ひと夏の遭遇   作:乱数調整

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星見━静呟

僕らは島の中にある小さな高台に来て、4人並んで寝そべっていた。

 

広く開けた視界に満天の星々が広がる大パノラマ。

いくつもの流れ星が流れては消えていく。

 

「あれがデネブで、あっちがアルタイル、そしてあそこにあるのがベガ。夏の夜空にひときわ輝く夏の大三角だよ。」

 

「すごく綺麗ね。東京と違って空気が綺麗だから透き通って見える。リラちゃんと出会わなかったら見えてなかった景色ね。」

 

カルマと蓬莱がその景色を絶賛する。

その中で僕は思う。

 

「ここに来れて良かった…」

 

僕は知らないうちにそう呟いていた。

 

「そうね。わたしも話が持ち上がった時は迷ってたけど、来れて良かったわ。」

 

「僕もだよ。人の叡智の源である【追憶の書庫】も、こんな心は教えてくれなかった。」

 

蓬莱とカルマも続く。

 

僕らはみんな同じ境遇だった。

それを知らなかったが、僕らは惹かれあったのだ。

これを奇跡と言わずしてなんと言おうか。

 

「これが、全てです。」

 

リラが呟いた。

 

「これが、私が皆さんに差し出せるものの全てです。私の生きてきた島、綺麗な浜辺、お父さんとお母さんと暮らした家、そしてこの星空。これが私の、私の18年の全てです。」

 

いつか友達ができたら自慢しようと思ってたんです、と、リラは囁くように言う。

 

それは涙を堪えるような小さな、本当に小さな言葉だったけれど、聞こえるように、リラは呟いた。

 

「………………」

 

僕は黙っていた。物心着いた時から両親はいなかった僕だけれど、寂しいと思ったことは無い。僕は環境に恵まれ、人に恵まれ、苦悩することも、憎悪されることも、一度たりともなかった。

 

そんな僕が、何かを言えるわけ、ないだろう?

 

「ねぇ、皆さん」

 

リラが立ち上がった。2.3歩歩くとそこで止まり、振り返る。

 

「私を、見つけてくれて、ありがとう」

 

花が咲いたような笑顔でリラは言った。

 

「今日のことを私は、きっと、ずっと忘れない!」

 

リラはそう続けた。

夜は僕らを置き去りにして、更けていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「…………チェックです。これでこのゲーム23回目のチェックですよ?先程までの圧倒的なチェスの腕前はどこへ行ったのでしょうか?」

 

暗い部屋に、小さな机を挟んで男が二人いた。

一人は黒と白、二色で織りなっているスーツを着こなし、机の上のチェスボートの白軍(先手番)を操っていた。

 

「では、私はこうだな。………………ふむ、フィッシャー、確かに君のチェスの腕前は素晴らしい。流石は神が相手でも白軍(先手番)であれば引き分けることが出来る、と言われていただけあるね。」

 

対する黒軍(後手番)を操るのはサイズがあっておらずダボっとした白衣を着ており、頭から角が生えた男。

 

二人は暗い部屋でチェスに興じているらしい。

 

「………………私もこんなことは言いたくないのですがね?バアル様、貴方、それは黒軍(貴方の駒)のキングを除く最後の駒ではないですか。それを……いえ、それ以前にも貴方は今回の勝負、初めから駒を意味の無いところで捨てるような動きをしていますよね?私のことが哀れになり、勝利を譲ろう、とお考えなのですか?チェックです。」

 

24回目のチェック。盤面には全ての白軍と、キングだけの黒軍がいた。

 

「そのようなことは決してないよ。そして君は、もうじきそれを理解する。さァ、変則ルールだ。」

 

バアルがそう言うと、どこからともなく四種の黒軍が新たに現れた。

 

「…………それはっ!!」

 

「君も【チェスの偉人】と呼ばれているんだ。変則ルールくらいは知っているだろう?」

 

チェスの変則ルールの一つ、それは通常駒がキングを除いて全滅した時に現れる四つ(・・)の特殊駒。

 

その名を【バッファロー】【グラスホッパー】【カーディナル】【ナイトライダー】

 

それらが現れてから、戦局は大きく変わった。

攻めていたフィッシャーの白軍をバッファローが蹴散らし、その守りをグラスホッパーがかき乱し、カーディナルが強引にこじ開け、

 

「これで、チェックメイトだ。」

 

「…まいりました。」

 

ナイトライダーがキングの首をとり、勝敗が決した。

 

「いつからこれを考えていたのですか?」

 

フィッシャーがバアルにそう訊ねる。

 

「最初から」

 

バアルは事も無げにそう言った。

 

「予め自分がどう戦局を動かしたいかを考えておかなければ、勝利などありえないのだよ、フィッシャー。こと、私達のような(・・・・・・)神々の遊び(戦い)は、ね。」

 

「………………なるほど、さようで。」

 

フィッシャーはどこか腑に落ちたようにそう呟いた。

そして続ける。

 

「では、もう一つの盤面も(・・・・・・・・)?」

 

「ああ、もちろんだとも。」

 

そう言って二人は立ち上がり、別の盤へと移動をした。

 

そこには誰もいなかったというのに、駒は勝手に動いていた。

白軍は【ポーン】が七枚、そして【キング】が一枚動いていた。

 

対する黒軍は【ポーン】がただの一枚、動いているだけ。

 

バアルとフィッシャーがその盤面をしばらく眺めていると、白軍の【ルーク】が黒軍の【ポーン】を引き連れてやってきた。

 

またしばらくして、黒軍の【ポーン】は二枚とも消滅した。

 

「………………この盤面、どう見ます?」

 

フィッシャーがバアルに訊ねる。

 

我ら(・・)の勝ちだな。」

 

バアルは当然のように言い放つ。

 

「しかし、我ら黒軍(・・・・)の被害は2、対する白軍は0ですよ?それなら───」

 

「だが、ルークが釣れた。」

 

フィッシャーが反論するが、バアルは被せるように言い放つ。

 

「ルークだけではない、向こうは必ず【キング】を守りながら闘わざるを得ないのだ。なら、我らの圧倒的優位は変わらぬよ。」

 

バアルは不敵にも笑っていた。

そして続ける。

 

「では次は、我らが【ビショップ】で【ルーク】と【ポーン】三枚を無力化するとしよう。」

 

少年少女の預かり知らぬところで、歯車は回っている。




…………えっと……いつぶりでしょう?
えぇ……あの……パワーインフレが凄いことになってて、書くのがすごくメンド…………大変になってて書いてませんでした(てへぺろっ!)

待ってた人がいるかは分かりません。いたらごめんなさい、別作書いてました。

こんな感じに恐らく酷く亀更新になります。それでも宜しければゆっくりしていってください。
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