生活や仕事がエライことになってまして、更新頻度が下がりますが、続けて行く所存です。
どうかよろしくお願いします。
さて、話は小説に戻りまして。
麻帆良文化祭編です。今回はのどかがメインです。
更新再開記念&継続祈願として普段より文字数が多いです。
よろしくお願いします。
祭でにぎわう麻帆良学園。その一角、噴水広場前。そこに宮崎のどかはいた。
待ちに待った隼人とのデート。修学旅行のときとは違い、完全なデートである。それはもう気合いを入れてオシャレしていた。白色の可愛らしいワンピースを着て、小さなポシェットを肩からかけている。薄く化粧もしている。
そんな清楚なイメージで決めた、のどかは待ち合わせ場所の噴水前で待っていた。
ふと携帯が鳴る。ハルナからだった。
「もしもし、どうしたの?」
『やほー。いやぁ激励の電話でもしようかと思ってね』
嬉々とした声が聞こえてくる。
「ありがとう。もう心臓が爆発しそうになってる」
『ちょっと、今から爆発そうってダメじゃない。せっかく進展のチャンスなのよ。キスくらい決める覚悟で行きなさい!』
「ちょ、き、き、キスなんて無理だよ。一緒に回るだけでもテンパってるのに」
修学旅行の失敗がフラッシュバックして気持ちが沈む。
『大丈夫です。のどか。落ち着いて行けば失敗はしないですよ』
受話器から夕映の声が聞こえた。どうやら一緒にいるようだ。
「夕映、落ち着いてって言われても……」
『イメージトレーニングすると良いです』
「イメージトレーニングか。う~ん」
アーティファクト「いどの絵日記」を召還して想像する。
★
まず、隼人先生が来たら、女の子らしく挨拶して。
すると先生が。
「綺麗だ、のどか」
って迫ってきて、私の顔を優しく抱えて。
「キスしよう」
そう言って、唇を重ねて、盛り上がった二人はそのまま、舌なんか入れちゃって、大人のキスをして、それでそれで。興奮した先生が……。
★
『ちょっと、もしもーし。のどか?』
呼ばれて我に返る。
召喚した絵日記を見ると、とんでもない内容と挿絵が映し出されていた。
「うわわわ、こんなこと考えてない、考えてない。消去、消去」
慌ててページを削除した。
『何を想像してたのか、訊きたいところだけど、まぁ良いわ。とにかく頑張んなさい』
「うん、ありがとう。ハルナ」
『あ、そうそう。世界樹の告白ってキスでも有効らしいよ。それもディープキスなら効果二倍!』
「ディ、ディープキスって」
先ほどの絵日記が頭をよぎる。
ふと絵日記に目を移すと、消したはずの絵が復活していた。
「きゃああああ。無し、無し」
慌てて消そうとすると、さらに文字が浮かび上がってくる。
【本日の目標・隼人先生と大人のキス(ディープキス)】
「ひぃいいい。私そんな、はしたない事考えてないってばっ!」
絵日記を噴水に投げ捨てた。
アーティファクトなので濡れても大丈夫だが、水に浸かった衝撃で仮契約カードに戻った。
「はぁはぁはぁ」
『大丈夫? のどか?』
心配そうなハルナの声が聞こえる。
「大丈夫。全部消したから」
『え? 消す?』
「とにかく、もう時間だから切るね」
通話を一方的に終了させた。
デートが始まる前から既に疲れてしまった。
「平常心。平常心」
言い聞かせて心を落ち着かせる。
そうこうしていると隼人がやってきた。
「おう、待たせたな。のどか」
「あ、先生。私もいまきばらかりで」
返事をしようとして早速、噛んだ。
「おお、服可愛いな。バッチリ似合ってる」
嬉しそうに隼人は、のどかの服を褒めた。
「ありがとうございます。先生も普段と違った雰囲気で似合ってますね」
のどかの指摘した通り、いつものスーツではなかった。
超との会見のあと、刹那に引っ張られて木乃香と合流。そのまま、あーでもない、こーでもないと服を選んでもらったのだった。
落ち着いた感じの大人びた服装。いつも腰に差している刀は、今日は持っていない。
「はは。サンキュ。服にはあまり頓着しない方だが、まぁせっかくだしな」
隼人は照れたように笑う。
