ここから麻帆良武道祭が始まります。
しばらくバトルが続きます。
師走で忙しく、次回更新は来年かもしれません。
よろしくお願いします。
第四十九話「集う強者達。麻帆良武道祭開幕!」
麻帆良学園祭初日。カシオペアで戻って二回目の夜。とあるレストラン。隼人と夕映はそのレストランのオープンテラスで夕飯を食べていた。
「ごちそうさまです」
夕映は学祭特別ディナーを食べ終えた。
「結構、美味かったな」
隼人も食後のオレンジジュースを飲みながら言う。
「はい。それで、これからどうするですか?」
夕映は質問した。
「う~ん。クラスの一日目の打ち上げまでまだあるしな。どうするか」
「アニキ、一千万、一千万」
カモがポケットから顔を覗かせて急かす。
「ああ、そういやそれ忘れてたな」
隼人は大して興味がなかったため忘れていた。
「先生、一千万とは?」
「これだよ。夕映」
超から貰ったチラシを見せた。
「麻帆良武道祭ですか。あ、超さんが主宰ですね。それで、賞金一千万!」
流石に夕映も驚いた。
「これはまたビックイベントです」
「ああ、それに参加するかどうかって話だ」
「先生なら出てみては?」
夕映はチラシを返しながら提案した。
「いやなぁ。大して面白くなさそうなんだよなぁ。それに俺が出たら大会荒らしになりかねん」
隼人は困ったように言った。
「まぁ確かに先生の強さは飛びぬけてるですからね」
夕映は隼人が出場を渋るのも理解できた。
「そんな、納得しちゃダメだって。夕映嬢ちゃん。ここはひとつ説得してくれ」
カモは一千万に目がくらんでいた。
「こら、金に目がくらむとロクなことがないぞ」
隼人がたしなめる。
夕映は少し考えた。
一分ほど考えて結論。カモは一応、自分の相談に乗ってくれたのだ。その礼をしても良いだろうと夕映は思った。
「でも、カモさんの肩を持つなら、そうですね。参加しても良いのではと思うです。先生の戦っている姿はとても格好良いですから」
そう言って、隼人に微笑みかけた。
これは、少なからず夕映の本音でもあった。
「ふ~む。格好良いか」
隼人は腕を組んだ。
夕映はダメ押しの言葉で説得する。
「はい。それに私だけでなく、のどかも格好良いと言ってたです」
「そうか。なるほど」
隼人は結論を出す。
「二人の可愛い女性に言われちゃ、出ないわけにはいかないか。良いだろう。ビシッと格好良いところ見せてやる」
親指立てて宣言した。
「よっしゃ。ナイスだ夕映嬢ちゃん。アニキ、早速エントリーしに行こうぜ。予選受け付けはまだやってる」
カモは嬉々とした声で言う。
「場所は龍宮神社か。ここから遠いが、まぁ走ったら五分くらいで着くだろう」
レストランの会計を済ませて外に出た。そのまま大通りを外れた場所へ移動する。
「突然だが、修行だ。夕映ついて来い」
「はい。頑張るです」
二人は軽くストレッチする。
「それじゃ、ゴールは龍宮神社だ。よーい、どん!」
二人は弾かれたように駆け出した。
隼人は風のように麻帆良の街を駆け抜ける。
夕映はそれに何とか追いつきながら走る。
五分後。
「とーちゃく」
予定通り、隼人は龍宮神社に着いた。
遅れること、一分後。夕映が来る。
「はぁ、はぁ、はぁ。食べた後にこれは少しキツかったです」
息が上がっていた。
「食ってすぐに戦闘に入ることだってある。その修行だ。でも一分遅れなら上出来だ」
隼人は夕映の頭を撫でて褒めた。
「あ、ありがとうございます」
夕映は息が上がって喜ぶ余裕はないが、それでも嬉しかった。
「アニキ、受付あっちだ。結構、並んでるぜ。急げ」
カモはもう一千万円しか頭になかった。
「はいはい。それじゃ行ってくる」
隼人は受付の列に並んだ。並んでいるとはいえ、窓口が多くあったので手続きはすぐに出来た。
受付を済ませて、夕映の所へ戻ってくる。
「お待たせ。なんかこれから予選会場に行かなきゃならんようだ。ここで一旦解散だな。今日は相談に乗ってくれて本当にありがとう」
