魔法教師はやト!   作:沖彦也

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いよいよ文化祭編です。

長い長い章になると思いますが、よろしくお願いします。


※今回から、古菲の表記を「くーふぇ」から「菲」に変更しました。


麻帆良文化祭編-クラスメイトの章-
第四十二話「近づく文化祭! 茶々丸の思いと鈴音の決意」


 生徒たちが楽しそうに学園に向かう。いつもの朝の登校風景。

 

 世界樹での激闘から一週間。隼人は最新の魔法医療で治療されて完全復活した。

 

「俺、全快!」

 

 清々しい青空の下、隼人はぐーっと伸びをして自分の体を確かめた。

 

 原因は分からないが【爆熱真紅】の負担は使用するたびに軽くなっている。以前のように全身が針で刺されているような激痛はしない。

 

「うーんそれにしても不思議だ。原因究明が必要だな。もしこの負担軽減の理由がわかれば、さらに爆熱真紅の完成に近づく」

 

「でもこれ以上強くなる必要あるのかよアニキ」

 

 肩に乗ったカモが言った。

 

「武の道を歩く人間ってのは、限界を超えてもなお強さを求めるもんだ。俺の場合は復讐っていう目的もある。まだまだ強くならないと」

 

「その通りやで、隼人!」

 

 後ろから声をかけられて、そちらの方を向く。

 

「おお、小太郎」

 

「おはようさん。今日も絶好のバトル日和や」

 

 びしっと構える。

 

 小太郎はあの戦いの後、特別に麻帆良学園に残ることを許された。

 

 今は、麻帆良学園女子寮にある、千鶴達の部屋で暮らしている。

 

「朝から元気だなー」

 

 カモが眠そうに欠伸をした。

 

「こんな日は勝負に限る。隼人勝負や!」

 

「断る」

 

 小太郎は今にも飛び出そうとして出鼻をくじかれた。

 

「なんでやねん。挑まれた勝負は買うのがマナーやろ」

 

「アホか。朝っぱらからドンパチできるほどこっちは余裕ない」

 

「なんや、つまらんなー」

 

 頬を膨らませてふてくされる。

 

「こらこら、小太郎ちゃん。先生を困らせたらダメでしょ」

 

 小太郎はムギュッと誰かに後ろから抱きつかれた。

 

「うわ、千鶴ねーちゃん。やめてぇな」

 

「あらあら、恥ずかしいのかしら?」

 

 クスクス笑って、小太郎の頭を中学生とは思えない豊満な胸に埋めた。

 

「く、苦しいっ」

 

 じたばたと暴れる。

 

「ぷはっ。死ぬところやったで!」

 

 無理やり引きはがして、文句を言う。

 

「あら、ごめんなさい」

 

 悪びれた風もなくしれっと謝った。

 

 一部始終を見ていた隼人は、カモを肩から下ろして持っていた荷物を地面に置いた。

 

「おい、小太郎」

 

「なんや? 隼人」

 

「今すぐ、勝負しろ。貴様だけは絶対に許さない!!」

 

 恐ろしい殺気を放って刀の柄に手をかけた。

 

「なんや、よう分からんが、やる言うんやったら望むところや!」

 

 こちらも鞄を放り投げて、構える。

 

「あの胸に顔をうずめた罪、万死に値する!」

 

「なんで? 圧殺が好きなんか?」

 

「あれがどれほどのことなのか分からないとは……っ。皆、オラに嫉妬を分けてくれ!!」

 

 一触即発。隼人は今まさに全世界の男子の夢と嫉妬を背負って刀を抜こうとした。

 

 が、横やりが入る。

 

「こんの、アホオオオオオオオオ」

 

 すぱーん。

 

 気持ちのいい音を鳴らして隼人がぶっ飛んだ。

 

「朝から何やってるのよ!」

 

 明日菜がハマノツルギ(ハリセンver)を持って立っていた。

 

「ぐおおお、威力増してる。何をする、明日菜!」

 

「何をするじゃないでしょ。小学生になに嫉妬しているのよ」

 

「うるさい。同棲というだけでも羨まけしからんというのに、あの神の領域に顔を埋めたんだぞ! これを成敗せずになんとする!」

 

「生徒の胸を神の領域とか言うな」

 

 もう一度殴られた。

 

「そうやで、一緒に暮らしてる言うても、めんどくさいだけや。風呂は一緒に入らなアカンし、しょっちゅう抱きつかれてうっとおしいし」

 

