ENDLESS SUMMER NUDE   作:エコー

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今回は、海の家でのお食事タイム。


33 前略、海の家より

 

 

 水着に着替えてから浜辺にいたのは、僅か数分。

 着いた時刻が時刻なだけに、すぐに昼飯時となった。じゃあメシ食ってから水着に着替えればいいじゃん、と云いたかったのだが、戸部と材木座のだらしないワクワク顔を見せられてしまい、すっかりその気は失せた。

 

 海の家では各々がめいめいに、水着の上に何かを羽織った姿で食事を摂っている。

 スタートダッシュを決めた俺は、素早く戸塚の隣という好ポジションをキープ。無事に戸塚の隣でキャベツの芯が多用されている焼きソバを咀嚼している。相変わらず反対側の隣には材木座がいるのがウザい。

 肉圧高えな、こいつ。きっと血圧も高いな。なんなら血糖値も高いに違いない。

 由比ヶ浜とは対照的な不快な意味で非常に暑苦しい。

 これはもう、戸塚に集中するしかないな。

 

 ちらと横目を向けると、戸塚はカレーライスを口に運んではむぐむぐと咀嚼し、こくんと飲み込む。その喉元の動きの艶かしさに目が釘付けになった俺の喉も思わずごくりと鳴ってしまう。

 ふう、ごちそう様です。

 俺の熱視線に気づいた戸塚は、相当キモいことになってるであろう俺のスマイルを拒絶することなく、笑顔を返してくる。

 

「ねえはちまん、ひとくち交換、しよ?」

 

 な、なに……!?

 突然の嬉しい申し出。そこで俺はつい愚考してしまう。

 一口交換というのは、きっと互いに一口ずつ分けあうってことだよな。

 いや待て、戸塚はカレー、俺は焼きソバだぞ。カレーって箸でつまむモノじゃないよな。

 するってぇと、まさか──

 あーん、とかじゃないよな?

 

「はい、はちまん、あーん」

「と、戸塚くんの熱いパトスが、ヒキタニくんの中に……キマシ──ブフォッ!」

 

 どこかで腐界の主が赤いパトスを撒き散らすのは見なかったことにしておこう。

 気がつくと、予想を幸せな方向に裏切った戸塚は、自分のカレーをスプーンですくって俺に差し出している。

 スプーンの上には、ごはんとカレーが綺麗に二色に分かれたミニカレーライス。どうやったのか、ちょこんと横に福神漬けまで乗せられている。

 何これ、超可愛い。そしてあざといっ。非常にあざとい。何これ、もう戸塚ルートしか考えられなくなっちゃうっ。

 もう戸塚のために財形貯蓄まで始めちゃう──はっ、いかんいかん。

 

 う、うん。でも、仕方ないよな。カレーはスプーン、焼きソバは箸、だもんな。

 恐る恐る開いた俺の意地汚いおクチに戸塚のスプーンが挿入される瞬間、俺は目を閉じてしまった。

 俺の口内に侵入し、ゆっくりと引き抜かれる戸塚のアレ。スプーンと書いて、アレ。

 

「おいしい?」

 

 不味いはずが無い。だって戸塚の……ふひひ。

 

「あ、ああ、おいひぃ」

 

 あーあ。相当キモいな俺。今は絶対に鏡を見たくない。

 

「じゃあ今度は、はちまんの、ちょうだい」

「……ブハアッ」

 

 おうふ。

 小町に消去された例の動画を探すついでで、幾つか見た動画の中で聞いたような台詞。加えて云えば、男が言われたい台詞の13位あたりにランキングしそうな台詞である。

 それを今、戸塚に言われている、だと?