隼人は頭を下げた。
「いえ、私で良ければいつでも相談に乗るです。武道祭、頑張ってください」
「おう。それじゃな」
二人は別れた。
夕映はカモとそのまま観客ブースに移動していった。
隼人は受付で言われた場所まで移動する。そこは龍宮神社の近くにある広場だった。
「凄い人数だ。一千万円の効果絶大だな」
隼人は改めてこの武道祭の規模を実感した。
「さて、知り合いはいるかな? 小太郎辺りなら来てそうだが」
見知った顔を探す。
「おーい。隼人」
小太郎の声が聞こえた。
聞こえた場所を探すと、いつもの学ランを着た小太郎が手を振っていた。
「おう、やっぱお前は参加してたか」
隼人は小太郎と合流した。
「当たり前や。修行の一環ってやつや」
「なるほど。それはいい考えかもな。最初は期待してなかったが、これだけ人がいれば何人かは、俺達レベルの使い手がいるかもな」
「おるも何も、あっちで楓姉ちゃんや、くーふぇ姉ちゃんいたで」
意外な人物の名前が出た。
「何? あいつらも参加してるのか」
「おう。こっちや」
小太郎の案内で向かうと、そこには楓達と一緒に、刹那、明日菜、真名もいた。
「あいやー。先生も来たアルか」
「これは隼人先生こんばんはでござる」
楓とくーふぇが挨拶する。
「ああ、まぁ色々あってな。ってか、ウチの武闘派が勢ぞろいか」
中々壮観だった。
「拙者は真名に頼まれて参加したでござる」
と楓が参加理由を言う。
「私は興味なかったんだが、会場が実家だからな。それに、せっかくの祭りだしな」
真名は隼人を見て、少しだけ照れくさそうに言った。
「ワタシは格闘大会と聞いて黙っていられなかったアル」
くーふぇは早くも燃えてきたのか、拳を打ち鳴らす。
「私は、超さんがやっぱり信用できないので。真意を確かめるために参加しました」
刹那は飛行船での一件が気になるようだった。
「んで、明日菜はどうしてだ?」
隼人は明日菜に話題を振る。
「そこの小太郎君と同じ。修行の一環よ。でも、なんかものすごい面子が集まってるから正直、棄権しようかと思ってるだけど」
予選会場の熱気に負けて、珍しく弱気だった。
「いや、本選はどうか知らんが、予選は結構いいところまで行くんじゃないか」
隼人は素直に分析した。
「そうかなぁ」
そんなやり取りをしていると、後ろから声がした。
「やぁ、なんだか賑やかだね」
「ふん、喧しくてかなわん」
タカミチとエヴァだった。
「おま、なんでここにいる!?」
来そうにない二人だったため、隼人は驚いた。
タカミチは苦笑しながら言った。
「仕事だよ。要注意人物の超鈴音が主催の格闘大会だからね。監視と調査のために参加だよ」
「ああ、なるほど。そういうことか」
隼人は納得した。
「エヴァちゃんもそうなの?」
明日菜は尋ねた。
「ああ、世界樹の告白騒ぎで、手の空いてる奴が私しかいなかったんだ。全く面倒この上ない」
エヴァは盛大にため息をついた。
「そういえば、学園長も解説者で参加しているよ」
タカミチは付け加える。
「おいおい。爺さん自ら監視かよ。どれだけ警戒してるんだ」
「いやそれが、超鈴音が直接、指名してきたんだよ」
「何? 指名?」
意図が読めず隼人は疑問を口にした。
「ああ。この大会を開くにあたって、学園側と交渉の席で指名してきた。堂々としたものだったよ。反対する教師陣に一歩も怯まず、交渉して見せた」
タカミチは思い出しながら言う。
「あれは、凄かった。敵に怯まず立ち向かう隼人と似ていた」
「俺と似ているか」
隼人は飛行船で言われたことを思い出した。
刹那も意味深に俯いた。
そうこうしていると、盛大なファンファーレが鳴った。
大きなモニターが起動する。
『ようこそ!! 麻帆良生徒及び、学生及び、ご来場の皆様!!』
モニターに映ったのは、遠くのステージでマイクを持っている朝倉和美だった。隣には、さよまでいる。
