○漆原半蔵
豊穣の女主人で働いている店員
ついにニートをやめた
○ミア・グランド
豊穣の女主人のおかみ
○レフィーヤ・ウィリディス
ロキファミリアの団員
漆原に惚れている
○リヴェリア・リヨス・アールヴ
ロキファミリアの副団長
「それにしてもミアのやつ……あんなに怒らなくていいでしょ」
漆原は自身がやらかした発注ミスのせいで仕入れた肉が圧倒的に足りないのだ。結構繁盛している豊穣の女主人ではすぐに材料不足になるぐらいに。その責任で漆原は肉屋にきていた。メモ用紙にはたくさんの肉の種類が書いてある。漆原は肉屋の主人にメモ用紙を見ながら注文をしようとするが、大きな風が吹きメモ用紙が空高くへと飛んで行ってしまう。
「ちょ!?」
空高くへと飛んで行ったメモ用紙を漆原は追いかけて、跳躍する。しかしあと少しというところで届かない。翼を生やして元の姿に戻れば簡単に手に入れられるのだがそうはいかない。ここはたくさんの人間たちが歩いている。こんなところで悪魔の姿に戻ってしまったらパニック騒ぎになってしまうからだ。漆原は追いかける……ミアに怒られないために。
★★★
レフィーヤはリヴェリアともにバベルへと向かっていた。今日はフィン、アイズ、ティオナ、ティオネ、リヴェリアたちとダンジョンに潜ろうと約束をしたからだ。主にティオナとアイズの借金を返すために。約束である正午より1時間ほど早いがリヴェリアの提案で何かクエストでも探そうと話になったのだ。レフィーヤはリヴェリアと話しながらゆっくりと歩いていた。その時だった、何かでレフィーヤの視界が塞がれる。
「えぇ!?ま、前が!?」
レフィーヤは突然のことに驚くがすぐきレフィーヤの視界を塞いでいたものをリヴェリアが取る。
「まったく、この程度で驚くな」
「す、すみません。」
「やれやれ……これは買い物のメモ用紙か?」
リヴェリアとレフィーヤがメモ用紙に書かれた物を見るとそこには牛肉、豚肉、鶏肉などの肉の種類やそれぞれ必要な分までしっかりと書かれていた。
「誰かが落としたんでしょうか?」
「そうだな」
レフィーヤとリヴェリアが誰かが落としたことまで推測するがさすがに誰かまではわからない。ある声が聞こえる。それはリヴェリアにとってはあまり関係がないものだったがレフィーヤにとっては大いに関係する人物の声だった。
「レフィーヤー!」
「う、漆原さん!?」
レフィーヤは漆原に名前を呼ばれたことで顔が赤くなる。しかし漆原にとって今はそれどころではない。
「ど、どうしたんですか?そんなに急いで」
「この辺りにメモ用紙、飛んでこなかった?肉の名前がたくさん書いてあるんだけど?」
「これのことか?」
漆原の問いに答えたのはレフィーヤでなくリヴェリアだった。リヴェリアは先ほど拾ったメモ用紙を漆原に渡す。それを見て漆原は安堵する。これでミアに怒られることは少なからずなくなるからだ。
「いやー危なかった〜。これで無くしてたら本当に飯抜きになるとこだったよ。ミアのご飯は美味しいからね」
実際は漆原は魔力があるので食事の必要はない。しかし漆原は知っている。食事の必要がない漆原が腹を空かせたくなるぐらいミアの作る料理は美味い。
「ほんと、ありがとねー。それじゃあ僕は肉屋に行かないといけないから」
「ま、待ってください!わ、私も肉屋に一緒に行っていいですか!?」
「え?なんで?」
「え、えっとそれは……」
レフィーヤは自分でも意味がわからないのだ。なぜ自分はいきなりついて行ってもいいかと言ったことさえも。リヴェリアはまたレフィーヤに対してやれやれと心の中でため息をつきながら
「確か漆原といったか?レフィーヤはなんでも最近、唐揚げを作ることが趣味のようでな、鶏肉を買いたいらしい。漆原も肉屋に用事があるんだろう?一緒に着いて行ってもらってもいいか?」
「別にいいけど、君は来ないの?」
「……そうだな。私も着いて行こう。レフィーヤが心配だからな」
「り、リヴェリア様!?」
リヴェリアはレフィーヤをからかうようにニヤニヤしている。リヴェリアは心配だったのだ。いつもアイズのことばっかりの自分の弟子は男に興味がないのかと。しかしそんな不安も今日で終わりを告げた。このレフィーヤの漆原に対する接し方を見て、ただの友人でないと見抜いたのだ。これは完全にレフィーヤは漆原に対して恋心を抱いているということに。
★★★
「無事、買えましたね。」
「うん。まぁ、ぎりぎりだったけど。」
「それではレフィーヤ、そろそろ行くぞ。」
「もう、そんな時間ですか?」
「どこか用事あるの?」
「は、はい。実はこれからダンジョンにみんなで行こうってことになってるんです。」
「いいなぁ。僕も行きたい。」
忘れている人たちもいるだろうが漆原はもともと魔界でハグレ悪魔をしており、いろんな種を潰してきたほどの脳筋な戦闘狂である。普段は店の手伝いで忙しいためあまり戦えないことを不満を持っていたのである。
「じゃ、じゃあ一緒に行きましょう!?」
「え?いいの?」
「い、いいですよね?リヴェリア様。」
レフィーヤはリヴェリアに不安気に聞く。リヴェリアは考える。もし漆原が他のファミリアのスパイだとしたらロキファミリアの主力の魔法や力量などの情報が他のファミリアに流れてしまう可能性があるからだ。だからリヴェリアは漆原に問う。
「……漆原、今から一緒にダンジョンに行ったとして見たもの聞いたことを誰にも話さないというならば連れて行ってやってもいい。」
「別に話すなって言うなら話さないよ。話せって言うなら話すけど」
「……そうか、わかった。許可しよう。」
「よかったですね!漆原さん!」
「うん。そうだね」
それを聞いてレフィーヤは安堵し、アイズはもちろん漆原とダンジョンに行けることを喜ぶ。リヴェリアは今日、3度目のやれやれと心の中で思う。ここで1回、漆原はダンジョンに行くための準備をするためと買った肉をミアに届けるために豊穣の女主人へと帰る。それから10分後、漆原は服を着替えてリヴェリアとレフィーヤの元へ戻ってきた。そして3人はバベルへと談笑しながら歩いていく。
★★★
ミアは怒っていた。いつの間にか置かれていた肉とメモ用紙のせいだ。いや、肉は別にいいだろう。これはミスをした漆原に責任持って買いに行かせた肉だからである。しかしメモ用紙に書かれたこれだけは許せないでいた。そこには汚い文字で読みづらいが多分こう書かれているのだろう。
『みあへ
でかけてくるね。ちょっとかえってくるまでじかんかかるかも。あとべつでおいてあるとりにくはれふぃーやのだからつかわないでほぞんしといてね。うるしはらはんぞう』
「あの、バカ!買い物に行かせただけで休みをあげるとは言ってないよ!」
帰ってきたら漆原を叱ってやろう考えるミアであった。
お読みいただきありがとうございました。
漆原は共通語が読めるが字は汚いということにしておきました。