 おぅふ。

 

「ほら姫菜、ちーんしな、ちーん」

 

 再び三浦による海老名さんへの応急処置が行われてるのを横目で確認しながら、俺は焼きソバの麺の上にキャベツと紅ショウガを乗せ、箸の上にミニ焼きソバを作り上げる。

 あとはこの箸を戸塚の、戸塚の中に──。

 

「よ、よし戸塚、いくぞ──」

 

 箸を持つ手が震える。緊張するのは無理も無い。なんたって、これは人生初にして一世一代のイベントなのだ。

 俺の馬鹿っ。戸塚は男だぞ。

 戸塚は男、戸塚は男、戸塚は男、戸塚は男、戸塚は……やっぱ天使だぁ。

 コホン。

 さて、いざ参る。

 意を決して焼きソバを摘んだ箸を戸塚の口内に侵入させる。その先端が戸塚の敏感な舌先に触れたところで、ゆっくりと口内から二本のスティックを引き抜く。

 ふう、今年の夏は熱いぜ。激アツ。いや胸アツだっ!

 

「あむ、ん、ん、ん……んくっ。んふっ、焼きそばもおいしいね、はちまんっ」

 

 撃沈した。いや、された。もう轟沈。もう戸塚しか見えない。

 向こうの方で絶賛鼻血処理中の海老名さんが真っ赤な親指を立てて「ご馳走様」とか云ってたとか、見て見ぬ振りをさせていただこう。

 それにしても、いやだわ彩加ちゃんたら”んふっ”だって。なんてはしたないおクチなのかしら。

 思わず、上のおクチは──的な下卑た妄想に浸っていると、嫌悪の声が背中から胸へと貫通する。

 

「……ヒッキー、キモい」

 

 あれれ。

 さっきまで離れた席で雪ノ下とゆるゆりしていた筈の由比ヶ浜が、いつの間にか俺の背後を取っていた。

 こいつ、いつの間に俺の特技、ステルスヒッキーを盗みやがった!?

 

「な、何にも気持ち悪くないよ、男同士だもん、ね、はちまんっ」

 

 戸塚はそう言ってくれるが……いや、たしかに気持ち悪いのだろう。

 俺の妄想の中は、すでに戸塚とのマイホームを購入するための住宅ローンの金利(手数料含む)まで計算し始めていたのだがら。月々8万円の35年ローンで。

 たはは、と頬を染める戸塚との蜜月の仲を裂くように、無粋に割って入る由比ヶ浜の細い手。

 けしからん、と一言投げ付けてやろうかと思ったが、羽織った半袖のパーカーから伸びるその柔らかそうな白く細い腕は、別の意味でけしからん存在だ。

 やばい。二の腕とか超柔らかそう。

 もしやこれがA5ランクってヤツですかそうですか違うんですね海原雄山先生。

 

「ね、ヒッキー、これ食べて」

 

 差し出されたのは……じゃがいも?

 

「うん、じゃがバター。すっごく美味しいんだよ、はいっ」

 

 その箸って由比ヶ浜が使ってたヤツだよな。そりゃまずいだろう。いや、味がどうのとかじゃなくて、倫理的にだ。

 まったくこの子ったら。何処も彼処も右側も左側もけしからんですな。

 

「はやく、落ちちゃうよー」

 

 箸を持つ由比ヶ浜の手元がぷるぷると震えている。当然二の腕もぷるぷる。ついでに俺の視線もぷるぷる。

 しかし由比ヶ浜も案外粘るな……しゃーないか。

 

「わ、わかったから……」

 

 誰か俺の口元にデジモかけてくれないかな。あ、デジモってデジタルモザイクの略ね。

 すまん、ちゃんと言い直す。”ディジタル・モザイク”ね。

 

 なるべく箸に触れないように大きく口を開けたつもりなのだが、薄く切ったじゃがいもを挟む箸が上下にある関係上、どうしても唇が箸に接触してしまう。

 そんな俺の孤独な戦いなどお構い無しに、由比ヶ浜の操る箸は俺の口内と胸中を蹂躙して引き抜かれていく。

 た、魂まで抜かれるかと思ったぜ──ふっ。

 

「どう、おいしいでしょ?」

 

 味なんかわかるかよコンチクショー。こちとら動揺を隠すのに精一杯なんだよ。童貞ぼっちをなめんな。

 でも、なんか言わなきゃ終わらないか。

 