「それじゃ行こうか。まずは古本市だったな」
「はい。掘り出し物があったら良いなぁ」
二人は連れ立って歩き出した。
★
そんな二人をこっそり追いかける集団がいた。
「むふふ。初々しいわねぇ」
ハルナが物陰からこっそりと顔を出す。
「ああ見ると、お似合いよね」
明日菜もひょっこりと顔を出した。
「う~ん。やっぱもう少し外見年齢に沿った服の方が良かったやろか?」
「いや、私はあれで良いと思いますよ。お嬢様」
「俺っちもそう思うぜ」
木乃香と刹那、カモも顔を出した。
ハルナは明日菜達に向き直る。
「明日菜と木乃香はともかくとして、刹那さんも来たの?」
恋敵のデートを見にきた刹那に驚く。
「いえご心配なく。私は私で頑張ることにしたんで。それより隼人先生が何かやらかさないか、心配で見に来たんです」
「もう、保護者の視点ね」
明日菜が呆れた。
「まぁ、それなら良いけど」
「なぁ、ハルナ。夕映はどないしたん?」
木乃香が尋ねる。
「人のデートを覗くのは趣味が悪いってどっか行っちゃった」
「まぁ、確かにあまり趣味はよろしくないですね」
刹那が苦笑いした。
「でもさぁ、ぶっちゃけた話、隼人先生って本命は誰なんだろう?」
「さぁ。さっぱりやな」
「たぶん、先生は色恋沙汰には疎いし、それどころじゃないでしょうし。本命とかそういうのは無いと思います」
刹那が言う。
「確かにねぇ。のどかとか、刹那さんとか、茶々丸さんとか、好意を持つ女の子は多くても、本人が見向きもしないというか、そういうのをあえて遠ざけているような気はするわね」
隼人の過去を知っているだけに、納得が出来るハルナ達だった。
★
「ハーックショイ」
隼人はくしゃみをした。
「先生、大丈夫ですか」
「ああ、誰か噂でもしているのか」
辺りをキョロキョロと見回す。
古本市は、学祭初日ということもあって人でにぎわっていた。
「お、この絵本懐かしいな。子供の頃読んだことあるぞ」
一冊の絵本を手に取る。
「それ私も小さいころに読みましたよ」
「おお、そうか。絵本は世代を超えて読まれているからな」
さらに物色していく。
「これ、探していた本だ」
のどかが本をめくる。
「これ先生みたいな格好いい魔法使いが出てくるんですよ」
「へぇ。さぞかし血みどろの話なんだろうな」
「いや、違いますよ。女の子を助けるために悪魔と戦うんですよ」
「なるほど。それは面白そうだな」
隼人はその本を手に取った。
「へぇ。挿絵もなかなかいい感じだな」
少し立ち読みする。
そんな姿をのどかは見つめた。丁度、唇に視線が行く。
『柔らかそうな唇だなぁ』
などと心の中で呟く。
「はっ。なんてこと考えてるの」
首を振って邪念を追い払う。
その様子を見て、隼人は首を傾げた。
「何してるんだ?」
「え、いや、なんでもないですよ」
気まずくなって視線をそらして、近くにあった本を手に取る。
だが、その本のタイトルを見て凍りつく。
【キスから始まる恋物語。キスシーン写真集】
「うわわわわ。これじゃない!」
急いで本を戻す。
「何の本だ?」
「なんでもないです。はい」
「そうか」
隼人は本の物色を再開する。
のどかは、何とか誤魔化せてほっとした。
「おい、のどか。面白い本見つけたぞ」
「どんな本ですか?」
隼人が見せた本のタイトルに、再び凍りついた。
【今から使えるキスの仕方大全】
「ひゃあああああ。そんな本読まないでくださいいいい」
のどかは顔を真っ赤にして慌てた。
「き、き、キスなんてそんな、先生にはまだ早いです!」
「ちょ、何基準だよそれ」
「とにかくダメなんです!」
恐ろしい剣幕で言った。
「お、おう。分かった」
その勢いに圧倒されて了承するしかなかった。
★
そんな二人のやり取りを、ハルナ達は物陰から見ていた。
「うひゃひゃひゃひゃ。大成功」
「デートが盛り上がらないからエロそうな本を置いて反応を見るたぁ、ハルナ嬢ちゃんもやるなぁ」
ハルナとカモは手を叩いて笑う。
「さすがにそれはやり過ぎでしょう」
「相変わらず酷いわね」
刹那と明日菜は肩を落とした。
