魔法教師はやト!   作:沖彦也

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過去編です。
ここから過去編第二部という位置づけです。
宜しくお願いします。


第三十話「強さが全て! ストロンガー隊結成!!」

 隼人達がエヴァの城で、過去の出来事を見ている頃。

 

 夏美と千鶴は夕飯の買い物を済ませて、寮に向かっていた。

 

 放課後くらいから空が曇ってきて、今では雨が降っている。

 

「あれ? なんだろ」

 

 夏美が何かに気がついた。

 

 近寄ってみると、黒い大きな犬が倒れていた。

 

「あらあら。大変!」

 

 あまり大変そうに聞こえない、のんびりとした声で千鶴が叫んだ。

 

 夏美が抱きかかえると、犬の体には擦り傷があちこちにあった。

 

「ちづ姉。この子怪我してるよ」

 

「首輪をしてないところ見ると野良犬かしら?」

 

 夏美に抱かれている黒犬。辛うじて息はしているが体が震えている。

 

「このまま放っておけないよ。ちづ姉」

 

「わかったわ。とりあえず、寮に連れていきましょう」

 

 そうして、黒犬は夏美達に運ばれていった。

 

★

 

 同時刻。エヴァの別荘。

 

【回想の劇場】が一時停止する。

 

「これが師匠との別れだった」

 

 カモが顎に手を当てて言う。

 

「あれが、アニキの言っていた悪魔の一体だな」

 

「そうだ。ヘルマンはあの事件から今まで、会っていない。これから見せる大戦で死んだのか。はたまた、まだその時じゃないのか」

 

 隼人は遠い目をする。

 

「いずれにせよ、探し出して師匠の仇を取る。必ずな」

 

「それで、ヴェルガの話とどう繋がる?」

 

 エヴァは尋ねた。

 

「今まで見せた過去は、これから起こる大戦の元凶でもあるんだよ」

 

「なに?」

 

「そう。全てはあの河原で親が殺されてから始まった。たった一体の悪魔が始めた計画だったのさ」

 

 【回想の劇場】が再び起動する。

 

 過去の映像が動き始めた。

 

★

 

 桜咲都子の死後、魔法界はいよいよ混迷を極めることになった。

 

 各地で悪魔による事件が頻発。それは魔法界だけでなく、隼人達の居る世界「元界」にも飛び火してきていた。

 

 元界の一般人に魔法を知られるわけにはいかない。その掟を遵守すべく、魔法使い達は事態の収集に躍起になった。

 

 しかし、その努力も空しく、遂に悪魔側からの宣戦布告。人間と悪魔の争い「第二次人魔大戦」が始まってしまった。

 

 開戦から三ヶ月。人間と亜人による人類軍は、死を恐れぬ悪魔軍に押され気味で、このままでは首都メガロメセンブリアの陥落も時間の問題かと囁かれる始末だった。

 

 そんな戦場に飛びこむべく隼人は準備を進めていた。

 

「ちょっと、隼人。本気で魔法界に行くつもり?」

 

 菫は呆れたように言う。

 

 隼人は荷物を鞄に詰めながら頷いた。

 

「もちろんだ。今、魔法界は悪魔どもが大勢いる。そいつらを一匹残らず殺していけば、父さんと母さんを殺した悪魔にも、師匠を殺したヘルマンにも会えるはずだ」

 

「けどよ、アテはあるのかよ。俺らまだ子供だぜ。悪魔と戦いたいって言っても門前払いだろ」

 

 悠馬がもっともな指摘をした。

 

「そうでもないぞ。これを見ろ」

 

 隼人は一枚の紙を見せた。

 

 受け取った二人はそれを読む。

 

「えーと何々。『求む、強者。志願兵募集』!?」

 

 菫は驚いた。

 

 悠馬は読み進める。

 

「年齢問わず。求めるのは強さのみ。腕に自信のあるものは選考会でお待ちしております」

 

 紙から顔を上げて隼人を見た。

 

「何だよこれ」

 

「状況が芳しくない人類軍が、在野に散らばっている人材を集め始めた。どうやら腕の立つ独立部隊を設立するらしい」

 

「どこで、こんなチラシを見つけてきたのよ」

 

「師匠の葬儀に出席していた軍関係者に連絡を入れて聞いた。今の人類軍は猫の手も借りたいほどの人材不足だ。喜んで教えてくれたよ」

 

