僕はリリなのの小説を書いていたことがありますが、頓挫してしまいました。
それから一年後、ある方からその作品がきっかけでリリなのにはまりましたという報告を受けました。あんな作品でもリリなのにはまってくれる人がいたのかという思いと同時に感謝の思いがこみ上げてきました。
なので。この作品はその人への感謝の思いもこめています。
名前は申し上げませんが、本当にありがとうございました。
8/1
夏休み、と聞いてあなたは一体いつの夏休みを思い出すかな?
小学生の頃?中学生の頃?高校生の頃?はたまた、大人になってから?
それは人それぞれだよね。僕もそうさ。
さて。これから、僕にとって一番印象的な夏休みを話そうと思うんだ。
小学5年生の時、海鳴市という街で過ごしたあの夏休みを。
白い魔法少女に出会った、大切な思い出を。あなたに聞いてもらおうと思う。
まずは8/1。あの日は確か……
『海鳴市駅ー、海鳴市駅ー。終点。お降りの方はお忘れ物のないようにお願いします』
車掌の終点についた、という案内で僕は目を覚ます。
荷物の入ったリュックを背負い、バッグを持って電車を降りる。
駅のホームを抜けて、街に出た僕は予想していた光景との違いに思わず呟く。
「ここが……海鳴市、か」
予想していたよりもなかなか近代的な街だ。
てっきり結構田舎なところかと思ってたんだけど。
そうそう。なぜ僕が海鳴市にいるのか、という話の前に、僕のことを話そうと思う。
僕は普通の家に生まれた成績、身体能力、共に平凡な少年だ。
兄弟はいなくて、両親もちゃんと生きている。
そんな僕だが、少しくらいは秘密もあるんだけど。それは後々話すとしよう。
それで、なぜ海鳴市にいるのかだったね。
実は僕の両親は二人とも大手機械メーカーで働いている。
だけど、今年の夏休みの期間は両親揃って海外へ技術指導に向かうことになった。
そこに僕も連れていくかどうかでもめていたんだけど、最終的に僕はその外国で使われている言語が話せないという理由で日本に残ることになった。
そして夏休みの間、具体的には8/1~8/31の31日間、海鳴市に住んでいる親戚の家にお邪魔することになったのだ。
「えっと喫茶店で待ち合わせだっけ……地図で場所はわかるんだけど、なんて読むんだろう、これ?」
『翠屋』、と漢字二文字で書かれた店名は当時の僕には読めなかった。
小学生だからね。仕方ない。
もちろん今ではちゃんと読める。これは、『みどりや』と読むんだ。
まあ、店名もよくわかっていない当時の僕は、とりあえず地図に従ってその喫茶店に向かうことにした。
漢字も読めないけど、形があっているかどうかで判別すればいいしね。
そして、数分後。なんとか僕は翠屋にたどり着けた。
「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」
「あ、はい」
店内に入ると、メガネをかけた女性の店員がカウンター席に案内してくれた。
ここで待っていれば来る、とは言われたけど時間がかかりそうだ。
多くはないけど、お金も持っていることだし、とりあえずジュースと適当なケーキを注文して待つことにした。何、お代は後で親戚に請求すればいいさ。
なんてちょっぴり黒いことを考えていると、一人の女の子に声をかけられた。
「おまたせしました、オレンジジュースとティラミスです……ねぇねぇ、隣いいかな?」
そう言ったのは店の制服を着た栗色の髪のツインテールの女の子だった。
今時ツインテールっていうのは珍しいな、なんて考えつつそれに僕はいいよ、と答える。
女の子はケーキとジュースを僕の前に置くと、隣に座った。
「……君、この店の店員なの?こんなに小さいのに?」
少し気になったので聞いてみると、その女の子は答えてくれた。
「あっ、えっとね?この店は私の家族のしてるお店だから、私もお手伝いしてるの」
「なるほどね。じゃ、今はサボり?」
「そ、そんなんじゃないよっ。今は休憩の時間なの」
それを聞いて僕は納得して、ケーキを食べ始める。
……女の子がそれをじっと不思議そうに見ている。
「……どうかしたの?ケーキ欲しい?」
「ううん。その……君をなんだか見かけない不思議な男の子だなぁ、って思ったの」
不思議な、男の子?どういうことだろう。
「あらあら。その男の子に一目惚れしちゃったの?」
「にゃっ!?そ、そうじゃないよお母さん!」
そういった別の人に出すケーキを作っていた女性はこの女の子になんだか似ていた。
なるほど、確かにこの二人は親子だ。ここまで似ているのもなんだか珍しいな。
「まあ、見かけないのは当然だよ。僕も今日この街に来たばかりだからね。不思議なのは知らないけど」
「今日来たばかり?」
「うん。元々は違う場所に住んでるんだけど、夏休みの間だけこの街にいることになったんだ」
「へぇー……ねぇねぇ、それなら私と友達にならない?」
「君と?」
積極的だな、この女の子。
「うん。友達もいない街に一人っていうのは寂しいでしょ?」
「それはまあ、確かに……」
「それならきまりだね」
……こうして、僕は一人の少女と出会い、友達になった。
彼女の名前は……
「私、高町なのは。小学三年生だよ。よろしくね?」
後に、エースオブエースなんて呼ばれることもあったらしい、一人の魔法少女だ。
2018年2月2日、地味に改稿。