番外編、『Fの日記』はじまります。
新暦65年/8/17
君は私と出会った日のことを覚えているのかな。
きっと覚えてないよね。私にとってそれはちょっと悲しいことだけど。
でも、今の君が私と出会った日のことを知ってくれたのならそれでいいのかな、なんて思う。
君と出会ったのは8/17。私が部屋にいた時のことなんだ。
「……えっ?」
その日の朝はなんだか寝付けなくて目が覚めた。
水でも飲んでもう一回寝直そうとして、ベッドに戻ろうとしたその時。
窓の外で人が落ちていくのを見たんだ。見間違いじゃない、と自分に
「急がないとっ!!」
私の暮らしている場所はいわゆる寮だ。だからそれなりの階層がある。
私は二階に住んでいるから、あの人は少なくともそれ以上の階から落ちたことになる。
だから、急いで助けないと死んでしまうかもしれない。
パジャマのまま私は急いであの人が落ちたと思われる場所に向かった。
落ちた場所は大体私の予想通りの場所で、寮の庭に落ちていた。
落ちたのは見知らぬ男の子だった。頭を打ち付けた様で後頭部から血を流しているのが見えた。
「ねえ、大丈夫!?私の声、聞こえる!?」
「う……い、つ……」
「意識はあるんだね。待ってて、すぐに助けを呼ぶから!」
男の子を頭を痛めないように降ろすと、私は寮に助けを求めに戻った。
「目立った外傷は後頭部の傷だけです。治療は間に合ったので幸いというべきか、跡は残りません」
「よ、良かった……」
病院。男の子とが心配で私は搬送する人達について行った。
医者からの診断結果を聞いて私は安堵する。
「原因ですが、所有していたデバイスの証言から転移魔法の事故だそうです。座標を大きく間違えて空中に転移してしまい、突然のことで対応も遅れてしまったため後頭部を強打したとのことです。ただ、問題はあります。どうも記憶が無いようなのです」
「記憶が無い?」
「ええ。全てというわけではありませんが、魔法を覚えた直後から今日までの記憶や、自分の名前などの記憶がなくなっているようなのです。デバイスの方からもある程度助言を受けて現在の状況を把握しているようなのでまだいいのですが」
「そうですか……」
記憶が、無い。私はそんな経験をしたことはないが、本人にとってはつらいことなのかもしれないと思う。
「会ってみますか?彼も自分を助けてくれた人にお礼も言いたいようなので」
「お願いします」
医者に案内されて、私は病室へ向かう。病室のベッドには彼のデバイスなのだろうか、腕時計と会話している彼の姿があった。
「あ、えーっと……はじめまして、でいいのかな?君が僕を助けてくれたんだよね?」
「そうだよ。本当に無事で良かった……ねえ、君の名前を聞いてもいいかな」
「え?あー……その。僕に名前の記憶が無いのって聞いてる?なのにこのデバイス全然教えてくれなくて」
『教えようが教えまいが別にいいじゃないですか。どうせ本名はこの話でも明らかにって痛い痛い!!』
わ、デバイス床にたたきつけた後踏みつぶしてる。何の恨みがあるんだろう……
「ごめんね、デバイスがわがままで。僕のことはとりあえずボクくん、とか君で呼んでくれたらそれでいいから」
「そういうのはダメだと思うよ。私の友達が前にこんなことを教えてくれたんだ。すごく簡単なことなんだけどね?」
私の脳裏には数ヶ月前に出会った白い魔導師の姿があった。あの子が教えてくれた言葉を思い出す。
「友達になるためには、まず名前を呼ぶ。はじめはそれだけでいい。 君とかアナタとか、そういうのじゃなくて、ちゃんと相手の目を見て、はっきり相手の名前を呼ぶことが大切なんだって。だから名前は大切なんだよ」
「へえ……いいこと言うね、その友達。あ、そうだ。君の名前を聞いてもいいかな?僕はまだ君の名前を聞いてないんだ」
「いいよ。私の名前はね」
「フェイト・テスタロッサ。フェイトって呼んで?」
「……へいと?」
「フェイトだよ!!」
Q:アルフさんなにしてたの?
A:寝てた。多分今頃起きてフェイトがいなくて大騒ぎ。うっかりフェイトちゃんは後で慌てたそうな。