お楽しみに。
あれから10年以上も経った今。
僕は極々普通の会社員となっている。
高町さんと八神さんは魔法を駆使した仕事、管理局員になった。
ただ、最近高町さんは引退して翠屋に就職しようかなと悩んでいるらしい。
八神さんは自分の身分が高くてどうしようにもないだとか。
まあ、僕はこう言ってあげることしかできない。
頑張れ!
……しばかれた。解せない。
さて、8/30だ。あの日はパーティーがあったっけな。
8/30……そうか、もうこんな日か。
明日、僕は早朝の電車で家に帰る。実質、今日が夏休み最後の日とも言える。
荷物はまとめて昨日送っている。必要な物だけをリュックサックに詰めて、明日持って帰るつもりだ。
今は部屋の掃除をしている。
しかし……こう、ガランとした部屋を見ると、なんだか寂しいな。
『……マスター。色々なことがありましたね、この夏休み』
「そうだね。他の魔法使いにあったり、通り魔を捕まえたり。本当に色々なことがあった」
やっぱり、なんといってもきっかけはなのはちゃんだろう。
あの最初の日に、なのはちゃんと友達になっていなかったらこんなに楽しい夏休みにはならなかっただろう。
何もかもが、懐かしい……
『老けすぎでしょう、マスター』
「うるさいよ」
「おーい、君にお客さん来てるよー?」
「あ、はーい。わかりました、すぐ行きます!」
下からかえでさんの呼ぶ声が聞こえた。お客さん?誰だろう。
「悪いな、今片付けしてるところだったか?」
「いや、あらかた終わっているからいいよ、ヴィータちゃん。何かあった?」
お客さんはヴィータちゃんだった。そうそう、ヴィータちゃんとの出会いもいい思い出だな。
ヴィータちゃんに連れ出されて公園にいる。
「そういえば、はやてちゃんは?一緒じゃないの?」
「あー……実はな?はやてがこの前温泉旅館の宿泊割引券もらったんだよ」
「温泉旅館?どこの?」
「海鳴のだよ。知らないのか?」
どこかで聞いたような……どこで聞いたか、ど忘れした。
「まあいいや。で、それの期限とかの兼ね合いを考えると行けるのが今日と明日だったんだよ。使わないのはもったいないってことで行くことにして、今日の昼過ぎに行く予定なんだ」
「なるほど。それの準備を今はやてちゃんはしている、と」
「そういうこと。だから明日は多分お前を見送ることができないだろうから、今のうちに挨拶を、ってな」
律儀だねぇ。
嬉しいからいいけど。
「というか、魔法使えば旅館からでも間に合うんじゃない?」
「お前バカか?魔法はそうやって見せびらかすもんじゃねぇよ」
……ミニスカサンタで飛び回ったヴィータちゃんのセリフじゃないよ。
「やかましい。あ、これはやてから手紙。おまけで特製料理のレシピも書いたとかどうとか」
「あ、そういえばはやてちゃんって料理得意だっけ」
「おう。はやての料理はギガウマだぜ?……で。次はいつこっちにくるんだ?」
「もう次の話?気が早いね」
「そうか?でも悪いことじゃないだろ。アタシもはやても待ってるから、いつでも遊びにこいよ?」
「……可愛いやつめ」
「あ、こら、何するんだよ!!」
ヴィータちゃんを撫でる。ちょっと僕より小さいからちょうどいいくらいの身長なんだよね。
……結局しばかれたけど。
そして、夜。
「じゃーん!どう?私も頑張ってみたんだよ!」
夏目家の人が豪勢な食事を用意してくれた。本当に嬉しい。
同時に、なんだか名残惜しい。この家で食事をとるのもこれで最後か……
「かえでさん、本当に色々とありがとうございました」
「いいっていいって。それじゃ、いただきます!」
ピンポーン。
かえでさんがそう言った瞬間に呼び鈴がなった。
「お?ゲストの人もようやく来たみたいだね」
「ゲスト?誰?」
「まあまあ。行ってみてからのお楽しみだよ」
「お楽しみって……まあ、いいけどさ」
……大体予想はできてるけどね。
十中八九、あの人だろう。
「……来てくれてありがとね。なのはちゃん、すずかちゃん、アリサちゃん」
「あ、やっぱりバレちゃってた?」
「なのはちゃんがこの前好きなケーキについてしつこく聞いてきたから予想はしてた」
実際今後ろに隠し持ってるケーキの箱が見えるし。
「にゃっ!?」
「なのは……もうちょっとバレないようにしなさいよ」
「……なのはちゃんにはちょっと難しいんじゃないかな?」
「自分で言っておいてなんだけど同感ね」
「ふ、二人とも酷いよ!すずかちゃん、私そんなことないよね?」
「……割とあるかも」
「ええーっ!?」
なのはちゃんの抗議に笑いつつ。僕はお別れパーティーを楽しんだ。
ああ、そうそう。ケーキは絶品だったと言っておこう。いや、本当に。
しかもあれ、お店で売ってないやつだよね。本当にありがとうね。
そして、夜は過ぎていった。さあ、海鳴にもそろそろお別れの時だ。