「う、うん、美味いな」

 

 あの、これはね、あなたの箸が美味しかったって事じゃなくってね、ジャガイモがね──

 

「でしょでしょ?」

 

 愚考を掻き消すのは、向日葵のような由比ヶ浜の笑顔。

 超絶恥ずかしかったけど……由比ヶ浜は喜んでるから、まあ善しとしよう。

 その無邪気に喜ぶ由比ヶ浜は、その手に持つ箸を咥えた途端、更に嬉しそうに顔を赤らめる。

 

 ちょっと待て。それはまずい。さっき俺の口に入った箸をそのまま咥えるのは止めろ。せめて食べ物を介せ。

 俺のアレが色々と[-自主規制-]っちゃうだろうが。

 案の定、由比ヶ浜が去ったあとも俺の動揺は続いている。それを見抜いたのか、戸塚が柔らかい笑顔を向けて放つ。

 

「はちまんって、うぶなんだね」

 

 うぶ? UBU? あっUSB!?

 ああ、漢字で「初心」って書くアレか。うん。やっぱ初心は大事だよね。

 初心忘るるべからず。やっぱり俺の夢は専業主夫で決まりっ。

 勿論相手は戸塚。住宅ローンの計画まで立てちゃったんだから、責任とってくださいねっ。

 

「はぁ……そーなんですよね、捻くれてるくせに純情って、ほーんと始末に負えないですよね」

 

 声のほうを向くと、黄色いシロップがかかったカキ氷を持った一色が頭を抱えていた。

 

「なにおまえ、カキ氷一気に食い過ぎたの?」

 

 つーか、昼メシに氷って。無計画なの? それも計算なの? お昼ごはんなのにカキ氷食べちゃったてへぺろ、なの?

 そういうのは葉山の前でやれよと心中で愚痴っていると、頬をぷくっとあざとく膨らました一色が、俺を目で射抜く。

 

「違いますよー、悩んでるんですよー、せんぱいが鈍感だから」

 

 それ違うからね。超敏感だっつーの。

 俺ランクになると、いつも周囲の一挙手一投足にびくびくだぜ。

 だが一色の勘違い発言はまだまだ止まらない。

 

「せんぱいって、まさか中学生の頃からこんなにモテるんですかぁ?」

 

 は? 俺がモテるだと?

 どこをどう見ればそういう勘違いが出来るのか、理解に苦しむわ一色さん。

 と、俺が否定する前に何らかのニオイを嗅ぎつけた向かい側の小町が、キラリンと目を輝かせつつ勝手に答え始める。

 

「全然ですよー、バレンタインなんか小町にしかもらえなくて泣いてたくらいですから」

「ですよねー、せんぱいですもんねぇ」

 

 別に泣いてない。泣いてなんかないもん。ぐすん。

 だって、小町のチョコは普通のチョコの数倍甘いんだからっ。

 

「へえ、意外だなぁ、はちまんカッコいいからモテてると思ってたよ」

 

 戸塚……愛してるぞ。いつでも。いつまでも。

 しかし。やはり俺の幸せは長くは続かないらしい。

 

「……まあいいです。はい、せんぱい。あーん」

 

 カキ氷を掬ったスプーンが俺の眼前に差し出される。

 うぜぇ。あざとい。うっかりパクっといっちまいそうになったじゃねーかよ。

 だが断る。

 今度こそ断固として拒否する。そして俺には拒否するだけの理由があるのだ。今からその理由を一色にぶつけてやるのだ。

 俺は一色を見据えたまま、手元の焼きソバを箸でつつく。

 

「油物と氷をいっぺんに食うと腹壊すんだぞ。知らないのか一色」

「そんなのいいじゃないですかぁー」

 

 なんだよ、俺が腹を壊してもいいってのかよ。

 立て続けに「いいじゃないですかー」と、江戸時代末期の世直し騒動の如く連呼する一色をどう処理しようかと考えていると、救いの声が耳に届く。

 

「おーい比企谷、こっちへ来い」

 

