今回は水着回。ポロリもあるよ(妄言)
ペンションを出発して、混み合う海岸道路を車に揺られること約一時間。
ここは南伊豆に位置する、なんとかビーチ。正式名称は聞きそびれたが、まあ海には違いあるまい。
空は高く晴れ渡り、砂浜は白く見渡す限りに広がって、その向こうには房総半島まで続く太平洋が青く、遠く、どこまでも続いている。まさにグランブルーだ。
海も陸も支配下に置くが如く調子に乗った煉獄の太陽は、本日も情け容赦無く輝き、その光は海を熱し、そして駐車場のアスファルトをも溶かしにかかる。
つまり、超暑い。やっぱり夏休みは休む為にあるのだ。
こりゃあ今日も絶好の熱中症日和になりそうだ。一昨日のこともあるし注意せねば。
よし、今日は日陰で戸塚観賞をしながら大人しくしていよう。
陽炎の立つ駐車場に停まったアラサー号と魔王号から、それぞれが様々な思惑を抱えたり抱えなかったりしながら、わらわらと降りてくる。
その中でひと際目を引く白い肌に白いワンピース。肩に大きなキャンバス地のトートバッグを掛けたその美少女は、顔立ちのみが似通った姉の存在を認めて項垂れ、頭を抱える。
「何故……姉さんがいるのかしら」
「あはは、わたしも海で泳ぎたくなって来ちゃったー」
ほら見ろ雪ノ下。やっぱ魔王からは逃げられないだろ?
海への参加者は16名、つまり全員である。車は二台でそれぞれ定員は9名。当然、車は二台必要になる。そして運転免許を所持しているのは平塚先生と陽乃さんだけ。
どう考えても陽乃さんは来るに決まってるだろう。
少し考えれば解りそうなものなのに。普段の雪ノ下なら考えるまでも無いことなのに。
印旛沼の水深の三倍は深い溜息を漏らす雪ノ下雪乃の腕には、すでに由比ヶ浜結衣のたわわに実った二つのキングスライム的な何かが押し当てられている。
「まあまあ、ゆきのんっ。楽しもうよ」
「もう……暑苦しい」
いつもは言葉だけの拒否だが、今日は本当に暑苦しそうだ。その気持ちわかるわー。あの暑苦しさと柔らかさは経験者でないと理解し難いだろう。
俺は昨日がっつり経験してしまったからな。不幸な事故としてだが。
人はその不幸な事故を”ラッキースケベ”とか呼ぶらしい。だが、事故は事故。忘れるに限る。それが由比ヶ浜や川崎の為でもある。
「それでは、海の家で着替えるぞ」
サンダース軍曹、もとい平塚先生の号令一発、一行はぞろぞろと海の家のお着替えスペースへと向かう。
男性用のお着替えスペースに戸塚が入った瞬間に上がったオッサンたちの小さな悲鳴は、勿論戸塚本人には内緒だ。
こういう時に男は便利だよな。圧倒的に着替える着衣の量が少ない。
早々に海パンに着替えて砂浜に出ると案の定、女子軍団はまだのようだ。
おお、熱いぜ。砂が焼けているようだ。まるでどっかの神社の神事「火渡り」みたいな感じ。
勿論体験はしていない。想像で言ってるだけだ。続いて他の男子たちも、むさ苦しく群れを成して浜辺に下りて来ては「あっちぃ〜」とか声を上げている。
まさしく有象無象と呼ぶに相応しい一団だ。
ふと一団の真ん中、泥中の蓮に目が釘付けになる。云わずと知れた紅一点、戸塚である。
紅一点はおかしい?
何を云うか。戸塚の頬は人前に柔肌を晒す恥ずかしさで真っ赤なのだよ。きっとあの上半身を包み隠す半袖のパーカーの下も、紅潮して汗ばんでいるに違いない。
そんな戸塚の柔肌を衆人に晒すのは気がひけるが、安心してくれ。
戸塚は俺が守る。何としてもだ。
妄想が暴走しそうな俺がフラミンゴのように片足ずつ上げて足の裏を冷ましていると、女子達もぞろぞろと登場する。それと同時に、浜辺にごろごろいるオッサン達や野郎どもの視線が、その女子の群れに集中する。
無理も無い。その女子等10人全員が美的水準の高い外見を有しているのだ。
こんなこと、本来ならばラノベや漫画、もしくはアニメの中だけの現象だ。
その女子等の一団の中で、ひと際男たちの視線を集めているのは奉仕部顧問で在らせられる平塚先生である。
黒いビキニに、白くご立派な胸元。そしてすらりと高い身長に程よく熟れたボディ。
俺が云うと非常に気持ち悪いのだが、見たまんまその通りだから仕方ない。本当、なぜ結婚出来ないのか不思議である。
あ、性格上の問題か。あとマジックミラーみたいなティアドロップ型のサングラスも問題かも。
次に視線を集めているのは雪ノ下家の長女。今地球上で最も俺的に面倒な人物、陽乃さんだ。
普段の腹黒さとは対照的な白のビキニの腰にはハイビスカスがあしらわれたパレオを巻いている。こちらも溜息が出るくらいの美麗さだ。
この人もあとは性格上の問題だけだな。
訳あり物件二名が登場した後から”ぴょこん”というか”きゃろん”というか。幕末好きの元生徒会長さんがめぐりん☆パワー全開マックスハートで現れた。
おお、めぐりん先輩って、意外に意外と……なんだな。俗にいう着痩せするタイプか。控え目なフリルがあしらわれたインディゴのビキニから少しだけはみ出したお肉が身体の丸みを連想させ、女性らしさを際立たせている。あの布の下がつい気になるんですけどね、後輩としては。
まあ一言で言うと、非常に柔らかそう、なのである。
嗚呼、蹂躙したい。
こんなこと考えてる俺、やっぱキモいな。
もう自分で自分を通報してしまうまである。
ところで小町ちゃん。そんな露出度の高いビキニはまだ早くない?
