魔法教師はやト!   作:沖彦也

8 / 55
修学旅行編。一日目です。
宜しくお願いします。


第八話「修学旅行で蛙地獄!? いざ京都へ!」

 修学旅行が三日に差し迫ったある日。

 

 隼人は明日菜、木乃香、のどかを空き教室に呼び出した。

 

「お~い。話ってなに?」

 

 明日菜たちはドアを開ける。

 

 そこにはカモ、エヴァと茶々丸、そして出席番号十五番「桜咲 刹那」がいた。

 

「え? なんでせっちゃんがおるん?」

 

 木乃香は驚いた。

 

「とりあえず入って、適当に座ってくれ」

 

 カモが招き入れる。

 

 明日菜たちは近くにあった椅子に座った。

 

「で、なんの用?」

 

 明日菜が聞く。

 

 隼人が神妙な顔で言った。

 

「実はな、厄介ごとが舞い込んできたから手伝ってくれ」

 

「厄介ごとですか?」

 

 のどかが首をかしげる。

 

 腕組みをしていたエヴァがうなずく。

 

「そうだ。私の修学旅行のために手伝え」

 

「修学旅行に問題でもあるんですか?」

 

「ふん。愚か者共が修学旅行を台無しにしようとしている」

 

 そこから隼人が説明を引き継いだ。

 

「この間、学園長から頼まれて……」

 

 隼人は事の詳細を話した。

 

「……ということで手伝ってほしい」

 

 詳細を聞き、明日菜はニヤッと笑う。

 

「ふ~ん。素直に私たちに頼むんだ」

 

「まあな。エヴァんときに学習したからな。今回は最初から素直に頼むことにしたんだよ」

 

 素直に自分の非を認めた隼人に、満足したのかにっこり笑って承諾した。

 

「まぁ素直になったんなら、しょうがないから手伝ってあげる」

 

「わ、私も手伝いますー」

 

 のどかも承諾した。

 

「さすがは兄貴のパートナー。ありがたいぜ」

 

 カモが軽く感動に震える。

 

「木乃香はどうだ?」

 

 話を振られて、刹那をじっと見ていた木乃香はっとわれに返った。

 

「え、ああ。うちも手伝うよ」

 

 隼人は頭を下げる。

 

「ありがとう。手が足りなかったんでな」

 

 明日菜が、刹那を見て疑問を口にした。

 

「で、なんで桜咲さんまでいるの?」

 

「ああ。刹那は昔からのなじみでな。今回手伝ってもらうことにした」

 

 今まで、窓から外を眺めていた刹那が一礼する。

 

「どうも」

 

 そっけない返事ですぐに視線を窓に戻した。

 

 隼人は寂しそうな顔をしたが、すぐに気を取り直して言う。

 

「こう見えて、刹那は『京都神鳴流』剣士だ。ま、同じクラスメイトだし仲良くしてやってくれ」

 

 明日菜たちはうなずいた。

 

「オーケー任せて」

 

「はい。わかりました」

 

 木乃香の返事がない。

 

「木乃香、どうしたの?」

 

 明日菜が不思議そうに聞いてくる。

 

「え? あ、ごめんな何の話やっけ?」

 

「もうしっかりしてよ。桜咲さんも仲間だから仲良くって話」

 

 木乃香は勢いよくうなずいた。

 

「そりゃ、もちろん仲良くするえ」

 

 笑って答えた。

 

 隼人は木乃香の様子が気になったが先に話を進めた。

 

「まぁ、手伝いとはいってもやることは俺のサポートだ。でも、万が一の場合に備えて、コレを渡しておく」

 

 懐から取り出したのは三枚のカードだった。

 

「なにそれ?」

 

 明日菜が疑問を口にする。

 

「仮契約カード(パクティオーカード)っすよ。姐さん」

 

 カモが言った。

 

「仮契約カードですかぁ」

 

 まじまじとのどかが見る。

 

「この絵、可愛ええな」

 

 木乃香が感想を言った

 

 そのカードにはそれぞれ契約者の絵が描かれていた。明日菜は剣士の格好。のどかは大量の本が浮いている中心に自分がいる絵だ。木乃香は陰陽師の格好をしている。

 

「このカードのコピーをお前たちに渡す。これさえあれば、まぁある程度の状況には対応できる」

 

 三人にコピーカードを渡す。

 