「あいつら、いつの間に」
隼人達関係者は唖然とした。
そんな隼人達をよそにアナウンスは進行していく。
『麻帆良武道祭へようこそ! 告知が当日だったにもかかわらず、これ程多くの方々に集まっていただき、誠にありがとうございます!』
深々とお辞儀する。
『優勝賞金一千万円! 自身の持てる力を尽くして勝ち取ってください!』
設置されたモニターに一千万円の札束が映し出された。
会場の熱がさらに上がる。
『では今大会主催者である、超鈴音様よりご挨拶があります』
ステージに美しいチャイナ服を着た超鈴音が現れた。
モニターが鈴音の顔にアップする。
『強者諸君。私が超鈴音ネ。私が望むは表の世界、裏の世界ひっくるめて学園最強が誰なのか! それだけヨ。それが見たいためにこの麻帆良武道祭を企画したネ』
鈴音は手を広げて高らかに言う。
『今、この場にいる強者諸君。その持てる力を存分に発揮してほしいために、ルールは簡単にしたネ』
そこでいったん区切る。
そして宣言した。
『ルールは簡単。飛び道具、および刃物の禁止。そして試合中の呪文詠唱の禁止。このルールを守ればその他一切の技の使用を許可しよう!!』
とんでもない爆弾発言だった。
「おいおい! マジで言ってるのか」
隼人は驚愕で開いた口が塞がらなかった。
「いやぁ、参ったな。ここまで大胆に宣言するとは」
タカミチは苦笑いした。
会場のあちこちでどよめきが起こる。事情を知る者は不敵に笑うか、呆れていた。そして知らぬ者は戸惑っていた。
『裏世界の強者諸君。安心してほしいネ。この大会は学園側に認められている。そして大会の解説者として近衛学園長も参加してもらっている。即ち、学園公認で存分に力を振るえるということヨ!』
堂々と言ってのける。
「おい、マジで公認なのか?」
隼人は隣にいるタカミチに尋ねた。
「あのルールは事前に通達されていたしね。反対意見は多数あったけど、学園長が面白がって容認したんだ。ただ、まぁここまで堂々と大々的に宣言するとは思わなかった」
タカミチは鈴音を見つめて言った。
鈴音の演説は続く。
『表世界の強者諸君。世界は限りなく広く強いということを知ってほしいネ。そしてそれを糧としてさらなる高みを目指してほしい!』
そしてさらに声高に告げた。
『強者諸君! ここに、麻帆良武道祭を開催する!』
大音量の勇ましい音楽が鳴り響き、会場のボルテージは最高潮に達した。
『それでは、ただいまより予選の説明をさせていただきます』
和美が予選の説明をし始めた。
要約すると次のような形で進められる。
戦闘形式はバトルロイヤル。参加者はAからHまでの各グループに分かれる。各グループから二名を選出。合計十六名が本選に出場できる。
ルールは飛び道具、刃物、呪文詠唱の禁止。勝敗は相手をフィールド場外まで出すか、気絶させて決める。
グループ分けは受付で渡したプレートに書いてある。グループの人数は二十名以上で分けられている。多いか少ないかは運しだい。運も実力の内とのこと。
隼人は説明を聞いて言う。
「なんというか、豪快な予選だな」
「隼人、おまえ何グループや?」
小太郎が訊いてくる。
隼人はプレートを見た。
「Bだな。お前は?」
「Eや。どうやら戦うには本選に出んといかんようやな」
「そうか。他のみんなはどうだ?」
隼人は他の仲間に訊く。
それぞれDだ、Cだ、Fだと告げていく。
「ほう。俺以外は二人一組で綺麗に散らばったな」
「偶然でしょうか?」
刹那が訝しむ。
「こんだけ人数いたらそういうこともあるだろう。渡すプレートはランダムだし。まぁそんなことよりも、せっかく存分に暴れられるようだし本選で会おうぜ」
隼人は不敵に笑う。
全員が頷く。
「それじゃ、いっちょ派手に行こうか」
隼人の号令で、それぞれのグループエリアに向かう。
麻帆良武道祭の予選が始まった。
つづく