 火に油を注いだような発言。

 

 隼人は血涙を流しながら、刀を引き抜いた。

 

「キサマアアアアアアアアアア。風呂だと!? 俺がやったら殺されかける風呂だと!? マジでたたっ切る!」

 

 神速の振り切りで襲いかかる。

 

「おりゃああっぶべし!?」

 

「いい加減にしてください」

 

 刀を振り切る前に、カッとんできた刹那に蹴り飛ばされて、隼人はダウンした。

 

「全く、教師がそんなことで騒いでどうするんですか」

 

 呆れたように刹那はため息をついた。

 

「せっちゃん、隼人聞いてへん」

 

 木乃香もやってきた。

 

「あら、三人ともおはよう」

 

 千鶴がのんびりとあいさつした。

 

「おはよ、那波さん」

 

 五人は並んで歩く。

 

「夏美ちゃんと委員長は一緒じゃないん?」

 

 木乃香が尋ねた。

 

「それが、夏美は演劇の朝練。あやかは文化祭の打ち合わせで先に行ったの」

 

「ああ、もうすぐ文化祭だもんね。学園内も活気づいているよね」

 

 明日菜が周りを見回す。

 

 学園のそこかしこで、朝のわずかな時間を使って、文化祭に向けて準備を進めている。

 

「今年も盛り上がるとええね。せっちゃん」

 

「はい、お嬢様。私達のクラスの出し物も頑張りましょう」

 

 四人は文化祭に向けて気合十分だった。

 

「ほな、俺はここで」

 

 小太郎と麻帆良小学校に続く道で分かれる。

 

「小太郎ちゃん、いってらっしゃい」

 

「おう、千鶴ねーちゃんもいってらっしゃい」

 

 ビッと親指を立てて小太郎は駆け出した。友人を見つけたのか、小学生の集団に混ざっていく。

 

「アイツ、学園に残れて良かったね」

 

 明日菜が嬉しそうに言った。

 

「ええ、隼人先生が尽力してくれてウチで預かれるようにしてくれたのよ」

 

「そういうところは流石、先生です。私もそれで救われましたから」

 

「けど、ああいうところは、直さなアカンよね」

 

 四人が振り向いた先はぶっ倒れた隼人がいた。

 

「カモぉ、俺は間違ったのか?」

 

 刹那に見事な蹴りを入れられて、かなりダメージを喰らっていた。

 

「いいや兄貴。間違っちゃいねぇよ。あの犬っころは俺っち達の夢を踏みにじった。おっぱいに顔を埋めやがった」

 

「だよな。俺は間違ってないよな。ちくしょう。俺、もっと強くなるよ。誰にも負けないくらい強くなって、あのおっぱいを守るよ」

 

「兄貴、俺っちも応援するぜ」

 

「カモっ」

 

「兄貴っ」

 

 感極まって二人は抱き合う。

 

「雷霆招来」

 

 ぽそっと刹那はつぶやいた。

 

「ぎゃああああああああああああああああああ」

 

 突然、隼人とカモの頭上から雷が落ちてきて直撃した。

 

 完全に不意打ちだったため防御などしていない。完璧に決まった一撃だった。

 

「行きましょう。早くいかないと遅刻します」

 

 刹那が青筋を浮かべて言う。

 

「そうね。あのアホは放って置きましょ」

 

 明日菜達も頷いて学園に向かった。

 

 後に残ったのは黒焦げになった隼人とカモ。

 

 二人は仲良くばったりと倒れて、その後駆けつけた救急隊員に助けられるまで、地面に転がっていた。

 

 

★

 

 

 放課後。隼人はようやく人心地ついて、廊下を歩いていた。

 

「やれやれ、朝はひどい目にあった」

 

 隼人は首を回しながら、ぼやく。

 

 刹那の容赦のない一撃を喰らって、珍しく昏倒してしまった。

 

「ま、あいつも強くなっているんだな。嬉しいやら恐ろしいやら」

 

 これからの行動に気をつけないと、いつか命を落とすと隼人は確信した。

 

「にしても、盛り上がってるなぁ」

 

 廊下の窓から見える景色は、祭りの準備で盛り上がっていた。

 

「ん?」

 

 その風景の一部にしゃがみこんでいる茶々丸を見つけた。

 

「何やってんだ?」

 

