過去編の後。第一話へと繋がる物語です。
番外編なので本編とは繋がりは薄いです。
よろしくお願いします。
満開の桜が舞う山。鳥が歌い、春風が薫る。
京都の某所。関西呪術協会の総本山。近衛家。
ここに一人の鬼がいた。
かつて悪魔と戦い魔法界を救った英雄。鬼の名は煉城隼人。
悪魔と戦い、身も心も傷つき力尽きた男は広大な近衛家の縁側でぼーっと空を眺めている。
時折、冷め切った茶をすする。その姿にかつての覇気も力強さもない。だが、心の奥では業火が燻り続けていた。
隼人は立ち上がると、幽鬼のようにふらつきながら歩いていく。
これはそんな隼人が刹那と出会う物語。
紅蓮の鬼が白き翼の子と出会う物語。
★
春の気配が満ち溢れた季節。
それとは真逆の心に囚われた隼人は玄関に向かって歩いていく。
すれ違う住人は嫌そうな顔をするか、哀れみの顔をする。
戦場に名を轟かせた英雄が、見るも無残な様子になっている。
「どこかへ出かけるのですか?」
この近衛家の主。近衛詠春が声をかけた。
「ああ。ただじっとしていると体が焼けそうになる。動いていたほうが何ぼかマシだろう」
「まだ、心は燃えていますか」
詠春は心配するように言う。
「当たり前だ。お前の提案で京都に戻ってきたが、今すぐにでもヴェルガを探しにいきたい」
復讐の炎が目に灯る。
だが、次の瞬間には鎮火してしまう。
「だが、体が動かない。爆熱真紅の反動は思った以上に酷いらしい」
「反動だけではないでしょうけどね」
詠春は隼人の様子を見る。
張り詰めていた気力が燃え尽きて、灰の様になっていた。
「まぁ、外に出て自然の空気を吸えば精神も落ち着くでしょう。春の陽気は心を前向きにさせますからね」
にこやかに笑う。
「すぐに戻る」
隼人は一言だけ告げて出て行く。
詠春はその姿を見送ってため息をついた。
「やれやれ。何か打ち込めることがあれば良いのですが」
そのとき、遠くで泣き声が聞こえてくる。
「おやおや。木乃香が起きたかな?」
そういうと詠春は生まれたばかりの愛娘の下に向かった。
★
隼人は関西呪術協会の敷地を歩いていく。
動いていても去来することは一つ。宿敵への復讐心。
いつも腰に差していた刀は、今は無い。だが、道端に落ちている小枝を持って暴れたい気分に駆られる。
自分の内に潜む鬼の力が暴虐を要求する。
壊せ。暴れろ。破壊しろ。殺せ。殴れ。蹴れ。襲え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。戦え。闘え。
「ぐうううううううあああああああああああああ」
耐え切れなくなって近くにあった大木に拳を叩きつける。
大木が抉れて揺れる。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
胸を締め付けて荒い呼吸をする。
「くそっ。なんてもの生み出したんだ」
苦しそうに呻く。
隼人が得た力は自分でも制御できない修羅の力だった。復讐心が生み出したのか。はたまた究極技法【爆熱真紅】の影響か。
戦時中は気にならなかった。戦場を離れて平和な世界に来て、初めて思い知った。
時間の女神「クロノメモリ」にも指摘された鬼の力。手放す方法が分からず苦しんでいた。
ふらふらになりながら、千本鳥居の道に出る。
鳥居に背を預けて座る。
静かな場所だった。
そんな時。泣き声が聞こえた。
「なんだ? 木乃香か?」
友人の愛娘の泣き声かと思ったが、何かが違う。必死に助けを求めているようなそんな赤ん坊の泣き声だった。
隼人は泣き声を頼りに探す。
「あ、見つけた」
