな」

 

 隼人が笑って説明した。

 

「先生、地図ではもうすぐ扉に着きます」

 

 のどかが地図を見て言う。

 

「ああ、見えてきたぜ」

 

 薄暗い石畳の廊下を進むと、巨大な扉が見えてきた。

 

 その扉は豪奢な彫刻が施してある、石の扉だった。

 

「魔方陣が彫られているな」

 

 隼人は扉を見上げる。

 

 彼の指摘どおり、扉の中心に複雑な古代文字を刻んだ魔方陣があった。

 

「この扉は発見されてから開けようとしても一ミリも動かない不動の門です」

 

 夕映は険しい表情で扉を見つめる。

 

「開き方わかりますか?」

 

 のどかか聞いてきた。

 

 隼人は扉を押してみるがやはり動かない。腰に差してある刀を抜く。

 

「ちょっと下がってろ」

 

 夕映たちを下がらせると、隼人は気を刃に込める。

 

「せいやっつ!!」

 

 裂帛の気合で扉を斬るも火花が散るだけで傷一つ付かなかった。

 

「過去に破壊を試みたこともあったらしいですが、全く効果がなかったみたいです」

 

「この分だと、魔法でも無理だな。こりゃ、キッチリと対抗呪文が施してある」

 

「やっぱり鍵かなにか必要なのかな?」

 

 のどかが考え込む。

 

「う~ん。鍵といっても多分専用の解除呪文か何かだろうなぁ」

 

「地図にはなにか書いてないか?」

 

 のどかが持つ地図を広げた。

 

 すると、地図が急に光り輝きだした。

 

「な!?」

 

 地図の上に魔方陣が出現。浮かび上がった魔方陣が、扉の魔方陣と重なる。

 

 そして低い唸りを上げて扉が少しずつ動いていく。

 

「ひ、開いたです」

 

「そうか、地図が鍵になっていたのか」

 

「ファンタジーですー」

 

 口々に感想をいう。

 

 そして扉が開ききるとそこには巨大な本棚がそびえる大きな部屋。そしてその部屋の真ん中に小さな転送陣が敷かれてあった。

 

「転送陣か。行こう」

 

 隼人たちは転送陣に乗る。

 

軽い衝撃の後、転送陣が起動して隼人達を飛ばす。

 

 転送された先に広がる光景はどこかの森丘だった。

 

 青空が広がり、穏やかな日差しが降り注ぐのどかな光景。

 

「ここは?」

 

 夕映が辺りを見回す。

 

「おそらく、昔の魔法使いが使っていた空間だ。エヴァの別荘と似たような技術だな」

 

 彼らは転送陣から離れて、歩き出す。

 

 森丘の奥に行くと、森の中に巨大な建物が見えてきた。

 

「先生、見てください」

 

 のどかが示した先には巨大な遺跡。

 

 近くまで寄ってみると、固く扉が閉ざされている。

 

「先ほどの扉に似てるです」

 

 夕映が言う。

 

「ああ、間違いない。魔方陣が違うが同じ扉だ」

 

 地図を開くが今度は反応がない。

 

「てことは、違う鍵があるんだな」

 

 隼人は扉をじっくりと見てみる。

 

 夕映とのどかは地図を見てみた。

 

「やっぱり、この先に何かあるのは間違いないです」

 

「だよね。多分この扉がこの場所だと思うし」

 

 地図をたどって示す。

 

 そして、奇妙な絵が描かれてあった。

 

「あれ? なんだろ? この絵」

 

 のどかが首を傾げる。

 

「太陽と月が描かれてあるです」

 

 夕映の言うとおりそこには銀色の太陽と金色の月の絵が描かれてあった。しかし、その二つの絵には翼が生えて、その上には「危険」の文字。

 

 夕映が隼人を呼んで報告しようとしたとき、空から何かが降り立った。

 

「へ?」

 

 後ろを振り向くと、そこには銀色に輝くドラゴンが一匹、こちらを睨んでいた。

 

「せ、せ、せ、せ、せ、せ、せ、せ」

 

 二人は壊れたテープのように連呼する。

 

「ん? どうした?」

 

 隼人は振り向くとフリーズ。

 

「り、リオレウス!?」

 

 隼人は叫ぶ。

 

 ドラゴンは息を大きく吸い込む。

 

『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス』

 

 思い切り叫んで襲い掛かってきた。

 

「うわわああああああああああああああああああああああああああ」

 

 隼人は夕映とのどかを抱えて緊急回避。

 

 急いで、その場から緊急離脱する。

 

「な、なんなんです、あれ!」

 

「火竜リオレウスだ! しかも伝説の銀竜【ギンレウス】。モンスターハンターで似たようなヤツ知らないか?」

 

「いや、知ってますけど、なんでアレがここにいるですか!?」

 

 隼人は駆けながら説明する。

 

「あのゲーム。魔法協会が係わってんだよ。実在するモンスターの情報を提供して、協会の運営資金を稼いでたんだ」

 

