また機会があればやります。
次回からは隼人の過去編です。完全オリジナルで行く予定です。
宜しくお願いします。
家庭訪問から翌日のLHR。
今日も3-Aでは文化祭の出し物の話し合いが行われている。
「え~では、昨日に引き続き、なにか意見はありませんか?」
教卓の前に立ったあやかが意見を求める。
昨日の段階で結局、コスプレ喫茶かオバケ屋敷で意見が対立して決着がつかなかった。
そのため、今日までにそれぞれの魅力を伝えるプレゼンを考えてくることになった。
「やっぱり、お金儲けするには、体を張るしかない! 私たちが可愛い服着て頑張ろう」
ハルナが代表となってコスプレ喫茶陣営は熱弁をふるう。
対するオバケ屋敷陣営も負けてはいない。
「文化祭はお金儲けじゃない! 技術や文化の発表をする場よ。立体投影装置やなにやらでハイテクなオバケ屋敷を作って、来る人の度肝を抜いてやろうじゃない」
裕奈が代表となってオバケ屋敷の魅力を伝える。
ああでもない、こうでもないと意見が飛び交うが平行線をたどる。
そんな激論が飛び交う中、千雨は教室の隅のほうで、自分の意見を言う機会を窺っていた。
しかし、普段の引っ込み思案な性格が災いして、タイミングを逃している。
「あ、あの……。その……」
声を出しても話し合いの喧騒で消え入ってしまう。
ずっとその様子を見ていた隼人は助け舟を出した。
「お~い。お前ら少し静かにしろ~」
ピタっと話し合いが止まる。
「なんでしょう。先生?」
あやかが首をかしげる。
「いやなに、千雨が意見を言いたいそうだぞ」
「え? 千雨ちゃんが」
一斉に千雨を見る。
「ひぇ、あのその。えっと」
急に注目を集めてかなり慌てる。
隼人の方を見ると、目で「ガンバレ」と応援していた。
覚悟を決めて意見を述べる。
「あの、コスプレ喫茶でいいと思う。お金儲け云々は別として、オバケ屋敷よりも楽しめると思う。あと、衣装のほうは私の持ってる分でなんとかなる。オバケしたい人もその手の衣装がそろってるから大丈夫。それと、ウチの超さんと五月さんは料理人だしメニューのほうも充実すると思う」
そこまで一気にまくし立てた。
シ~ンと教室が静まり返る。
「えっと、ダメだったかな?」
その空気に耐えかねて恐る恐る尋ねてみた。
「そ、その手があったあああああああああああああああああああああああああああああああ」
教室が爆発したように騒がしくなった。
「そうだ。確かにウチには天才料理人の五月ちゃんがいたんだった」
「あんまり喋んないから完全に思考の範囲外だったね」
うんうんと頷くように円と美砂は言った。
「五月ちゃん出来る?」
明日菜が彼女に問うた。
『大丈夫。美味しいものを作るよ。任せて』
にっこりと笑って快諾した。
「おお、んで衣装のほうは用意できるっていうけど、どんなのがあるの?」
ハルナが興味深そうに聞いてきた。
「えっと、ここに部屋にある一部の衣装を持ってきたけど」
千雨は紙袋から取り出す。
「すげぇ。ビブリオンのルーランルージュじゃないか。完成度高けーなオイ」
「こっちは、メイド服です」
「お、忍たまの忍者服もあるでござる」
取り出した衣装を見て皆が驚嘆する。
「このリストから来たい服を選んでくれたら、衣装合わせとか、サイズ詰めとか今からやれば充分間に合うから、大丈夫」
一晩かけて作り上げたリストを出して、千雨が説明する。
裕奈が悔しそうな顔をした。
「う~ん。これだけの衣装と、条件がそろってたらコスプレ喫茶で決まりだね」
その一言でコスプレ喫茶に決まった。
「では、皆さん役割分担を決めましょう」
あやかが進行する。
「衣装のほうは千雨さんとハルナさんが中心となって進めてください。料理のほうは五月さんが中心でお願いします。お店の装飾などは超さんに任せます」
てきぱきと役割を決めていく。
「部活動で忙しい人もいるでしょうが、皆さん一丸となって頑張りましょう」
最後に激励を飛ばして締めくくった。
★
放課後。隼人は廊下で千雨と会った。
「よ、上手くいったようだな。がんばれよ衣装リーダー」
笑って肩を叩く。
「ふん。不本意だけど頑張ってみるよ」
