海鳴市での、なつやすみ   作:あおい安室

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ちなみにこの作品のコンセプトにはゲーム『ぼくのなつやすみ』も含まれていたりします。
個人的には4が一番好きですね。


8/2

こうして僕は『高町なのは』という少女に出会った訳だ。

あ、そうそう。当然のことだけど夏休み中は彼女にいつも会っていたわけじゃない。

実際8/2は彼女に会ってもいなければ家からも出てなかったはずだし。

そうだ、今日は僕の住むことになった家の人と、あと一つ。秘密を話しておこうか。

 

高町なのはという少女と友達になった翌日。

僕は親戚の家の自分に割り当てられた部屋で目覚めた。

元は物置だったというけど、なかなか整頓されている部屋だ。

本棚や勉強机、ソファやタンスなど、一通りの家具は揃っている。というかソファなんてウチにはないぞ。ふかふかのソファがなかなかいいなぁ。

昨日は親戚に挨拶をして、夕食を食べた後荷ほどきをしていたら、眠くなったので寝たんだっけ。

まだ荷物はあるけど、これくらいでいいだろう。部屋を出て、一階のリビングに向かう。

 

「あっ、おはよー。昨日はよく眠れた?」

 

「まあまあ、かな?雪子さんはどうしたの?」

 

「お母さんは仕事だってさ。あ、朝食は食パンだけどいい?」

 

「別に構いませんよ」

 

会話しているのは朝食をとっていた大学生の女性、「夏目かえで」さんだ。

 

僕のお世話になっている親戚は夏目家という。

父親は仕事の都合で単身赴任中で、今は母親の雪子さんと娘のかえでさんで二人暮らしをしている。

 

夏目家の家は二階建ての一軒家だ。

一階にリビングや和室、台所、風呂等の主要な生活スペースがあり、雪子さんの寝室もある。

二階は洗濯物を干すための部屋や、かえでさんと僕の部屋がある。

後付け加えるのなら、この家の庭はなかなか広い。キャッチボールくらいなら安心してできそうなくらいのスペースはある。この家で、僕は1ヶ月生活することになった。

 

「……あっ、おいしい。何か変わったマーガリン使ってます?」

 

「まあね。行きつけのパン屋さんがあるんだけど、そこに譲ってもらったんだ。いつか紹介してあげるよ」

 

「それは楽しみですね。ところでかえでさんって今日って暇ですか?」

 

「あー。あいにくだけど大学に用事があるんだ。悪いけど今日は家で留守番してもらっててもいい?」

 

「わかりました。じゃあ今日は何をしようかなぁ」

 

「夏休みの宿題をしたらどうかな?きっとまだたくさんあるでしょ?」

 

痛いところをついてくる。意図的に忘れていたというのにぃ。

 

「ま、小さい子には旅をさせよっていうじゃない。これも旅の一つだよ、頑張って!」

 

「うわあ、宿題という名前の旅とか行く気がしないや」

 

「あはは。でも難しいところがあったらお姉さんが教えてあげるからさ、安心して?」

 

「それもそうですね……早く宿題終わらせて夏休みいっぱい遊んでやる」

 

「うんうん、その調子その調子」

 

こうして夏休み2日目は宿題をするだけで終わった。

そういえば高町ちゃんも宿題に苦しんでたりするんだろうか。

今度会ったら一緒に勉強しないかって誘ってみるのも悪くはないかもしれないな。

一応僕の方が年上だから高町ちゃんが僕の宿題に役に立つかどうかでいうと微妙だろうけど。

……ふと思ったけど、僕より高町ちゃんって頭良かったりしないのかな。もしそうなら立つ瀬がないなぁ……

 

 

 

「さて、と。寝る前にほんの少しだけ練習しておこうかな」

 

夜。

食事も風呂も終えて部屋に敷いた布団の上で携帯をいじっていた僕は、枕を空中に放った。そして僕は小さな声でつぶやく。

 

「チェーンバインド」

 

と。その言葉をつぶやいた瞬間、身に付けた青い腕時計が光ると、空中に魔方陣が現れ、そこから伸びた灰色の鎖が枕を空中で固定した。

 

「うん、腕は落ちてない。それじゃ、やりますか」

 

鎖がほんの少しだけ枕を上に引き上げる。

そして今出している鎖を消す。次に新しい鎖を出してさっきよりも上で固定する。

これを何度か繰り返し、逆に下に下ろしたりする。

僕の考えたちょっとしたトレーニングだ。

……そう。僕にはたった一人を除いて、誰にも話していない秘密がある。

それは、僕が魔法使い、ということだ。




初期設定では主人公の魔力光は水色だったのですが、目立たないほうがいいかなと灰色に変更しました。
書いてから知ったことなのですが、リリなのの世界には魔力光の色別性格判断なるものがあるそうです。で、灰色はどんな性格なのかというと、『思慮深く、理知的』。
……あってるのかな?

2018年2月2日、ひっそり改稿。
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