麻帆良武道祭予選です。
今年もよろしくお願いします。
麻帆良武道祭予選がついに始まった。
和美のアナウンスで次々と試合のゴングが鳴っていく。
『さぁ、どんどん行きましょう。予選Dブロック開始です』
カーンとゴングが鳴る。
「フーッ、波ぁああああ」
裂帛の気合いと共にくーふぇが、ひしめき合う対戦者に拳法を叩きこんでいく。
『あーっと、さすが麻帆中・中武研所属の古菲選手! 次々と華麗な技を繰り出していく! 体格差二倍はあろう相手が中を舞うぅぅぅぅぅ!』
和美がノリノリ実況で伝える。
『古菲選手といえば、小柄な体格ながらゴリラ並みのパワーを秘めた格闘家! その貧相なボディにもかかわらず一部の麻帆良男子にはカルト的人気があると言います!』
「だいぶ失礼な説明アルね」
くーふぇは和美の紹介にしかめっ面で文句を言う。
「ハハハ。ノリノリだな」
同じブロックの真名が笑った。
その時、ドゴォっと何か鈍器で殴る音が聞こえた。
音のする方を見ると、剣道の胴を装着して木刀を持った男が居た。
『おお! あれは麻帆良学園剣道部部長の辻幸三選手です。強烈な木刀の一撃が対戦者を襲う!』
「ひ、卑怯だぞ! 辻! 木刀は反則だろう!」
「そうだ、そうだ」
「それでも部長か!」
周りから非難の声が上がる。
「バカめ! ルール上問題ないはずだ。剣道三倍段の法則! 誰が来ようと負けはしない! 一千万は俺のものだ」
そういって辻はくーふぇに襲い掛かった。
「菲が相手では容赦はできん。覚悟!」
木刀を振りかざして攻撃する。
だが、柳が風に揺れるようにヒラリとくーふぇは避けた。
避けると同時に足を踏みしめてくーふぇは辻に拳を見舞う。
「勢ッ」
気合いと共に繰り出された拳は防具を砕いて直撃。
「げぢょっ」
蛙が潰れた声を出して沈んだ。
『えー、武器を持っていても有利にはならない。本大会の趣旨をご理解いただけたでしょうか?』
和美が冷静に告げる。
観客、対戦者は若干引いた。
「さぁ、ワタシを倒す者はかかってくるアル」
不敵な笑みを浮かべてくーふぇは残りを掃討すべく立ち向かっていった。
盛り上がるDブロックだが、他のブロックも盛り上がっていた。
『おおっと。Cブロックでも動きがあるようです』
Cブロックには刹那と明日菜の二人が戦っていた。
「はああああっ」
「やあああっ」
明日菜はハマノツルギをハリセンモードにして、相手をぶっ叩いていく。
刹那は木刀を手にして切り伏せていく。
互いが互いの死角を補い、縦横無尽に敵を圧倒していた。
『なんということだ! 二人の少女が戦場を圧倒しています。蝶のように舞い蜂のように刺している!』
和美の言うとおり、次々と並み居る対戦者を倒していく。
『一体、あの二人は何者なんだぁああ』
大声で叫んで盛り上げる。
「何者って、大げさねぇ」
明日菜はハリセンを一閃しながら言った。
「まぁアレも仕事なんでしょう」
刹那も呆れつつ木刀を振るう。
「それにしてもなんだか、修学旅行の時を思い出さない?」
「はい。そうですね。でも、あの時よりは戦いやすいはずですよ」
「あれは苦戦したよね」
「はい。厄介な相手もいて苦労しました」
などと、戦いながら世間話をしていた。
そんなCブロックと同じような盛り上がりを見せているのが、Eブロックだった。
『なんと、分身の術だぁあああああ』
和美が目の前の光景を見て叫ぶ。
楓と小太郎の二人が分身の術で増えて対戦者を殴り飛ばしていた。
「くぅ! 四分身や」
小太郎はさらに増える。
「八分身でござる」
楓は小太郎の倍に増える。
「だったら十一分身や!」
「二十一分身でござる」
楓はさらっと増殖する。
「むむむ。それやったら速さで勝負や!」
小太郎の増えた分身が高速で周りの相手をぶっ飛ばしていく。
「なんの、これしき」
楓もかなりの速さで近くの相手を蹂躙していた。
『凄いですが、これは酷い!』
巻き込まれた対戦者の言葉を代弁するかのような実況だった。
Fブロック。そこは最早、勝負という状況ではなかった。
タカミチが悠々と歩き、対戦者は白目をむいて倒れていく。
『つ、次々と出場者が倒れていきます! 何が起こっているのでしょうか!』
「高畑、てめぇ、何し、た」
辛うじて意識のある男がタカミチに言う。
「悪いね。もう少し修行してきてくれ」
涼しい顔で告げた。