「で、これで何が出来るの?」

 

 カードをしげしげと見る明日菜。

 

「【アデアット】って言ってみろ」

 

「ん? 【アデアット】」

 

 言ってみた。

 

 すると、カードが光ってスチール製のハリセンが現われた。

 

「なにこれ!?」

 

「わぁ凄いです」

 

「あや~。すごいなぁ」

 

 三人は口々に驚く。

 

「これが仮契約カードの最大の特徴、アーティファクトだ」

 

「うちもやってみよ」

 

 木乃香がカードをかざす。

 

「【アデアット】」

 

 光って現われたのは二つの扇だった。

 

「なんやこれ? しょぼいなぁ」

 

「文句を言うな」

 

「わ、私もやってみよう」

 

 のどかがカードをかざす。

 

「えっと、【アデアット】」

 

 カードが光って、一冊の本が出現した。

 

「本が出てきました~」

 

「さすが本屋ちゃんなだけあるわね」

 

 明日菜が妙に感心した。

 

 隼人が説明をする。

 

「アーティファクトはいわゆる魔法の道具だ。それぞれに特殊な能力が付けられている」

 

「へぇ。どんな能力なの?」

 

「例えば、木乃香の扇は『コチノヒオウギ』『ハエノスエヒロ』と言ってどんな怪我や病気も治してしまう最高の治癒具だ」

 

「うちのこの扇そんな凄いんや」

 

「ただし、莫大な魔力を必要とするから、連続使用は不可能だ。オマケに今のお前の実力だと負ってから三分たった怪我は治せないだろうな」

 

「う~ん。三分以内かぁ」

 

 少し残念そうに言う。

 

「まぁそうそう便利な能力はないってこった」

 

「私の本はなんですか?」

 

 これはエヴァが説明した。

 

「それは、『いどの絵日記』という本だ。対象者の名前を知っていれば、その本に対象者が考えていることが書き込まれて読めるようになる。つまり、読心術の本だ」

 

「心を読めるんですか……」

 

 不安そうな顔をする。

 

「気をつけろよ。それを悪用したりすると自分が不幸になるとされている。人の心を読むには相応の覚悟がいるってことだ」

 

 それを聞いて一層、不安な顔をする。

 

 隼人が笑いながら言った。

 

「大丈夫だ。お前に与えられたということは、それを使う資格があるということだ。それに今の実力だと、閉心術の心得があるヤツには効果が無い」

 

「はい。慎重に使います」

 

 のどかは本を抱きしめた。

 

「ねぇ私のハリセンは?」

 

 明日菜はワクワクして聞いてくる。

 

 隼人は首をかしげた。

 

「ハリセンなんて知らん」

 

 エヴァも首を振った。

 

「そんなアホみたいなアーティファクト知らん」

 

 明日菜はガッカリする。

 

「そんなぁ」

 

 カモがフォローするように言った。

 

「まぁまぁ姐さん。このアーティファクトの名前が『ハマノツルギ』だからきっと退魔の力があるんすよ」

 

「そうかなぁ?」

 

 ハリセンを見つめる。

 

「とにかく、そのほかにも色々と便利機能があるから説明書渡しておくよ」

 

 隼人が説明書を渡した。

 

「それじゃ、修学旅行のときは頼むぞ。みんな」

 

 隼人が全員を見わたした。

 

「オーケー任せて」

 

「頑張るえ」

 

「頑張ります」

 

「了解しました」

 

「ふん。修学旅行のためだ。やってやるさ」

 

「Yes sir.」

 

 それぞれが了承し、今日の集まりは解散した。

 

★

 

 明日菜たちが帰った後、エヴァと茶々丸、隼人は教室に残っていた。

 

 エヴァは窓の外を眺めている。

 

「明日菜のアーティファクトの力、知ってるんじゃないのか?」

 

 エヴァが聞いてきた。

 

 隼人はうなずく。

 

「ある程度なら予想はつく。お前もある程度なら予想しているだろ?」

 

「モチロンだ。答え合わせしてみようか」

 

 ニッと笑う。

 

 隼人とエヴァは互いに顔を見合わせる。

 

 そして同時に言った。

 

「「おそらく【魔法完全無効化(マジックキャンセル)】だ」」

 

 お互いに笑う。

 

「しかし、それは明日菜自身の力で、『ハマノツルギ』はそれを増幅させるものだ」

 