ついっとそっぽを向いて答えた。
ふと、思い出したように質問する。
「そういや、先生。あんた一体何者だ? 昨日の話も嘘じゃないって思う。けど、どうしても信じられないんだ」
隼人の目を見た。
「あんた本当に大学出た教師なのか?」
その鋭い眼光が隼人の目を射抜く。
「世の中には知らなくてもいい事実がある。ただ言えることは、ちゃんとした教師だよ。いくらフリーダムな学校でも怪しげな人物を雇ったりはしないさ」
彼は千雨の目を見て答えた。
「ま、アタシにはどうでもいい話だな。それじゃね。先生。また明日」
彼女はフッと笑って去っていった。
「ああ、また明日な」
去っていくその背中に隼人も言った。
こうして、文化祭の出し物は決まった。
★
文化祭の出し物も決まり、準備に勤しむ3-A。しかし、とある問題が浮上していた。
それは朝のホームルームで一部の生徒が明らかにした。
「は? 幽霊が出た?」
隼人が怪訝そうな顔で言う。
「そうなんだよ! 先生」
まき絵が鼻息荒く頷いた。
他の生徒もみんな一様に同意する。
「あーくわしい状況を教えてくれないか?」
「では、私から」
あやかが代表して説明する。
★
それは、昨日の夜に起こった。文化祭の準備は休み時間や放課後に行う。しかし間に合わなかった場合や作業が中断できない場合は、申請をすれば夜も作業が出来る。A組も申請して夜も作業をしていた。
そんな時だった、ふと裕奈が教室の隅を見た。
「ん?」
薄ぼんやりと白い靄が教室の片隅に漂っていた。
「何アレ?」
目をこすってもう一度見た。
やはり、靄が漂っている。良く見ると人の形をしていた。顔の部分は黒い穴が二つ開いていて目のように見える。
人型の靄はその吸い込まれそうな二つの穴で裕奈をじっと見ていた。
「~~~~~っっ」
裕奈は声にならない悲鳴を上げて震える。
「あれ、どったの裕奈?」
美砂が裕奈の異変に気が付いて尋ねる。
「あ、あ、あれ」
裕奈は声を絞り出すように言って、指で教室の隅を示す。
「は? なに?」
美砂が指の先を見る。
「え?」
人型の靄が今度は美砂の方を向いた。
それどころか、口の部分が三日月状に割れた。どうやら笑いかけたようだ。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ」
美砂は壊れたラジオのように連呼して叫ぶ。
「ちょっと、そこの二人。手伝ってよ!」
円が文句を言う。
「「幽霊だああああああああああああああああ」」
裕奈と美砂がありったけの声で叫んだ。
作業をしていたクラスメイトが全員、手を止める。
「なに? ビックリした」
「急に叫んでどうしたの?」
クラスメイトは口々に疑問を言う。
「あれ! 見て!」
裕奈がさらに叫ぶ。
全員が教室の片隅を見た。
その瞬間、教室の物が宙を舞った。
「きゃああああああああ」
ラップ音が聞こえて、火の玉のような青白い光が教室をくるくる回る。
「わあああああああ」
【まっ……ち、つい……てわ……し、は】
ヒヤリと顔を撫でるような声がしてくる。
「ひゃああああああ。にげろおおおおおおおおおお」
恐怖に耐えきれず双子の史伽と風香は脱兎のごとく教室を出ていく。
それにつられて他のクラスメイトも逃げ出した。
だが、明日菜や刹那といった魔法に通じている面々は動じず、それぞれの武器を取り出した。
宙に浮いた椅子が木乃香目がけて飛んでくる。
「お嬢様!」
刹那は刀を引き抜いて椅子を切り裂いた。
「魑魅魍魎か、悪霊か。どちらにせよ、お嬢様に危害を加えるなら容赦はしない!」
刹那が斬撃を放つ。
【ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい】
幽霊が今度は明確に聞こえる声で叫んだ。
そしてそのまま、窓から外へと逃げて行った。
「待て!」
窓に飛びついて逃げて行った方向を見るが、気配を追えなかった。
「逃げられた」
「せっちゃん。大丈夫?」
「はい。お嬢様こそ大丈夫ですか?」
刹那は刀を鞘に納めた。
「何だったんだろう?」
明日菜は首を傾げた。
★
「と、言うことがあったんです」
あやかが説明を終えた。