「あ、二人が移動するみたいや」
木乃香は歩き出す。
「今度はどこ行くのかな?」
ハルナ達も後を追った。
★
隼人とのどかは古本市を出て雑踏を歩く。
「一時間くらい見てたな」
隼人は時計を確認した。
「でも面白い本とかあって良かったです」
「ああ、そうだな」
二人ならんで歩く。
「晩飯にはまだ早いし、どっか露店でも見に行くか」
「はい。行きましょう」
目的地に足を向ける。その時だった。
「煉城先生。何をやっているんですか」
声のする方を向くと、そこには二人の少女がいた。
「ああ、どうも。高音さん。それに佐倉さん」
隼人は軽く会釈した。
「えっと、どなたですか?」
のどかが隼人に尋ねる。
「紹介するよ。こっちのウルスラ学園の制服を着ている方が高音・D・グッドマンさん。そして麻帆良学園の制服着ている方が佐倉愛衣さん」
隼人が紹介する。
のどかが頭を下げた。
「んで、こっちが宮崎のどか。俺の生徒だ」
高音達に紹介する。
高音はため息ひとつして嫌見たらしく言った。
「良いご身分ですね。他の先生方が見回りをしているというのに。煉城先生はご自身の教え子とデートですか」
その物言いに隼人はムッとした。
「別に見回りの仕事はきっちりやってる。自由時間に何をしていても文句はないはずだが」
「ふん。学祭初日とはいえ、世界樹の効力は60パーセントあるんですよ。少し行動が軽率ではありませんか?」
そういうと、小型の機械を取り出してのどかに向けた。
「やっぱり、告白係数が80を超えています」
「何? ちょっと待て、なんだその機械」
「問答無用です。今すぐ隔離します。メイ」
高音は佐倉に命じてのどかを隼人から引き離そうとする。
「せ、先生」
不安そうな顔で隼人を見る。
隼人は連れて行こうとするのを遮った。
「鈴音の時もそうだったが、仕事熱心でも強引すぎるな」
のどかの腕を取って引き寄せた。
そして高音と佐倉を睨む。
「世界樹の圏内には気を付けている。問題ない。もし邪魔をするなら容赦はしない」
炙るような殺気を向けた。
「「っつ」」
殺気を向けられた二人は息をのむ。
だが、高音はひるまず反論した。
「それでも、規則は規則です。呪いの危険性は承知しているでしょう」
「分かった。ならば、この辺から立ち去ろう」
話しても埒が明かないと悟った隼人は、のどかを連れてその場から立ち去ろうとする。
「あ、待ちなさい」
高音と佐倉は追いかけようとした。
「ついてくるなっ」
有無を言わさぬ紅蓮の圧力で二人を制止させて、悠々と隼人とはのどかを連れて立ち去った。
そのまましばらく無言で歩いて、人気のない場所まで来る。
「先生?」
のどかは心配そうな顔をする。
隼人は深々とお辞儀して謝った。
「本当にすまない。いやな気分にさせてしまったな」
「いえ。気にしてません。でも告白ってどういうことですか?」
「ああ、それはだな……」
隼人は事の経緯を説明した。
「なるほど。つまりあの噂は本当だったんですね」
説明を聞いて得心がいった。
「そうなんだよ。全く面倒な話もあったもんだ。ああそれと、高音達のことを悪く思わないでやってくれ。彼女達も仕事でやってることで悪意はないんだ」
隼人は申し訳なさそうに言う。
「はい。分かりました。でも嫌な気分は本当にしてないんですよ」
「え? そうか」
「はい。だって連れて行かれそうになったとき、先生が守ってくれたから。引き寄せれた時、ちょっとドキドキしました」
のどかは頬を染める。
「はは。それならまぁいいや。ありがとう。」
隼人は仕切り直すように言う。
「さて、問題は解決したけど、どうにも気が収まらないな。詫びになんかしてほしいことあるか?」
「してほしい事ですか?」
「ああ。何か奢れって言うなら奢るぜ」
のどかは「これは最大のチャンスなのではないか」と思った。
お詫びにかこつける形になるが、それでもチャンスだ。
のどかは意を決して隼人に告げた。
「えっと、それじゃ、私、先生にキスをしたいです……」
「へ、キス?」
突然の申し出に隼人は素っ頓狂な声を出した。