 隼人は鞄のチャックを閉めた。

 

「選考会は一週間後だけど、向こうの環境に慣れておく必要がある。だから明日の朝一、関西呪術協会の転送ゲートで魔法界に行く。留守を頼むぞ」

 

「ちょっと、近右衛門お祖父ちゃんに相談しようよ。それからでもいいはずよ」

 

 菫は引き止める。

 

「いや、爺さんは今、戦争の関係で忙しい。それに、話せば絶対に止められる。だから黙っていく」

 

「いやまぁそりゃそうだが。うーむ」

 

 悠馬は頭を掻く。

 

「だったら軍ではなく、私と魔法界に行きませんか?」

 

 詠春がやってきた。

 

「詠春。おまえ」

 

「申し訳ありません。玄関で呼んでも返事がなかったので、無断で入っちゃいました」

 

「まぁ、お前なら良いさ。それより魔法界に行くってどういうことだ?」

 

 隼人は尋ねた。

 

「私の知り合いが悪魔と戦うために仲間を募っているんです。私も参加する予定です。貴方と私の剣術で悪魔と戦いませんか?」

 

「ねぇ、詠春さん。知り合いって誰なの?」

 

「良い質問です。菫さん。その知り合いって言うのは、無茶無謀無軌道を絵にかいたような馬鹿でして。名前をナギ・スプリングフィールドと言います」

 

「ナギっていや、千の魔法を使うって噂の男か。なんか、魔法界で暴れまわる問題児って話だな」

 

「そうです。悠馬君。アイツは馬鹿ですが、実力は我々と同じです。どうです? 一度会ってみるのも良いと思いますが?」

 

 菫は隼人に言う。

 

「詠春さんの言うとおりだよ。一度会ってみない? 軍の選考会はそれからでも遅くないよ」

 

 隼人は考える。

 

「いや、やっぱ魔法界に行く」

 

「ちょっと、なんでそうなるのよ!」

 

「数人が集まって傭兵業をするより、悪魔と戦うには軍に入ったほうが早い。すまないが、俺はもう一秒たりとも立ち止まるつもりはないんだ」

 

 確固たる意志。隼人の目には燃え上がる炎が揺らめいていた。

 

 その目を見て詠春は頷いた。

 

「分かりました。貴方の意志は固いようですね。では、菫さんと悠馬君はどうです?」

 

 菫と悠馬は顔を見合わせる。

 

 諦めたようにため息をついて言った。

 

「ごめんなさい。隼人を一人にさせるのは心配だから、私達も選考会に参加するわ」

 

「ま、俺達三人はいつも一緒。一蓮托生ってやつだ」

 

 二人も決意を固めた。

 

「お前ら、良いのか?」

 

 隼人は二人を見て言った。

 

「言いも何も、私達だって師匠の仇は取りたいもの。隼人一人で行かせるつもりはないわ」

 

「そういうこった」

 

「そうか。ありがとう」

 

 隼人は頭を下げて感謝した。

 

 詠春は踵を返す。

 

「選考会に落ちたら連絡をください。貴方たちならいつでも歓迎しますよ」

 

「詠春。俺達とお前。道は違うけど悪魔を倒すって目的は同じだ。また、魔法界で会おう」

 

 隼人は拳を突き出して言う。

 

「はい。お互い頑張りましょう」

 

 詠春も拳を突き出して、互いに打ち合った。

 

★

 

 それから、隼人達は魔法界に乗り込み、選考会に参加した。

 

 参加者は腕の立つ猛者ばかりだったが、隼人達は諦めずに最後まで頑張り続けた。

 

 結果。三人とも合格。晴れて人類軍の一員となったのである。

 

 それから一週間後。合格者の初会合の日。

 

 魔法界の首都メガロメセンブリア。

 

「急げ、時間がねぇ!」

 

 隼人達は慌てて走っていく。

 

「もう、悠馬がもたもたするからでしょ」

 

「いいや、菫の準備が長かったせいだな」

 

 隼人は苦笑いしながら言う。

 

「初めて顔を合わせるわけだし、少しくらいはオシャレしないとね」

 

「これから軍に入るってのに、オシャレも何もねぇだろ」

 

「なによ! 良いでしょ別に!」

 

「喧嘩するなら、走れ!」

 

 スピードを上げて会場に駆け込む。

 

「やれやれ、時間には間に合ったな」

 