 気になった隼人はそこへ向かった。

 

「おーい、茶々丸」

 

 隼人は彼女に声をかけた。

 

「あ、先生。こんにちわ」

 

 立ち上がった茶々丸の足元にいたのは猫だった。

 

「ああ、猫と遊んでたのか」

 

「はい。この子たちは私の友達です」

 

「へぇ、そうか」

 

 隼人が近づくと驚いて逃げてしまった。

 

「あらら。動物に嫌われてるなぁ」

 

「猫は人見知りしますから仕方ないですよ」

 

「まぁ、いいや。それよりクラスで文化祭の準備じゃないのか?」

 

「今日から超包子(チャオパォズ)が開くので早く上がらせてもらいました」

 

「超包子?」

 

 聴きなれない単語に首をかしげた。

 

「文化祭限定で開く中華料理屋です。クラスメイトの超鈴音が主催、調理は四葉五月がやっています。ウェイトレスは私と古菲と葉加瀬聡美です」

 

「へぇー、お前ら中華料理屋なんてやってんのか。すげーな」

 

「はい。学園では結構有名らしいです」

 

「ちなみに、メニューに肉まんはあるか?」

 

「はい。肉まんは超包子の人気メニューです。ですが、それがどうかしましたか?」

 

 不思議そうに首をかしげる。

 

「いや、なに。今日の朝ちょっといろいろあってな。肉まんでも食べなきゃおさまらないんだ」

 

 隼人はわきわきと手を動かす。

 

「それでしたら、是非いらしてください。お待ちしています」

 

「おう。今日の晩飯は中華で決まりだな」

 

 ニシシと笑った。

 

「肉まんと何食べようかな」

 

 あれこれ思案していると、茶々丸が質問した。

 

「あの、一ついいですか?」

 

「ん、なんだ?」

 

「先生はどうして復讐をしようと思ったんですか?」

 

 隼人はきょとんとした顔をした。そして尋ねる。

 

「質問に質問で返して悪いが、どうしてそう思うんだ?」

 

「私は人の感情を理解して学習するAIを積んでいます。私の経験と膨大な情報を加味して考えるとどうしても、復讐なんて効率の悪い行為より、幸せを掴むために生きていく方がよほど人間らしいと思うのです」

 

「なるほど。それは正解だ。人は前を向いて進まなければ生きていけない。明るい未来を進んだ方がずっと良い」

 

「ではなぜ? 先生の過去を見た時、クロノメモリに言った答えではどうしても納得できません」

 

「それは、俺が破滅に向かって進んでいるから、心配なのか?」

 

「そうです。ロボットである私がこんな感情を持つのはおかしいのかもしれません。ですが、先生がこのまま復讐者でいるのは心配です」

 

 茶々丸の顔は本気で人を心配している顔だった。

 

「う~ん、動機の言語化って難しいんだけどな。簡単に言うと、アイツを許せないからだ」

 

「怒りですか?」

 

「そうだ。大勢の人間と俺を弄んだあの悪魔は絶対に許さない。この怒りはどんなに月日が経っても消えることのない炎だ」

 

 隼人の瞳の奥に真っ赤な炎が燃え盛っている。

 

「この炎が燃え続ける限り、俺は動き続ける。奴にこの執念を、この怒りを叩きこむまで俺は止まらない」

 

 拳を握るその手は振るう機会を待つように震えた。

 

「だから俺は戦う。人間として間違った生き方でも、俺はこの生き方をやめるつもりはない」

 

「そう、ですか」

 

 茶々丸は隼人を止める術がないことを悟り、悲しそうな顔をする。

 

 しかし、隼人はその顔と対照的に、穏やかな顔で賑やかな準備風景を見つめる。

 

「でも最近、考えが変わってきている」

 

「え? それはどういうことですか」

 

 茶々丸は意外な一言に驚いた。

 

「かつて俺は怒りと恨みの衝動に任せて暴れまわった。だがその結果、友を斬り殺し、ヴェルガを取り逃がし、ヘルマンに殺されかけた」

 

 今までの出来事を思い返して苦笑いする。

 

「何一ついいことがなかった。でも世界樹での戦闘で、仕切り直しがあっただろ?」

 

「はい。ありました」

 

「そのとき初めて頭が冴えた状態で刀を振るうことができたんだ。怒りと恨みの炎を初めてコントロールできたんだ」

 