のどかは、もじもじしながら言う。
「はい。ダメですか?」
上目使いで尋ねてきた。
その可愛さに一瞬、心が揺れかけたが隼人は言った。
「その、こんな俺なんかと……」
「そんな悲しい事、言わないでください」
のどかは隼人の言葉を遮った。
「先生。『俺なんかと』なんて言っちゃダメです。先生はもっと幸せになるべきです」
隼人の目を真っ直ぐ見た。
それは読心術者のなせる技なのか、隼人の心を見透かしたように言う。
「先生はこう思ってませんか? 俺なんかが幸せになってはいけない。友人を殺して、全てを犠牲にしても仇を討てなかった。そんな自分には幸せは訪れないって」
「それは、そうだろう。俺は、理由はどうあれ友を殺し、悪魔に踊らされた男だ。そんな人間に幸せなんてあるはずないだろう」
隼人は心の底から絞り出すように言った。
前を向いて行こうと思い始めてはいるが、結局のところ、一歩も前に進んではいない。誰かに好意を寄せられても、多くの命を失いすぎた過去が邪魔をして距離を取ってしまう。
それが今の隼人だった。
のどかは首を横に振る。
「それは違います。前に本で読んだんです。『人は幸せを追い求める生き物だ』って。だから先生も幸せになって良いんです」
そこでいったん区切って、隼人に訊いた。
「先生は以前、復讐は自分で決めたことだ。死んだ人間は関係ないって言ってましたよね?」
「ああ、そうだ。死んだ人間がどう思ってようが関係ない。だがそれがどうした」
「だったら、死んだ人間のために幸せを拒否するのは間違ってます。過去は関係ない。今を生きている先生は幸せを求めてもいいはずです」
隼人はその言葉にハッとした。
「のどか……」
のどかは畳みかけるように告げる。
「私は刹那さんのように強くない。木乃香のように魔法も使えない。でも私は先生のように精一杯自分の出来ることをします。戦いでは役に立たないかもしれないけど、私は大好きな先生に幸せをあげたい。先生が笑って過ごせるようにしてあげたいんです」
それはのどかの切実な願いであり決意だった。
よく見ると、ぽろぽろと泣いている。だが、その目は燃え盛る炎のごとく力強かった。
隼人はその決意をかみしめて、のどかを抱き寄せた。
「せ、先生」
突然のことで驚く。
隼人は頭を優しく撫でた。
「ありがとう。確かにそうだ。過去に囚われて今を拒否するのは間違っているな。幸せを求めればまた失うかもしれないと、怯えるのは俺らしくないか」
失うことの恐怖は誰よりも知っている。だからこそ、失わないために隼人は鍛えてきた。
「前に進むことを決意したなら、過去を振り切って進むしかない。確かにその通りだ。ありがとう。目が覚めたよ」
「はい。先生」
のどかはにっこりと笑う。
「だから、これは気づかせてくれた礼だ」
隼人はのどかに優しくキスをした。
たっぷり五秒。口を離して、互いに距離を取る。
のどかはこれ以上ないくらい顔を真っ赤にした。
隼人は頭を掻きつつ言う。
「あーそのなんだ。仮契約のキスを勘定に入れなかったらファーストキスだな。うん」
「そ、そうですか。それはご馳走様です」
妙な沈黙。それを壊すように隼人は手を叩く。
「さて、それじゃ、露店でも見て回るか」
隼人はニッと笑う。
のどかも笑って頷いた。
「はい。先生」
二人は連れ立って歩き出す。
学祭初日は夜に向けて益々、盛り上がっていった。
★
麻帆良学園初日の夜。麻帆良川のとある場所に隼人とのどかは居た。
『それでは麻帆良祭名物、光と火と水のショー【マホラ・イリュージョン】を開始します』
高らかにアナウンスが告げて、目の前に広がる河川が光り輝いた。花火が上がり、水が光に反射してキラキラと輝く。
「わー綺麗」
のどかはその幻想的なショーに見入っていた。
「まるで魔法だな」
隼人もそのイリュージョンに感動した。
キスの一件から何事もなかったように、二人は振る舞っていた。といっても漂う空気は少し甘い。
暫く二人はマホラ・イリュージョンを堪能した。
三十分のショーが終わり、見ていた観客は三々五々に散らばっていく。
