ひと夏の遭遇   作:乱数調整

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第1章 島にて
夏の予定


僕はアルカディア。まぁ、当たり障り無く言うと化物だ。

 

普段は男子高校生のような見た目をしているから普通に学校にも通ってる。

 

でも、僕みたいな化物がそんな所に行くのはおかしい。

物にぶつかると分裂して増える火の玉や同種族にのみ燃え移る焔を扱って敵を殲滅する、

 

そんな僕みたいな化物がいるべきではない。

 

だから僕はクラスメイトと距離を置いている。

 

けど、ここでだけは素直でいられる。

全員が全員の顔を知らなくて、皆同い年のこのチャットの中だけでは。

 

 

アルさんが入室しました

 

カルマさんが入室しました

 

アル「夏だぜ!」

 

カルマ「アルさんばんわー」

 

アル「ばんわー」

 

カルマ「アルさん、テンション高いけどどうした?」

 

アル「夏だ!夏だよ!待ちに待った夏だ(´つヮ⊂)ウオォォwwww」

 

カルマ「ちょっwwアルさん落ち着いてww」

 

蓬さんが入室しました

 

蓬「アルさん落ち着いてww話が見えてこないww」

 

アル「蓬さんばんわー」

 

カルマ「ばんわー」

 

蓬「ばんわー。何でそんなにテンション高いのか分かんないよ…」

 

アル「お前らも学生なら分かるだろ!?夏だよ、夏休みだよ!!」

 

カルマ「夏だねぇ」

 

蓬「そうね」

 

アル「お前らちょっと冷たくね!?」

 

リラさんが入室しました

 

アル「リラさんばんわー」

 

カルマ「ばんわー」

 

リラ「こんばんわ」

 

リラ「で、どういう状況ですか?」

 

カルマ「僕にも分かんない」

 

蓬「リラちゃんも困ってるわよ?」

 

アル「いやさ、夏だからどこか行きたいなって思って」

 

アル「海とか」

 

アル「で、皆の予定とか聞きたいなって」

 

カルマ「特に予定はないねぇ」

 

蓬「上に同じく」

 

アル「悲しいなww」

 

蓬「アルさんは?何かあるの?」

 

アル「ない!」

 

蓬「おい!ww」

 

リラ「うちの近くに海がありますけど、行く予定は無いですね。」

 

アル「何その素敵情報!?」

 

アル「リラさんkwsk」

 

リラ「誰も来ないので海の家とかは無いですよ?」

 

蓬「リラちゃんのプライベートビーチ?」

 

アル「リラさん金持ち説」

 

リラ「そ、そんな理由ないじゃ無いですか!!」

 

リラ「ただ、孤島なので誰も来ないってだけです。」

 

カルマ「リラさんって…」

 

蓬「何者…?」

 

リラ「酷いなぁ!私だってじぇーけー?なんですよ!」

 

アル「うん…うん…」

 

リラ「あれ!?なんか勘違いされてる!?」

 

カルマ「話を戻そうか。」

 

蓬「そうね」

 

アル「いいなー、リラさんは。」

 

アル「好きな時にビーチに遊びに行けるなんて…」

 

蓬「それはそうね」

 

リラ「あ!じゃあうちに遊びに来ます?」

 

カルマ「いいの?ご両親は困らない?」

 

リラ「ちょうど別荘というか空き家があるので。」

 

リラ「よく私はそっちにいるので父、母に迷惑はかかりません!」

 

蓬「でも…ホントにいいの?」

 

リラ「はい!私も友達を呼べたらいいなー、と思っていたので!」

 

リラ「よく知る皆さんなら安心です!」

 

カルマ「リラさんが良いなら僕は参加ー」

 

蓬「私も参加!」

 

リラ「アルさんはどうしますか?」

 

アル「みんな行くなら僕も参加させてもらおうかな。」

 

リラ「じゃあ日時を決めましょう!」

 

 

まずい。

激しくまずい。

なんか流れ的にリアルで会うことになってた…

 

僕は化物だ。このチャットでもそれを隠している。

なのに、だ。リアルで会ったらどうなるか。

化物だとバレたらどうなるか。

 