 隼人は自分の拳を見つめる。

 

「その時気が付いた。ああ、俺は間違っていたんだってな」

 

 そして、茶々丸を真っ直ぐ見た。

 

「どんなときだって俺は一人で戦っていると思っていた。だけどそれは違った。俺には間違った道に進んだら、ぶん殴ってもでも止めてくれる仲間がいる」

 

 腰に差した刀を隼人は握る。

 

「だから俺がどれだけ突っ走っても大丈夫だ。ちゃんと止めてくれるお前達がいるからな」

 

 二カッと笑って茶々丸の頭を撫でる。

 

 隼人の言葉に茶々丸は、あきらめたような、ホッとしたような顔をした。

 

「止められないなら、危ない方向に行かないように誘導するしかないようですね。本当に先生は人様に迷惑をかけるダメ人間ですね」

 

「ああ、それは普段から言われている。開き直れば意外となんとでもなるもんだ。他力本願って素晴らしい言葉だよな」

 

 爽やかな顔でそう言ってのける隼人は、本当にダメ人間の境地に達していた。

 

 茶々丸は隼人の目を見て告げる。

 

「でも、ダメ人間でも頼れる人だと思います。だから私も容赦なく殴り飛ばすことにします」

 

「おう、そうしてくれ。あ、でも雷落とすのは無しな」

 

「私には雷を落とす機能はありませんよ」

 

「いや、今日の朝いろいろあってな。死にかけたんだ」

 

 隼人は朝の悪夢を思い出して身震いした。

 

「何かよく分かりませんが、分かりました」

 

 茶々丸は頷いた。

 

「さて、それじゃ俺は行くよ。じゃ、また夜に超包子で」

 

 手を軽く上げてから隼人は立ち去る。

 

「はい、お待ちしております」

 

 茶々丸は綺麗なお辞儀で返した。

 

 

★

 

 

 その夜。茶々丸は超包子でせわしなく働いていた。

 

「次、五番テーブルさんにお願いネ!」

 

「了解です」

 

 鈴音が出来上がった料理を渡す。

 

 今夜開店の超包子は大盛況だった。

 

 五月が厨房で腕を振るい、サポートロボットがそれを補佐する。

 

 聡美がそれを調整しつつウェイトレスとして働く。

 

 菲もテーブルとテーブルの間を縫って次々と料理を運んでいく。

 

 超包子は路面電車を改造して作られた屋台店舗に、テーブル席が周りに置かれている屋外の中華料理屋。

 

 文化祭の準備で動いて腹を空かせた学生が次々とやってくる。

 

「ふぅ、やっぱり盛況ネ」

 

「はい、そうですね。超さん」

 

 鈴音と聡美は繁盛っぷりを見て満足そうに笑った。

 

 平積みにした蒸籠を持ってアクロバティックに運んでいく茶々丸。

 

 その姿に聡美は少し首をかしげた。

 

「でも、なんで茶々丸は髪を上げたのかなー。放熱の意味合いもあるからあんまり良くないんだけど」

 

 いつもの長い髪を可愛らしく纏めている。華麗なチャイナ服がそのヘアスタイルに良く似合っていた。

 

「まぁ確かにあまり良くはないネ。でも、これはむしろ喜ぶべきことかもしれないヨ」

 

 鈴音はその姿に製作者としての立場というより、なぜか懐かしそうな光景を思い出しているような顔で見ていた。

 

「これは想定内ですか? 超さん」

 

 メガネをずり上げて尋ねる。

 

「【記録】ではもう少し後ネ。でも【記憶】ではあの感じは間違いないヨ」

 

「そうですか。ということは、AIが思ったより進化しているということですね」

 

「そうヨ。そしてその急速な進化はあの男が起こした奇跡ネ」

 

 鈴音が向ける視線の先には隼人がいた。

 

「よ、茶々丸。こんばんわ」

 

 肩にカモを乗っけて隼人は超包子を訪れた。

 

「あ、先生。いらっしゃいませ。カウンター席にどうぞ」

 

「いや、テーブルが空いてたらそっちを頼む。明日菜達が来るんだ」

 

「そうですか、ではこちらへ」

 

 茶々丸は隼人を席へ案内する。

 

 隼人が席に座ると、おしぼりとウーロン茶を出す。

 

「ご注文はみなさんが来てからでよろしいですか?」

 