これではビーチの野郎どもの目を片っ端から潰さにゃならんだろ。
せめて去年の千葉村の時くらい、いや海老名さんを見習ってワンピースの水着に……海老名さんのワンピースもなんかいいな。うん、エロい。
川崎沙希の水着も多少露出が控え目なワンピースタイプだが、長身だし、元々女子のスライム的な部分の主張が強く、スタイルが良いせいで体のラインがすごく綺麗である。しっかし足長えな。
と、そこらへんのグラビアアイドルにも引けをとらない女子たちが人目を引くのは仕方ない。
したがって、俺が横目で食い入るように見てもそれは不可抗力、のはずなのだが。
「……ヒッキー、目がエロいよ」
「ほーんと、せんぱいったらエッチな顔しちゃって」
「比企谷くん、早くその目を潰しなさい。大至急よ」
比較的近しい女子たちは一様に俺を蔑む。ま、そうされても仕方ないことばかり考えてたんですけどね。
由比ヶ浜結衣は、何というか──もう目の毒だ。
ちょっと布と貞操観念が足りないんじゃないの、と注意したくなる程のオレンジのビキニの胸元は今にも弾けそうだ。昨日あの二つのキングスライムに腕を挟まれたかと思うと、自然と顔面が緩んでしまう。
ちなみに、向かって右がスラりんで、左がスラっち。左右ともに、いつも布の陰に隠れている人見知りさんである。自己主張だけは強いけどね。
一色いろはは、やはりあざとい。控え目な胸元をフリルでカバーするデザインのカラフルなビキニなのだけど、それがまたエロく、もとい可愛く見えるのだ。
これならきっと葉山も前傾姿勢で喜ぶだろうよ。あと前傾姿勢の理由は聞いてやるな。
その二人の後ろに控えしは、奉仕部部長と氷の女王を兼任する雪ノ下雪乃。
だが。
「ねえ、ゆきのん。なんで水着に着替えないの?」
そうなのだ。雪ノ下雪乃は水着ではなく、海に着いた時と同じ、膝まである白いワンピースを着ているのだ。こいつは去年の千葉村のときもパレオを巻いたままで、結局水着だけになることは無かったっけ。
べ、別に水着姿を見たい訳じゃないんだから。ちょっと残念なだけなんだからねっ。
「あれー雪ノ下さん、海なのに水着じゃないんだ~?」
男どもの視線をかき分けるように颯爽と登場したのは灼熱……いや獄炎の女王、三浦優美子。
向日葵があしらわれた、炎の如く真っ赤なビキニ姿の三浦は、勝ち誇ったように威風堂々と胸元を誇張する。
その出で立ちは、金髪縦ロールの風貌と相俟って、まるでアメリカのサイコホラー映画のヒロインである。
その真っ先に屠られそうなキャラと化した三浦優美子を射抜くように見つめるのは雪ノ下雪乃。
三浦の目。三浦の胸。自分の胸。足元。あさっての方向。
以上、雪ノ下の目線の移動経路でした。
「……日焼けが苦手なのよ」
顔を背けたまま呟く雪ノ下は、大きなトートバッグを抱えて海の家に引き返してしまった。
その後を由比ヶ浜が、手に持った日焼け止めを頭上でぶんぶん振りながら追いかける。
「ムォッホゲフフォン。戸部氏、う、海は良いのう」
「なっ、マジ海サイコーだよなー、水着サイコー!」
「ひゃっほーう!」
後ろを向くと、鼻の下が伸びきった顔面で若干腰を引いている戸部と材木座。どこで調達したのか、ビーチマットやら何やらを抱えている。
何か準備万端っぽくてキモい。
ま、こいつらの水着チェックなんて需要は無いだろう。全員海パンだし。
しかし初日のノゾキ未遂の時といい今といい、戸部と材木座って案外ウマが合うのかもな。
その横には爽やかな笑顔を作るリア充の王、葉山隼人。早くもリア王は関係のない通りすがりの女子達に熱い視線を送られている。
ちくしょうこの野郎。こいつもう右の乳首と左の乳首が入れ替われば良いのに。あ、あんま実害はないか。
俺は……ゴムぞうりでも買いに行こうかな。砂熱いし。
女子等の水着を眺めるだけで丸々一話使っちまったし。
──あ、忘れてた。
海老名さんは、普通のワンピースタイプだよ。スクール水着じゃないよ。
このクソ寒い二月に真夏の海の話で恐縮ですm(_ _)m
あ、ポロリはありませんでしたぁ。