「あー。なるほど」
隼人は何か苦笑いするような顔で言う。
「先生! 何とかならない? 今日もやってきたら困るよ」
史伽や風香が涙目で訴える。
「いや、たぶん大丈夫だと思うが……。そもそも気にしない方が良いというか」
何とも歯切れの悪い答え方をした。
「先生が当てにならないなら、私達で何とかするしかないか」
ハルナが腕を組んで提案する。
「おお! それしかない!」
裕奈が嬉々とした顔になる。
「いや、待て、それは」
隼人が止めに入るが、周りの盛り上がりにかき消されて、聞き入れられなかった。
ハルナが不敵に笑う。
「ちょうど、色々と出来る人材がそろっているしね」
その言葉に、魔法を知っている面子が頷いた。
「お嬢様に手を出した時点で許せません。なんとしても狩ります」
刹那の目が据わっていた。
「よーし、早速討伐の作戦を練ろう!」
「賛成!」
ハルナの音頭で全員が同意してワイワイと盛り上がる。
「まぁやり過ぎないようにな」
隼人は和気藹々としている教室を出る。
「アニキ、幽霊ってなんだろうな」
スーツのポケットから顔を出してカモが言う。
「おそらくあの子だな」
隼人は意味ありげな顔をする。
「やっぱ先生、何か知ってるんだね」
声がしたので振り向いた。
声の主は和美だった。
「なんだ、和美。付いてきたのか」
「先生が妙な感じだったからね。ジャーナリストとしての本能が追いかけろって告げたんだよ」
和美は得意げに言った。
「アニキ、あの子って誰の事だ?」
カモが尋ねる。
「ウチのクラスメイトだよ。それも和美。お前の隣の席だ」
「私の隣?」
和美は首を傾げた。
★
隼人が教室を出たころ。
文化祭の準備で盛り上がる麻帆良学園。その片隅で蹲る女の子が居た。
彼女の名前は「相坂さよ」3-Aのクラスメイトだ。
彼女にはある特徴があった。彼女は既に死んでいる。つまり幽霊だった。
「はぁ。とんでもないことに、なっちゃった」
冷たい息を吐いて落ち込む。
昨夜の幽霊騒ぎは彼女が起こしたものだった。
「はぁ。どうしよう」
昨夜、さよは文化祭の準備で楽しそうにしているクラスメイトを見て、思わず姿を現してしまった。
「でも、まさかあんなに驚かれるなんて」
自分でも結構ショックだった。
彼女は病気で死んでから二十年経つ。生前は満足に学校に通えなかった。そのため未練が残って幽霊として学校に通っていた。
「本当はみんなと友達になって、色々と遊びたいのに」
ポツリと呟く。
だが、それは出来なかった。学校に未練があったからか、麻帆良学園の敷地内から出られない、中途半端な地縛霊になってしまった。しかも生前から影が薄かったため、とんでもないステルス能力を持った幽霊になってしまった。
以来、誰からも気づかれず。ひっそりと3-Aの教室の一席に座って授業を聞いていた。
「はぁ。失敗したなぁ」
さよは、ずっと我慢してきたが、昨日ついに寂しさに耐えきれなくなって猛アピールをした。
「でも、まさかあんな酷いことになるなんて」
あそこまで酷いポルターガイスト現象を起こすつもりはなかった。
だが、二十年間ため込んだ思いが災いして制御が出来ず、昨夜の事件に繋がった。
「きっと戻ったら、桜咲さんに殺される」
死んでいるのに死を覚悟するくらいに恐ろしい攻撃だった。
そんなこんなで、一人悶々と夜が明けても草葉の陰で悩んでいた。
「あ、こんなところに居たのか」
ふと声がした。
さよは、声がした方を向く。
担任の隼人とクラスメイトの和美が居た。
「昨日は随分とはっちゃけたそうだな」
さよに近づいていく。
「え、先生。私が見えるんですか?」
さよは、あたふたと慌てる。
「隼人先生。ここに居るの?」
和美は辺りを見回す。
「ああ、お前は見えないか。どれちょっと失礼」
隼人は和美の額に指で呪文を書いた。
「これで見えるはずだ」
「あ、ほんとだ。えーっと初めまして」
和美が挨拶した。
さよは、あまりのことに驚いて固まっていた。
「昨日、刹那に切られたそうだが、怪我はないか?」
隼人はしゃがみこんで頭を撫でた。
「ええ! 私に触れられるんですか!」
さよは、目を丸くする。