千本鳥居の袂に籠があった。急いで駆け寄る。
「この子は、もしや」
必死に泣く赤子。だが、普通の赤子ではなかった。小さな白い翼が生えている。
「天使? いや烏族か」
様子から見ると生まれたばかり。烏族は本来黒い翼を生やす。だがこの子は白い翼だった。
「白い翼。禁忌の子か」
隼人は全てを察した。烏族には稀に白い翼を持つ子が生まれる。その子は禁忌の子として殺されるらしい。おそらく、この子の両親は殺される前に捨てたのだ。柔らかな布に包まれているのが、せめてもの優しさなのだろうか。
隼人は赤子をそっと抱いた。
小さな命が必死に生きようとしている。
「大丈夫だ。大丈夫だ」
知らず知らずのうちに優しい言葉をかける。
生きようとする赤子に気を送る。修羅の力が赤子に送り込まれる。命がその力で輝きを増す。
破壊ではない。生み出すために力を使う。
赤子はやがて、落ち着いて笑顔になった。
隼人に向けられる笑顔。それは天上の甘露のように甘く、極楽のように穏やかで、どんなものより美しかった。
それを見た瞬間、猛り狂った鬼の力が引いていく。初めて平穏というものを感じた。
「おお、おおおお、おおおおおおおお」
隼人は滂沱の涙を流す。
力が抜けたように膝をつく。だが、赤子だけはしっかりと抱く。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
理由は分からない。だが、涙が溢れてくる。鬼の慟哭が空に響いた。
★
隼人が拾った赤子は、やはり烏族の禁忌の子だった。性別は女。名前は無い。どうやら父親が人間で母親が烏族のハーフだ。
籠には手紙が入れられていた。そこには捨てた経緯と、謝罪が書かれていた。
すやすやと寝入る赤子。
その様子を見ながら詠春は言う。
「さて、どうしましょうか。生きていることを知れば烏族はこの子を狙ってくる」
比較的、友好関係を結んでいる烏族と争うのは避けたかった。かといって見捨てることは出来なかった。
「俺が育てる」
隼人は言った。
詠春は一瞬、理解できなかった。
「はぁ!? ちょ、本気ですか!?」
「落ち着け。『刹那』が起きるだろう。あと、キャラが壊れているぞ」
隼人は迷惑そうな顔をする。
「え、刹那って。名前まで考えたんですか!? どういう風の吹き回しですか」
あまりの豹変振りに目の前にいるのが、本当に隼人か疑わしくなった。
「別に気まぐれでもない。クロノメモリから子育てを推奨された。そしてこの子が現れた。もはやこれは運命だろう」
隼人はこともなげに言った。
詠春は居ずまいを正す。
「しかし、父親になるのですか? 犬猫を飼うような話じゃないんですよ」
「当たり前だ。そんないい加減なことはしない。だが、この子は俺の娘としては育てない」
妙なことを言う。
「は? どういう意味ですか」
「俺はいずれヴェルガを倒すため旅に出ることにした。そんな俺が父親なんて出来るわけないだろう」
詠春は怒りを覚えた。
「ちょっと待った。育てると決めたのに、途中で投げ出すのですか。それはいい加減の極致でしょう!」
「この子は普通の子じゃない。生きていれば烏族から狙われ続ける。それが無くても彼女は亜人種とのハーフだ。これから迫害と戦わなければいけない。だから、一人でも生きていけるように、生きる力と戦う力を教え込む。そのために、父親としてではなく、かつて俺を育ててくれた師匠のように接する」
隼人は真剣に答える。
本気の本気。覚悟を決めた顔だった。
詠春は渋る。
「しかし、それでは、この子が可哀想です……」
