「ねぇドン、今遊んでる場合じゃないって分かってるよね?」
「…本当に申し訳ない。」
「思ってないよね?思ってたらそんなことしないもんね?」
…カナイが怖ぇ。
「全く…いい年こいて何をやっちょるんじゃ、ドンよ…」
「あんたもよ…ホントに二人して何やってるのよ…あいつが来るかもしれないって時に…」
「恋人探しの妄執な。」
「そ、悪魔と手を結んで恋人をゾンビにした男ね。…で、本人も悪魔になったんだけど。不老不死ではないからリラの【治癒の祈り】を応用して不死身になりたいそうだし、リラが危ないでしょ?」
ただでさえ人魚騒ぎであの子は目立っちゃったんだから、と。
チョウは言った。
【血濡れの人魚】
17年前のこと。とある異形の少女が生まれた。
透き通るようなベールに包まれた愛らしい少女。
しかし彼女は、異形を呼び寄せる。
否
異形が異形を呼び寄せるのは当然のこと。
俺達もそうやって出会った。
比較的人型に近い俺達は歓迎され、人と異形が共存する島にここはなっていた。
けど、そこに悪夢が襲った。
【神の遊戯】
二柱の神が降りてきて、俺たちを襲った。
もちろん住人も一緒に、だ。
なんとか退けだが被害は甚大。
たくさんの人や異形が死に、重態を負った。
戦いの最中で治していたリラは、それは目立つだろう。
取り込めば戦力の増強。
でなくとも潰せば敵の戦力の低下。
奴らにリラを狙わない理由は無かった。
だから、
リラは誰よりも血まみれになっていた。
そうしてまで守った住人に、リラはなんて言われたと思う?
「化け物め!!お前がいなければ俺の家族は、村のみんなは死ななかった!!1度襲われている以上ここは危険だ。お前達にはここに残って囮になってもらう。村のみんなを殺したんだ、文句なんて言わせねぇぞ。」
酷い話だ。
お前達を守ったのは誰だ?治療してやったのは誰だ?何不自由なく生活できていたのは誰のおかげだと思っている!?
俺は叫んだ。あぁ、叫んだとも。喉が張り裂けんばかりに、天までとどけとばかりに。
けど、あの子は、リラは俺を止めた。そして、言ったんだ。
「その通りかも知れません。ご迷惑をお掛けしました。」
なんて健気で、なんて美しくて、そしてなんて哀しい子なんだろう?
自らの善意を悪意に変えた人達に、恨みつらみがないというのだろうか?
そして、住人はみんな出ていった。
『あの島には人魚がいる』と異形にさえも届くような大事にして大嘘の噂を。
島の有様を見た人たちが付けた名前が血濡れの人魚。
そして少女は心を閉ざした。
真の姿とともに、閉ざした。
ドゴォン!!、と破壊音が鳴る。
島が生きているかのように、揺れる。
音の出どころは、リラの友人がいる所。
俺達は化け物の脚力ですぐに向かう。
何が、あった?
着くと蓬莱が倒れていた。そして、リラの姿が変わっていた。
蓬莱が起き上がる。治癒の祈りが届いたらしい。
そこまではいい。
問題はその後だ。
リラが本性を表した時、彼らは一目散に逃げるかリラの指示で避難するか。どちらかだと思っていた。
それがどうだ、奴らも姿を変えた。
「なんだよ。お前らも隠してたのかよ!」
唇からこぼれ落ちたのは安堵、そして期待。
「お前ら!行くぞ!!加勢だ!!奴らにばっか美味しいところ持っていかせんじゃねぇ!!」
リラの、だけじゃない。
俺達の戦いがこれから始まる。