クレストが兎と出会うのはまちがっているだろうか 作:立花・無道
八歳の春の時期...おじいちゃんが死んだと聞いて、悲しみに暮れていた僕は不思議な人と出会った。
「どうした少年...そう顔をふせてばかりいると、そのうち生きる気力を感じなくなるぞ...」
冷たい空気を身にまとい、布でくるまれた大きめの箱を背負っていた.....僕より少しだけ大人びた外見のその人は、まるでおじいちゃんと同じような雰囲気で僕に話しかけてきた。
「あの?..お兄さんは?」
「私か?...私の名はクレスト...ただの旅人だ。」
「ぼ、僕はベル!...ベル・クラネルです!」
これが僕と、
先生との出会いだった。
この後、僕は先生に弟子入りすることにした。
本当に感覚的に、この人は強いと理解したからだとおもう。
それから先生には随分と拒否されたが、村を出て行く先生に無理矢理ついて行って、見失っては見つけて追いかけ...
といった行動を数週間ほど繰り返して、僕が先生につかず離れずのスピードで同行できるようになった時、ようやく弟子として認めてもらえた。その後、傷だらけだった僕を手当してくれた先生が、静かな声で「子どもが無茶をするな...」と言った時に、クレスト先生の優しさも知ることができた。
「ベル...お前は自分の力に気付いているか?」
「力...ですか?」
「ああ、お前は人の可能性の一部を掴んだ。この力の名は
「小宇宙...」
「お前はその力を制御しなくてはならない。目覚めてしまったならばなおさらだ。」
そこからは数年は、ある意味で地獄だったと思う。
小宇宙をコントロールするために、修行...勉強...修行...勉強...修行の日々...
骨を砕かれること数千回、骨を折られること数百回、先生の小宇宙による冷気によって四肢を凍らされ、凍傷を負うこと数十回...
そしてそのまま数年が経った頃、僕は小宇宙を感知し燃やすことができるようになった...
それでもやはり先生には敵わず、日々の修行ではボコボコにされてしまうのだが...
「先生の小宇宙は大きいです。今の自分では太刀打ちできません...」
「ベル...それはお前が小宇宙のこと、自身の放つ技の根本を理解せずに戦っているからだ。」
「技の根本ですか?原子を砕くといった破壊の根本なら理解しましたが...いったい何が足りないのですか?先生...」
「そうだ..破壊の根本とは原子を砕くことだ...ならば、
「冷気の..根本...」
「そうだ..あとは自身で考えよ..」
その後、先生が修行を見てくれることが少なくなった。
冷気の根本とは、すなわち破壊の根本とは似て非なるもの...破壊が原子の分解ならば、冷気による凍結は原子の運動を限りなく停滞させることにある。との考えにたどり着いたとき、先生は「その通りだ..」と薄く笑ってくれたのは素直に嬉しかった。
「あの、先生はどうしてこんな風に旅をしているんですか?」
「...そうだな..知りたいからかもしれん...平和とは何か...
現在のモンスターのあふれる世界で平和を掴むにはどうすればよいのか....まこと世界は一時の夢の繰り返しよ...何が正しいのかもわからず...人は信念を胸に、与えられた時と身体で前に進むしかないのだからな...」
「先生は今の世界が間違っていると思っておられるのですか?」
「ベル...世界が正しいかどうかは、人の思いだけでは決められんよ...ただ..」
「..何でしょうか?」
「平和を脅かす存在と、それを守るために死んでいく人々は...少ないほうが良いのだろうとは考えているがな...」
「...先生」
その時のクレスト先生はどこか儚げで、今にも消えてしまいそうな..そんな表情で空を見上げていた。
先生に弟子入りして6年の月日が経った頃、僕の力はセブンセンシスと言われる小宇宙の神髄にようやくたどり着いた...いや、触れたと言ったほうが正しいかも知れない。
そんな中、先生は大事な話があると言って僕を呼び...いつものように火を挟んで正面に座らせた。
「ベル...お前は今年で何歳になる?」
「えっと..十四歳です...」
「そうか...大きくなったな..」
「あの...先生?話とはいったい?」
「ベル...私は
「えっ...?」
「私は人間でありながら、あまりに長く生き過ぎた...もう私は人間を純粋に見ることはできなんだ..これは友も言っていたが、人は長く生き過ぎてはいかんのだ..」
先生はいつものような凛とした表情で、遠くを見つめている。
僕は先生の言葉に、正常な理解が回らない。見た目通りの年齢でないことは理解していたが、それほどの年齢であることなど想像さえしていなかった。
「私は維持できぬ平和に嘆き、ただ意味もなく世界を歩き回った。そしてベル...お前に出会ったのだ..」
「先生...?」
「お前はこれから自身で成長しなければならない...私の知るお前は誰よりも情に厚い男だ...」
「先生!」
最期の言葉を述べるように続けるクレスト先生に向かって、僕は思わず叫んでいた。
「だからこそ
先生の言葉と同時に、先生の後ろにあった箱から黄金の光が放たれ、それはそのまま空を切った...
何かが箱から飛び出したと気が付いたときには、僕の身体に黄金のそれが装着されたおり..そこにいた先生の姿は...すでに消えていた..
その後、一晩の間に先生を探し回ったが気配すら見つけられずに朝を迎えた。
どうすればよいかもわからずに途方に暮れていた時、黄金の鎧を装着したままであったことを思い出し、脱ごうと考えたときに、勝手に鎧は身体から離れた。そうまるで意志があるかのように反応したのだ。
「黄金聖衣..わかりました先生..僕があなたの意志を継ぎます。与えられたこの時と身体で..僕は少しでも平和を目指します。たとえそれが一時の夢であったとしても...それを次代へと紡いで見せます。クレスト先生...だからどうか...いつか...また会いましょう。」
これこそ1人の自覚なき聖闘士が誕生した瞬間であった。
この後ベル君は、オラリオに行きダンジョンで黄金聖衣を見られた褐色巨乳の鍛冶師につかまっていろいろとつきまとわれます。
さらには、某酒場で喧嘩未遂になり様々な冒険者や神様、道化のファミリアの方々につきまとわれます。
そして冒険の末に、クレスト先生と再会し、別れの真実を知ることに...
ていうとこまでは妄想しました。