失望と恐怖の眼差しで見られることになるのは間違いない。

断るか?日時を決めた時ならあるいは…

 

 

リラ「皆さんいつなら空いてますか?」

 

カルマ「僕はいつでも。」

 

蓬「私も同じくいつでも。」

 

蓬「個人的にはお盆の前が良いかな?」

 

リラ「では8月1日から8月7日までの1週間でどうでしょう?」

 

カルマ「僕はいいよ。」

 

蓬「私も。アルさんは?」

 

アル「もちろんいいよー!!楽しみだ!」

 

リラ「じゃあ2週間後、楽しみにしてます!!」

 

 

 

やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

何が「もちろんいいよー!!楽しみだ!」だよ!?よかねぇよ!

もうここまで来たら断れねぇな…

 

しょうがない。バレないようにやり過ごすしかないな。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

リラさんの住む島とはどうやら沖縄のとある島だそうで、本島から2日かかるらしい。

…ホントに日本か?

 

そういう事情で7月30日の朝一番の便で沖縄へいく。

船の時間は12時ちょうど。その便を逃すとひと月は便が無いらしい。

…だからホントに日本か?

 

現地で適当にお菓子を買って(飛行機内持ち込み禁止どのことで没収されたのだ)一時間前に船着場へ。

 

僕の乗る便は乗る人が毎回いないらしく、島へ必要物資を運ぶ目的のものだと言う。事実、

 

「いやー、あの島に渡る人がいるとはねぇ…最近は来る人が減ったから。今回は若い人が3人来たもんだからたまげたなぁ。」

 

なんて言われた。…最近?

 

「おう、昔はあの島に人魚がいるーって騒ぎになってな。テレビ局だの調査隊だのが沢山来たんだ。」

 

それは知らなんだ

 

「兄ちゃん達も人魚見れるといいな!」

 

そう言っておじさんは豪快に笑った。

人魚よりも恐ろしい奴が目の前にいるとはつゆ知らず。

 

 

3人、とおじさんが言っていたということは、もちろんほかの2人も既にいる訳で。

船着場につくとなんか茶髪でブレザーを着た男の子と、ロングヘアーの女の子がいた。

 

「お、アルさんが来たみたいだよ。」

 

「本当、早いわね」

 

僕よりも先に来て何言ってんだか。

 

「カルマさんと蓬さん…で、いいのかな?」

 

「うん。そうだよ。」

 

ブレザーの男の子が答える。

 

「ええ、そうよ。」

 

と、女の子

 

「ちょっと蓬さん、冷たくない?」

 

「いつもこんな感じよ。」

 

まぁ、チャットでもそんな感じだが…

 

「強がっちゃって。二時間前からいたくせに。」

 

マジかよ…そんなに前から2人ともいるの?

 

「あ、あなたが来たのはついさっきじゃない!?」

 

「じゃあそのくらい前から居たんだ。ふーん、知らなかったな。」

 

「ち、違うわよ!」

 

「フッ、無駄なことを」

 

カルマさん、煽るのはその辺でね?

 

「ちょっと思ったんだけど、さん付けって他人行儀じゃない?」

 

まぁ、カルマさんの言う通りだけど、慣れてるから仕方ない。

 

「直接会うほど仲が良くなってるのに?」

 

うっ…まぁ、それはあるけど…

 

「この際さん付けやめようか。」

 

まあわ、それがいいか。

 

「カルマさんはそのままカルマでいいとして、蓬さんは?蓬はなんか不自然だし…」

 

「どうしたらいいのかね?」

 

これは困った。蓬さんの名前をなんて呼ぼう?

 

「蓬莱」

 

『え?』

 

「蓬莱、よ。私の名前の元ネタ。深くは聞かないで。」

 

そんな悲しそうな目で見られて断れるわけが無い…

 

「分かった。これからはそう呼ぶよ、蓬莱。」

 

そう言った時、彼女は安堵していた。カルマは気づいていない。多分僕だけが気づいている。

 

僕はなぜか彼女は僕と似ている、と思った。

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