「何をチンタラしている。さっさと全員ぶっ飛ばさんか」
同じブロックのエヴァが文句を言った。
「いやぁ、あまり派手な技は危ないだろう」
「はぁ、もういい。私がやる」
エヴァは埒が明かないと悟り、右手を掲げた。
「止まれ。雑魚共」
パチンと指を鳴らすと、二十数名いた対戦者の動きが全て止まった。まるで何かに縛られたように全員動けない。
Fブロックに居る者は、何が起こったのか理解できない恐怖と驚愕の顔で埋め尽くされた。
「吹っ飛べ」
エヴァの宣誓と共に、対戦者は全てエリア外にぶっ飛んでいった。
『なななな、なんとぉ! 何が起こったのかサッパリわかりませんが、綺麗に吹き飛んだぁああ』
「ふん。喧しい」
不機嫌な顔でエヴァはため息をついた。
「みんな張り切ってるなぁ」
実況で伝えられる状況を聞きながら、隼人は首を縦に振った。
「煉城先生! 見てないで手伝ってください!」
高音・D・グッドマンが影の無詠唱魔法で対戦者を倒していた。
「しかし、高音さんが出場するとは思わなかった」
「任務です。高畑先生だけでは大変だから応援で来たんです」
「なるほど。やっぱり相当警戒されてるな」
「当然です!」
高音は八つ当たり気味に、近くの人間を吹っ飛ばす。
「さてと、ここもそろそろ決着をつけるか」
隼人は肩を回して言う。
「高音さん。これは修行だ。耐えてみろ」
「は?」
怪訝そうな顔をする高音をよそに、隼人は構える。
「があっ」
獣のような咆哮を放って、木刀を持って一回転する。
次の瞬間、猛烈な風が起こった。
「流派・花鳥風月 風の章【
すり鉢上にフィールドは抉れ、隼人はその中心に涼しげに立つ。
同じフィールドにいた対戦者達は遥か彼方に吹き飛んでいた。
「ありゃ、ちょっと強すぎたかな?」
やり過ぎたことに少し反省しつつ頭を掻く。
「当たり前でしょう!」
高音は周りの惨劇を見て、隼人を叩いた。
高音も烈風に巻き込まれたが何とか耐えていた。
「大分手加減したんだけど、やっぱり駄目だったか。反省」
隼人は手を合わせて対戦者に謝った。
★
そんなこんなで。全てのブロックの決着がついた。
『全ての予選が終了して、ついに本選に出場する十六名がそろいました!』
Aブロック「豪徳寺薫」「山下慶一」
Bブロック「煉城隼人」「高音・D・グッドマン」
Cブロック「桜咲刹那」「神楽坂明日菜」
Dブロック「古菲」「龍宮真名」
Eブロック「村上小太郎」「長瀬楓」
Fブロック「高畑・T・タカミチ」「エヴァンジェリン・AK・マクダウェル」
Gブロック「田中」「倉木高志」
Hブロック「中村静雄」「佐倉愛衣」
『以上の十六名で本選を戦ってもらいます。さて、本選は勝ち抜きのトーナメント戦です。AブロックとBブロックに分かれて行われ、それぞれのブロックの優勝者が決勝戦へと進めます。そして厳正な抽選の結果、組み合わせはこのようになりました』
トーナメント表がモニターに映し出された。
『まず、Aブロックです』
Aブロック第一試合「佐倉愛衣」対「村上小太郎」
Aブロック第二試合「煉城隼人」対「高畑・T・タカミチ」
Aブロック第三試合「エヴァンジェリン・AK・マクダウェル」対「山下慶一」
Aブロック第四試合「中村静雄」対「倉木高志」
『続いてBブロックです』
Bブロック第一試合「龍宮真名」対「長瀬楓」
Bブロック第二試合「古菲」対「豪徳寺薫」
Bブロック第三試合「神楽坂明日菜」対「桜咲刹那」
Bブロック第四試合「田中」対「高音・D・グッドマン」
『以上の組み合わせで本選を行います。なお、本選は明日の朝八時より、龍宮神社特設会場にて行います。選手の皆様は開始三十分前までに会場へお越しください』
和美が諸連絡を伝える。
『では、本日の予選はこれにて終了です。皆様、明日もよろしくお願いします』
閉会の宣言で、選手、観客は三々五々に去っていく。
隼人は渡されたトーナメント表のコピーを眺める。
「なんでこんな偏った組み合わせになったんだよ」
隼人は盛大にため息をついた。
「初戦でタカミチとか。勝ち進んだらエヴァとか。どーなってんだ」
頭を抱えてもだえる。
「いやぁ、楽しみだね。君と戦うのはあの大戦以来かな」
タカミチは楽しそうに言った。
「どうやら、いつぞやのリベンジが出来そうで私は満足だ。ククク。私と当たるまであまり血を流すなよ」
