石造りの街中を、馬車が音を立てながら進んでいく。
「…異世界だ。…私、本当に異世界に来ちゃった。私ってこれからこの世界で魔法とか使って、冒険したりしちゃうの?」
私は目の前に広がる光景に、興奮で震えながらも呟いた。
そこは、レンガの家々が立ち並ぶ、中世ヨーロッパのような街並み。
車やバイクは走っておらず、電柱も無ければ電波塔もない。
そして、私は更に凄いものを発見した。
「獣耳だ!獣耳少女がいる!こっちにはエルフ耳!あれはエルフかな?美形だから、エルフだよね!凄いことがいっぱいだね。女神様」
「そうですね、サオリさん。…サオリさん、これからは私のことをハナって呼び捨てにしてくれませんか?」
「いいよ、ハナ。で、これからどこに行けばいいの?」
「ギルドという所に行きましょう。ゲームの定番なので」
ハナは自信満々に言った。
「じゃあ、ギルドがどこにあるか、近くの人に聞いてみよう」
そう言って私は近くの人にギルドがどこにあるのかを聞いた。
真っ直ぐにずっと行けば、着くと言われたのでお礼をしてギルドに向かった。
歩いている途中で私はあることに気づいた。
「ねえ、ハナ。私たち、お金とか持ってないけど大丈夫かな?」
私はお金の心配をしている中、ハナは笑顔で言った。
「大丈夫ですよ。お金が必要になったら借りればいいんですよ」
ですよね。それしかないですよね。
そう思っているうちにギルドに着いたのでお金の心配をしながらギルドに入った。
中は食べ物の匂いが漂っているが、結構綺麗な所だった。
でも怖い人とかいるんだろうな、と思った。
そう思いながらも私はハナと一緒にカウンターへと向かった。
受付は四人。
全員が女性職員だったので、私はその中から最も話しやすそうな受付の列に並ぶ。
「…どうして一番列が多い受付の方に行くんですか?他の三つは空いているのに」
私の後ろにいるハナが不思議そうに言ったので、私は小さな声で答えた。
「一番話しやすそうだったから」
「そ、そんな理由だったんですか。なんか、ごめんなさい…」
謝らないで。恥ずかしくなるから。
そう思いながら私たちの番がやって来た。
「はい、今日はどうなされましたか?」
受付の女の人はおっとりした感じの美人の人だ。
ウェーブのかかった髪と巨乳が大人の女性の雰囲気をかもしだしていた。
…私よりでかい。いや、そうじゃなくて。
「えっと、冒険者になりたいんですけど、遠くから来たばかりで何も分からなくて…」
こう言っとけば、受付が勝手に色々教えてくれる。
「そうですか。えっと、では登録手数料が掛かりますが大丈夫ですか?」
…登録手数料?よし、お金を借りよう。
「ハナ、やっぱりお金が必要みたい」
「そうですね。…あの人に借りてみましょう。優しそうな人ですし。」
そう言ってハナは男の人に近づき、男の人と外に出た。
10分後にハナは戻ってきた。お金を持って。
後から戻ってきた男の人は顔が死んでいた。
何があったのか気になるけど怖いから考えるのはやめよう。
そして、私たちは受付の方に戻った。
「ええっと。登録手数料を持ってきました。」
「はい。登録料はお一人千エリスになります」
ハナが男の人から貰ったお金が五万エリス
ハナの話では、一エリス一円換算らしいのだが、なんで五万エリスも貰ってきてるの、と思った。
正直、このお金使うの嫌だな、と思いながらもお金を出し、受付の話を聞き続けた。
「では。冒険者になりたいと仰るのですから、お二人ともある程度理解しているとは思いますが、改めて簡単な説明を。…まず冒険者とは街の外に生息するモンスター…。人に害を与えるモノの討伐を請け負う人の事です。とはいえ、基本は何でも屋みたいなものですが…。…冒険者とはそれらの仕事を生業にしている人達の総称。そして、冒険者には、名職業というものがございます」
説明が一通り終わり、受付のお姉さんが、私とハナの前にそれぞれカードを差し出した。
「こちらに、レベルという項目がありますね?ご存知の通り、この世のあらゆるモノは、魂を体の内に秘めています。どの様な存在も、生き物を食べたり、もしくは殺したり。他の何かの生命活動にとどめを刺す事で、その存在の魂の記憶の一部を吸収します。通称、経験値、と呼ばれるものですね。それらは普通、目で見る事などはできません。しかし…」
お姉さんが、カードの一部を指指した。
「このカードを持っていると、冒険者が吸収した経験値が表示されます。それに応じて、レベルというものも同じく表示されます。これが強さの目安になり、討伐をどれぐらい行ったかも記録されます。経験値を貯めていくと、レベルアップをし、成長していきます。レベルが上がるとスキルを覚えるためのポイント、様々な特典が与えられるので、頑張ってレベル上げをして下さいね。…以上で説明を終わります。何か質問などはございますか?」
説明を聞き、完全に理解することができた。