 受付を済ませて、隼人達は会場に入る。そこは大きな宴会場だった。テーブルと椅子。いくつかの料理もあった。壇上には結成式の垂れ幕がかかっている。

 

 既に他の合格者も集まっていた。慌てて駆け込んだ隼人達を一瞥する者、壁に背を預けて瞑目している者、他の合格者と談笑する者。老若男女三十名くらい居た。

 

「眼つき悪い人間いっぱいだな」

 

 悠馬が素直な感想を呟いた。

 

「いや、お前も大概だぞ」

 

 隼人は突っ込む。

 

「ねぇ、誰か来るよ」

 

 三人に近づいてくる者がいた。

 

「おう、ガキがこんなところに来んじゃねーよコラ」

 

 如何にもチンピラな風貌の男。長いリーゼントが揺れる。

 

「えーと、いや俺達も合格者だ」

 

 隼人は招待状を見せた。

 

「あん? んだとコラ。ざけてんじゃねーぞ」

 

 男は眼つきを鋭くしてガンを飛ばす。

 

 悠馬はため息をついて前に出ようとする。

 

 だが、それを隼人が制して言った。

 

「ふざけてないさ。俺達もあの選考を勝ち抜いてここに来た」

 

 そして手を差し出す。

 

「俺の名前は煉城隼人。元界出身だ。これからよろしく頼む」

 

 男はその態度が癇に障ったのか怒鳴った。

 

「テメーここは選ばれた強者が集う場所だ。ガキが来ていい場所じゃねーんだよ。テメーがどこの誰だろうが知ったこっちゃねーよ。帰れ!」

 

「それは出来ない。俺は、俺達は悪魔と戦うためにここに来た。帰るつもりはない」

 

 確固たる意志。男に向かってはっきりと言い放った。

 

 男は額に青筋を浮かべてさらに怒鳴ろうとした。

 

 が、そこに割って入る女がいた。

 

「まって。貴方少し下品よ。あの選考会は経歴、年齢、性別、人種一切問わずだったわ。ここに居る以上、この子たちも強者のはずよ」

 

「うわ、すげー美人」

 

 悠馬が思わず見とれた。

 

 耳に心地よい声。さらさらと流れる翡翠色の髪。整った顔立ち。背が高くすらっとした出で立ち。なにより世の男どもを虜にするような巨乳。

 

 悠馬は口を開けて釘付けになっていた。

 

「鼻の下伸ばすな!」

 

 隣に居た菫は思い切り頭を殴った。

 

 いきなり美人が割って入ったので、若干リーゼントの男は気勢をそがれた。

 

 だが、すぐに睨んで言う。

 

「んだとコラ。ガキが強かろうがなんだろうが、戦場にガキが居ていいわけねーだろが」

 

 その一言に隼人は笑った。

 

「あん? なに笑ってんだガキ」

 

「いや、すまない。口は悪いが優しい人だと思って」

 

「んだと!」

 

 女もクスクスと笑う。

 

「そうね。下品と言ったけれど撤回するわ」

 

 隼人は男の目を見て言った。

 

「あなたの優しさは嬉しいが、俺はここを立ち去るわけにはいかない。だから勝負しよう」

 

「勝負だと?」

 

「ああ、お互いに譲れないものがあるなら、腕を見せて納得させるしかない。俺が勝ったらここに居ることを認めてほしい。負けたなら大人しく去ろう」

 

「あら、シンプルで良いわね。審判なら私が引き受けてあげる」

 

「勝手に決めてんじゃねーよコラ」

 

 悠馬は鼻で笑う。

 

「はん。怖いのかよ」

 

 その言葉を受けて男は言った。

 

「上等だコラ。やってやるよコラ」

 

 菫が悠馬に耳打ちする。

 

「アンタの挑発で乗るなんて、随分単純ね」

 

「たぶん。優しいけどアホなんだろう」

 

 もめごとが勝負事に変わったため、他の合格者も見物する。

 

 隼人と男は距離を取る。

 

 間に女が立つ。

 

「それじゃ、この勝負、アンリ・クロフォーゼが取り持つわ。どちらかが戦闘不能になるか、負けを認めれば勝負ありってことでヨロシク」

 

 隼人は腰に差した刀の柄に手をかける。それは赤い鞘の刀。亡き師匠から受け継いだ【煉獄】だった。

 

「流派・花鳥風月継承者 煉城隼人いつでも良いぞ」

 