 リオレウスはすぐさま旋回して、追いかけてくる。

 

「じゃあ、もしかして、この地図に描かれてある銀色の太陽がギンレウスだとして、金色の月はもしかして……?」

 

 夕映の悪い予感は当たった。

 

 前方から火球が飛んできた。

 

「うおっと!」

 

 慌てて横跳びして回避、立ち止まる。

 

「おいおい。冗談だろ」

 

 火球を放った相手は、金色に輝くドラゴン。

 

「雌火竜リオレイア。しかも金竜【キンレイア】かよ」

 

「ご、ご夫妻で登場です」

 

 二匹のドラゴンに挟まれて大ピンチ。

 

『ギャアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオン』

 

 リオレイアが突進してくる。

 

 大地の女王と呼ばれるリオレイアの突進を回避。

 

 すぐさま、後ろから空の王と呼ばれるリオレウスの火球が飛んできた。

 

「こんおのおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

 障壁を展開して防ぐ。

 

 火球が障壁にぶつかり大爆発。

 

 その爆発にまぎれて近くの物影に隠れる。

 

 姿を見失った二匹の竜は辺りを探す。

 

 それを物陰からみながら、一息ついた。

 

「夕映は無事だな。のどかは、気絶してるか」

 

 隼人は二人の無事を確認。

 

「先生、あれ倒せないんですか?」

 

「無茶言うな。お前ら守りながら戦えるか。ハンター呼んでこい」

 

 竜を忌々しげに見つめながら、夕映に指示を出す。

 

「夕映、お前のアーティファクトであの夫妻のこと調べてくれ」

 

「もう調べてるです」

 

 既に発動させた、魔法百科事典「世界図絵」で該当ページを開く。

 

「ありました。どうやらゲームと同じく、閃光に弱いようです」

 

「分かった。じゃあ目を眩まして、逃げるぞ」

 

 気絶しているのどかを抱えて、夕映を背中に背負う。

 

「んじゃ、いくぜぇ。【光よ】!」

 

 勢い良く飛び出し、魔力発動体が光り輝く。

 

 爆光が辺りを包み、二体の竜は目が眩んだ。

 

《グギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 驚いた二頭がメチャクチャに暴れ回り、火球を吐き出す。

 

「うお! ひゃい! うほ!」

 

 飛んでくる火球を間一髪で避けながら、転送陣まで逃げる。

 

 しかし、流れ弾が夕映の髪を炙って髪の毛がこげた。

 

「わ、私の髪の毛が……!」

 

「ぬおおおおおおおおおおおりゃあああああああああああ」

 

 思い切り転送陣へダイブ。

 

 元の迷宮図書館に戻ってくる。

 

「助かったぁ~」

 

 抱えていたのどかを地面に落とした。

 

「うきゃ」

 

 可愛らしい声を上げて目を覚ます。

 

「あれ? あのドラゴンさんは?」

 

「もう大丈夫だ。なんとか逃げ切れた」

 

 ふと、夕映のほうを見ると、ふるふると震えていた。

 

「夕映?」

 

「許さないです! 乙女の髪の毛を焼いたあの馬鹿トカゲ!! 絶対にぶっ倒してやるです!!!」

 

 先っちょがチリチリになった髪の毛。

 

 隼人の方に向き直る。

 

「先生!」

 

「はい、なんでしょう!?」

 

 あまりの勢いに気圧される。

 

「先生は反対されましたが、私は竜退治の切り札である『咒式』をマスターするです。いいですね!」

 

 かなり怒っているのか、特徴的なデコに青筋が浮かんでいた。

 

「よ、よろしいんじゃないかと」

 

 勢いに負けて了承してしまった。

 

 鼻息荒く、今後の学習計画を練る夕映。

 

「夕映、どうしちゃったんですか?」

 

 友人の怒り具合に首を傾げるのどか。

 

「人にはそれぞれ決意しなければいけないことがあるんだよ」

 

 諦めたかのようにため息をつく。

 

 こうして、迷宮図書館の探検は終わった。

 

 

★

 

 

 隼人たちが逃げた後の森丘。

 

 二頭の竜は獲物を逃がし、暴れまわる。

 

「落ち着きなさい。どうどう」

 

 草陰からローブを来た人が現われた。

 

 フードを目深に被っているので顔は分らない。

 

 ただ、声から男だと判断できる。

 

 レウスとレイアは声のするほうを向く。

 

 一瞬驚いた後、急に大人しくなり、空へと飛び去った。

 

「やれやれ、派手に暴れたものですね。それにしても彼がここにたどり着きましたか」

 

 ローブの男は空を見上げる。

 

「学祭も近いことだし、久しぶりに顔を出してみましょうか」

 

 そんなことを言いながらフードを取った。

 

 その男の顔は、ナギの別荘に置いてあった、写真に映っている人物の一人だった。

 

 そう、それは、女性と見間違えるほどの優男。「紅き翼」の一人、アルビレオ・イマだった。

 

つづく

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