 お、我が恩師(予定)の平塚先生のお呼び出しだ。

 ぶーぶーと文句を言う一色を置き去りに、渡りに舟とばかりに平塚先生の招集に応じる。しかし行き着く先もまた好環境とはいえない。あっちはあっちで、外見だけは大人の魅力たっぷりの女性二人が待ち構えているのだ。

 特に俺を呼んだ当の本人、目の前のアラサー教師は、その肢体を惜しげもなく、ばいんっと晒しているのだから。

 

「比企谷……どうだ」

 

 と、年上女性の上目遣いってのもなかなか良いものデスネ。

 それよりも周囲の男性客たちの視線が痛いんだけど。それもチクチクではなく、グサグサ刺さっているのだ。既に満身創痍、致命傷だ。

 ええいっ、弾幕薄いぞ!

 砲撃手何やってんのっ!

 ……あれ、俺何やってんの?

 

「どうだ、と聞いているんだがな」

 

 ナ、ナニガデスカ……?

 

「静ちゃん、大丈夫だよ。比企谷くんったら、しっかり目のやり場に困っちゃってるもん」

 

 そう云いながら俺の頬をつんつん突いて来るのは恐怖の魔王、雪ノ下陽乃さんである。

 まさか魔王が助け舟を出してくれるとは思わなかった。

 

「あら比企谷くん、また何か失礼な事を考えてたのかなー?」

 

 更にほっぺたつんつんを繰り返す陽乃さんに若干思考を読まれつつ、俺は努めて平静を装う。

 だから弾幕薄いってばっ! 早く周囲の野郎どもの視線を撃ち落とせ! 

 モビルスーツ隊は何やってんの!

 

「別に……なにも考えてませんよ」

「こら、それはそれで失礼だぞっ。こーんなに綺麗で可愛くて若くてピチピチした女の子がたくさんいるのに。ホラ、若くてピチピチだぞぉー弾けるぞぉー」

 

 陽乃さんったら、そんなに”若くてピチピチ”を強調しないでください。ついでに胸を強調するのも白ビキニを俺の腕にピトっとくっ付けるのも遠慮していただきたいですマジで。

 

「やめて下さい雪ノ下さん。平塚先生の血管がピキピキいってるんで」

 

 ──はっ、殺気!

 

「ほほう。比企谷、遺言はそれでいいのか?」

 

 来たる衝撃に備えて腹筋に力を入れて歯を食い縛ろうとする瞬間、ふと俺の高感度センサーに反応があった。

 

「あれ。先生、香水変えました?」

「……へ?」

 

 一瞬呆気にとられたと思ったら、途端に顔を赤らめて恥らい始める平塚先生。

 あ、あれ。失言だった、のかな。

 

「だ、だって、久しぶりの海……なんだもん」

 

 やっべー、超可愛い。そんな露出の多い水着姿で恥らう年上女性ってアリですわ。もう今なら熟女モノでもイケそうな気がする。

 なにがイケそうなのかは、聞くの禁止っ。

 そしてまたしても俺のボッチイージスシステムは余計なことに気づいてしまう。

 

「そういえば、水着も去年の夏と違いますね」

 

 たしか千葉村のときは、白地に赤系の模様が入ったビキニだったよな。今は黒。大人の黒。

 

「う、うむ。合宿に合わせてこないだ買ったんだが、似合う……か?」

 

 あらためて問われては、応じないのは無粋である。つーか、答えないと殴るぞ、と目が物語ってるっす。

 

「正直、刺激が強過ぎますよ。男子高校生には目の毒です」

 

 あくまで男子高校生の一般論として答えた。そのつもりなのだが。

 

「そ、そうか、比企谷はソフトな刺激がいいのか」

 

 なんか誤解を多分に含んでいそうな、ベクトルが違う答えが返された。

 やめて下さいその言い方。色々とアレですから。

 あと周囲の男性に睨まれてますから、俺が。

 ええいっ、弾幕……って、もういいか。ブライトさんお疲れ様でした。

 さて。と、そろそろ戸塚の隣の楽園に戻ろうかと立ち上がりつつ、周囲を見渡す。

 