 隼人が付け加える。

 

「まぁあのバカ本人が自覚してないからハリセンになったんだろうな」

 

 エヴァが結論付けた。

 

「それにしても隼人。いつ気がついたんだ?」

 

「下着ドロのとき、明日菜の部屋のタンスを漁ってたら見つかって、蹴り飛ばされた。その時に障壁を砕かれてな。それで気がついた」

 

「なにやってんだ。ロリコン」

 

「うるせぇ。犯人探しで仕方なかったんだ。そっちこそ、いつ気がついたんだ?」

 

「この間の戦いのとき、【凍る世界】を撃とうとしたら蹴り飛ばされただろ。あの時、障壁を貫通させられた。それでピンと来た」

 

「ああ、あの時か」

 

 隼人はエヴァが蹴り飛ばされた時のことを思い出した。

 

「しかしなんであの馬鹿がレアな能力をもってるんだろうな」

 

 エヴァは首をかしげる。

 

 隼人はあごに手を当てて考えた。

 

「家系によるものなのか、はたまた偶然か。どっちにしろ、扱いを間違えれば危険だ。しばらく黙っていた方が良いかもな」

 

「ま、大事な修学旅行だ。厄介事は増やさない方が良い」

 

 互いに納得して教室を出て行った。

 

★

 

 修学旅行当日。フェリーで麻帆良島を出て東京駅へ。

 

 東京駅新幹線乗り場。

 

 3-Aはそこに集合していた。

 

 ちなみに3-A以外には3D、3Hが京都に行く。

 

 それぞれの担任に加えて引率の先生は新田先生と瀬流彦先生、そしてしずな先生だ。

 

 今日のスケジュールは、東京駅から新幹線に乗り、京都まで行く。京都についてから清水寺を見学。その後、旅館に行く。

 

 二日目は奈良を班別行動で観光。

 

 三日目と四日目は京都を自由に観光。

 

 五日目に麻帆良へと帰る。

 

 四泊五日の修学旅行だ。

 

「いや~昨日はワクワクして眠れなかったよ」

 

「このクラスで行くとにぎやかになりそうね」

 

「ところで、なんで枕もってるの?」

 

「枕がないと眠れない性質なので~」

 

「私もです」

 

「お、仲間だねぇ」

 

 3-Aの面々は口々に喋りあっている。

 

「おーし。各班点呼を取ったら、ホームへ行け」

 

 隼人が指示を出す。

 

 ホームへ向かい、新幹線に乗る。

 

 入り口付近で隼人は人数を確認する。

 

 3-A、一斑メンバーは史伽、桜子、釘宮、柿崎、風香だ。

 

 柿崎はやや困ったような顔をする。

 

「この双子が一緒だとうるさそー」

 

 釘宮が肩に手を回した。

 

「いいじゃん。にぎやかそうで」

 

 史伽が姉を呼ぶ。

 

「風香ー。そっちは別のクラスだよー」

 

「ありゃ、間違えちゃったですー」

 

 慌ててもどってきた。

 

「センセ。着いたら一緒に回ろうよ」

 

 桜子が誘ってくる。

 

「団体行動だから一緒だぞ」

 

 隼人はそう答えた。

 

 次に入ってきたのは、二班だ。

 

 メンバーはくーふぇ、超、葉加瀬、楓、五月、エヴァ、茶々丸だ。

 

 楓と葉加瀬は肉まんを食べながらのんびりと乗ってきた。

 

 五月は他のクラスに肉まんを売っている。

 

「どこでも肉まん売ってるんだな」

 

 エヴァは呆れた。

 

 超とくーふぇが隼人に寄ってくる。

 

「先生。引率大変ネ。良かったらこの肉まん食うヨロシ」

 

「超包子の肉まん美味しいアル」

 

 ホカホカの肉まんを差し出した。

 

「お、サンキュ」

 

 もふもふ食べていると三班が入ってきた。

 

 メンバーはあやか、千鶴、夏美、千雨、和美、ザジだ。

 

 あやかが隼人の手を取る

 

「先生。グリーン車を貸切にしたのでそちらでおくつろぎください」

 

「気持ちはありがたいが、俺はまだ仕事中だ。てか、貸しきるなよ」

 

 隼人はその手をほどく。

 

「あらあら、ふられちゃったわね」

 