 リーゼントの男は空間に穴を空けてそこから木刀を取り出す。

 

「まだ名乗ってなかったな。俺はゴウ・レッツだコラ」

 

 ゴウは木刀を構えた。

 

「じゃ、始め!」

 

 アンリの合図で互いに動く。

 

「殺しゃしねーが、半殺しは覚悟しろよコラ!」

 

 木刀が唸りを上げて振り下ろされる。

 

 隼人は真横に飛んで回避。

 

「逃がさねーぞコラ。喝っ!」

 

 ゴウが裂帛の気合いを出す。

 

 すると空振りした木刀が光り輝き、強烈な衝撃が隼人を襲った。

 

 とっさに障壁を張って防御。

 

 だが、あっさり叩き割られて体勢が崩れる。

 

 その隙を逃さんとゴウは木刀を振るいに振るった。

 

「オラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

 隼人は滅多打ちされる。

 

「ウラァ!」

 

 トドメとばかりに腹部に一撃。隼人は吹き飛ぶ。

 

「はん。どーだコラ」

 

 木刀を肩にかけて言う。

 

 しかし、吹き飛んだ隼人が、花びらへと変わって崩れる。

 

「は?」

 

「どこを見ている!」

 

 背後から隼人が出現。

 

「せっいやあああああ」

 

 鞘のまま【煉獄】を振るう。

 

 モロに直撃して、今度はゴウが吹き飛んだ。

 

「こんの! なめんなコラアアア」

 

 一回転して体勢を整える。

 

 すぐさま攻撃に移ろうとしたが動けない。

 

「なんだこりゃ!?」

 

 床から蔦が生え、体中に絡まる。

 

「花の章【蔓縛鎖(かずらばくさ)】」

 

 隼人は刃を床に突き刺して技を発動させたのだ。

 

「変われ。花の章【荊棘縛鎖(けいきょくばくさ)】」

 

 今度は蔦から棘が生えて、ゴウの体に刺さる。

 

「いでえええええ」

 

 ゴウは悲鳴を上げた。

 

「たっぷりと吸って咲け。花の章【青薔薇(あおばら)】」

 

 棘が相手の気や魔力を吸い上げる。そして蕾が開き、青い薔薇が咲く。

 

「か、か、か、か」

 

 ゴウは声にならない悲鳴を上げて地面に沈んだ。

 

「そこまで! 勝者、煉城隼人」

 

 アンリが決着を告げる。

 

 隼人は刀を鞘に納めた。

 

「俺の勝ちだ。って聞いてないか」

 

 ゴウは意識を失っていた。

 

「男の子なのに、花なんて随分と綺麗な技を使うわね」

 

 アンリは咲いた薔薇を手に取って匂いを嗅ぐ。

 

「あら、良い匂い」

 

「それ、差し上げます。審判のお礼です」

 

「ありがとう」

 

 アンリは微笑んだ。

 

 悠馬と菫が駆け寄ってくる。

 

「花の章【縛鎖の三連・薔薇の型】かよ。かっこつけんな」

 

 悠馬は倒れているゴウを見て言った。

 

「ほんとよ! ワザとでしょ。美人の前だからって見え張っちゃって。サイテー」

 

「いや、別に良いだろ」

 

 二人に非難されて隼人は反論する。

 

 そんなやり取りを後目に、倒れているゴウを診ている男がいた。

 

「ほうほう。なるほど。これは魔法と言うより呪術ですね。はぁ、こんな綺麗な呪いがあるんですねぇ」

 

 メガネをかけて小柄な男だった。

 

「えっと、貴方は?」

 

 隼人は気づいて話しかける。

 

「おっと申し遅れました。私、アニエス・バートマンと言います。宜しくお願いします」

 

 メガネがキラッと光った。

 

 アンリはその名前に聞き覚えがあったのか驚いた。

 

「アニエス・バートマンって『死神医師』と噂の?」

 

「いやはや、そうです。医者なんですけど不名誉な二つ名ですはい」

 

 困ったような顔で頷いた。

 

「おっと、いけない。診察の最中だった」

 

 再びゴウに向き直ると、絡まった蔦を取り除く。そして手をかざす。

 

「えーと、ここかな? はっ」

 

 何かしらの力をゴウに送った。

 

「ぶはっ」

 

 噴き出すように飛び跳ねてゴウが目を覚ました。

 