エヴァは獰猛な吸血鬼の顔で笑う。
「俺も京都でのリベンジ果たさせてもらうで! 覚悟せぇよ」
小太郎が隼人に指を突き出して宣言した。
「こうなったら全力全開で全員、倒してやる。そう簡単に勝てると思うなよ!」
隼人は腹をくくった。
そんなやり取りを明日菜達は傍で見ていた。
「うわー。あっち、なんだか盛り上がってるわね」
明日菜は火花を散らす隼人達を見て言った。
「こちらのブロックも強敵ぞろいです。気は抜けませんね」
刹那はトーナメント表を見て言う。
「強敵だが、ほぼ3―A関係者でござるな」
「あいやー。ウチのクラス凄いアル」
楓とくーふぇは驚いた。
「類は友を呼ぶってヤツじゃないか」
真名はしみじみと言う。
話し込んでいると、観客席で見ていた夕映とカモがやってきた。ハルナとのどかもいる。どうやら夕映と合流していたらしい。
「お疲れ様です。なんだが凄いことになったですね」
夕映は隼人にカモを渡しながら言う。
「全くだ。予選に来た連中が雑魚過ぎたんだ。そんな中にウチのクラスが参加したら、結果はこうなるだろうな」
「で、ウチのクラス以外の人はどうなの?」
ハルナは興味津々で質問した。
「予選通過した連中で一人を除いて、全員気が使えるようだ」
「一人? だれ?」
「田中ってやつだ。気力とか魔力とか全く感じなかった。たぶんロボットだ」
「ロボットですかー」
のどかが不思議そうに言った。
「ウチのクラスにも一人いるからな。驚きはしないが、どんな戦い方するのか興味はあるな」
隼人は明日の戦いが楽しみなのか嬉々とした表情で言った。
「さて、これからクラスの初日打ち上げだな。行こうぜ」
カモが隼人の肩に乗って促す。
全員が頷いて、打ち上げ会場まで向かった。
★
一行が打ち上げ会場の空き教室に着くと、もうすでに始まっていた。
「おお! 来たな! 武道派連中!」
裕奈がジュースのコップを掲げて言う。
「お疲れさま。クラスの方はどうだった?」
明日菜はクラスメイトに尋ねる。
「バッチリ、稼いだよ! これなら二日目もウハウハ」
「ここまで来たら、新記録狙ってみる?」
「いいねぇ。なんだかイケる気がするよ」
チア部三人組が嬉しそうに報告した。
「それより、煉城先生。武道祭の本選ご出場おめでとうございます」
あやかが駆け寄ってきて祝福する。
「ありがとう。小太郎も出場するし応援してやれよ」
隼人は小太郎を見る。
隼人達についてきた小太郎は、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「小太郎ちゃんも頑張ってね。明日は応援に行くからね」
千鶴が優しい声で言う。
「応援って。クラスのほうは、どないすんねん」
小太郎は当然の疑問を言った。
「大丈夫だよ。小太郎君。ザジさんが助っ人を呼んできてくれるんだって」
夏美が説明した。
「なに? ザジいいのか?」
隼人はその話を聞いて、ザジに確認する。
「大丈夫。任せてほしい」
相変わらず無表情だが、自信満々に親指を立てた。
「そうか。まぁクラスの運営は生徒に丸投げしてるし、その辺はうまく調整しろよ。あやか」
「はい。お任せください」
そして飲み物が配られる。
「先生、音頭お願い」
「おう。よーし、みんな。初日お疲れ様。明日も頑張ろう。乾杯!」
「「「「かんぱーい」」」」
全員がコップを打ち鳴らして宴会が始まる。
みんな、今日起こったことや、明日のことを楽しそうに話す。
隼人もその輪に交じってしばらく話し込んだ。
そして、宴会を途中で抜けることにした。
「あれ? 先生どこ行くの?」
気が付いた風香が訊いた。
「明日の調整だよ。正直どいつも、こいつも適当に戦って勝てる相手じゃないからな。今から出来ることはやっておきたいんだ」
「気合い入ってるです―」
史伽が楽しそうに言う。
「おまえら、俺がいないからって無茶するなよ。ちゃんと明日のために睡眠時間は確保すること。いいな」
「「「「はーい」」」」
素直に全員が返事した。
それに満足して、隼人は支度をする。
去り際、刹那に告げる。
「エヴァの別荘に行ってる」
「はい。私ももう少ししたら行きます」
刹那は了承する。
そのやり取りを聞いていた、明日菜も頷いた。
「それじゃーな。おやすみ」
隼人は挨拶してエヴァの別荘に向かった。
つづく