「う~ん。残念。いい写真が撮れるかと思ったんだけどな」

 

 千鶴と和美が冷やかす。

 

「さっさと乗ろうぜ」

 

「ちづねぇ後ろつっかえてるよ~」

 

 千雨と夏美は前の三人をせかした。

 

 次に入ってきたのはまき絵、裕奈、亜子、真名、アキラ、美空の四班だ。

 

「大丈夫か?」

 

「乗る前から乗り物酔いって大丈夫?」

 

 アキラと真名が亜子の背中をさする。

 

「ちゃうねん。肉まん食べ過ぎてん」

 

 気持ち悪そうに答えた。

 

「食べ過ぎるのは分るかも」

 

 美空つぶやく。

 

「お水買っとく?」

 

 裕奈が自販機を指す。

 

「センセー。自由行動のとき一緒に回ろうよ」

 

 まき絵が誘ってくる。

 

「まき絵さん! ぬけがけ……いえ、先生はお仕事がお忙しいんです。邪魔しちゃいけません」

 

 あやかが戻ってきて、たしなめた。

 

 最後に入ってきたのは明日菜、木乃香、のどか、ハルナ、夕映、刹那の五班だ。

 

「のどか、先生を誘うチャンスだよ」

 

「がんばるです」

 

「う、うん」

 

 図書館三人組はなにやら相談している。

 

「隼人、昨日はよう眠れた?」

 

「隼人、おはよー」

 

「先生。おはようございます」

 

 木乃香と明日菜と刹那は隼人に挨拶する。

 

「おう。おはよう」

 

 隼人は挨拶を返す。

 

 名簿を確認して、全員乗り込んだことを確認。

 

「え~と、欠席は相坂 さよだけか。まぁあの子は仕方ないな」

 

 そういうと、隼人も座席へ移動した。

 

 わいわいと賑やかな車内。

 

 通路に立って隼人は言った。

 

「というわけで、これから京都に行く。四泊五日の旅行だ。自由行動の日を多く取っているが、その分、怪我や迷子、様々なトラブルに見舞われるかもしれん。各自気をつけろよ。なにか起こった後じゃ遅いからな」

 

 はーい。と元気よく返事する。

 

「だから幼(ry」

 

「アフォばっか(ry」

 

 いつもどおり千雨と夕映がつっこんだ。

 

★

 

 電車内。

 

「裕奈がんばれ」

 

「あと少しや」

 

「おっ菓子! おっ菓子」

 

「パル。負けるなー」

 

「まだ行けるです」

 

「ハルナ頑張って」

 

 皆、わいわいとにぎやかにカードゲームの応援している

 

「私のターン。山の土地を追加して全てタップ。手札からソーサリーカード『分解』をプレイ。パルに7点のダメージ!」

 

 裕奈が宣言。

 

「うわちゃー。負けたー」

 

 ハルナは手札を放り出した。

 

「ふっふっふ。この『山蛙の地響き』が地味に利いていたからね~。景品のお菓子ゲット!」

 

「くぅ~悔しいなぁ」

 

 ガサゴソとカバンを漁ってお菓子を探す。

 

 いままでじっと見ていた隼人は裕奈に聞いてみた。

 

「なになってんだ?」

 

「マジック・ザ・ギャザリングだよ。知らない?」

 

「いや、知ってるけど。妙にマニアックだなぁと思って」

 

「え~そうかなぁ。遊戯王より魔法っぽくて面白いよ」

 

「ん~。まぁそうだけどな」

 

 納得いかないように頬を掻く。

 

 史伽がカードの束を渡してきた。

 

「先生もやってみれば?」

 

 すぐに皆、乗ってくる。

 

「おお。今度は先生と裕奈の勝負か!?」

 

「先生にチョコレート三つ!!」

 

「裕奈にメントス三粒!!」

 

 すぐにトトカルチョが始まる。

 

「俺と勝負だと? くっくっく」

 

 隼人は妙に勝ち誇ったように笑い、ポケットに手を突っ込んだ。

 

 そして取り出したのはデッキケース。

 

「この俺にマジックで勝負を挑むとは笑止千万。フルボッコしてやる」

 

 バーンとデッキを突き出した。

 

「むむむ。負けないよ」

 

 裕奈は不敵な笑みを返した。

 

 盛り上がる中、ハルナはまだお菓子を探していた。

 

「あれ~? おかしいな。確かにここにあったんだけどな」

 