「それでもそうするしかない。襲い来る烏族から守り抜き、戦う力を教え、彼女を育てるなんて芸当、他に出来る奴がいるか?」
隼人は詠春に問う。
終戦間もない今。実力者は軒並み入院中か、事後処理に追われて対処できない。また、詠春は呪術協会の長である。烏族との争いは避けなければならない。烏族全てを相手取り、戦いを教え、育てられる余裕のある人間は隼人しかいなかった。
観念したように詠春はため息をつく。
「分かりました。隼人が旅に出る時は、どこかへ預けられるように手配しましょう。それまではここで育てましょう」
そして尋ねる。
「ところで、名前の意味は何なんですか?」
隼人は微笑んだ。
「これからこの子は過酷な人生を歩むかもしれない。それでも一瞬、一瞬を大切にして、生き抜いて欲しい。その積み重ねが命を輝かす力となる。そんな思いで『刹那』と名づけた。苗字はそうだな……」
外を見る。桜が舞い、風が薫る。
「師匠のように強く優しい女性に育つように『桜咲』姓にしよう」
隼人は幸せそうに眠る彼女を見て告げる。
「この子は『桜咲刹那』だ。強く、優しく、美しく。過酷でも、きっと素敵な人生を歩めるように俺が命を懸けて導く」
そう宣言した隼人の目は紅蓮に燃え盛る。
しかし、それは復讐の炎ではなく、命を守る真紅の炎だった。
★
こうして、隼人は刹那を育て始めた。幸いにして多くの人々が集まる近衛家。加えて子育ての真っ只中。必要なものは揃っていた。
刹那は、同じく生まれたばかりの木乃香と一緒にすくすくと成長していく。
烏族の襲来は予想よりも早かったが、そこは伝説の英雄。刺客など一睨みで追い返し、集団であっても子守唄を歌いながら退ける。
さすがに魔界ごと悪魔を滅ぼした英雄が相手では分が悪い。そう思い至った烏族が話し合いによる事態収拾を申し出た。
隼人は会談の場に刹那を抱っこして、手には武器ではなく彼女をあやすための玩具を持って向かった。
伝説の紅蓮鬼が子育てスタイルで現れたので烏族の幹部は面を食らった。
「で、話し合いとは何だ?」
驚く連中を意に介せず、隼人は言う。
隼人が抱っこしている刹那は可愛らしい寝息を立てて寝ている。
「あ、ああ。我々の要求は一つだ。彼女を引き渡して欲しい」
烏族の代表が告げる。
「断る」
きっぱりと拒絶する。
「もちろん。悪いようにはしない。禁忌の子だが処刑せず、幽閉で済ます。烏族に厄災をもたらす禁忌の子を世にのさばらせておくと、我々の民が不安がるのだ。どうかお願いする」
代表は深々と頭を下げる。
隼人は呆れた。
「お前ら。俺に喧嘩売ってるな。彼女を幽閉だと? それで俺が納得すると思うか?」
殺気を発する。烏族は震え上がった。当然、刹那も感じているが、安心したように眠っている。
代表は震えながら言う。
「し、しかし。このままでは我らは襲い続ける。それは彼女のためにはならんだろう」
「だったら、烏族を絶滅させるだけだ」
隼人は鬼の目で告げた。
烏族の若い男が立ち上がる。
「ふざけるな! 我々は最大の譲歩をしたのだぞ。それを絶滅だと? 英雄が聞いて呆れる。ただの鬼ではないか!」
大声だったので刹那が目を覚まして泣いた。
「おお、よしよし。怖いお兄ちゃんだねぇ」
あやして落ち着かせる。
「俺は戦いから退いて子育て中だが、元は紅蓮鬼と呼ばれる狂戦士だぞ。この子を守るためなら再び鬼となって、この子に降りかかる厄災全てを滅ぼす」
隼人は若者を睨む。
若者はたじろいで座った。
代表は落ち着いた声で言う。
「どうか、落ち着かれよ。そもそも烏族を絶滅させれば非難されるのは貴方ではないか」