「おう。バッチリだ。ほれ涙拭け」
ハンカチを取り出して隼人は、涙を拭いてあげた。
「せ、先生!」
感極まって抱きついた。
「よしよし。怖かったろうに」
隼人は抱きしめて慰める。
「はいー。もの凄く怖かったですー」
久しぶりの人の感触を確かめて泣き出す。
ひとしきり泣くと、さよは隼人から離れた。
「でも先生。どうして私に触れられるんですか?」
「なに、ちょっとした魔法だ」
「魔法ですか」
さよは感心した。
隼人と和美は、さよの隣に腰を下ろす。
「さて、自己紹介からしようか。和美。この子が相坂さよ。ウチのクラスメイトだ」
「初めまして。さよちゃん。朝倉和美です」
和美は握手を求めた。
「は、はじめまして。相坂さよです」
おずおずと手を握った。
「わーひんやりしてて、気持ちいいね」
幽霊の感触に和美は感心した。
「あわわ、すいません」
「別に、謝らなくていいよ。ちょっと珍しいけど。とにかく、よろしくね」
「よろしくお願いします」
さよは、少し顔を赤くしてそう言った。
「んで、俺が煉城隼人。お前の担任だ。よろしくな」
隼人も自己紹介して握手をする。
「先生の手ってなんだか普通より暖かいですね」
さよは触って確かめる。
「ふむ。火炎使いだからな。それを敏感に感じ取ってるのかもな」
「じゃ、次は俺な。俺っちはアルベール・カモミールってんだ。よろしく。さよ嬢ちゃん」
カモは隼人の肩に乗って挨拶した。
「しゃべるオコジョって初めてみました。よろしくです」
さよは驚きながら握手した。
「妖精は初めて見るか。まぁスケベな奴だが仲良くしてやってくれ」
挨拶もそこそこにして、隼人が話始めた。
「お前のことは学園長から聞いていた。ちょっと変わった幽霊が3-Aにいるってな」
「学園長が私を?」
「そうだ。近衛学園長はああ見えて凄い魔法使いだからな。お前のことが心配だったんだろう。けど、手を差し伸べたくても、お前の隠密能力が邪魔をして手が出せなかった」
「そうだったんですか」
さよは自分の体を確かめる。
「お前の能力は自分から姿を見せない限り、こちら側から認識できないし、コンタクトも取れない。でも、昨日ようやく自分からアプローチをかけるために隠密能力を解いただろう? それでやっと手を差し伸べることが出来るようになったってわけだ」
隼人はにっこりと笑った。
「さて、出席番号1番。相坂さよ。君はどうしたい? このまま成仏したいのなら手伝ってあげよう」
さよは少し考えてから言う。
「私は出来るなら、みんなと友達になりたい。生きているときに出来なかったことをしたい。学校に通って、授業を受けて。そんな普通のことがしたいです」
二十年間ため込んだ切実な願いだった。
隼人は頷く。
「分かった。ならば、そうしよう」
「出来るんですか?!」
「もちろんだ。俺はお前の担任だ。生徒の悩みは解決しないとな」
「私も協力するよ!」
和美も力強く頷いた。
隼人は立ち上がる。
「さて、それじゃ早速準備しよう」
「準備ですか?」
「おう。討伐だの、退治だの言っている連中を驚かせてやろうぜ」
隼人は二カッと笑って親指を立てた。
★
その放課後。3-Aの教室は幽霊退治で盛り上がっていた。
「さぁ、これで準備万端。いつでも来なさいってね」
ハルナはアーティファクト【落書帝国】で作り出した武器を手にして言った。
持っている武器は、掃除機の形をしていた。
「これぞ、伝統の幽霊退治の武器!」
びしっと構える。
「こちらも準備万端です。教室内には結界を張って、入り口にはセンサーを仕掛けてあるので現れたら即対応できます」
刹那が愛刀「夕凪」を腰に差しながら説明する。
「だから、他の皆さんは文化祭の準備をしていてください」
「刹那さん。お願いしますわ」
あやかが安心したように言った。
他のクラスメイトも各々の作業に取り掛かる。
明日菜と木乃香は、教室の外で警戒に当たっていた。
「本当にくるかなぁ」
「幽霊さんも流石にこの警戒じゃ来へんかもな」
「そもそも、なんで幽霊が出たんだろうね」
「さぁ? こればっかりは幽霊さんに聞いてみんとあかんやろな」
そんなことを話しながら、時間は過ぎていく。