「おう。それで頼む。あーそれよりその姿似合っているな。可愛いじゃないか」

 

 柔らかい笑みで隼人は言った。

 

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 

 少し慌てたように茶々丸は答える。

 

「そのチャイナ服もさることながら、髪が似合ってる。やっぱ女の子はオシャレじゃないとな」

 

 うんうんと頷く。

 

「そそそそ、それはありがとうございます」

 

 急速に回れ右して茶々丸は立ち去ろうとする。が、蹴躓いてひっくり返った。

 

「おっと、大丈夫か」

 

 流れるような動きで彼女を抱きとめる。

 

「あ、ああああありがとうございます」

 

 顔を熱くして茶々丸は立ち去った。

 

「兄貴、なかなかイケメンだな」

 

 今まで黙って一部始終を見ていたカモがいやらしい顔をした。

 

「反応が可愛いんで、つい意地悪したくなる」

 

「この際、仮契約(パク)っとくか?」

 

「ロボットと出来るのか?」

 

 二人は他愛ない会話をして明日菜、刹那、木乃香を待った。

 

それからすぐに、明日菜達はやってくる。

 

「ご注文をどうぞアル」

 

 菲が注文を聞きにきた。

 

「私、超包子セット」

 

「あ、私もそれでお願いします」

 

「ウチもやから、三つお願いします」

 

「俺は肉まんセット。ライス大盛りで」

 

「りょーかいアル。超包子セット三つと肉まんセット・ライス大盛りアルね。少々お待ちくださいアル」

 

 注文を聞いて、菲は立ち去る。

 

「んで、準備の方は順調か?」

 

 隼人は明日菜に質問した。

 

「もちろん。バッチリ可愛い感じに仕上がってるわ」

 

「ほう、それは楽しみだ」

 

 すると木乃香が思い出したようにクスクス笑う。

 

「せっちゃんのコスプレに欲情したらアカンよ」

 

「お、お嬢様!」

 

 顔を真っ赤にして刹那が慌てる。

 

「へぇ、なんだ猫耳スクール水着とかか?」

 

「なんでわかるのよ」

 

「隼人、アウトや」

 

 二人にダメだしされる。

 

「それはデジカメに撮って、壁紙にでも使うか」

 

「いや、そもそもスク水で接客って学園ではダメですから!!」

 

 刹那が必死に否定した。

 

「安心しろ。俺だけに見せてくれたらそれでいいから」

 

「もっとダメでしょおおおおおおおお」

 

 隼人は刹那に思い切り殴られた。

 

 どっと笑いが起きる。

 

 そうこうしていると料理が運ばれてきて、楽しいひと時が始まる。

 

「そういや隼人は、学園の噂知ってる?」

 

 木乃香が尋ねた。

 

「ん? 学園のうわさってどれだ?」

 

「文化祭の日に世界樹で告白すると永遠に結ばれるっていう噂や」

 

「ああ、そういやほかのクラスに授業に行ったときに騒いでたな」

 

「隼人は気をつけなアカンで。きっと告白されると思うし」

 

「なんでだよ。俺を好きな奴なんて居ない……ってわけでもないな」

 

 ぱっと思いつくだけで、のどか、刹那、あやかがいた。

 

「充分気を付ける。火のないところに煙は立たず。噂にもそれなりの真相があるからな。おまけに神木蟠桃の下ってところがいかにも怪しいな」

 

「もし、生徒と恋人同士になったら速攻でクビね」

 

 明日菜がニヤリと笑った。

 

「やめてくれ。洒落にならん」

 

 この会話に混ざらずに刹那が真面目に考えている時点で相当現実味があった。

 

 そして隼人はその状況になったら、自分が狂喜乱舞して受け入れている姿が目に見えてもっと真剣に考えないとダメだと思った。

 

 そんな様子を鈴音達は仕事をしながら見つめる。

 

「葉加瀬。これでワタシのやろうとしていることの確信が持てたよ。皆の心が記録より早く変化している。未来は変えられる」

 

 鈴音の顔は全てを敵に回す戦士のようだった。

 

「超さん。貴女は一人じゃない。私達がいます。成し遂げましょう。望む未来を勝ち取るために」

 

 葉加瀬も真剣な顔で言った。

 

 二人の決意は盛り上がる店の喧騒にかき消される。

 

 麻帆良学園はいよいよ文化祭に向けて進んでいく。

 

 

つづく

 

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