「あれ、そういや雪ノ下はどうしたんです?」

 

 ここには雪ノ下雪乃の姿は無い。

 

「ああ、雪ノ下なら向こうのカフェで涼んでる。日陰に居たいそうだ」

 

 黒のビキニを装備した恩師(未定)が答え終わるや否や、ずいっと陽乃さんの顔が近づく。

 

「へえ、そんなに雪乃ちゃんが気になるんだ?」

「違いますよ」

 

 即答。だって予想してたし。

 あいつは体力無いから夏とか人混みとか苦手だし。それにきっとコンプレックスを抱えているし。

 

「大丈夫、雪乃ちゃんは比企谷くんみたいに途中で帰ろうとはしないから」

 

 くっ……この返しは予想してなかった。

 この人って、どうして人の傷を抉ってくるのかね。しかも生傷。カサブタさえ出来てない傷をだ。

 あーそうですかと適当に返して、雪ノ下のことへと思考をシフトする。

 

 しかし、海に来てまでカフェか。まあ、雪ノ下らしい、かな。読書するって言ってたし、冷所暗所を好みそうだし。

 そう考えると、あいつジャガイモみたいだな。クスクス。

 ちなみに我が千葉県はジャガイモの生産量全国第5位である。割合的には1%ちょいだけど。

 余談だな、うん。

 

  *  *  *

 

「ヒ、ヒッキー、日焼け止め塗ってっ」

 

 精神を削られまくった食事を何とか終えて、命からがら海の家を出た俺への第一声は、由比ヶ浜のビッチ感溢れる一言だった。

 

「はあ? そんなの俺に頼むな。女子にやってもらえよ」

「だーめ。これは正式な依頼なんだから」

 

 また”依頼”か。便利な言葉だな。

 だが雪ノ下が掲げる奉仕部の理念は「手を差し伸べる」ことだ。結果を用意してやることじゃない。だから日焼け止めを塗り終えるという結果を求めたその依頼は無効なのだよ。

 どうだ、完全に論破してやったぜ。

 

「由比ヶ浜、ひとつ教えてやろう。それは越権行為というんだぞ。結果を出すのは奉仕部の仕事じゃない。以上」

 

 どこぞの悪魔の眷族であるおっぱいドラゴンなら喜び勇んで日焼け止めにかこつけて体中を撫で回すのだろうが、生憎俺は違うのだ。

 それに、すべて”依頼”の一言で済まされたら堪ったものではない。

 

「比企谷、日焼け止めを塗ってくれないか。顧問の命令だ」

 

 また来た。歓迎できない”千客万来”だ。

 だがしかし、この比企谷八幡。小賢しさでは負けんっ!

 

「由比ヶ浜、顧問の命令だとさ。ついでにおまえも平塚先生に塗って貰え」

 

 由比ヶ浜に平塚先生の命令を押し付け、平塚先生に由比ヶ浜の依頼を押し付ける。これぞまさに”駆虎呑狼の計”なり。

 ……なんか違うか。まあいいや。

 よし、とりあえずは脱出成功。俺はこんなことに構っている暇はないのだ。

 今の俺に必要なのはスイカ。一刻も早くスイカを入手して戸塚と……えへへ。

 

 走り回ってようやく見つけたのは、べら棒な高値がつけられた売れ残りの小玉スイカ。もうなんでもいいかとそれを購入し、戸塚を探して再び熱い砂浜へと戻る。

 しまった。ついでにゴムぞうり買っとけばよかった。

 砂の熱さに足裏を焼かれないようにエリマキトカゲの如く不恰好に走っていると、遠くに天使の姿が見える。

 

「おーい戸塚、俺と……」

 

 駆け寄って声をかけた瞬間、目隠しをした戸塚の一撃が砂浜に置かれた大きなスイカを見事に粉砕した。

 俺の小さな夢が潰えた瞬間だった。

 




いいなぁ八幡。
戸塚のカレー、我も食べたい(腐界の気配)
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