人種を一つ滅ぼすのだ。隼人の発言はさすがに常軌を逸していた。
だが、隼人は言う。
「どうかな? 捨てられた天涯孤独の女の子を守っている俺と、総出で殺そうとしているアホな一族。どちらの言い分が聞き入れられるかな? 言っておくが、お前らの常識なんて、この世で通用しないぞ」
それは真実だった。世界の覇者は人間。亜人の主張など無視しようと思えば出来るのだ。
ましてや世界を救った英雄が言えば、簡単に滅ぼされる。
たとえ世界が静観しても、英雄の一声で加勢する者は大勢いるだろう。
その場にいる烏族全員の顔に冷たい汗が流れる。
「貴様達、烏族に告げる。今すぐ、刹那から手を引け。今後、刹那を襲う、もしくはそれに類推すると俺が判断した場合、容赦なく貴様らを滅ぼす。これは脅しではない。宣告だ」
隼人の後ろに、紅蓮の鬼が牙を剥いて顕現する。戦場を焼き尽くす地獄の鬼の出現に烏族は死を覚悟する。
そんな只ならぬ緊張の中に、笑い声がした。
刹那が鬼を見て笑っている。それは本能か。はたまた偶然か。自分を守る鬼を見て天使の微笑みを浮かべていた。
隼人は慈愛の目で刹那の頭を撫でる。
場の主導権はもはや烏族には無い。答えは決まっていた。
「良かろう。我ら烏族はこの件から手を引く」
代表が搾り出すように了承した。
「良い返事が聞けて何よりだ。さて、ついでに確認したいことがある。刹那の生みの親は生きているのか?」
鬼が唸る。
答えなければ殺す。そういう威嚇の唸りだった。
代表は慎重に答えた。
「烏族の女をたぶらかした父親は処刑した。母親は捕らえて幽閉している」
「そうか。父親は死んだか。ならば生きている母親に、伝言と手紙を届けて欲しい」
隼人は懐から手紙を出して、代表の下へ投げた。
手紙には刹那の写真と刹那を育てるという隼人の決意が書かれていた。
「伝言は『この子の名前は刹那。彼女は世界最強の剣士が命を懸けて守ります』だ」
若者が怒り顔で手紙を拾って叫ぶ。
「誰がそのようなことをするか! 手紙など破り捨ててやる!」
その瞬間、若者が苦しみだす。のどを掻き毟るようにもがき、倒れて気絶した。
その場にいる烏族が慌てる。
「ふん。命拾いしたな。破っていたら死んでいた」
「な、何をした!」
怯えるように隼人を見た。
「昨日、貴様達、烏族に呪いをかけた。貴様達が三日以内に伝言と手紙を届けなければ、烏族は滅ぶ」
衝撃の事実。烏族たちは言葉を失った。
「約束が違うではないか!」
代表が叫ぶ。
隼人は鬼の目で睨む。
「それはそれ。これはこれだ。刹那から両親を奪った貴様達を俺は許さない。悲しみを背負わせた貴様達を俺は絶対に許さない」
悪魔に両親を殺され、育ての師匠も殺された隼人にとって、烏族の所業は許せなかった。
その場に灼熱の殺気、怒気、怨念が渦巻く。
「覚えておけ。貴様達は地獄の鬼を敵に回した。これより先、俺の逆鱗に触れた瞬間、貴様達は滅ぶ。ゆめゆめ忘れるな」
地獄よりもなお深き声で告げて、隼人は立ち上がりその場を去る。
残された烏族は恐怖した。やはり禁忌の子は厄災を烏族にもたらした。
だが、その厄災を招き入れたのは他でもない自分達だった。
後に、この会談は烏族の間で教訓として語られることになった。
曰く、伝承を恐れず冷静に対処しなければ、その伝承は現実となる。
★
そして、刹那は愛情をいっぱいに受けて成長していった。
笑った日、泣いた日、怒った日、青空の日、雨の日、雪の日。隼人が名前に込めた願いを体現するように、一日、一日を大切にして成長する。
そんな幸せな日々が続き、やがて、別れの日が来る。