「あれ? 俺はどうなったんだ?」

 

 状況が把握できずに辺りを見渡す。

 

「良かった。目を覚ましましたか。力を吸い取られていたので、補充しました。ま、これで大丈夫でしょう」

 

 にっこりと笑った。

 

「え、あーそうか。それは、ありがとうだコラ」

 

 ゴウは頭を下げて礼を言った。

 

 そして立ち上がる。

 

「おい、隼人とか言ったな」

 

 隼人に声をかける。

 

「ああ、勝負は俺の勝ちだぞ」

 

「分かってるよ。ま、実力はあるみてーだな。でもよ気をつけろよ。戦場は地獄だぜコラ」

 

 隼人は頷いた。

 

「知っている。もう十分見てきた」

 

 隼人は親の死、師匠の死を思い出していた。

 

 それの様子を見てゴウは悲しそうに、諦めたように言った。

 

「そうか。テメーも色々とあるんだな。ま、死なねーように気張れよコラ」

 

 そういうと、料理の置いてあるテーブルに向かって行った。

 

「ありがとう。目的を果たすまでは死ぬつもりはない」

 

 その背中に隼人は告げる。

 

 そんなこんなで一段落。

 

 それを見計らったように壇上に一人の男が上がる。

 

 マイクを持つと言った。

 

『それじゃ騒動も落ち着いたことだし、結成式を始めるぞ』

 

 大柄な男だった。歴戦の勇士という佇まい。

 

『俺がこの部隊の総隊長、オーボス・ブルシャーズだ』

 

 男が名前を名乗る。

 

 大きな手で顎を撫でながら言った。

 

『ここに居る連中は一癖も二癖もあるだろう。だが、目的は同じはずだ。"悪魔と戦いたい"その思いでいるはずだ。その思いがあるなら同士であり仲間だ。この部隊に階級はない。この部隊で存在を証明するのは強さだ』

 

 オーボスは隼人を見る。

 

『さっそくそれを証明した奴もいる。それでいい。強くなれ。それさえできれば後の戦場は俺が用意してやる』

 

 そう豪語して笑った。

 

『さて、この部隊の方針を説明したところで、分隊長を決めようと思う』

 

 会場がざわつく。

 

『そうだ。察する通り、分隊長は強さで決まる。今の所、五人選出する』

 

 そこで手が上がった。

 

「おう、質問だコラ。どうやって強さを測るんだ」

 

『なに、簡単なことだ。俺の気を当てられて立っていた者が分隊長だ』

 

 オーボスは言うが早いか、特大の殺気を放った。それは物理的な破壊力を伴い、料理の皿は割れ、テーブルは砕け、椅子は破裂した。会場は揺れに揺れ、空気が震えた。

 

 殺気を当てられた会場の人間は次々と倒れていく。

 

 だが、その吹き荒れる殺気の中で立っている人間が八人いた。

 

 隼人、悠馬、菫、ゴウ、アンリ、アニエス。そして顔に刀傷がある男、白いローブを着た男。

 

 殺気が収まる。

 

『ほう。八人残ったか。優秀だな』

 

 オーボスは満足そうに言った。

 

『良いだろう。名前を一人ずつ言え』

 

 ゴウが木刀を肩に乗せて言う。

 

「ゴウ・レッツだコラ」

 

 アンリが優雅に名乗る。

 

「アンリ・クロフォーゼよ」

 

 アニエスがメガネをかけ直しながら言う。

 

「アニエス・バートマンです」

 

 刀傷の男が静かに言う。

 

「村雨重蔵(むらさめ じゅうぞう)という者だ」

 

 白いローブの男が言い放つ。

 

「ギンガ・ベルンハルト」

 

 悠馬が不敵な笑みをする。

 

「沢渡悠馬だぜ」

 

 菫が胸を張って言う。

 

「狩谷菫です」

 

 そして最後に隼人が名乗った。

 

「煉城隼人だ」

 

 オーボスはマイクを握りなおした。

 

『よし。八分隊にするか、五分隊にするかは考えるとして、お前達が分隊長だ。だが、気を抜くなよ。あくまで暫定だ。これから変わることもある。だからこそ強くなれ。それがこの人類軍独立特殊部隊……』

 

 そこでいったん区切る。

 

『ストロンガー隊の掟だ!』

 

 こうして、人類軍の切り札と呼ばれた部隊が結成されたのだった。

 

 

 

つづく

 

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