「では、何もないようでしたら、二人とも、こちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴の記入を願います」
差し出された書類に、私は自分の特徴を書いていく。
身長157cm、体重○○キロ、年は16、その他いろいろ…。
「はい、結構です。ではお二人とも、こちらのカードに触れてください。それであなた方のステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね」
そう言われて私はカードに触れた。
「…はい、ありがとうございます。タケベサオリさん、ですね。ええと…。筋力、生命力、器用度に敏捷性…、どれも普通ですね。知力と魔力がかなり高い以外は…。!!!!!何です、この数値!?モテ度が最低レベル以上になっていますよ!?あなた何者なんですか…っ!?」
「…え、モテ度が最低レベル以上なんて、凄いショックなんですけど」
「何言っているんですか!?凄いことですよ。世界に一人しかなれない職業《恋愛探求者》になれるんですよ?」
…なりたくない、そんなの。
「他に私がなれる職業はありませんか?」
「…えっと、ありませんね。これだけです。でも魔法が使えますよ。まぁ、でも使うと魔力の他にモテ度も使ってしまいますが…。でも、凄い職業ですよ」
そう言われて私はハナの方を見た。
ハナは誰にも見せたことのないような笑顔を見せた。
ひどい!
「…え、ええと、その、嫌ですけど、恋愛探求者でお願いします…」
「分かりました。では次にハナさん、どうぞ」
ため息をしながら私は、職業《恋愛探求者》と記されたカードを見ながらハナを待った。
「はっ!?はああああっ!?何ですか、この数値!?筋力がやや低いですが、それ以外は大幅以上に平均値を超えていますよ!?特に魔力が尋常じゃないですが、さっきの人といい、あなたも何者なんですか!?」
…あれ、私より、ハナの方が凄い?
「そんなに凄いことなんですか?」
「す、凄いなんてものじゃないですよ!?最高の防御力を誇る聖騎士《クルセイダー》などの職は無理ですが…。僧侶の上級職である《アークプリースト》。魔法使いの上級職《アークウィザード》など…、最初からほとんどの上級職に…!」
「では、アークプリーストでお願いします。」
「アークプリーストですね!あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなし、前衛に出ても問題ない強さを誇る万能職ですよ!では、アークプリースト…っと。冒険者ギルドへようこそハナ様。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!」
…何これ。
私の時、そんな事言わなかったよね。
私も一応、世界に一人しかなれない職業なんだけど…。
まぁ、いっか。
何にせよ、ここから私の異世界での生活が始まるから。
「職業も決まったし、早速クエスト行こう!はな」
「いえ、まずは一人ほど仲間を増やしてからにしましょう。仲間がいた方がクエストを楽に出来ると思いますし」
確かに。仲間を募集している所はそこそこいるし、楽にクエストが出来るのもいい事だしね。
パーティー募集をしてから3日が経った。
誰一人来ない。
「ねえ、ハナ、簡単なやつでいいからクエスト行こうよ」
「後、少しだけ待ちましょう、サオリさん」
「もう3日も経ったよ。もう待ちくたびれ…」
私がそう言って、立ち上がろうとした時だった。
「すいません、冒険者募集を見て来たのですが、ここでいいのでしょうか?」
懐かしい声が聞こえた。
天パ?な髪型、喋り方に容姿。
そして、なぜか手に持っている戦車のプラモ。
どこからどう見ても私の友達の秋山優花里にしか見えない、戦車のプラモを置き、ゆかりん似の女の子は丁寧に、
「私の名はユカリと申します。職業は《クリエイター》です。とはいえ、戦車しか出せないけど戦力になるとは思うの仲間にして下さい。」
「ご、ごめんなさい。他をあたってください」
「ひ、酷いじゃありませんか。雇ってくださいよ。お願いしますから」
…戦車しか出せないんじゃあな…。
「いいじゃないですか。サオリさん、仲間にしても。ほら、あそこの方を見てください」
そう言われるがままに私はそこを見た。
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者…!」
「…冷やかしに来たのか?」
「ち、ちがわい!」
他の人のやりとりを見て、思った。
…あの少し頭が痛い子よりユカリさんの方が全然いいんじゃないか、と。
そう思い、私は覚悟を決め、
「ユカリさん、私、サオリといいます。この子はハナっていうよ。これから宜しくね」
「…はい!宜しくお願いします!それと私のことは呼びやすい名でいいですよ。」
「分かったよ、ユカリン、改めて宜しくね」
「宜しくお願いします、ユカリさん」
こうして私とハナ、そしてユカリンを含め、3人のパーティへとなった。