それは刹那が九歳の時だった。
桜が舞う四月。近衛家の門前。
「嫌や! ウチ隼人と別れたくない!」
刹那は泣きじゃくった。
同い年の木乃香も泣いていた。
「私も嫌や。なんでなん。隼人兄ぃ」
二人は隼人にしがみついて、わんわん泣いている。
旅姿の隼人は困ったような顔になった。
「本当にすまない。俺はどうしても行かねばならないんだ」
しゃがんで二人を抱きしめる。
「これはお前達のためでもある。いいか、この世界にはとんでもない悪い奴がいる。俺はそいつを倒すためにここを出て行かなきゃならないんだ」
優しく二人に語りかける。
「悪い奴?」
刹那が尋ねる。
「ああ、大勢の人を不幸にした悪魔だ。俺は英雄として、剣士として、奴を倒さないとダメなんだ」
「だったら、ウチも行く!」
刹那は叫ぶ。
「せっちゃん」
木乃香は刹那を見た。
「隼人に教えてもらった剣術で、ウチも悪い奴倒す!」
涙を拭いて、勇ましい目で隼人に言う。
隼人はその姿に頼もしさを覚えた。
「そうか。でもダメだ。お前はまだ弱い」
すっぱりと言い放った。
「弱くても行く!」
「ダメだ。付いてくるな」
少しだけきつく言う。
その言葉で刹那はまた泣きそうになる。
隼人は気配を優しくして言った。
「でも、お前が誰かを守れるくらいに強くなったら良いだろう」
刹那の頭を撫でた。
「ウチが強くなったら?」
「ああ、お前は強くなれる。だから、これを渡そう」
そういうと、隼人は懐から分厚いノートを取り出した。
「これは刹那が強くなるために俺が作ったノートだ。強くなる秘訣や訓練方法が書いてある。これをよく読んで鍛えろ」
ノートを刹那の手に握らせる。
刹那はそのノートを見て、そして隼人に向かって頷いた。
「ウチ、強くなる。これ読んで隼人みたいに!」
「私も! 強うなる!」
木乃香も宣言した。
「ああ。強くなれ。刹那。木乃香。お前達なら出来る」
隼人は力強く笑う。
「そして、お前達が誰かを守れるくらいに強くなったら、俺はお前達の元に帰ってこよう」
「ホント?」
刹那と木乃香の顔が明るくなる。
「ああ。その時は、どれだけ強くなったか確かめるために勝負しよう。約束だ」
隼人は小指を立てる。
刹那と木乃香も小指を立てて、隼人の指に絡めた。
「「「約束。ゆびきりげんまーん、ウソついたら針千本のーます。指切った!」」」
三人は硬い約束をする。
「さて、それじゃ行ってくる。詠春、刹那をよろしく頼む」
隼人達を見守っていた詠春に告げる。
「はい。手筈通りに、神鳴流宗家の青山家に預けます」
詠春は頷いて言った。
「刹那。木乃香。行ってきます」
隼人は二人に言う。
「い、いって、らっ、しゃい!」
「元気でね!」
二人は再び泣き出すが、その顔は明るかった。
「ああ、お前達も元気でな」
隼人は踵を返すと振り向かず、去っていく。
「ウチ、ちゃんと強くなるから! 約束だよー!」
刹那は千切れんばかりに手を振って見送る。
隼人もそれに答えて、後ろ手を振って駆け出して行った。
★
それから五年。
港からフェリーで十五分。太平洋上に浮かぶ島「麻帆良島」
学生たちが集う学園島。幼小中高大とあらゆる教育機関がその麻帆良島にはある。
そんな麻帆良島のフェリー乗り場に一人の男が立っていた。
男の名は「煉城隼人」。背丈から中高生ぐらいだろうか。髪は赤みがかっている。腰には日本刀が差してあった。
「ここが麻帆良か。でかいな、オイ」
そう感想を漏らすと地図を確認して、駅に向かう。
ここから始まるのは、隼人が刹那と再び出会う物語。
紅蓮の鬼が三十一人の美少女と再び前に進む物語。