「ハルナ。これじゃないですか?」

 

 夕映が通路に落ちていたチョコレート菓子の箱を渡した。

 

「ああそうそう。これこれ」

 

 受け取って箱の蓋を開ける。

 

「って、え?」

 

「ゲコ」

 

 箱の中に蛙がいた。

 

「き、きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 ハルナは悲鳴を上げる。

 

 ハルナの箱からだけではなかった。

 

 あちこちから蛙が湧き出てきた。

 

カバンの中から、水筒の蓋から、背もたれの隙間から、天井から。

 

 ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ

 

「うわわわわ」

 

「きゃああああ。蛙っ」

 

「蛙は苦手でござるるるるるるるるる~。きゅう」

 

「ひやあああああ」

 

 阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 

「アニキ! 襲撃か!?」

 

「ああ。蛙の式神だ。なんという嫌がらせだ」

 

 明日菜と木乃香とのどかと刹那は真っ先に動いて蛙を回収する。

 

「先生。楓ネェが気絶したぁ」

 

「しずなせんせいも気絶してるよ」

 

 双子が泣きそうになってる。

 

「おいおい。楓が気絶したのか。保険委員は、二人を介抱しろ」

 

 蛙を拾いながら保険委員の亜子に言った。

 

「ダメだよ。亜子も気絶してる」

 

「なんだってぇ。ああ、もう! だれでもいいから頼む」

 

「それと、残りは蛙を拾え!」

 

 矢継ぎ早に指示を出す。

 

 あちこち跳ぶ蛙をつかまえて手近な袋に突っ込んでいく。

 

 カモが耳元で囁いた。

 

「アニキ。この混乱に乗じて親書を奪いにくるかもしれないぜ」

 

「わかってる。だから懐にこうしてちゃんと入れてある」

 

 そう言って懐から親書を取り出す。

 

 すると高速で一羽の燕が飛んできた。

 

「ん?」

 

 あっというまに親書を奪って飛んでいった。

 

「げええええええええええ」

 

「やば、俺としたことが」

 

 慌てて追いかける。

 

 しかし燕のほうが速い。

 

「待ちやがれ」

 

 無詠唱【魔法の射手】を放とうとする。

 

「先生。私が行きます」

 

 刹那が脇から走り抜ける。

 

 すでに燕は入り口付近に居た。

 

 彼女は肩にかけていた筒から野太刀「夕凪」を引き出す。

 

「はっ」

 

 高速の斬撃で一閃。

 

 燕の式神を切り裂いた。

 

 嘴にくわえていた親書がひらりと落ちる。

 

「もう少し、気をつけてください」

 

 刹那は拾って隼人に渡した。

 

「いや~スマン、スマン」

 

 受け取って礼を言う。

 

「隼人、せっちゃん」

 

 木乃香が駆け寄ってくる。

 

「あ、ではこれで」

 

 刹那は何か言いたそうだったが、木乃香が近寄ってくると、そそくさと行ってしまった。

 

「なんだ? 何かあったのか?」

 

 隼人は寄ってきた木乃香に聞いた。

 

「わからへん。最近、せっちゃんがうちを避けねん」

 

「ふむ。昔はあんなに仲良かったんだがな。俺のせいかもな」

 

 悲しそうな顔で呟いた。

 

「せんせ~。この蛙どうすんの?」

 

「蛙、全て捕まえたヨ」

 

 まき絵とくーふぇが蛙の入った袋を掲げた。

 

「あ~、それはこっちに渡してくれ。俺が処分するから」

 

 袋を受け取りに行こうとする。

 

「あ、待って。隼人」

 

 木乃香が呼び止める。

 

「どうした?」

 

「うちが聞いても逃げてまうから、何で逃げんのか隼人が聞いてくれへん?」

 

「わかった。機会を見て聞いとくよ」

 

 そういうと、蛙の処理に向かった。

 

 木乃香は安心したようにホッと息を吐く。

 

 すれ違いざまに背の高い女性が通った。

 

「これは警告や。次は容赦せぇへんで。お嬢様」

 

「え?」

 

 木乃香は慌てて振り向く。

 

 振り返った先には誰も居なかった。

 

 隼人たちを乗せた新幹線は京都に向けてひた走る。

 

 波乱の修学旅行はまだ始まったばかりだ。

 

 

【つづく】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。