作業開始からしばらくして、日が傾き夜の帳が降りる。
「来るとしたらそろそろね」
明日菜達は警戒を強めた。
ふと足音が聞こえる。
隼人と和美だった。
「あれ? どうしたの?」
明日菜が尋ねた。
「ちょっと良いか? 紹介したい子がいるんだ」
「紹介したい子?」
明日菜と木乃香は首を傾げた。
和美は楽しそうに頷く。
「そそ。ウチのクラスに転入生だよ」
「「は?」」
不思議そうにしている二人をよそに、隼人達は教室に入る。
「なんだこれ? 結界とセンサーか」
隼人は結界を壊して、センサーも外した。
「ちょっと、先生! 何やってるんですか」
刹那が慌てて止めに入る。
「バカ野郎。こんなもん必要ないって。それより、悪いがみんな。作業の手を止めてくれ」
隼人はクラスメイトに呼びかける。
「何々? 先生」
生徒が手を止めて隼人に注目する。
「今日は転校生を紹介する。相坂さよさんだ」
黒板に相坂さよと書いた。
「入ってきて。さよちゃん」
和美が何もない所を手招きした。
「へ?」
全員が何もない所を注目した。
ドロドロと音を立てながら、相坂さよが姿を現した。
「どーも。こんばんわー」
一瞬。教室が静まり返った。
そして。
「幽霊だあああああああああああああああああ」
全員が爆発したように叫んだ。
「はい。落ちつけ。静かに!」
隼人は驚く生徒達に注意する。
「さよ。自己紹介しなさい」
「はい。えっと。相坂さよです。享年十五歳です。趣味はペン回し。特技は壁をすり抜けることです。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた。
しーんと静まりかえる。
代表してあやかが質問した。
「えっと、これはどういうことですか?」
「詳しい説明をしよう」
そういうと、隼人は事の経緯を話した。
「……というわけで、昨日の幽霊騒ぎは事故だ。彼女は反省しているし、悪気があったわけじゃない。許してあげてくれ」
「そうなんです! ごめんなさい!」
さよは必至に謝った。
「特に、近衛さん。本当にごめんなさい」
「別にええよ。事故ならしゃあないって。ウチもたまに失敗するし」
木乃香が笑って許した。
「うーむ。まさか幽霊の正体がこんな可愛い子だったなんて」
ハルナがしみじみと言う。
「でも、これからどうするの? 先生」
裕奈が尋ねた。
「彼女は生前、学校に通えなかったらしい。だから幽霊になってでも、みんなと勉強がしたいそうだ。お前達さえよければ、このクラスの一員として迎え入れたい」
隼人が提案する。
「もちろんオッケーだよ!」
「幽霊と友達なんてちょっと面白いかも」
「一緒に遊ぼう!」
口々に賛成の声が上がる。
そのことに、さよは喜んだ。
「ありがとう! よろしくお願いします!」
隼人は満足そうに頷く。
「ただし、約束してほしい。幽霊がいるって分かったら騒ぎになる。これは俺達だけの秘密だ。口外しないようにしてほしい」
「りょーかーい」
「はーい」
全員が手を挙げて了承した。
あやかが立ち上がる。
「さて、それじゃ文化祭の準備に取り掛かりましょう。相坂さんも手伝ってください」
「はい! 手伝います」
さよはクラスメイトの輪の中に入っていく。
和美はその姿を写真に収めた。
「それにしても良かった。みんな受け入れてくれて」
和美はほっと息をついた。
「まぁ、若干処理しきれなくて混乱している生徒もいるけどな」
隼人は千雨を見た。愕然としているような、悟ったような複雑な表情で、さよを見ていた。
「とはいえ、あとはお前達生徒で解決しろ。仲良くやれよ」
「うん。分かったよ」
和美は頷くと、輪の中に加わる。
「それじゃ、俺はちょっと用があるからもう行く。何かあったら職員室まで来い。じゃあな」
隼人は生徒達にそう告げると教室を出て行った。
「よかったな。アニキ。割とナチュラルに受け入れてるあたり、3-Aの嬢ちゃんたちは適応力が高けーな」
カモが嬉しそうに言う。
「おう。爺さんに早速報告しにいこう」
隼人は文化祭の準備でにぎわう校舎を抜けて学園長室に足を向けた。
【クラスメイト編その1】終
【隼人の過去編】につづく