「いやー、今日は楽しかったな」
グーッと伸びをして隼人は言う。
「はい。とっても楽しかったです」
のどかも楽しそうに言った。
「先生はこれからどうするんですか?」
隼人はのどかの質問にニヤッと笑った。
「俺はこれから戻って仕事だが、それより、凄い物見せてやる」
「はぁ。凄い物ですか」
「ああ、見たらきっと驚く。俺が驚いたくらいだからな」
意味深に笑う隼人。
「でもその前に、そこに隠れてる集団出てこい」
二人の後ろにあった大きな銅像の土台。その陰からぞろぞろと明日菜達が出てきた。
「いやぁ、さすが先生。バレちゃったか」
ハルナが残念そうに言った。
「当たり前だ。人の後ろをこそこそと付いて来て」
隼人は怒った。
「特に刹那、木乃香!」
「はい?」
「へ?」
名指しされて戸惑う。
「お前ら剣士と魔法使いなんだから、尾行するならもう少しうまくやれ。気配がダダ漏れだったぞ」
「はい。精進します」
「はーい。気を付けるわ」
刹那と木乃香は謝った。
「それより、隼人先生。実は途中で見失っちゃたんだけど、あの二人の女性から逃げたあとどこで何をしてたの?」
ハルナが興味津々で尋ねてくる。
「なんでお前に言わにゃならん」
隼人は質問を却下した。
「おやおや。その様子だと、なーにか良い事あったかなぁ」
ハルナは嫌らしい笑顔で隼人とのどかを見比べた。
「はいはい。んなことより、ものすごい物があるんだよ」
隼人は話題を変えて、懐からカシオペアを取り出した。
「あ、先生それ使うんですか」
「ああ、刹那。これで戻って世界樹の見回りだ」
「戻るってどういうこと?」
明日菜は首を傾げた。
「よくぞ聞いてくれました! 実はこれタイムマシンなんだよ」
「「「「タイムマシン?」」」」
刹那とカモ以外が怪訝そうな顔をした。
隼人は事の経緯とカシオペアの説明をする。
「……てなわけで、これは世にも珍しい超魔法アーティファクトなのさ」
「ふーん。この時計がねぇ」
明日菜がイマイチ信じられない感じで言った。
「もしこれがタイムマシンなら、超さんって何者なのよ」
ハルナは当然の疑問を口にする。
「それが私達にもさっぱりでした。とりあえず害はなさそうなんですけど」
刹那が思い出して言う。
「ま、なんにせよ、コイツで時間を遡れるのはありがたい」
隼人はカシオペアを見つめる。
「説明書によると、学祭中しか使えず、使用者一人の魔力じゃせいぜい一日前後しか跳べないらしいぜ」
カモが補足の説明をした。
「それって膨大な魔力や、ウチみたいに魔力量が多かったら、もっと前に跳べるんやろか?」
隼人は少し考えて答える。
「さぁな。設計にない仕様はなるべくやめてくれって書いてあるからなぁ。そこまで無理して過去に跳ぶ必要はないだろう。それに過去は過去。あんまり囚われるのは駄目だよ。なっ、のどか」
隼人はのどかに振った。
「はい。そうですね」
のどかは同意した。
隼人は全員を見回して言う。
「さて、これで今日の朝に戻ろうと思うけど、どうする? 何かやり残したことあるなら一緒に戻れるぞ」
「そりゃ当然。そんな面白そうなこと体験しないわけがないじゃない」
ハルナは嬉々として言う。
「私も世界樹の見回りを手伝うことにしたから戻るわ」
明日菜も賛同した。
「なんだ、世界樹のこと言ったのか」
隼人は刹那と木乃香を見る。
「はい。高音さん達が先生と揉めてる時に、説明しました」
「そしたら明日菜とハルナが手伝ってくれるんやて。人数多い方がええやろ」
「まぁそれもそうだな。手伝いを申し出てくれてありがとう」
隼人は二人に礼を言った。
「あの、私も手伝います」
のどかが、おずおずと手を挙げた。
「そうか、ありがとう。それじゃ全員で戻るか。こっち来い」
全員が人気のない場所へ移動する。
「よし、それぞれ手を繋げ」
言われた通りに手をつなぐ。ちなみにハルナと木乃香が気を回して、隼人の両脇は刹那とのどかになった。
「それじゃ、学祭初日朝にジャンプ!」
カシオペアが起動して、世界が一回転した。
つづく